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ジャガイモ(馬鈴薯)の栽培をするなら気をつけたい、連作障害について解説
出典 : Jake Images / PIXTA(ピクスタ)
  • 生産技術

ジャガイモ(馬鈴薯)の栽培をするなら気をつけたい、連作障害について解説

「連作障害」は、農家なら誰でも一度は経験しうるトラブルの1つです。作物の中には、同じほ場で栽培し続けていると質が悪化し、いつの間にか病気や不作に陥ってしまうものがあります。本記事ではジャガイモの連作障害を例に、その原因と対策についてわかりやすく解説します。

丁寧に作物を育てているつもりが、いつの間にか病害が発生したり、不作続きになっていることは珍しくありません。その原因の1つとして「連作障害」が挙げられます。連作障害は農家を悩ませる大きなトラブルで、無策のまま栽培していると高確率で訪れる現象です。

土壌のバランスや作物のローテーションに注意して、対策を講じていきましょう。

連作障害とは

同じ科の作物を同じ土地で作り続けていると、徐々に質が悪くなっていくことがあります。これまでは見られなかった斑点が葉に現れたり、味が落ちたりする現象です。
また、収穫量が落ちてしまうこともあります。こうした問題を総じて「連作障害」と呼びます。

連作障害の原因はさまざまですが、主に、連作によって土壌の養分が奪われると考えられています。また、微生物や害虫が集まってくるので、病気が発生しやすくなります。

連作障害は、連作をきらう作物の生産農家が立ち向かうべき現象であり、まったく考慮しないまま仕事を続けていると甚大な被害を受けかねません。栽培計画を立てる際は、あらかじめ連作障害を想定し、対策を講じることが必要となります。

ジャガイモ(馬鈴薯)の連作障害で起こる症状

収穫後のジャガイモ

dorry / PIXTA(ピクスタ)

ジャガイモ(馬鈴薯)は、土壌の成分が質に大きく影響します。そのため、連作障害が起こりやすい作物の1つです。以下、ジャガイモでよく見られる連作障害の症状の一部を紹介します。

病害虫によるもの

土壌に生息するある種の細菌が増えると、「青枯病」を引き起こすことがあります。青枯病とは、植物がある程度成長してから急速にしおれていく病気です。あまりにも進行が速く、青々としたまま枯れてしまうのでその名がつけられました。

この病気は、青枯病菌という細菌によって生じるものとされています。通常、健康な土壌にも病原菌は含まれていますが、そのほかの優良な微生物の働きによって抑えられています。しかし、連作障害で土壌のバランスが崩れると、危険な病原菌の動きが活発化してしまうのです。

そのほか、ウイルスによる「モザイク病」などにも注意しなくてはなりません。葉が細くなり、モザイク状の斑点が現れるのが特徴です。モザイク病は作物全体に広がっていき、葉や茎を委縮させます。作物を出荷できない状態にまで変異させるので、農家としては大打撃といえるでしょう。

肥料によるもの

連作障害を引き起こすのは病原菌だけではありません。作物を育てるうえで重要な肥料も、連作障害の原因となりえます。

同じ科の作物を育て続けていると当然、使用する肥料にも偏りが生まれます。これにより土壌の微生物・養分などが限られてしまい、本来の状態から徐々に遠ざかっていきます。そして、作物によい影響をもたらす養分の量が減ってしまうと、ジャガイモが健全に成長できなくなり、変形や収量の減少といった低質化を招くのです。

また、ジャガイモから別の作物に切り替えるときにも、連作障害は起こりえます。作物によって相性のよい肥料は異なるため、ジャガイモ向けに整った土壌で別のものを育てても、質は低くなる傾向にあるのです。

ジャガイモ(馬鈴薯)の前後の作付けに相性の悪い野菜

ジャガイモの植え付け

川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)

連作障害のリスクが高くなるのは、主に2つのパターンが考えられます。

まずは、同じ作物を同じほ場に植え続けるケースがあげられます。たとえば、同じほ場でジャガイモの作付けを続けると、2年目以降から少しずつ病気や奇形が増えてくる可能性が高くなります。

また、同じ「科」の作物を前後作にもってきているケースでも連作障害のリスクは高くなります。ジャガイモはナス科なので、ナスやトマト、ピーマンなどの野菜と相性がよくありません。これらの作物をジャガイモの前後作にした場合は、連作障害が起こりやすくなるでしょう。

ジャガイモ(馬鈴薯)の連作障害対策

ジャガイモの種芋

岬太一 / PIXTA(ピクスタ)

連作障害の最大の対策は、連作を避けることですが、そのほかにも、土壌消毒を行うこと、検査済種芋を用いることなどがあげられます。ここからは、連作障害の対策について解説していきます。

時間をおいて作付ける

立て続けに作物を植えることで連作障害が起こるため、時間を置けば当然リスクは減ります。作物を植えない間、土壌は本来のバランスを取り戻して、再び作物を受け入れてくれる状態になります。

ただし、土壌の回復を待つには年単位の時間がかかります。作物によって連作を避けるための推奨年数は異なりますが、早くて1年、長くて数年の休栽期間が必要になります。

輪作する

前述の連作を避けるために推奨される休栽期間を「輪作年限」といいます。この輪作年限と前後作の相性を考えて、複数の畑で複数の作物をローテーションするのが輪作です。

仮にA・B・Cという3つのほ場があった場合、ほ場Aでジャガイモを栽培している間、ほ場Bには、とうもろこしなどAの作物と科の異なる作物を栽培し、ほ場Cではかぼちゃなど、A・Bと異なる科の作物を栽培します。A・B・Cの作付けを順に切り替えていくことで、必要な休栽期間を確保していくのです。

ジャガイモの輪作年限は約2~3年ですので、3年に1作以上の間隔になるような作付け計画がよいでしょう。ジャガイモを含む輪作の代表例としては、北海道で行われているジャガイモ・ビート・スイートコーン・豆類などを組み合わせた輪作体系があげられます。

輪作は、かねてより多くの農家で用いられてきました。輪作を導入すれば、土壌のバランスが偏らず、収量を安定させることもできます。 輪作年限と前後作、作期を考えて作付け計画をたてるのは大変ですが、ジャガイモ栽培では取り組みたい課題です。

土壌消毒を実施する

作物の収穫が終わり、次の作付けをする前に土壌を消毒するのがおすすめです。前の作物に対して集まってきた病害虫を除去し、新しい作物を育てられる環境を整えます。土壌消毒効果が安定していることや時間がかからないことから、農薬を用いるのが一般的です。

ただし、様々な理由により農薬の使用が難しい場合は酷暑期の太陽熱を利用する「太陽熱土壌消毒」や厳寒期に粗く天地返しした土壌を寒気にさらす「寒起こし」によって消毒を実施しましょう。時間こそかかるものの、自然な環境を保ちやすい方法です。

安全な種芋を入手する

ジャガイモの栽培では種芋を用いるのが基本です。多くの農家では、前に収穫したジャガイモの一部を種芋として保管し、シーズンが巡ってきたら畑に植え付けます。
しかし、畑から獲れた種芋にはウイルスや細菌が付着している場合もあります。そして、連作障害を拡大させる原因になってしまいます。

一方、市販されている種芋は、法律に基づいた検査を経ており、感染のリスクが非常に低いです。検査合格証票がついている種芋を買ってきて植えるのは連作障害の予防につながります。

連作障害は農家にとって向き合わなければならない課題の1つですが、連作障害を引き起こす原因について正しい知識と理解をもって栽培計画を立てることで対策が可能です。長期的に安定した収量を確保できるように、被害が起きてからではなく、前もって対策を講じるようにしましょう。

石塚就一

石塚就一

1984年京都府生まれ。会社員を経て、フリーライターに。京都府内でイベント運営や執筆活動する一方で、実家の農業にも従事している。主な生産物は米、ナス、京野菜。実践をともなった見地から、リアルな農業事情を伝えている。なお、京都市の町興しにも参加。目標は「全国区の知名度を誇るイベントを立ち上げて、京都の新しい魅力を広めること」。

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