灰色かび病を防ぐには? ブルーベリーを病害から守る防除方法と適用農薬
ブルーベリーは、病害や害虫に強い果樹として知られています。しかし、代表的な病害である灰色かび病にかかると、収量や品質に悪影響を与えるため注意が必要です。そこで本記事では、灰色かび病の主な症状や原因などの基本的な情報、具体的な防除のための適用農薬や施用方法まで詳しく紹介します。
- 公開日:
記事をお気に入り登録する
病害があまり発生しないといわれるブルーベリーですが、収量や品質に影響を与える灰色かび病には、注意しなければなりません。そこで本記事では、ブルーベリーの栽培を行っている農家に向け、灰色かび病の症状や原因、防除方法までを詳しく解説します。
ブルーベリー栽培で最も注意すべき病害、「灰色かび病」
ブルーベリー 灰色かび病 発病果
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ブルーベリーは、栽培において問題となる病害が少なく、農薬散布の回数も少ない果樹です。しかし、開花から結実までの期間中に低温多湿であるとき、花があまり落ちないときなどに「灰色かび病」が発生することがあります。
灰色かび病は、一度発病すると、発病した部位の防除ができない病害であるため、放置すると感染が広がり、収量や品質に大きな影響を与えます。しかし、予防や早期発見とそれに伴う適切な処置を行えば、それほど恐ろしい病害ではありません。収量を保つためにも「灰色かび病」の特徴を知り、しっかりと防除を実施しましょう。
tamu1500 / PIXTA(ピクスタ)
どう見分ける? 灰色かび病の特徴と原因
まずは、灰色かび病の原因や主な症状、また発症しやすい時期、条件について詳しく紹介します。灰色かび病に感染しているかどうかの見分け方として、発生しやすい時期や条件を紹介しますので、該当している場合は、栽培しているブルーベリーを確認してみてください。
発生原因と主な症状
発生原因となるのは、ボトリチス・シネレアと呼ばれる菌です。糸状不完全菌類に属し、黒い菌核と灰色から薄い褐色の綿毛のような菌糸を形成し、その先端にブドウの房状の胞子をつくります。
ブルーベリー 灰色かび病 発病果
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
主な症状として、花房や花がら(萎れたあとの花)、未熟果が茶色く変色し、表面に灰色の胞子の塊(かび)が発生し、最終的には腐敗します。また花から発生して枝に達し、発病した部位から先が枯死することもあります。
見分け方として、枝全体を片手もしくは両手で軽くはたく方法があります。灰色かび病に感染している場合は、茶色く変色した花房やかびた部位が簡単に落ちます。それで判断できるでしょう。
発生しやすい時期・条件
yukiyamori / PIXTA(ピクスタ)
病原菌は多湿で気温20~25℃の環境を好むことから、3~7月と9~12月の雨が多く、日照が不足しがちな時期に発生しやすい傾向があります。枯れた花や未熟果、弱った植物が感染しやすく、葉が茂るなど風通しが悪くなることも灰色かび病を誘発する原因の1つです。
灰色かび病に感染している作物残渣の中で、病原菌が菌糸や菌核の状態で冬を乗り越え、増殖に適した時期に胞子を飛散させることで、病害が蔓延すると考えられています。
ブルーベリーを守って収量確保! 灰色かび病の効果的な防除方法
前述したように灰色かび病は、一度感染するとその部位の防除が行えません。しかし、早期発見やその後の処置、予防をしっかりと行うことで、ブルーベリーの収量を確保することは可能です。そこで最後に、灰色かび病に効果的な防除方法について詳しく紹介します。
最大のポイントは「通風性」を重視した栽培管理
kikisorasido / PIXTA(ピクスタ)
通風性の確保
前述したように、灰色かび病は多湿を好むため、通風性を重視した栽培管理を行うことがポイントです。開花期から結実期にかけて樹冠内部が混みあわないよう剪定してください。
併せてブルーベリー周辺の除草をしっかり行うこと、水をやりすぎないことで通気性を確保することも必要です。
花がらの除去
受粉後の花弁が乾燥して落下せず、果そうに花がらとして残ってしまうことも、灰色かび病発生の原因となります。受粉後なるべく早く花がらを取り除くようにしましょう。
品種によっては多くの花がらが発生するので、枝を軽く振って落とし、残った花がらは摘み取るようにします。
mayu-dama / PIXTA(ピクスタ)
害虫防除と肥培管理
そのほか、灰色かび病の病原菌は、害虫が食害した跡や、窒素過多で軟弱になった植物組織から侵入することもあります。害虫の防除と肥培管理を適切に行うことも発生の予防につながるでしょう。
発生部位の除去
発生が確認された場合は、被害部位に病原菌が残っているため、病害を拡大させないように当該部位をできる限り早く取り除くことが大切です。
NOV / PIXTA(ピクスタ)
ブルーベリーに適用のある農薬も上手に取り入れて
灰色かび病の予防や防除を行う場合、栽培管理と併せてブルーベリーに適用のある「ストロビードライフロアブル」や「カリグリーン」などの農薬も組み合わせることで、より効果が期待できます。
「ストロビードライフロアブル」は、果樹の主な病害に幅広い効果を発揮する農薬です。予防効果に優れているほか、胞子形成に対して強い阻害力があるため、二次感染を防ぐこともできます。そのため、開花期から結実期にかけて、剪定や花がら摘みを行った後のタイミングで散布するのが効果的です。
ただし、ストロビードライフロアブルは収穫14日前まで施用可能であるものの、使用回数は2回までとなっているため注意が必要です。
「カリグリーン」は灰色かび病などの防除に優れ、作用性によって病原菌に耐性がつきにくい農薬です。ミツバチなどの訪花昆虫に対する影響が少なく、薬臭や汚れもほとんどない点も特徴です。
カリグリーンには使用回数の制限がなく、収穫の前日まで使用できます。展着剤を必ず加用し、5~7日の間隔で3回程度散布することで、より高い効果が得られるでしょう。
※農薬を使用する前にラベルの記載内容をよく確認し、使用方法を守って正しく散布してください。地域によって農薬の使用について決まりが定められている場合もあります。確認の上で使用しましょう。
オレンジ-アマリリス / PIXTA(ピクスタ)
ブルーベリーの灰色かび病は、発生してしまうと感染拡大によって収量や品質に大きな影響を与える可能性があります。発生後の防除は困難で予防が重要です。開花期から結実期にかけて、耕種的防除と予防的な農薬散布をしっかり行うようにしましょう。
記事をお気に入り登録する
minorasuをご覧いただきありがとうございます。
簡単なアンケートにご協力ください。(全1問)
あなたの農業に対しての関わり方を教えてください。
ご回答ありがとうございました。
お客様のご回答をminorasuのサービス向上のためにご利用させていただきます。
百田胡桃
県立農業高校を卒業し、国立大学農学部で畜産系の学科に進学。研究していた内容は食品加工だが、在学中に農業全般に関する知識を学び、実際に作物を育て収穫した経験もある。その後食品系の会社に就職したが夫の転勤に伴いライターに転身。現在は農業に限らず、幅広いジャンルで執筆活動を行っている。