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土作りを極める「土壌医検定」とは? 内容や難易度、農家の取得メリットを解説

土作りを極める「土壌医検定」とは? 内容や難易度、農家の取得メリットを解説
出典 : Sorapop / PIXTA(ピクスタ)

作物の栽培において、土作りは収量や品質に直結する重要な要因です。「土壌医検定」は理論的な土作りの知識を持つ人材育成を目的としており、農家にとっても有益な資格といえます。そこで今回は、この「土壌医検定」について詳しく紹介します。

「土壌医」とは、作物の栽培に必要な土壌に関する知識を持つ専門家であり、この資格は、農家にとっても作物を栽培するうえで大きなメリットになる資格といえるでしょう。今回はこの土壌医の資格試験である「土壌医検定」について、内容や難易度、具体的なメリットを紹介します。

土壌医検定とは?

土壌の診断と管理

Pixel-Shot - stock.adobe.com

まずは土壌医検定とは何か、また資格登録によってどんな名称を名乗れるようになるのかなどの概要を紹介します。土作りの重要性についても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

農林水産省の後援を受ける「土づくりの専門家」資格

土壌医検定とは、土壌診断や施肥改善、作物生育改善など、作物の土作りに関する知識量や経験値を測る資格試験の制度です。

農林水産省などが後援となっており、一般財団法人日本土壌協会が運営 を行っています。資格には、1級~3級があります。

参考:土壌医検定試験事務局 公式サイト「土壌医検定とは」

近年、地力の低下や土壌病害の発生など、生産コストの低減が課題となっており、土壌診断に基づいて土作りを推進させることが重要となっています。一方で、こうした課題に対応できる土壌の専門家が減少していることから、この「土壌医検定」が作られました。

資格登録することで、「土壌医」や「土づくりマスター」を名乗れる

試験に合格したあと、公式サイトから登録申請を行うことでそれぞれの級に応じた資格名を名乗ることができます。1級は「土壌医」、2級は「土づくりマスター」、3級は「土づくりアドバイザー」です。

必要とされる知識と土作りの指導実施レベルは以下の通りです。

3級「土づくりアドバイザー」

土作りに関する基礎的な知識や技術を有し、アドバイザーとして対応できるレベル

2級「土づくりマスター」

土作りに関するやや高度な知識や技術を有し、土壌診断の処方箋を作成できるレベル

1級「土壌医」

土作りに関する高度の知識や技術を有し、かつ、5年以上の指導や就農の実績があり、処方箋作成とともに施肥改善や作物生育などの改善の指導ができるレベル

出典:一般財団法人日本土壌協会 公式サイト「業務案内」

資格登録には受験料とは別に費用がかかりますが、名刺などに「土壌医」と記載でき、資格を登録した人との間で情報共有ができるようになるため、取得後も有効に資格を活用しやすくなるなどのメリットがあります。

登録は強制ではありませんが、長期的な目で見ると登録するのがおすすめです。

土壌医検定試験事務局 公式サイト「資格登録」

受験や資格登録にかかる費用

試験スケジュール・過去問題・受験料

CORA / PIXTA(ピクスタ)

2021年度(2022年2月13日実施)の試験概要によれば、受講料は消費税込みで1級が10,500円、2級が6,300円、3級が5,250円となっています。3級に関しては、高校生10名以上を含む団体が申し込みとなる場合、生徒割引3,000円が適用されます。

2021年度はの試験会場は2級・3級については北海道から沖縄まで20会場が用意され、最寄りの会場で受けることができます。

1級を受験できるのは全国の主要都市・9会場のみとなるため、1級受験を希望する場合には、会場をしっかりと確認したうえで試験に臨みましょう。

また、先述した資格の登録料は税込6,300円で、これに加えて証明証となる携帯型カードの発行を希望する場合は、手数料として税込2,100円が必要です。

土壌医検定試験事務局 公式サイト「2021年度(2022年2月13日実施)試験の実施概要」
※2021年度試験の申込は2021年12月14日に締め切られています。

土壌医検定試験の内容と出題範囲

土壌の構造

ヒトネコデザイン研究所 / PIXTA(ピクスタ)

土壌医検定では、いきなり2級や1級を受けることもできますが、1級は土作り指導又は就農の実績を5年以上必要とするため注意しましょう。また、全試験が同日の同時刻に行われるため、併願もできません。

試験内容は土壌の知識だけではなく、土作りと作物の生育、収量、品質との関係性を重要視したものとなっています。

2級と3級は学科試験のみとなっていますが、1級についてはマークシート方式の学科試験に加え、記述方式の試験と実績レポートが行われます。

出題範囲は、3級が作物生育や土壌化学、物理性など土作りと作物の生育とに関わる知識についてです。2級は3級レベルの知識に加え、堆肥の種類や特色、作物の栽培特性や土壌管理など、施肥改善のための処方箋を作成するために必要な知識を問われます。

1級は2級レベルに加え、栽培環境の変化と土作り対策など、作物の生育において土壌診断と対策の指導ができる知識をどれほど持っているのかと、どの程度の実績があるかを問われます。

問題数は3級が50問、2級が60問で、回答方式は3級が3択、2級が4択のマークシート形式です。1級の試験は4択のマークシート形式50問(配点50点)に加え、記述方式(配点25点)と業績レポート(配点25点)で行われます。

マークシート形式の試験

arch / PIXTA(ピクスタ)

難易度は? 土壌医検定試験の合格ラインと合格率

検定試験において、出題範囲や形式のほかにも気になるのは、難易度の指標となる合格ラインや合格率です。そこで、土壌医検定試験の合格目標とここ3年における合格率の推移を紹介します。

土壌医検定1級・2級の合格率は2~3割前後で推移

合格目標は3級が50問中30問以上、2級が60問中40問以上、1級が100点中70点以上となっています。ただし、1級は全体の点数が70点を超えていたとしても、業績レポートが20点以上に達していなければ不合格です。

2019年度の合格率は、3級が57.7%、2級で30.5%、1級は30.9%となっています。2020年度は、3級が56.5%、2級で31.9%、1級は28.4%でした。

3級は毎年6割近くが合格しているのに対し、1級や2級は2~3割前後で推移していることから、1級や2級は特に難易度の高い試験であることがうかがえるでしょう。

合格を目指す「研修会への参加」という勉強法も

土壌医検定試験事務局では、受験対策を目的とした研修会を全国の会場で行っています。研修会は年に1回、試験日の数ヵ月前に2日間を通して行われます。1級レベルは東京会場のみですが、2級と3級レベルは札幌から福岡までの4会場で受けられます。

土壌医検定試験事務局 公式サイト「研修会のご案内」
※2021年度の土壌医検定研修会(主に受験を目的とした研修会)の申込は終了しています。

また、日本土壌協会からは、それぞれの級に合わせた参考書や全級の過去問題集も発売されています。公式サイトから購入の手続きができるので、試験対策として活用していくとよいでしょう。

土壌医検定試験事務局 公式サイト「参考書のご案内」

活用法が知りたい! 農家が土壌医資格を取得するメリット

土作りを作物の生育と収量アップにつなげるイメージ

ArtRacen / PIXTA(ピクスタ)

ここまで検定の概要を紹介してきました。農家にとって最も重要なのは「土壌医資格を取得したら、自身の農業経営にどのようなメリットが生まれるのか」ということでしょう。そこで最後に、農家目線で土壌医の資格を取得するメリットを紹介します。

土作りの知識を深め、自身の農業経営に活かすことができる

土壌医検定のために勉強を行うことで、土作りに関する知識や技術水準の大幅な向上が期待できるため、これらを自身の作物栽培に活かせることが最大のメリットとなります。

収量や品質向上による利益率の向上はもちろん、専門家として周囲の信頼感が高まることでブランディングなどの差別化にも繋げやすくなるでしょう。

例えば、香川県善通寺市の「株式会社尾野農園」では、代表者の尾野弘季さんが持つ高度な土作りの知見を従業員にも共有するために、土壌医検定のテキストをベースにした勉強会を継続的に行っています。従業員にとっては、資格取得が働くモチベーションにつながります。

同社が積極的に取り組んでいるデータを活用した土作りと理論が結びつくことで、露地野菜の安定的な生産と品質向上に役立っているそうです。

土壌医ネットワーク「受験者の声 株式会社 尾野農園 代表取締役 尾野弘季さん」

農林水産省「土づくり専門家リスト」のページでは、土壌医など土作りの専門家とともに土壌改善を行い、生育不良や生理障害を克服し、単収を向上させた事例が紹介されています。

例えば、岐阜県飛騨地域では、農林事務所の土壌医とトマト農家が土壌水分の管理に取り組み、落花や着果不良を改善し、平均単収を同地域の慣行栽培の1.4倍にアップすることができました。

※詳細は、農林水産省「土づくり専門家リスト」所収の「土壌水分のリアルタイム測定による夏秋トマトの単収向上事例(岐阜県飛騨地域)をご覧ください。

研修会への参加費の割引あり。土作りに関する最新知識を継続して学びやすくなる

日本土壌協会では、試験に向けた研修会のほかにも合格者へ向けた定期的なレベルアップ研修会を実施しています。取得した資格を登録すれば、これらの研修のほかに講演会やシンポジウムへの参加費が割引されることも魅力の1つです。

合格後も最新の土作り知識を継続して学ぶ機会を設けやすく、資格を活用する機会も広がるため、収量や品質も継続して向上しやすくなるでしょう。

土壌医検定試験事務局 公式サイト「研修会のご案内」

「土づくりの専門家」として活躍できる

土壌医の検定1級に合格した証である「土壌医」は、「施肥技術マイスター」や「施肥技術シニアマイスター」などの資格と並び、「土づくりの専門家」として認められている資格です。

これらの資格を所有する人は、本人の同意を得たうえで農林水産省のWebサイトでも土作りの相談先として掲載されます。

農林水産省「土づくり専門家リスト」

将来的には有料で全国の農家に対する土作りのアドバイスを行うといった活動も可能となり、資格の活用法としても大きな広がりが期待できるでしょう。

さらに、日本土壌協会の資格登録者専用のWebサイト「土壌医ネットワーク」にもプロフィールを掲載できるため、より資格の活用方法が広げられます。

一般社団法人日本土壌協会「土壌医ネットワーク」

土作りの専門家としての活動

:Fast&Slow/PIXTA(ピクスタ)

今回は作物を栽培する土壌の専門家になれる「土壌医検定」の概要や試験範囲、合格率などについて紹介しました。

「土壌医検定」は作物の収量や品質向上にも繋がるなど、農家にとってもメリットの大きな検定です。ぜひ今回の記事を参考に、「土壌医検定」の受験を検討してみてはいかがでしょうか。

百田胡桃

百田胡桃

県立農業高校を卒業し、国立大学農学部で畜産系の学科に進学。研究していた内容は食品加工だが、在学中に農業全般に関する知識を学び、実際に作物を育て収穫した経験もある。その後食品系の会社に就職したが夫の転勤に伴いライターに転身。現在は農業に限らず、幅広いジャンルで執筆活動を行っている。

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