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遊休農地とは? 耕作放棄地との違いや現状、活用事例を一挙解説!
出典 : nobmin / PIXTA(ピクスタ)
  • 農業市場

遊休農地とは? 耕作放棄地との違いや現状、活用事例を一挙解説!

以前は農地として使われていたものの、現状で農地活用されていない土地は、遊休農地や耕作放棄地と呼ばれます。こうした土地が増え続けることは、日本の農業のみならず社会全体に悪影響を与えます。ここでは遊休農地の現状と、再活用への取り組みについて解説します。

現在日本では農家の高齢化や農業従事者の減少とともに、農地として使われなくなった遊休農地の面積が拡大しています。

遊休農地はなぜ広がってしまうのか?遊休農地が増えるとどのようなリスクが生じるのか?その問題点を分析しながら有効活用する方法についても紹介します。

遊休農地とは? 意味や耕作放棄地・荒廃農地との違い

以前は農地だったものの現在は耕作が行われていない土地のことを、「遊休農地」「耕作放棄地」「荒廃農地」などと呼びます。いずれも同じような土地を指す言葉ですが、厳密には意味が異なります。そこで、最初に定義上の分類をしておきましょう。

分類については、農林水産省の「荒廃農地の現状と対策について 令和2年4月」の7ページがわかりやすいので、ご覧になってください。

農林水産省 「荒廃農地の現状と対策について 令和2年4月」

遊休農地の定義

遊休農地とは農地法で定められた法令用語で、「かつて農地だったが現在農地として利用されておらず、今後も農地として利用される可能性も低い土地」と、「農地ではあるけれど周辺の農地と比較した時に利用の程度が著しく低い土地」の両方を指します。

出典:「農地法 第四章 遊休農地に関する措置」

この定義からすると、土地の一部でわずかに自家用野菜を栽培している場合なども、遊休農地に分類されます。

耕作放棄地との違い

「耕作放棄地」は、「遊休農地」が農地法で定められている法令用語であるのに対し、農林水産省が5年に1度実施する統計調査(農林業センサス)で定義されている統計上の用語です。

耕作放棄地の定義は「所有されている農地のうち、過去1年以上作付けされておらず、この数年の間に再び作付けする考えのないもの」ですが、一般的には遊休農地とほぼ同じように使われているようです。

では逆に「耕作放棄地」でない農地はなんというのでしょうか。
農業センサスでは、「調査期日前1年間に実際に耕作されている、あるいは、調査期日前1年間作物を栽培していなくてもここ数年の間に再び耕作する意思のある土地」を「経営耕地」としています。

経営耕地=所有地(田、畑、樹園地)-貸付耕地-耕作放棄地+借入耕地

出典:農林水産省「農林業センサス等に用いる用語の解説」

つまり、農林業経営体が実際に耕作している農地から耕作放棄地を除いたものが「経営耕地」として判断されているのです。

荒廃農地との違い

もう1つの「荒廃農地」は、遊休農地とは違い、土地の荒廃が進んで客観的にも耕作が不可能な土地のことです。

農業センサスとは別の、農林水産省「荒廃農地の発生・解消状況に関する調査」において、「現に耕作されておらず、耕作の放棄により荒廃し、通常の農作業では作物の栽培が客観的に不可能となっている農地」と定義されています。

前項の「耕作放棄地」と「荒廃農地」との最も大きな違いは、「客観的判断」であるか?です。耕作放棄地は農業センサスの調査に農家自身が答えた結果ですが、荒廃農地は調査員が状況をみて判断した結果です。

日本における耕地面積と遊休農地面積の推移

荒廃農地

nobmin/PIXTA(ピクスタ)

耕地面積が徐々に減少している日本で、耕作に使われていない農地面積はどのように変化しているのでしょうか。

耕地面積の推移

全国の耕地面積は、1989年の528万haから、2019年には440万haへと、30年で約90万ha近く減少しています。一時より減少率は緩やかになったとはいえ、10年で4~5%ずつ減少しているのです。

minorasu(ミノラス)の画像

出典:農林水産省「作物統計調査 / 面積調査 確報 令和元年耕地及び作付面積統計」よりminorasu編集部作成

耕作放棄地の面積推移

全国の耕作放棄地は、平成2年(1990年)が21.7万haだったのに対し平成27年(2015年)は42.3万haと、25年間でほぼ倍増しています。

minorasu(ミノラス)の画像

出典:農林水産省「農林業センサス累年統計」よりminorasu編集部作成

荒廃農地の面積推移

次に、農林水産省が平成20年(2008年)から行っている荒廃農地面積の調査をみると、荒廃農地の総面積は横ばいですが、「再生利用困難」に分類される農地は増加しています。

minorasu(ミノラス)の画像

出典:農林水産省「荒廃農地の発生・解消状況に関する調査結果等」よりminorasu編集部作成

遊休農地・耕作放棄地が発生する原因

遊休農地が発生する主な原因は、農家の高齢化と後継者不足による農業人口の減少によるといえるでしょう。新規就農を支援する政策が推進されていますが、少子高齢化による労働力不足は産業全体の問題であり、農業に限らず人材の確保自体が難しい時代が来ています。

以前は農地として作物の栽培が行われていた土地でも、働き手が少なければ土壌の状況や立地条件が悪いほ場から使われなくなり、遊休農地化していきます。
さらに農業に従事する人がいなくなり、一度耕作をやめてしまうと、再び農地として作物を栽培することは難しくなるため、そのまま耕作放棄地化・荒廃農地化することが考えられます。

遊休農地・耕作放棄地が増えると起こり得る問題

遊休農地や耕作放棄地が増えることは、日本の社会全体にも大きな影響を及ぼします。もはや農業だけに限定される問題ではないのです。

食料自給率の低下

農地の減少は、現在約40%にまで低下している日本の食料自給率を、さらに押し下げる要因になります。これ以上大切な食糧を輸入に依存することは、国としてもできるだけ避けなければなりません。

災害時のリスク増加

農地は、食料となる農産物を生産するだけではなく、災害時のリスクを低減する機能も担っています。例えば、水田や水分を含みやすい畑地の土壌は、雨水を一時的に保持し、洪水や土砂崩れが起きることを防いでいます。

農地が管理されなくなると、災害を防ぐさまざまな機能が失われ、災害時のリスクが増加します。防災の観点でも農地が適切に管理されていることが重要です。

管理の粗放化に伴う病害虫や雑草、外来動植物の繁殖

遊休農地は病害虫や雑草、外来動植物の温床となりやすく、人為的に駆除できない場合、周辺環境に悪影響を与えます。外来種の増加は周辺の在来種に圧力をかけるため、生物多様性の喪失にもつながりかねません。

また、病害虫や雑草、外来動植物が周辺の農地にまで広がると、作物の生育に影響を与え農業被害が生じることも考えられます。

ゴミの不法投棄やセキュリティ上の不安

もう1つの問題としては、遊休農地がゴミの不法投棄に使われることが挙げられます。不法投棄の取り締まりや、ゴミの回収には多くの手間とコストがかかります。

放置しておくと、さらに多くのゴミが捨てられる可能性もあります。市街地に近い農地が遊休農地になった場合、防犯上の問題も発生します。犯罪や火災などに対するセキュリティ対策も難しくなるでしょう。

遊休農地の活用アイデアと参考事例

農作業 トラクター

Anesthesia/PIXTA(ピクスタ)

遊休農地や耕作放棄地の増加に歯止めをかけるため、これらの土地を活用する動きが各地で出ています。地域事情を交えたさまざまなアイデアで、遊休農地・耕作放棄地を再活用した取り組み事例を見てみましょう。

市民農園として整備し活用した事例

福岡県北九州市では0.8haの耕作放棄地を、2000年から市民農園として活用しています。この取り組みは市民の要望を受けて、土地所有者とJA、行政が協力することで実現しました。

都市部からの利便性が高いこともあり、利用率が100%になるなど盛況です。

複数の耕作放棄地をオリーブ園に再生した事例

香川県小豆島町では、2003年に構造改革特区一号として認定された「小豆島内海町オリーブ振興特区」の制度を利用し、耕作放棄地をオリーブ園として活用しています。


構造改革特区としての認定を得たことで、農家以外の企業参入が可能になり、農業法人のほか、複数の食品加工業などの企業がオリーブ栽培に参入しています。
これらの経営体が複数の耕作放棄地を借り上げて、これまでに3.2haに及ぶ面積を有効活用しています。

農地バンク(農地中間管理機構)の活用で遊休農地を解消した事例

冬に開花する「啓翁桜(けいおうざくら)」の切り花は、正月や祝い事に使われる高収益作物です。これに着眼した山形県西川町では、農地バンクと農地耕作条件改善事業を活用して、平成9年度より遊休農地で啓翁桜の促成栽培を行っています。

町が主体になり、啓翁桜農家のもとに農地が集積され、事業実施前は約15%だった集積率が100%となり、現在では約3.3haの面積で啓翁桜を生産しています。

遊休農地の見つけ方

農業経営拡大のために、地域周辺の遊休農地や耕作放棄地を積極的に借り受けたいという場合には、現在はインターネットでの農地探しも利用できます。

しかし、信頼できる情報を得るには地域の役所に相談するか、知人の紹介を利用することが確実といえます。大切なほ場候補地ですから、自分の目で実際に確かめることが重要でしょう。

また、遊休農地の利用に対して補助金制度を活用できるケースもあるので、国の政策や地方自治体の情報をこまめにチェックしましょう。

全国の耕地面積が減少する中、遊休農地や耕作放棄地が増加することは、農業だけではなく、社会全体にとってもリスクが高い状態といえます。
遊休農地や耕作放棄地を少しでも再生し有効活用できるよう、農業の活性化にもつながる取り組みが望まれます。

大澤秀城

大澤秀城

福島県で農産物直売所を立ち上げ、店長として徹底的に品質にこだわった店づくりを行い、多くの優れた農家との交流を通じて、農業の奥深さを学ぶ。 人気店へと成長を遂げ始めたさなかに東日本大震災によって被災。泣く泣く直売所をあきらめ、故郷の茨城県で白菜農家に弟子入りし、畑仕事の厳しさを身をもって体験する。 現在は農業に関する知識と体験を活かしながら、ライターと塾講師という2足のわらじで日々歩みを進めている。

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