ブルーベリー農家は儲かる? 観光農園で年収2,000万円の成功例も!
ブルーベリー農家の中には、栽培・出荷するだけでなく、加工製造・販売や観光農園などの6次産業化に取り組むことで、利益を上げている事例が多くあります。今回はブルーベリー農家の観光農園ビジネスにスポットをあて、高収益化の事例をご紹介します。
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マハロ / PIXTA(ピクスタ)
6次産業化によって高収益化に成功する農業経営者が増えてきました。観光農園「ブルーベリーファームおかざき」が年60日の営業で年収2,000万円を実現するなど、ブルーベリー観光農園は今、優れたビジネスモデルとして注目されています。
この記事では、農業ビジネスとしてのブルーベリー観光農園の可能性や、経営面でのメリットを成功事例とともに紹介します。
脱サラして就農する人も。注目されているブルーベリーとは?
ブルーベリーとは北アメリカ・カナダが原産の、ツツジ科スノキ属に分類される小果樹です。北半球の各地で多数の品種が自生していますが、日本で初めてブルーベリーが栽培されたのは1951年でした。
4月下旬から5月中旬に開花し、果実が熟するにつれて緑色から赤色・青藍色に変化し、6月~9月にかけて成熟します。秋には鮮やかに紅葉し、10月中旬から年末年始にかけて紅葉を楽しめるのが特徴です。
ブルーベリーにはアントシアニンが多く含まれており、ブルーベリーを食べることで眼精疲労の回復が期待できるとされています。ビタミンC・ビタミンEをはじめとするミネラル類も豊富で、体内の活性酸素を弱め生活習慣病などの予防やアンチエイジング効果に役立つといわれています。
Yoshitaka / PIXTA(ピクスタ)
農家がブルーベリー観光農園に取り組むメリット
観光農園とは、ほ場での農作業体験・見学といったプログラムを有料で提供する農園のことをいいます。農産物・加工品などの直売店や飲食店を併設し、農産物に付加価値をつける「6次産業化」をめざす農家も少なくありません。農家の新規事業として、ブルーベリー観光農園を運営するメリットについて解説します。
地域適応性が高く早期収益化が見込める
じゅんたす / PIXTA(ピクスタ)
国内で栽培されているブルーベリーは「ノーザンハイブッシュ系」「サザンハイブッシュ系」「ラビットアイ系」が主体で、北アメリカの野生種を改良して間もない派生品種が多数に上ります。そのため、天候や土壌環境などへの適応性が高い品種を選択でき、また、病害虫が付きにくく栽培しやすいのが特徴です。
苗を植えて3年目にはブルーベリーの果実を収穫できるため、早期の収益化を見込めます。ハウス養液栽培を選べば苗を植えた2年目に収穫が可能になり、経営面での効率も高まるでしょう。収穫時期が異なる品種を複数取り入れながら、ハウス養液栽培と露地での慣行栽培を組み合わせるのも一つの方法です。
クマ / PIXTA(ピクスタ)
観光産業として新たな利益を創出できる
ブルーベリー観光農園を運営することで、農産物やサービスに付加価値をつけて新たな収益を創出できるのも、農家にとっては魅力です。農村地域で自然と人々との交流を楽しむ余暇活動である「グリーン・ツーリズム」を推進する面でも注目されています。
ブルーベリー観光農園の収益源は入場料だけでなく、見学・体験プログラムの参加料金や食べ放題の料金など多岐にわたり、農園側が自由に価格を設定できます。
農産物の価格も同様で、市場の価格にとらわれずに商品価値に見合った単価を設定可能です。見学や試食で商品価値を伝えることで将来のリピート化にもつながるでしょう。
収穫コストを削減できる
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ブルーベリー観光農園では来園客自身が果実を収穫するため、収穫作業の手間を省けるのもメリットです。
一般農家の場合は収穫期に合わせて人手を確保しますが、家族以外の人に手伝いを依頼する場合は人件費が発生します。悪天候などで予定日に収穫できず、結果的に家族だけで収穫を余儀なくされることもあるでしょう。
一方、観光農園なら収穫に伴う人件費が発生しないばかりか、体験メニューとして来園客から料金を支払ってもらえるのです。梱包や出荷作業の手間も省けるため、家族の心身の負担も軽減されます。
規格外の果実も無駄にならない
観光農園で農産物を販売する場合、来園客自身が自分の基準で色や形などを判断して購入するため、出荷規格という概念がありません。そのため、粒が小さい・形が珍しいといった、規格外の果実も無駄になりません。
その分、来園客に対しては農産物に関する情報を丁寧に提供する必要がある点には留意しておきましょう。
飲食店経営や加工品販売なども展開すれば、さらなる収益化が見込める
JackF / PIXTA(ピクスタ)
ブルーベリー観光農園では、収穫体験に加えて飲食店の運営や加工品の販売などを展開することで、さらなる収益化を期待できます。
飲食店の運営では、ほ場で採れたブルーベリーを使ったスイーツの提供などが考えられますが、ほかの農家や畜産農家・地元の協力会社などと協力して、幅広いメニュー展開も可能です。
加工品の販売は、収益の通年化をめざせるだけでなく「来年の収穫が楽しみだ」と思ってもらえる次の集客への布石にもなります。ブルーベリーに直接関連しなくても、独自性を追求した商品を提供することを心がけましょう。
成功事例から学ぶブルーベリー観光農園の経営
ブルーベリー観光農園には、農家それぞれの特色を活かして高収益をめざせる可能性が秘められています。4つの事例をもとに、ブルーベリー観光農園の経営に成功する秘訣を確かめてみましょう。
「ブルーベリーファームおかざき」株式会社ブルーベリーファームおかざき
ブルーベリーファームおかざき(愛知県)では個人客専用の観光農園として、「おもてなしの心で迎える」姿勢を徹底しています。土日の混雑時を除いて食べ放題に時間制限を設けず、レストスペースなどの接客ゾーンをリゾート風の質感に整備するなど、良質な雰囲気を演出しているのが特徴です。
ホームページやブログでの営業効果もあり、年間60日ほどのシーズン営業で売上2,000万円を実現しています。養液栽培システムを取り入れてブルーベリー果実の品質を均質化している点も、顧客の安定した支持を得られている理由の一つです。
ブルーベリーファームおかざき ホームページ
ブルーベリーファームおかざきの詳細についてはこちらのインタビュー記事を是非ご覧ください。
年間60日の営業で年収2,000万円を実現した観光農園「ブルーベリーファームおかざき」の経営力
ブルーベリーファームおかざきは除草シートを敷きつめ、ベビーカーでもハイヒールでも楽しめる
出典:株式会社 PR TIMES
ブルーベリー農園「森の畑」株式会社未来農業計画
株式会社未来農業計画が運営する信州ブルーベリー農園「森の畑」(長野県)では、糖度の高い「森のサファイア」というオリジナルブランドのブルーベリーを育てています。ノーザン・ハイブッシュ系ブルーベリーが持つ口当たりのよさを最大限に引き出しているのが特徴的です。
加工品を含めた販路開拓をめざし、2019年5月にブルーベリーの生果実として初のクラウドファンディングを実施したところ、目標以上の支援が得られました。ソーシャルメディアでも注目を集めるなど、クラウドファンディングが6次産業化の推進、そして農産品のブランディングに効果的であることを示す先例となっています。
信州ブルーベリー農園「森の畑」ホームページ
株式会社未来農業計画ニュースリリース 2019年6月27日「信州産の大粒ノーザン・ハイブッシュ系ブルーベリー『森のサファイア』生果実。信州ブルーベリー農園「森の畑」がクラウドファンディングで目標金額300万円を達成!」
出典:株式会社 PR TIMES
観光農園「ブルーベリーの郷」株式会社ブルーベリーオガサ
ブルーベリーの郷(静岡県)ではシーズン中のブルーベリー狩りにとどまらず、バーベキューや魚釣り・ジャム作り体験など多様な楽しみ方を提供しています。家族経営ならではのアットホーム感や機動力を活かしながら運営スタイルを試行錯誤、顧客の意見と女性の感性を商品開発に取り入れています。
雨天時専用のセットメニューの提供も、その一つです。温かみのある接客に魅力を感じるリピーターも多く、今では年間3万5千人以上が訪れる文化拠点の一つになっています。
ブルーベリーオガサ「ブルーベリーの郷」のホームページ
有限会社ベリーファーム
ベリーファーム(北海道)ではブルーベリーの観光農園を営む傍ら、畑に併設するショップで収穫した果実を使ったジェラートを販売しています。果実の販路拡大に限界を感じ、高付加価値の商品開発に舵を切りました。
北海道で生産された牛乳やフルーツを使用しており、2018年には北海道庁に「北のハイグレード食品S」に選ばれました。自治体や観光事業者と連携して地域の観光ネットワークを構築しているほか、今ではアンテナショップや業務用途など生果実の販路拡大に取り組むなど、知名度を高めつつあります。
ベリーファームのホームページ
ベリーファームのジャム。自社栽培ブルーベリーと北海道産のてんさいから製造されたグラニュー糖を使用
株式会社 PR TIMES
ブルーベリー観光農園は、果実を販売するだけでなく、体験やサービスという付加価値を売るビジネスです。栽培から加工・販売まで一貫して行うことで、さらに付加価値をつける余地があり、収益増をめざせるのが経営上のメリットです。品種も多数にのぼるため、気候や土壌などの環境に合わせたブルーベリーの栽培に取り組めます。
来園客がブルーベリーの品質に納得して購入するのが前提なので、市場への出荷基準に合わない果実も購入してもらえる可能性があります。飲食店の運営や加工品の販売などを展開すれば、農園そのもののブランディングにもつながるでしょう。
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舟根大
医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。