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佐賀県で農業を始めよう! 地域の特徴と、活用できる補助制度

佐賀県で農業を始めよう! 地域の特徴と、活用できる補助制度
出典 : TOSHI.K / PIXTA(ピクスタ)

佐賀県は全国トップの耕地利用率を誇る農業県です。本記事では、佐賀県の農業の特徴や強み、農業産出額、主要農産物に加えて、新規就農者向けの補助金や融資内容、実務研修などの支援制度を解説します。広大な平野、二毛作による高い生産性など、佐賀県で農業を始める利点を紹介します。

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耕地利用率は全国1位! 佐賀県農業の特徴と3つの強み

佐賀県は九州の北西部に位置し、東は福岡県、西は長崎県に隣接しています。北は玄界灘、南は有明海に面しており、東西を山に囲まれた地形が特徴です。

気候は比較的温暖で、年間平均気温は16℃前後、年間降水量は地域によって1,800mmから2,500mm以上と差があります。この気候特性が、多様な作物の栽培を可能にしています。

佐賀県の2022年の農業産出額は1,307億円で、全国第24位にランクインしています。この数値は県の面積や人口規模を考慮すると、農業が地域経済に貢献していることを示しています。

佐賀県の農業の強みとしては、以下の3つが挙げられます。

  • 大規模な平野を生かした土地利用型農業
  • 水田裏作による高い耕地利用率
  • 大消費地と隣接する立地

出典:農林水産省 「令和4年(2022年)生産農業所得統計」
生産農業所得統計 確報 令和4年(2022年)生産農業所得統計

大規模な平野を生かした土地利用型農業

佐賀県の農業は、佐賀平野の肥沃な土壌を活かした大規模な土地利用型農業が特徴です。

土地利用型農業とは、広大な土地面積の活用を営農の中心にしている農業生産の方式を指します。農地を拡大することによって成長をめざす農業であり、生産地の規模及び1戸当たりの経営規模が大きく、市場でのシェアが高いという特徴があります。

令和4年(2022年)の佐賀県の作付延べ面積は50,200haで、その中でも主要作物の水稲、麦類、大豆、特に二条大麦の作付面積は全国1位です。

出典:農林水産省「 作物統計 令和4年(2022年)耕地及び作付面積統計」
(耕地の利用状況(2024年1月19日公表)1 農作物作付(栽培)延べ面積及び耕地利用率 田畑計)

水田裏作による高い耕地利用率

令和4年(2022年)の統計によると、佐賀県の耕地利用率は133.7%で、37年連続で全国第1位を維持しています。この数値は、佐賀県の農家が限られた農地を効率的に活用し、年間を通じて複数の作物を栽培していることを示しています。

これは二毛作や輪作体系が確立されていることが主な理由です。佐賀平野では、米と麦の二毛作が古くから行われていることから、品種改良や栽培技術の向上によって作期の調整が可能となり、効率的な生産サイクルを実現しています。

大消費地と隣接する立地条件

特に、佐賀市は県の中心的な市街地であり、多くの非農家が居住しているため、地元消費者を多く抱えています。また、県北部は大消費地である福岡市と隣接しており、新鮮な農産物を迅速に供給できる環境にあります。

どんな農業が盛ん? 佐賀県の主要農産物

佐賀県杵島郡白石町の玉ねぎの収穫

佐賀県杵島郡白石町での玉ねぎの収穫の様子
野村詩朗 / PIXTA(ピクスタ)

佐賀県では、恵まれた気候や地形の特色、整備された生産基盤を活用し、数多くの主要農産物が生産されています。

佐賀県の有名な農産物

農産物特徴
二条大麦米と麦の二毛作で梅雨入り前に収穫されます。ビール醸造や焼酎の原料として使用され、高い品質と安定した供給量により、収穫量は全国第1位を誇ります。
玉ねぎ県南部を中心に、「さが春一番たまねぎ」の名前で知られる極早生品種「貴錦」など甘みのある玉ねぎが生産されており、令和5年(2023年)の収穫量は全国第3位にランクインしています。
アスパラガス令和5年(2023年)の収穫量は全国第3位です。グリーンとホワイトの2種類が栽培されていて、特に「ウェルカム」という品種が有名です。
イチゴ令和5年(2023年)の収穫量は全国第9位です。鮮やかな赤色と華やかでやさしい甘みが特徴の新品種「いちごさん」が、県内作付面積の97%で栽培されています。
ハウスみかん令和5年(2023年)の収穫量は全国第1位です。新品種の「にじゅうまる」が食感と果汁のバランスが良く、消費者ニーズに合致した品種として期待されています。

出典:農林水産省 「令和5年(2023年)産麦類(子実用)の作付面積及び収穫量」
作物統計調査 作況調査(水陸稲、麦類、豆類、かんしょ、飼料作物、工芸農作物) 確報 令和5年(2023年)産作物統計(普通作物・飼料作物・工芸農作物)
農林水産省「令和5年(2023年)産指定野菜(春野菜、夏秋野菜等)の作付面積、収穫量及び出荷量」
作物統計調査 作況調査(野菜) 確報 令和4年(2022年)産野菜生産出荷統計
農林水産省「令和5年(2023年)産みかんの結果樹面積、収穫量及び出荷量」
佐賀県「「いちごさん」、6年の歴史と美味しさが紡ぐ冬の贈り物 クリスマスシーズン前に取材会を開催します!」

佐賀県の農業が抱える課題と取り組み例

佐賀県の農業も、全国的な課題である農業所得の伸び悩みや労働力の確保、さらには気候変動への対応など、多面的な課題に直面しています。これらの課題解決のため、佐賀県は持続可能な農業の実現に向けてさまざまな取り組みを行っています。

ここでは、佐賀県が行っている取り組みについてご紹介します。

新規就農者の確保・育成に注力

佐賀県では意欲のある新規就農者の確保・育成に力を入れています。

具体的には、地元農家が専任講師となり、土壌管理から栽培技術、収穫後の調整・出荷まで一連の農業経営スキルを実践的に学ぶトレーニングファーム研修を実施しています。

経営力のある担い手の育成にも注力しており、集落営農組織の法人化や協業経営方式への転換などを推進しています。また、女性農業者の活躍推進の取り組みとして「さが農業女子サミット」を開催し、県域での仲間づくりとネットワークの強化を図っています。

出典:佐賀県「『食』と『農』の振興計画2023」

担い手への農地集積・集約を推進

佐賀県は、就農者支援・農家支援の一環として、農地の効率的利用を促進するため、担い手への農地集積・集約を進めています。優良農地のゾーニングや農地中間管理事業を活用し、まとまった農地の確保をめざしています。

また、生産性向上のための農地の大区画化や、農業水利施設の長寿命化、維持管理の効率化にも取り組んでいます。

農地の集積・集約に取り組む累計地区数は、2022年の10地区から、2026年には56地区、2032年には128地区への増加を目標としています。

出典:佐賀県「『食』と『農』の振興計画2023」

主要品目の安定生産体系を確立

所得の増加へ向け、佐賀県では主要品目の安定生産体制の確立に取り組んでいます。

例えば、玉ねぎの生産拡大では、市場の需要に応じた作型分散や高貯蔵性品種の選定、べと病や貯蔵腐敗などの病害対策による収量増加、集荷の省力化体制の整備などを進めています。

さらに、玉ねぎの生産拡大に取り組む成果指標として、玉ねぎの作付面積を2022年の2,010haから、2026年には2,520ha、2032年には2,750haまで拡大をめざしています。

出典:佐賀県「『食』と『農』の振興計画2023」

▼スマート農業の活用で業務効率化や収量アップを実現した、佐賀県の生産者・眞木優さんの経営事例をご覧ください。

佐賀県で農業を始めよう! 新規就農時に活用できる補助制度

農作業をする夫婦

佐賀県は新規就農者の確保に力を入れている
プラナ / PIXTA(ピクスタ)

前項で触れたとおり、佐賀県では新規就農者の確保・育成を重要な課題と位置づけ、さまざまな支援制度を用意しています。ここでは、主な補助金や融資制度、就農相談、実務研修について説明します。

補助金・融資制度

佐賀県での就農希望者が活用できる主な支援制度は以下の通りです。

青年等就農資金

資金名青年等就農資金
対象者認定新規就農者
※市町から青年等就農計画の認定を受けた個人・法人
融資の対象農業経営開始時の
・農業用施設の設置費、農機具などの購入費
・家畜、種苗、肥料、農薬、飼料などの資材の購入費
・施設、農機具の修繕費、機械のリース料
などの農業経営を行うために直接的に必要となる費用
※農地の購入費は除く
貸付限度額3,700万円(特認1億円)
貸付利率無利子
償還期間
(据置期間)
17年以内
※うち据置5年以内
融資機関日本政策金融公庫

青年等就農資金は、新たに農業経営を始める人向けの無利子の融資制度です。

認定新規就農者が対象で、貸付限度額は3,700万円(特認1億円)です。農業用施設の設置費、農機具の購入費、資材の購入費などに利用できます。ただし、農地の購入費は対象外となります。

農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)

資金名農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)
対象者1.認定農業者
2.認定農業者である法人の構成員であるか又は構成員になろうとする者
融資の対象1.農地などの取得、改良
2.農業経営用施設・機械などの改良、取得
3.家畜、果樹などの導入などの長期運転資金
4.負債の整理やその他の農業経営の改善を前提とした経営の安定に必要な長期資金
貸付限度額個人:3億円 (特認6億円)
法人:10億円(特認の条件あり)
貸付利率0.60〜1.20%(令和6年(2024年)10月21日時点)
償還期間
(据置期間)
25年以内
※うち据置10年以内
融資機関日本政策金融公庫

農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)は、認定農業者向けの長期低利融資制度で、個人は3億円(特認6億円)を上限に利用できます。農地の取得・改良、施設・機械の導入、負債の整理などの幅広い用途に活用可能です。

経営体育成強化資金

資金名経営体育成強化資金
対象者1.農業を営む者であって
・農業所得が総所得の過半を占めていること又は農業粗収益が200万円以上であること
・主として農業経営に従事する青壮年の家族農業従事者がいること
・農業者が60歳以上であるときはその後継者が現に主として農業に従事しており、かつ将来においても農業に従事する見込みがあること。
・簿記記帳を行っていること(簿記記帳を行うことが確実と見込まれる場合を含む)
2.認定新規就農者
3.1の経営(家族農業経営に限る)の経営主以外の農業を営む者
4.1〜3までの者を主たる構成員とする法人格を有しない任意団体であって農業を営む
融資の対象1.前向き投資資金
・農地などの「所有権・利用権」の取得、農地などの改良に必要な資金
・農機具などの改良又は取得に必要な資金など
2.償還負担軽減資金
・制度資金以外の負債の整理に必要な資金
・既往借入制度資金などに係る負債の支払の負担を軽減するために必要な資金
貸付限度額個人1.5億円、農業生産法人5億円の範囲内で条件あり
貸付利率借受者の負担する額の80%以内
償還期間
(据置期間)
25年以内
※うち据置3年以内
融資機関日本政策金融公庫

経営体育成強化資金は、認定新規就農者向けの融資制度で、個人の貸付限度額は1億5,000万円です。経営規模の拡大や経営転換のための投資に利用できます。

農業近代化資金

資金名農業近代化資金
対象者農業者(担い手)・農業協同組合・農業協同組合連合会・農業者など
または地方公共団体が主たる構成員(出資者)である団体、法人
融資の対象1号資金:農舎、畜舎、農機具など
2号資金:果樹などの植栽・育成
3号資金:家畜の購入、育成
4号資金:小規模の農地、牧野の改良・造成
5号資金:長期運転資金
6号資金:診療施設、水道施設など(共同対象)
7号資金:大臣特認(給排水施設など)
8号資金:知事特認
貸付限度額個人:1,800万円
政令で定める農業者(農業者が組織する団体):2億円
共同:15億円
※原則、事業費の8割以内
基準金利1.85〜2.55%(令和6年(2024年)11月18日時点)
貸付利率1.30%(令和6年(2024年)11月18日時点)
利子補給率0.55〜1.25%(令和6年(2024年)11月18日時点)
償還期間
(据置期間)
原則15年以内
※うち据置3年以内
融資率原則、借受者の負担する額の80%以内
認定農業者及び集落営農組織の場合、100%以内となる特例あり
融資機関農協系統資金・農林中央金庫・銀行など

農業近代化資金は、農業協同組合などが農業者に提供する長期低利の融資制度です。

個人の貸付限度額は1,800万円です。農舎や農機具の購入、果樹の植栽、家畜の購入など、農業経営の近代化に必要な資金として活用できます。

出典:佐賀県「 農業制度資金のご案内」内各種添付ファイルより

就農相談・実務研修

佐賀県では、新規就農者や若手農業者を支援するため、公益社団法人佐賀県農業公社、県内6ヵ所の農業振興センター、JAさがなどの機関で相談が可能です。

これらの機関では、就農相談はもちろん、基本的な農業技術や経営知識を学べる実践的な研修プログラムについての情報も提供しています。

研修内容は、土づくりから播種、収穫、出荷調整まで、新規就農者に必要な一連の技術を学べるものとなっています。特にJAさがでは、独自の制度資金や研修期間中の支援も行っているため、併せて相談するとよいでしょう。

出典:佐賀県「佐賀県の就農情報に関するご案内」


佐賀県は、恵まれた自然環境を活かした多様な農業生産が行われており、新規就農者への支援体制も充実しています。高い耕地利用率や大消費地に近い立地条件、さらには手厚い支援制度など、農業を始めるには魅力的な環境が整っています。

佐賀県で新規就農を検討している方は、まずは就農相談に行ってみてはいかがでしょう。

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