日本農業技術検定とは?試験内容や難易度&そのほかの農業系資格も紹介!
日本農業技術検定は、2017年から実施されている農業専門の資格で、毎年2万人程度の受験者がいます。検定試験の実施概要や合格率、過去問題の例など検定に関する詳細を紹介。資格取得のメリットや農業に役立つ資格について探ります。
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目次
日本農業技術検定は、農業に関する知識や技能を持つ人が取得できる資格です。この記事では、日本農業技術検定を受けるメリットや、検定の実施概要、過去問題について詳しく解説します。併せて、農業に活かせるさまざまな資格を紹介します。
新規就農に役立つ「日本農業技術検定」とは?
日本農業技術検定は、農業の実践的な知識や技術を客観的に評価する、全国統一の検定試験制度です。以下の項で、2024年現在の試験概要や試験方法、受験資格、実施時期などを解説します。
農業に関する知識や技術を問う検定
日本農業技術検定の対象は、農業高校・大学や就農準備校などで学ぶ人たち、農業研修生、後継者など、農業に関わる仕事を志す人たちです。農業についての知識や技術水準を客観的に評価し、その現状を把握することで教育研修の効果を高めることを目的としています。
一般社団法人全国農業会議所が運営する民間資格で、2024年現在、農林水産省と文部科学省の後援を受けています。
試験方法
日本農業技術検定は、3級・2級・1級とわけられ、それぞれ難易度や試験方法が異なります。
- 3級:農作業の意味がわかる程度の入門レベル
- 2級:農作業の基本的な知識や技術を有する基本レベル
- 1級:高度で実践的な知識と技術を習得している実践レベル
試験方法は3級が学科試験のみ、2級と1級は学科試験に加えて実技試験が実施されます。2024年は、3級・2級の学科試験は7月・12月の2回、2級の実技試験は11月、1級学科・実技試験は12月に行われました。
2級・1級は学科試験のみの受験も可能です。その場合は「学科試験合格証明書」が発行されます。
受験資格
3級から1級まで、学科試験には受験資格はありません。受験受付期間内に応募すれば、だれでも受けられます。ただし、2級・1級の実技試験には受験資格があります。
2級実技試験の受験資格
(1)2級の学科試験合格者であること
1級実技試験の受験資格
(1)1級の学科試験合格者であること
また、実技試験は条件を満たしたうえで申請すれば、免除を受けられます。免除規定は以下の通りです。
2級実技試験の免除規定
(1)1年以上の就農経験を有する者、または農業高校・農業大学校など 2級実技水準に相当する内容を授業などで受講した者
(2)JA営農指導員、普及指導員、大学等付属農場の技術職員、学校等が主催する任意の講習会を受講した者
1級実技試験の免除規定
(1)2年間以上の就農経験を有する者、または検定協会が定める事項に適合する者(JA 営農指導員、普及指導員、大学等付属農場の技術職員、農学系大学生(農業高校・農業大学校を含む)で農場実習等4単位以上を取得している場合)
「日本農業検定」とは別物なので注意!
よく似た検定試験に「日本農業検定」があります。こちらは、一般社団法人全国農協観光協会の運営する検定です。
日本農業検定は、小学生を含む一般の人を対象に、農業についての理解や関心を高めることを目的にしています。プロレベルを対象とする日本農業技術検定とは、目的や活用の場が異なるので注意しましょう。
jessie / PIXTA(ピクスタ)
日本農業技術検定を受験するメリット
日本農業技術検定を受験する大きなメリットは、農業に関する知識や技術をより深められる点です。合否に関わらず、勉強し受験すること自体に意義があります。
合格すれば、一定の知識や技術を持つことの証明に使えます。農業や食品関係の学校を受験する際や、農業法人、JA、自治体、食品関連企業などへの就職活動に当たって強みになるでしょう。今後、一般企業の農業への参入も進めば、資格を生かせる仕事の幅も広がるかもしれません。
農業経営においてもメリットが考えられます。農業を取り巻く環境は、大規模経営化、法人化、スマート化、6次産業化など目まぐるしく変わっています。
複雑化する農業経営の中で、ビジネスパートナーを探したり顧客へのアピールをしたりする際に、資格の有無は誰にでもわかりやすい評価指標になり得ます。
EKAKI / PIXTA(ピクスタ)
難しい?日本農業技術検定の難易度・合格率
3級は、初学者でも独学で合格できる程度といわれています。2級以上は実技の試験があるほか、より専門的な出題になり、過去問題や参考書を使った勉強方法が必要でしょう。
合格率は2023年度実績で、3級が65.7%、2級が23.3%、1級が9.6%です。
出典:一般社団法人全国農業会議所「日本農業技術検定試験 結果一覧」所収「日本農業技術検定の受験実績(平成19年(2007年)度~令和5年(2023年)度)」
YUMIK / PIXTA(ピクスタ)
試験の内容(出題範囲)や合格基準は?
日本農業技術検定の試験内容や出題範囲、合格基準について、級ごとに解説します。
3級(学科)
マークシート方式の選択問題が共通30問、選択20問の計50問です。試験時間は40分。合格基準は100点満点中60%以上です。
出題範囲は共通問題では農業基礎。選択問題では栽培系、畜産系、食品系、環境系の分野から1科目を選択します。
受験費用は一般受験3,140円、団体受験2,620円、団体受験(学割)1,570円。
2級(学科・実技)
学科試験は、マークシート方式の選択問題が共通10問、選択40問の計50問です。試験時間は60分。合格基準は100点満点中70%以上です。
出題範囲は共通問題では農業一般。選択問題では作物、野菜、花き、果樹、畜産、食品の分野から1科目を選択します。
実技試験は、ほ場での実地研修試験です。乗用トラクタ、歩行型トラクタ、運搬車、刈り払い機、背負い式防除機の中から2機種を選択して受験します。
学科試験の受験費用は、一般受験4,190円、団体受験3,350円、団体受験(学割)2,090円。実技試験の受験費用は15,710円です。
1級(学科・実技)
学科試験は、マークシート方式の選択問題が共通20問、選択40問の計60問です。試験時間は90分。合格基準は120点満点中70%以上です。
出題範囲は共通問題では農業一般。選択問題では作物、野菜、花き、果樹、畜産、食品の分野から1科目を選択します。
実技試験は、基礎的確認事項と専門選択分野における実践的知識・経験を問う論述式のペーパーテストを実施します。
学科試験の受験費用は一般受験5,240円、団体受験4,190円、団体受験(学割)2,620円。実技試験の受験費用は5,240円です。
mits / PIXTA(ピクスタ)
学科、および実技試験で出題された過去問事例
各級の学科試験と1級の実技試験の過去問事例を紹介します。
3級学科
■共通問題の事例
野菜の開花時と結実時の写真を見てその野菜の科名を選択する問題
病害を受けた作物の葉の写真を見て病名を選択する問題
同じ科に分類される作物の正しい組み合わせを答える問題 など
■選択科目の事例
畜産系:家畜の写真に示された測定部位の名称を答える問題
食品系:卵白の起泡性を利用した食品を選択する問題
環境系:森林の持つ地球温暖化防止機能の適切な説明を選択する問題 など
上記のほか、農業土木や林業に関する問題も選択科目です。
2級学科
■共通問題の事例
JAS法の2017年の改正で新たに制定された基準を選択する問題
農業簿記の適切な仕分け方法の問題
比較的珍しい病害を受けたとうもろこしの写真を見て病名を選択する問題 など
■選択科目の事例
野菜分野:写真を見てトマトの溶液栽培の説明として適したものを選択する問題 など
花き分野:観葉植物の写真を見てその植物の繁殖方法を選択する問題 など
果樹分野:落葉果樹の適切な花芽分化開始期を選ぶ問題 など
畜産分野:豚コレラについての適切な説明を選ぶ問題 など
食品分野:パン製造法として直ごね法より中種法が優れる理由として適切な文を選ぶ問題 など
1級学科
■共通問題の事例
環境保全型農業についての説明文から不適切なものを選ぶ問題
水稲の「密苗」移植栽培技術について正しく説明している文を選ぶ問題 など
■選択科目の事例
野菜分野:固形培地耕システムの模式図を見ながら、その特徴について適切に説明された文を選ぶ問題
花き分野:「花きの振興に関する法律の種苗法の特例」に関する適切な記述を選ぶ問題 など
果樹分野:品種登録制度と育成者権に関する適切な記述を選ぶ問題 など
畜産分野:牛の分娩後の繁殖機能回復について不適切な記述を選ぶ問題 など
食品分野:食品Aの蒸気圧を測定した際の値から、このときの水分活性について正しい数値を選ぶ問題 など
1級実技
2016年度の出題は、過去に栽培経験のある果樹の品目、品種、栽培法、分類について、提示されたポイントを踏まえて記述するものでした。
その品目および品種の特性についての記述を200~400字程度。その品目の繁殖法、年間の成長周期、栽培管理法についての記述を400~500字程度。収穫から出荷、貯蔵と利用のポイントについての記述を400~500字程度で記述します。
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就農するなら取得を検討したい、そのほかの資格・検定
農業経営に当たって取得を検討したい、より実践的な資格や検定を紹介します。
運転免許
農業を営むのであれば、普通自動車免許はほぼ必須です。さらに、農耕車を運転するための大型特殊自動車運転免許やけん引免許があると、使える農機の選択肢も広がります。
農業機械士
農業機械の運転・操作技術や専門知識を持つ人を、都道府県知事が認定する公的資格です。取得には、大型特殊免許の所持と、県が行う養成研修への参加が必要です。
この資格を所持していれば、農業機械のメンテナンスや整備、修理を自分で行えるため、大型農機を扱う大規模農業法人では重宝します。
危険物取扱者(乙種第4類)・ボイラー技士
ボイラー設備を扱う施設園芸(ハウス栽培)を行うなら、ボイラー技士の資格を持っていると便利です。この資格があれば、自分でボイラーの点検・整備を行えます。
また、ボイラーに使う重油を扱うには、危険物取扱者(乙種第4類)が必要です。
毒物劇物取扱責任者
効果的な農薬には、毒物または劇物指定のものもあり、毒物及び劇物取締法による規制の対象になります。
「毒物劇物取扱責任者」とは、毒物または劇物の製造業、輸入業、販売業において、毒物または劇物による保健衛生上の危害の防止を担う者です。
薬剤師、厚生労働省の定める学校で応用化学に関する学課を修了した者、都道府県知事が行う毒物劇物取扱者試験に合格した者が、毒物劇物取扱責任者となることができます。
一般の農家は農薬の製造・輸入・販売を行わないので、その場合には毒物劇物取扱責任者の資格取得の必要はありません。
ただし、取り扱う農薬によっては 毒物及び劇物取締法の「毒物劇物業務上取扱者」の地方自治体の首長(注)への届け出が必要です。
(注)都道府県知事、あるいは、保健所を設置する市又は特別区の場合は市長または区長
産業用無人ヘリコプター技能認定
近年、農業に活用されているドローンや無人ヘリコプター。ドローンは申請手続きをすれば資格は必要ありませんが、無人ヘリコプターの使用にはこちらの資格が必要です。ドローンでは間に合わないような、広大なほ場を持つ農家にはぜひとも欲しい資格です。
農業簿記検定
農業には独自の勘定科目もあり、農業簿記の知識があれば正確で効率的な財務管理が可能です。規模の大きな農業法人では重宝されるでしょう。
農業は資格がなくてもできる職業ですが、資格を持つことで、事業の拡大や作業の効率化、コストダウンに役立つさまざまなメリットがあります。自分の農業経営において必要な資格を知り、積極的に取得して活用しましょう。
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大曾根三緒
ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。