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農業人口減少の原因とは?新規就農の動向なども解説
出典 : テラス / PIXTA(ピクスタ)
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農業人口減少の原因とは?新規就農の動向なども解説

農業人口の減少と高齢化は、長年日本の農業における大きな問題になっていますが、有効な解決手段はいまだに見つかっていません。なぜ就農者 が減ってしまうのか、日本の農業はこれからどこに向かうのか、農業人口減少の原因に今後の農業界の動向も交えて解説します。

農業人口は毎年減少を続けており、同時に就農者 の高齢化も進んでいます。農林水産省の統計を見てみると、今後の日本で持続的な農業が可能なのかどうか、非常に判断が難しいと感じざるを得ません。

しかし一方では、規模拡大による新規雇用就農者は増加しているというデータも存在します。今、日本の農業をとり巻く状況はどうなっているのか、農業人口という視点から検証しましょう。

日本における農業人口の減少状況

農業人口の資料 イメージ写真

ナオ / PIXTA(ピクスタ)

農林水産省の資料によると、平成27年(2015年)から31年(2019年)の間に、農業人口は約41万6千人も減少しています。近年は減少率こそやや鈍化しているものの、毎年確実に減少していることに違いはありません。

また、農業従事者数の平均年齢も少しずつ上昇し、平成31年には67歳に達しています。これらの分析結果から、日本の農業を支える基盤が減少化・高齢化していることが分かります。日本の農業が置かれた現状を、以下の統計で詳しく確認してみましょう。

出典:農林水産省「農業労働力に関する統計」

農業就業人口からみる減少

全国の農業就業人口は、平成12年(2000年)には約389万人だったのに対し、平成31年(2019年)になると約168万人と、およそ43%にまで縮小しています。わずか20年足らずで半減していることは、かなり大きな社会的変化といえるでしょう。

農業就業人口 推移 グラフ

出典:農林水産省「農業センサス」「農業構造動態調査」からminorasu編集部作成

農業就業人口とは15歳以上の農家世帯員の中で、1年間農業だけに従事した人の数と、いわゆる兼業農家で、農業に従事した日数のほうが多い人の数とを合計した人口です。

その中で主に自営農業を営む人は、「基幹的農業従事者」に分類されますが、この人口は平成12年が約240万人で、平成27年は約175万人。そして平成31年は約140万人となり、農業就業人口全体と比較すれば減少率はやや低めです。

ただし農業就業人口と、基幹的農業従事者における65歳以上の割合は、共に約70%という結果になり、農業に関わる人口の大部分が高齢者によって構成されている現実が浮き彫りになっています。

出典:農林水産省「農業労働力に関する統計」
出典:農林水産省「農業従事者、新規就農者の動向」

農業地域人口からみる減少

農林水産省の資料によると、地域人口の変化と農業人口との関連性も読み取ることができます。同省は2015年の統計をもとに、2045年の農業地域人口と農業集落構造の変化を予測しています。

予測によると今後日本全体で人口減少が続く中、農業地域人口の減少は一段と加速すると考えられます。特に山間農業地域では30年間で人口が半減し、急速に高齢化が進むと予測されています。山間地域ほどではないにしても、平地農業地域と中間農業地域でも人口減少はかなり深刻になるでしょう。

さらに農業地域人口が全体的に減少する状況下で、存続自体が危ぶまれる集落が1万集落に達し、今後30年間で人口が3分の1にまで減少する集落と、14歳以下の子供がいない集落も、共に3万集落を超えると予測されています。農業を支える人口の急激な減少により、農業そのものの存続も危機的状況に陥るかもしれません。

出典:農林水産省「農村地域人口と農業集落の将来予測結果について(令和元年8月30日)」

農業人口減少の原因

ベテランの高齢農家から生産技術を教わる青年

cba / PIXTA(ピクスタ)

日本の農地面積のうち約41%は中山間地域にあり、機械化と効率化が難しいため、農業の後継者が育たず離農する人も増えています。こうした立地的な条件以外にも、全国的に農業人口が減少する原因としては、就農する若者の減少が長期的に継続していることが挙げられます。

若者が仕事として農業を選ばなくなった原因は何なのか、2つの観点から分析してみましょう。

若者の流出と高齢化

2015年の産業別人口割合を見てみると、全就業者のうち第二次産業が25.0%で、第三次産業が71.0%。その一方で農業を含む第一次産業はわずか4.0%です。現在日本の産業構造は、完全にサービス業が中心になっているのです。


出典:帝国書院「統計資料 産業別人口割合」

大学進学率が上がり教育が長期化すると、若者は地元を離れ都市部で就職する傾向が強くなります。大学生に人気の業種ランキングでは、事務・管理系、医療・福祉系、技術・研究系がトップ3を占めています。

今後は社会のICT(情報通信技術)化が進むにつれ、IT系人材の需要が伸びると推測されることから、身体を使った重労働というイメージのある農業は、若者の就職先としてはますます敬遠される可能性があります。

社会の変化とともに農業に魅力を感じる若者は減少し、残された地域では一段と高齢化が加速して、農業人口は減少の一途をたどるかもしれません。

農業の商業的魅力

若者が農業から離れるもう1つの理由は、農業に商業的な魅力がないからだともいわれています。自然を相手にする農業では、会社員のように安定的な収入が期待できず、自分の生活が成り立つかどうかに不安を覚える人が多いのです。

また、新規就農のためには、かなりの額の初期費用を準備しなければなりません。学校を卒業したばかりの若者にとって、これは非常に高いハードルです。さらに就農してからの販路開拓も、若者の前に大きな壁として立ちふさがります。

朝早くからの重労働に、休みも充分に取れないなどのマイナスイメージも、農業が避けられる原因となっています。しかし、農業にはデメリットだけでなく、たくさんの魅力もあります。

農業法人に就農する場合などは、若いうちから経営者の目線や責任感を間近に見ながら仕事をすることで、濃密な経験を積むことができます。商業的魅力だけでなく、日々自然に触れながら生活することができる楽しみや、全国の消費者に美味しい作物を届けることができるというやりがいもあります。

確かに若者の就農にはハードルがあるかもしれませんが、悲観せず、積極的に農業の良さを発信することが大切です。

新規就農者や農業経営体の動向

農業法人 イメージ画像

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農業人口は減少を続けていますが、法人組織としての農家は年々増加し、一般法人の農業参入も増えるなど、農業を取り巻く環境には明るい材料もあります。
新規就農の現状も踏まえて、現在の農業界の動向について紹介しましょう。

新規就農者の動向

平成30年(2018年)の新規就農者数は55,810人で、年によってばら つきはあるものの、10年前からほぼ同じレベルで推移しています。このうち49歳以下の就農者は19,290人となり、全体の約35%を占めています。

出典:農林水産省「農林水産統計平成 30 年新規就農者調査」

最近の傾向としては、自営農家としての新規就農者数は減少傾向にあり、一方で新規雇用就農者は増加傾向にあります。また、新規参入者として、独自に農業を起業する人の割合が近年増加していることは、注目すべきポイントでしょう。

日本の農業の行末

農業経営体と耕地面積の動向

個人経営の農家 に法人組織を加えた農業経営体の総数も、ここ10年間で大幅に減少しています。ただし法人組織化するケースは毎年増加し、一般法人の新規参入もかなり増えています。それに伴い雇用形態による就農も一般化してきました。

また耕地面積も年々減少してはいますが、減少率はごくわずかです。逆に近年の傾向として、一経営体当たりの耕地面積は徐々に増加しています。
全体としては農業経営体の数が減少する一方で、それぞれの経営体の規模は拡大傾向にあると考えられます。

日本の農業人口が減り続ける状況で、持続的な農業を維持するために国は農業の大規模化を推進しています。

耕作者がいなくなった土地を借り受け、農地が必要な人に貸し付ける「農地中間管理機構(農地バンク)」もその1つで、貸付面積は初年度平成26年(2014年)の2.4万ヘクタールから、4年後には22.2万ヘクタールにまで拡大しています。

出典:農林水産省「所有者不明農地の利活用について(令和元年10月)」

耕作者がいなくなった農地は耕作放棄地になってしまう

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また、法人化の推進と経営拡大によって生産効率を高めて利益率を上げるなど、儲かるビジネスとしての農業も広がっています。今後はICTの技術を導入した、「スマート農業」の展開も加速すると考えられます。

農業人口減少への対策としては、経営の大規模化が必要不可欠な条件です。しかし中山間地域が多い日本では、一律での大規模化は難しいでしょう。これからの日本の農業には、先端技術をうまく活用しながら、より多様化する努力が求められそうです。

大澤秀城

大澤秀城

福島県で農産物直売所を立ち上げ、店長として徹底的に品質にこだわった店づくりを行い、多くの優れた農家との交流を通じて、農業の奥深さを学ぶ。 人気店へと成長を遂げ始めたさなかに東日本大震災によって被災。泣く泣く直売所をあきらめ、故郷の茨城県で白菜農家に弟子入りし、畑仕事の厳しさを身をもって体験する。 現在は農業に関する知識と体験を活かしながら、ライターと塾講師という2足のわらじで日々歩みを進めている。

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