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6次産業化とは? 基礎知識から陥りやすい失敗例まで紹介!
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  • 農業経営

6次産業化とは? 基礎知識から陥りやすい失敗例まで紹介!

近年、農家レストランの経営や加工品の販売を行う農家が増加しています。これらの取り組みは「6次産業化」と呼ばれ、農林水産省も推進しています。ここでは6次産業化の基礎知識から、メリットやデメリット、成功へのポイントなどをご紹介します。

6次産業化の基本をわかりやすく解説

果菜類 苗

IYO/PIXTA(ピクスタ)

まず、6次産業化とは何なのか、どのような取り組みのことを指すのかを説明します。

6次産業化とは? 農商工連携との違いは?

6次産業化とは、1次産業を担う農林漁業者が、自ら2次産業である「加工」や3次産業の「販売・サービス」を手掛け、生産物の付加価値を高めて農林漁業者の所得を向上する取り組みを指します。

「6次産業=1次産業(農林漁業)×2次産業(加工)×3次産業(販売・サービス)」と、1次産業にほかの産業を掛け算して6次産業としているわけです。

農業でいえば、農家が作物の生産だけを行うのではなく、加工や販売など他の産業分野まで手掛けることを意味します。

以前は「6次産業=1次産業+2次産業+3次産業」と各産業を足して6次産業化といわれていましたが、現在では、1次産業が衰退して「0」になると成り立たないことや、掛けることで新たな価値を創出する、といった理由で「×」が使用されるようになりました。

また、「農商工連携」と混同されがちですが、農商工連携は農家が2・3次産業者と連携し、両者がそれぞれ得意な技術を駆使して新しい価値を生み出すことであるのに対し、6次産業化は農家自身が2・3次産業まで手掛けるという点で異なります。

具体的にどんな取り組みが行われている?

6次産業化 桃 ジャム

Oxanadenezhkina/PIXTA(ピクスタ)

代表的な取り組みとして、ジャムなどの農産物加工品の製造・販売をイメージする人が多いのではないでしょうか。6次産業化の基本は「1次産業×2次産業×3次産業」ですが、いまや「1次×2次」、「1次×3次」と形態が多岐にわたっており、農林水産省の事例にも取り上げられています。

さまざまな形態があるものの6次産業化の事例に共通していることは、農家が従来の農業経営に新たな付加価値をつけて取り組んでいるという点です。

<1次×2次×3次の例>
・農産物を加工・販売
自身が栽培した作物を使って加工品を製造し、販売します。商品開発からパッケージ、販路の開拓まですべてを農家が行います。

・農家レストラン
 農家が飲食店を運営します。収穫した作物を調理して、来店客に料理やデザートとして提供します。

<1次×2次の例>
・農産物の1次加工
企業や飲食店が使いやすい形に農産物を加工します。例としては、カット野菜やカットスイーツ、原料用に野菜や果物をペースト状に加工したものなどが挙げられます。

<1次×3次>
・直接販売
栽培へのこだわりなどの農産物の付加価値を打ち出して、農家が直接通販サイトや道の駅などで販売します。卸売市場を通さないため農家自身が販路を開拓する必要があります。

・観光農園
 農園やほ場を訪れた観光客に「体験」を提供します。野菜栽培や果樹栽培であれば収穫体験が挙げられ、花き栽培農家が観賞用に花畑を公開する場合も含まれます。収益は体験料や入園料として得ることができます。

・農家民宿
 民宿などの宿泊施設を運営し、宿泊客に農業体験を提供します。農家の住居を民宿に活用する場合もあります。

6次産業化のメリット・デメリットを知ろう

農産物 出荷

Fast&Slow/PIXTA(ピクスタ)

次に、6次産業化のメリットとデメリットを日本政策金融公庫「農業の6次産業化に関するアンケート調査結果」(平成23年12月公表)の結果をもとに見ていきましょう。

minorasu(ミノラス)の画像

出典:株式会社日本政策金融公庫「農業の6次産業化に関するアンケート調査結果(平成 23(2011)年 12 月公表)」よりminorasu編集部作成

6次産業化のメリット

【所得向上】
2011年に日本政策金融公庫が行った農家へのアンケート調査で、6次産業化のメリットを聞いた設問では「所得が向上する」という回答が74.5%、次いで、「農産物の生産拡大につながる」が50.3%となりました。

6次産業化に取り組むことで、農業以外の所得がプラスされるとともに、事業が軌道に乗るにつれて原料となる農産物の生産も拡大し、両輪で所得向上につながっていきます。

このアンケート調査では「直接販売によって農家が主導的に価格決定できるようになり、利益率が上がった」との声が多かったことも報告されています。卸売市場の価格変動に収益が左右されず、農家自身が価格決定権を持てることのメリットが大きいことがうかがわれます。

【経営基盤の確立】
「所得向上」「農産物の生産拡大」に次いで多いのが「企業的経営の確立(休日の適正取得、社会保険の整備等)」34.5%、「社員のやりがい向上」28.5%です。

6次産業化に取り組むことで、農繁期の期間雇用ではなく、農業以外の部門に社員としてスタッフを迎え入れることが可能になり、これに伴い組織の整備も進んでいくことがわかります。

例えば、加工業や農家レストランを運営する場合には、農業以外の収入源を通年で確保できます。従業員の通年雇用も可能になるため組織としても安定し、より経営がしやすくなります。

6次産業化のデメリット

一方で、デメリットもあります。

【収益化までの資金確保】
まず、収益化まで時間がかかるという点が挙げられます。
同じアンケート調査の報告書では、6次産業化に取り組み始めてから経営が黒字化するまでに平均4.1年かかったという分析結果を掲載しています。

これは、商品開発や設備投資にかかる初期費用のほか、収益化できるまで事業を支える数年分の資金が必要なことを意味します。

6次産業化には加工技術やマーケティング、衛生管理などの専門知識やノウハウが必要となるので、栽培にかかるコスト以外の負担も増えていきます。必要な人員の確保、加工のための設備投資も必要となるでしょう。販売まで手掛ければ在庫を抱えるリスクも生じ、これを担保するコストも事業計画に含める必要があります。

【商品開発と事業計画立案の難しさ】

minorasu(ミノラス)の画像

出典:株式会社日本政策金融公庫「農業の6次産業化に関するアンケート調査結果(平成 23(2011)年 12 月公表)」よりminorasu編集部作成

「6次産業化で重要と考えるもの」という設問では「商品の差別化・ブランド化」が67.3%でトップ、「当該事業に必要な人材の確保」が55.8%で2位となっています。商品開発関連では「マーケティングに基づいた商品開発」も39.4%と高率です。

商品開発の企画立案、事業化の成否判断、事業計画の落とし込みが難しく、また、自分を補佐して、これらができる人材を求めていることがわかります。

農家の視点はこれまで農産物の生産に向いており、商品開発やそれに必要なマーケティングリサーチ、事業計画立案の経験がない場合が多いでしょう。

「これをジャムにしてみたら」とは思いついても、それを実際に商品にして、市場の動向を探り、適切な事業計画を作成するというビジネスまでに落とし込むのは、経験がないと難しいといえます。

陥りがちな失敗と成功のポイント

農家 ハウス栽培

cba/PIXTA(ピクスタ)

続いて、6次産業化で陥りがちな失敗と成功につながるポイントをしっかりと押さえておきましょう。

事業計画や差別化が不十分

加工品を形にしただけで終わっているケースがしばしば見られます。売れるだろうと見込んで加工品を作ったものの、市場調査を行っていなかったために差別化ができず、ありふれた商品になり、売れなくて在庫を抱える人は少なくありません。

6次産業化はビジネスです。自分が品質の高い商品を作ることはもちろん重要ですが、それだけにこだわるのではなく、消費者が求めているものを作る「マーケット・イン(注)」の視点が必要です。

(注)自社が販売したい製品を開発するのではなく、市場のニーズを優先して商品の企画・開発を行い提供していくこと

事前に「何を」「誰に」「いくらで」「どのように」売るのか、利益はどれくらい見込めるのかなど、徹底的にリサーチして分析し、事業化可否の判断をします。実行に当たっては、綿密な事業計画が必要になります。

加工品を製造する会社は非常にたくさんあります。加工品製造のプロが考えつかない農家の視点を大切にして、独自の商品を創り出していくことも差別化ポイントになるでしょう。

身の丈以上の経営をめざす

小規模農家でありがちな失敗が、「大手企業の要望に応じて生産量と納品量を過大に見積って契約したものの、不作で販売ロットを供給できなかった」「販売実績もないうちから東京進出をめざ したが、販路を開拓できなかった」といったケースです。身の丈以上の条件で6次産業化を進めようとしても、立ち行かなくなることが多いのです。

6次産業化に当たって肝心なのは、できること・できないことを明確化することです。

生産、加工、販売までのすべてを行う必要はありません。6次産業化への取り組み方法はさまざまです。

まずは自分のできることに注力して持続できる経営体制を整え、長期スパンでステップアップしていきましょう。大きな事業拡大はそれからです。

6次産業化をサポートするしくみ

役所 窓口

xiangtao/PIXTA(ピクスタ)

最後に、相談窓口、農林水産省の認定制度、認定事業者への支援など、6次産業化に関する公的サポートについて解説していきます。

まずは気軽に相談してみよう

各都道府県には6次産業化に関する相談窓口として「6次産業化サポートセンター」が設置されており、6次産業化の準備や計画について個別相談を実施しています。また、6次産業化に必要な専門的な分野の研修会や説明会なども開催しています。

ほかにも、衛生管理やマーケティングなどの6次産業化にかかわる分野の民間の専門家「6次産業化プランナー」の派遣も行われています。また、各地方の農政局にも相談窓口が設けられています。

認定事業者は農林水産省からの補助や支援が受けられる

2011年に6次産業化に取り組む農家を支援する「六次産業化・地産地消法」という法律が制定されました。

この法律に基づいて「総合事業化計画」の認定を受けると、農林水産省より下記のような補助・支援を受けることができます。2020年7月時点で、総合事業化計画の認定件数は2,565件となっています。

各種法律の適用措置
・農業改良資金融通法などの特例(償還期限及び据置期間の延長など)が適用される
・野菜生産出荷安定法の特例(指定野菜のリレー出荷による契約販売に対する交付金の交付)が適用される

食料産業・6次産業化交付金
・新商品開発、販路開拓などに対する補助を受けられる
・新たな加工・販売などへ取り組む場合に必要な施設整備に対する補助を受けられる

6次産業化プランナーのフォローアップ
・認定後も6次産業化プランナーの定期的なフォローアップを受けられる

6次産業化には、収益化までの事業資金の確保、事業化の成否判断や事業計画立案など、これまで農家の方が経験してこなかった要素がたくさんあります。

しかし、6次産業化によって得られる所得向上、企業としての基盤の確立、事業拡大には大きな魅力があります。

紹介した行政によるサポートも利用しながら、6次産業化へ一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。

上澤明子

上澤明子

ブドウ・梨生産を営む農家に生まれ、幼少から農業に親しむ。大学卒業後は求人広告代理店、広告制作会社での制作経験を経て、現在フリーランスのコピーライターとして活動中。広告・販促ツールの企画立案からコピーライティング、取材原稿の執筆などを行う。農業専門誌の制作経験があり、6次産業化や農商工連携を推進する、全国の先進農家・農業法人、食品会社の経営者の取材から原稿執筆、校正まで携わったことから農業分野のライティングを得意とする。そのほか、食育、子育て、介護、健康、美容、ファッションなど執筆ジャンルは多岐にわたる。

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