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フードバリューチェーンとは?その意味や戦略などについて解説

フードバリューチェーンとは?その意味や戦略などについて解説
出典 : hiro / PIXTA(ピクスタ)

「フードバリューチェーン」とは、農業に携わる人たちが手を取り合い、付加価値の高い商品を作ることができるようなシステム作りのことです。この記事では、そもそもフードバリューチェーンとは何か?といった基礎知識から、フードバリューチェーンに関する戦略事例までをわかりやすく解説します。

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「フードバリューチェーン」とは、農林水産物の生産から消費までを鎖(チェーン)のようにつなぐことで、総合的な付加価値を高める考え方です。付加価値(バリュー)には、輸送コストを削減したり、販売機会を増やしたりすることなどがあります。

この記事では、フードバリューチェーンのしくみや具体的な活用法を、事例も交えて詳しく解説します。

フードバリューチェーンの意味

果物は生産されてから消費者の食卓に届くまでの間に、ジュースに加工されるなど様々な付加価値が加えられていく

agnormark / PIXTA(ピクスタ)

農林水産省によると、フードバリューチェーンとは「生産から製造・加工、流通、消費に至る各段階の付加価値をつなぐこと」と説明されています。

食物は生産されてから消費者の食卓に届くまでの間に、様々な付加価値が加えられていくと同時に、様々なコストが発生します。例えば加工の段階では、消費者が手間なく食物を食べることができるようになるという付加価値と、加工に伴う諸費用が生じます。流通の段階では、消費者が地元の商店で食品を購入できるようになるという付加価値と、運送費が発生します。

その他、販売の段階では商品のブランド化による特別感という付加価値と、ブランド価格というコストの発生など、ここに挙げきることができない種類の付加価値とコストが生まれているのです。

先の具体例からもわかるように、農産物が消費者に届くまでには、種子や苗をつくる種苗会社、実際に農産物を生産する農家、農産物の加工会社、物流会社、販売会社など多くの人の手が関わっています。各段階における関連会社が連携して生産効率や品質を高め、それらが鎖のようにつながることで、商品の付加価値を高めるのがフードバリューチェーンの目的です。

生産効率を高めることで生み出される商品の付加価値とは、以下のようなものがあります。

・農産物自体の品質の向上
・加工による魅力的な商品作り
・流通システム構築
・販売ルートの開拓や認知されるための工夫

フードバリューチェーンと農業の関わり

日本茶では生産から加工・販売までを一気通貫で実施する農業法人も

jack / PIXTA(ピクスタ)

1次産業である農業もフードバリューチェーン上にあるといえます。日本ではこれまで、農業とフードバリューチェーンのつながりはあまり認識されておらず、農家は農家、販売会社は販売会社など、バリューチェーン内の各アクターが個別的に活動してきました。

しかし、現在では、生産から加工・販売までを一気通貫で実施する農業法人も増えてきました。いわゆる農業の「6次産業化」です。「6次産業化」と「フードバリューチェーン」という概念には強い親和性があります。農家がフードバリューチェーンの中で6次産業化を行うことで、他事業者との連携が可能になり、より新たな生産システムや物流体制を構築できると考えられます。農業ビジネスに可能性を求める農業経営者は、フードバリューチェーンが「農業のイノベーション」になると注目しているのです。

フードバリューチェーンに関する戦略

グローバル・フードバリューチェーンのイメージ画像

SssstudioV / PIXTA(ピクスタ)

現在の日本では人口の減少と高齢化が一段と進み、もはや経済の飛躍的向上は見込めない状況とされています。今後、多くの産業で、国内市場の規模が漸次縮小することが予想されています。

中でも農業の衰退は深刻で、農産物の国内需要は縮小に歯止めがかかりません。この現状を改善するためには、食料や農産物の販売市場を海外に求めて進出していく必要があり、その戦略の1つとして考えられるのがフードバリューチェーンなのです。

国内では2014年に、政府により「グローバル・フードバリューチェーン」の戦略が策定されました。現在農林水産省は、農業生産~加工~物流までのフードバリューチェーンを、日本にとどまらず海外にも展開させる戦略を打ち出しています。

「グローバル・フードバリューチェーン戦略」の策定

農林水産省によるグローバル・フードバリューチェーン戦略は、農産物だけでなく食産業の海外展開も視野に入れて策定されました。

日本には世界に誇れる日本食文化と、ICT技術や先進的な流通技術があります。これらの強みを生かして、農林水産物の生産から消費にいたる過程をフードバリューチェーンでつなげれば、より付加価値の高い製品で海外市場を開拓できると期待されています。

農林水産省では、2014年に「グローバル・フードバリューチェーン(GFVC)推進官民協議会」を発足し、2019年12月の時点で、450を超える民間企業、関係機関が参画しています。

GFVCを海外で構築するに当たり、2017年から各地域の貿易、投資環境についての現地調査が実施されています。そこで、GFVCの概要や進捗状況について詳しく解説しましょう。

戦略の概要

農林水産省によって策定されたGFVCの戦略には、「基本戦略」と「地域別戦略」の2つがあります。
「基本戦略」の核となるのは、産学官が連携して食のバリューチェーンを構築することです。さらに日本の「強み」を「ジャパンブランド」として構築し、食のインフラシステムの輸出を推進することも目標に掲げられています。

ここでいう日本の「強み」とは、ユネスコ無形文化遺産である「日本食」を基盤とした産業や、高品質コールドチェーン、高度な農業生産と食品生産システム、そして先進的な日本型食品流通システムのことです。

ほかにも開拓市場となる海外に対しては、二国間政策対話や経済協力の戦略的な活用、コールドチェーンなどの食のインフラ整備を通じて、グローバル・フードバリューチェーンの展開を働きかけることができます。

一方の「地域別戦略」では「基本戦略」を念頭に置いて、海外各地域の日本企業と連携しながら、品質の優れた日本産食品の輸出促進をめざします。対象となる主な地域はASEAN(東南アジア諸国連合)、中国、インド、中東、中南米、ロシア、中央アジア、アフリカなどです。

特にASEAN諸国は日本に近く、およそ6億人の人口を抱える巨大市場のため、グローバル・フードバリューチェーンの構築には不可欠なパートナーとなっています。連携を進めるにあたり、マレーシアを拠点とする食品の生産・流通網の整備などが進められています。

ほかにも世界最大規模の市場である中国とインドでは、それぞれの地域に合ったフードバリューチェーンの構築が推進されています。また、アフリカ、ロシア、中南米などでも、農業生産の増大を支援する取り組みや、高付加価値フードバリューチェーンの整備などが進められています。

推進の体制

GFVCの推進体制は、主に「推進官民協議会」と「二国間政策対話」です。推進官民協議会は2014年6月に発足し、地域別部会や分野別研究会などの活動が行われています。二国間政策対話では、特定の相手国との二国間で、農業や食品産業に関するフォーラムや対話が進められています。

推進官民協議会が策定した「グローバル・フードバリューチェーン構築推進プラン」では、新興国だけでなく中国やロシアなどの先進国も含めた広い地域を対象に、グローバルマーケットをより開拓しやすくする投資環境の整備や、日本を中心にして世界に広がるフードバリューチェーンの構築を目標としています。

取り組みと進捗

2018年12月までの進捗状況を検証すると、例えば生産性と付加価値の向上を目的としている「ベトナム・ゲアン省」のモデル地域では、冷涼気候に適した品種の短期生育を試験的に行い、栽培面積を400haから1,000haへと拡大しました。「ベトナム・ラムドン省」では、高原野菜のための温度管理を徹底した施設栽培を導入し、適地拡大を行いました。

分野横断的な取り組みでは、メコンデルタ地域の塩水遡上対策として、2022年までに遡上防止施設が完成される予定となっています。また、ベトナム国立農業大学において、日系企業のスタッフが講師となり、フードバリューチェーンに関わる講義を実施するなど、高度人材の育成も行っています。

フードバリューチェーンは今後の農林漁業の未来を開拓するだけでなく、「食」全体の発展を見据えた大きなビジョンです。さまざまな事業や団体が連携することで、今後はより付加価値の高い商品を生み出せる可能性を秘めています。

生産者である農家がそのしくみに積極的に参加すれば、収入が向上して経営規模が拡大するなど、未来の農業に明るい光が見えてくるのではないでしょうか。

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杉山麻佑

杉山麻佑

高校卒業後、農業系の短大に進学。果樹について学び、短大卒業後は苗や種を扱う企業に就職。 現在は、お茶農家でもあるパートナーの仕事を手伝いつつ、フリーランスのWebライターとして活動中。また、自身もハーブ畑を管理するなど、精力的に農業に携わっている。

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