【玉ねぎ】土作りで収量アップ! 適した土壌と失敗しない栽培方法
玉ねぎの栽培は、播種~定植までの土作りと栽培管理が重要です。「分球」「とう立ち」といった玉ねぎ特有のトラブルもこの時期の栽培管理に左右されます。基幹作物として玉ねぎを検討している方、品質を上げたいという方のために、播種・育苗から定植前後までの栽培管理のポイントを紹介します。
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目次
玉ねぎは、1年を通して安定した需要があり、収益性が高い作物の1つです。
しかし栽培に当たっては、花芽がついた茎が伸びる「とう立ち」や、球が分裂する「分球」といったトラブルのほか、病害も多く、期待した収量を得られないことがあります。
まずは、適した土壌や播種~定植までの栽培管理のポイントを知り、収量を確保しましょう。
玉ねぎ栽培に適した土壌とは?
玉ねぎは、一般に土壌を選ばないとされていますが、形よく肥大させるためには土壌の質が肝心です。
玉ねぎは酸性の土壌に弱いため、pHは6.0~6.5を目安に石灰を入れ、弱酸性~中性の土壌酸度に調整します。
また、水はけの悪さは、減収につながります。ほ場が加湿状態になると、外皮に黒色のしみができ外観を損ない、また、病害が発生しやすくなります。特に水田の転換作物として検討している場合は、排水対策を行うことをおすすめします。
苗床の準備と播種・育苗で気を付けるポイント
standret / PIXTA(ピクスタ)
玉ねぎの育苗は、ほ場の一部に苗床を作る直播きと、機械での定植を想定したセルトレイ育苗、ポット育苗がありますが、今回は直播き育苗の手順とポイントを紹介します。基本的には、根のはりを良く、欠株を出さず生育を揃えるように管理していきます。
苗床の準備
苗床には、水はけ・水持ちともよく、日当たりがよい場所を選びます。直播きの場合は10aあたり60平方m、セル苗を予定している場合は、10aあたり20平方mを目安に場所を確保します。
施肥はリン酸を多めに設計します。窒素:リン酸:カリウムの比で2:3:2が目安です。土壌の肥沃度にもよりますが、元肥は少なめに、追肥で調整することを基本とします。
少なくとも播種の3週間前には堆肥をすき込んで畝立てをしておきましょう。畝は幅1~1.2m、高さ15cm程度に仕立てます。
梅雨が終わった7月下旬頃から播種する9月までの間に、土壌消毒を行います。カビ(糸状菌)による「べと病」や、発芽直後の苗が、地ぎわから倒れて枯れる「苗立枯病」などの病害からの被害を抑え、雑草を防除する効果があります。
播種
苗床ができたら、種子を10cm前後の条間に条播きします。このステップでは、発芽を揃えることが重要ポイントです。
1.覆土の深さ
覆土は、一般に種子の直径の3倍程度といわれています。深すぎれば発芽が揃わず欠株がでやすく、浅すぎれば育苗期に倒伏しやすくなります。
2.発芽までは乾燥に注意
播種後は乾燥を防ぐために寒冷紗などで被覆したあと、十分に灌水(かん水)します。この後は、苗床の表面が湿って黒く見える程度を目安に水分を保つようにします。
寒冷紗などの被覆資材は発芽を確認したらすぐに外します。遅れると苗が寒冷紗にからまり欠株がでてしまいます。
育苗期の管理
発芽後は本葉3枚くらいになるまでに間引きを行います。苗の間隔が1cm以下にならないことを目安にしますが、定植後の必要株数を考え、定植苗が不足しないよう気をつけましょう。
播種後2週間~20日後をめどに、追肥と中耕を行います。土壌に空気を含ませることで、根のはりを良くします。
べと病などの病害予防には、定植2週間ほど前に銅剤を1回、降水量が多い場合には、その前の育苗中期にも1回使うと効果的です。
苗の太さが6~8mm、草丈25cmを目標とし、大苗にならないように管理します。
ほ場の準備&定植までのスケジュール
まずは定植する日程を定め、そこから逆算して作業計画を立てることが大切です。
@ism / PIXTA(ピクスタ)
【定植:3週間~1か月前】苦土石灰および堆肥の施用
堆肥を入れる作業は苗を植え付ける3週間前までにすませておきます。
2週間前までには、酸性土壌の中和を目的に苦土石灰を撒きます。ただし、苦土石灰の使いすぎで土壌がアルカリ性になると、ミネラル分の吸収が悪くなり、生育に影響が出るので注意してください。1平方mに対して苦土石灰約150gが目安です。
【定植:1週間~10日前】基肥の施用、畝立て
定植の1週間前には、元肥を入れて畝を立てます。畝立て後、すぐに除草作業を行います。ゴーゴーサン細粒剤Fなどの土壌処理剤を散布し、黒色マルチで覆います。畝立てとマルチ掛けの期間が空くと、雑草の抑制効果が落ち収量減につながるので、畝立て後すぐにかけてしまうのがポイントです。
定植の際は、品種にもよりますが株間15cm程度を確保し、茎の白い部分が土の上に少し見えるよう、2~3cmの深さで植え付け、十分に灌水します。
【定植後】
1回目の追肥は、定植20~25日後をめどに与えます。2回目以降は1ヵ月おきに行いましょう。ただし、肥大期に追肥すると収穫後の貯蔵性が悪くなるので、肥大期に入ったら追肥は行いません。
収量から見る、適切な土作りがもたらす効果
Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)
玉ねぎに限らないことですが、出荷規格内の収量を増やすことは重要な課題です。そのためにキーポイントとなるのが土作りです。
玉ねぎは育成期間が長い割に養分の吸収量が少ない作物です。その生育に影響を及ぼしている栄養素は何なのでしょうか。
兵庫県農業技術センターの研究報告では、1990~1998年の9年間(調査全体は11年間)、窒素・リン酸・カリウムの3要素の配合を変えた5つのほ場を用意して、収量を比較しています。
それによると、玉ねぎの生育に大きく影響しているのは窒素とリン酸であると結論付けられています。
堆肥の分量も収量に影響があり、堆肥を用いた方が大幅な収量増となりますが、多量施用しても比例して収量が上がらないことが報告されています。
堆肥無施用のほ場と比べて、10aに対して1.5t堆肥施用した土壌は、収量が最大50%増加していました。10aに対して3t堆肥施用した土壌も堆肥無施用のほ場と比べて収量は増加していましたが、前述の土壌よりも収量が少ないという結果となっています。
出典:兵庫県農業技術センター研究報告〔農業編〕第48号
北海道の玉ねぎ産地(栗山・新十津川)でも、7月中旬の土壌の無機態窒素量と玉ねぎ収量との関係を調査しています。
その調査によると、無機態窒素量が3~5mgの理想的なほ場と比較した場合、過不足のあるほ場では、収量が最大で半量以下まで減少したと報告されています。
球肥大始期(春植えの場合は7月中旬ごろ)に無機態窒素量が不足すると十分に肥大せず、過剰だと肥大の抑制や長球の増加が起こり、出荷規格外の割合を増やす原因になります。
出典:一般社団法人日本土壌協会
玉ねぎのとう立ち・分球を防ぐ育苗~定植までのポイント
玉ねぎの収量を左右する「とう立ち」「分球」を防ぐポイントも播種~育苗~定植期にあります。
とう立ち対策
玉ねぎは「とう立ち」してしまうと芯が硬くなり、商品価値が失われて出荷できなくなります。
とう立ちは、一定の太さの株が低温に遭い花芽分化したあと日照時間が長くなるにつれて進みます。
まずは、品種・作型ごとに播種適期を守るのが原則です。
また、一般に大苗は低温の影響を受けやすいので、育苗期の追肥量を調整し大苗にならないよう管理することもポイントです。定植後の追肥も、生育をみて調整します。
玉ねぎの分球対策
出荷規格をクリアするうえで大きな問題となるのが「分球」です。
分球の主な原因は、定植した苗が大きすぎることです。苗の大きさは、茎の太さ直径5~6mm程度で、草丈は20~25cmが目安です。
また、玉ねぎの結球・肥大は日長や気温に大きく影響を受けるため、播種や定植、追肥の適期を守ることも大切です。早く植え付けると大きくなりすぎて分球しやすくなります。追肥の時期も早すぎると分球の原因になりますので、品種・作型に応じた適期を守るのが大原則です。
玉ねぎの収量を確保するポイントは、播種~育苗~定植にあります。定植予定日から逆算し、播種・定植を適期に行うスケジュールをたてること、過不足なく施肥した土壌を準備し、育苗管理を細心に行うことが収量アップにつながります。
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仁紫友香
印刷会社でディレクター業に従事し、3年で独立。その後、ライター業に軸足を置く。幼少期に祖父の菜園を手伝った経験を生かし、農業・農作物に関わる記事を数々担当。自宅ではプランター菜園で野菜を育てている。