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【黒点病】みかんの病害虫対策|効果的な農薬と防除時期の見極め方

【黒点病】みかんの病害虫対策|効果的な農薬と防除時期の見極め方
出典 : クレジット : shimanto / PIXTA(ピクスタ)

柑橘類には共通してかかりやすい病害虫が多くあります。中でも温州みかんに特に多くみられる黒点病に焦点を当て、病害の特徴や効果的な農薬の使用方法、防除適期を判断するための簡易雨量計の作成方法や活用の仕方、同時に防除できる病害虫について紹介します。

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柑橘類の病害虫の中でも温州みかんに特に多く発生するのが「黒点病」です。

雨が多い時期に感染が拡大しますが、農薬の効果や持続期間は降雨量によって左右されることがあるため適期防除が難しく、感染が広がれば商品価値が著しく低下します。

黒点病を中心に、みかんの病害虫に効果がある農薬や簡易雨量計を使った防除適期の見極め方について解説します。

みかんの商品価値を下げる「黒点病」とは?

柑橘類に多い黒点病

hanapon1002 / PIXTA(ピクスタ)

黒点病は、みかんなど柑橘類の果樹に特に多く発生する病害の1つです。被害を防ぐためには症状と原因を把握し、適切な対策を講じることが大切です。

黒点病の主な症状

黒点病の発病部位は葉・枝および果実で、いずれも組織表面に黒点と呼ばれる0.1~0.5mmの黒い円形の病斑があらわれます。

黒点病斑からの二次感染はなく、葉や枝に発病してもあまり問題はありませんが、果実に発病した場合は見た目が悪くなり商品価値が著しく低下します。

6~7月の梅雨時期の感染を「前期感染」、8~9月の秋雨の時期の感染を「後期感染」と言います。「前期感染」の黒点は大きく目立ちますが、「後期感染」の黒点は小さく表面は隆起しません。

黒点病の病原菌

黒点病の病原菌は、糸状菌の一種の「Diaporthe citri」です。


感染時の病原菌の密度が低いと黒点がまばらに見られる程度ですが、密度が高いと雨滴の流れた跡に涙型の黒点が密集して発生します。さらに、高密度になると果実の大部分が硬い泥塊状になります。

これらの病斑は、宿主となった果樹の病原菌に対する防衛反応として発生します。

病原菌が侵入すると、宿主となった果樹は細胞を褐変させ、これが黒点となります。さらにその褐変細胞の周囲の細胞が異常分裂してコルク化すると、隆起した病斑になっていきます。

ライムの黒点病

withich/shutterstock(シャッターストック)

黒点病の発生原因

黒点病の伝染源は、主に果樹内部の枯枝や剪定後にほ場の周辺に放置された枝です。

果樹内部の枯れ枝の場合には「柄子殻(へいしかく)」が、地表の枯れ枝の場合には「子のう殻」が形成され、病原菌の胞子はその中で冬を越します。

気温が20℃前後になると、殻に入っていた胞子が拡散を始めます。

果樹内部の枯れ枝に形成された柄子殻の場合は、雨などで濡れた状態になると糸状の胞子角が柄子殻からあふれ出て、さらに雨滴によって溶け胞子がでてきます。これが周囲の枝葉や果実に付着して発病します。

地面に放置された枯枝の場合は、風で胞子が飛散し、果実や枝葉に付着して発病します。

黒点病が発生したほ場では病原菌は3年程度生存し、降雨のたびに胞子を放出します。気温22℃以上で感染しやすくなり、また、長く濡れたままでいると発病しやすくなるため、6~7月の梅雨の期間や8~9月の秋雨の時期に多発します。

発生したらどうする?黒点病の防除対策

雨に濡れるみかん

falcon. / PIXTA(ピクスタ)

枯枝の管理

黒点病の伝染源は枯枝であるため、樹冠内の枯れた枝をこまめに取り除くことが予防のためには重要です。また、病原菌は、防風樹のマキ、サンゴジュ、ヒノキなどの枯枝にも寄生するため、周囲の防風樹の枯枝の管理も大切です。

枯枝の発生そのものを少なくするため、整枝や剪定を適切に行って日当たりや風通しをよくする栽培管理も大切です。剪定した枝は速やかに離れた場所で処分してください。

切り株も伝染源となるため、肥料袋などを被せて胞子の飛散を防ぎましょう。それでも黒点病が発生してしまった場合は、農薬散布が効果的です。

防除に有効な農薬

「ペンコゼブ水和剤」や「ジマンダイセン水和剤」などのマンゼブ水和剤は、均一に付着し、耐雨性にも優れているため、黒点病の防除には有効です。

また、「マンゼブ水和剤」は、黒点病のほか、炭疽病やそばかす病、害虫では「ミカンサビダニ」や「チャノキイロアザミウマ」などの同時防除が可能です。

ただし、「ペンコゼブ水和剤」「ジマンダイセン水和剤」の総使用回数はいずれも最大4回に限られています。そのため「ストロビードライフロアブル」「ナリアWDG」「フロンサイドSC」「ファンタジスタ顆粒水和剤」などのマンゼブ水和剤以外の農薬を用います。

農薬の散布方法

農薬を既定の通りに希釈し散布します。マンゼブ水和剤は耐雨性に優れるとはいえ、近年の梅雨時期の集中豪雨は1日で数百mmを超えることもあります。

農薬のラベルに記載された適切な希釈倍率の範囲内でできるだけ低倍率で希釈することで、より安定した効果が期待できるでしょう。

※農薬を使用する際には、事前にラベルの記載内容をよく確認し、使用方法を守って正しく散布してください。

防除時期の目安

果実への感染は深刻な被害となるため、1回目の農薬散布を梅雨に入る前の5月下旬~6月上旬に行います。

その後は散布後の累積降雨量が250mm前後に達したら、または1ヵ月が経過したら次の散布を行います。

黒点病の対策として有効な農薬は「ペンコゼブ水和剤」「ジマンダイセン水和剤」「ストロビードライフロアブル」「ナリアWDG」「ファンタジスタ顆粒水和剤」「フロンサイドSC」などがあります。

防除時期については地域の防除暦や地方自治体の営農部署などの指導に従い、実際に農薬を使用する際には、事前にラベルの記載内容をよく確認し、使用方法を守って正しく散布してください。

防除の適期を判断する「簡易雨量計」の作り方

簡易雨量計の作り方

ナオ/ PIXTA(ピクスタ)

製品の耐雨性にもよりますが、農薬は降雨によって次第に流れ落ちます。そのため、累積降雨量をできるだけ正確に測り、適切な時期に次の散布を行うことで安定した効果を継続できます。

適期を予測するために、アメダスのデータを基にした、自宅のパソコンで使える黒点病発生予察システムも開発されています。

しかし、近年はアメダスのデータでは捉えきれない局所的な豪雨が頻繁にみられ、正確な降雨量をデータで測るのは非常に困難です。そこで、最も確実にほ場の降雨量を測り、正確な防除の時期を把握するために「簡易雨量計」の設置がおすすめです。

簡易雨量計は既製品をインターネットなどで購入することも可能ですが、身近な材料で簡単に自作できます。

必要な材料

簡易雨量計の自作に必要な材料は、身近にあるものやホームセンターで簡単に手に入るものばかりです。

・ポリ容器など蓋のついた安定した容器
雨水を溜める本体です。透明または半透明で中がはっきり見え、丈夫なものを選びましょう。短期間でこまめに測るなら小型のもので2L程度、長期間置いて測るなら10~20L程度で十分です。

・じょうご
径の大きなもののほうがおすすめです。ポリ容器の体積とバランスのよいものにしましょう。例えば、容器の体積が5Lならじょうごの径は150mmくらい、容器が10Lなら200mmくらいが計測しやすいサイズです。

・接着剤
・カラーテープ
・油性マジック
・カッター
・計量カップ

作成の手順

1.ポリ容器の上部にカッターで穴を空けてじょうごを差し込み、接着剤で隙間ができないように くっつけます。

2.じょうごの直径を測り、以下の計算式に当てはめて降水量50mmに相当する水量を割り出します。
降水量50mm相当の水量[mLまたはg] = じょうごの半径[cm] × じょうごの半径[cm] × 円周率 (3.14)× 5[cm]

例)じょうごの直径が10cmの場合
 5×5×3.14×5=393
つまり、このじょうごから流入する水が393gで50mmの降雨量に相当します。

3.上記で算出された水量を正確に測って容器に注ぎ入れ、降雨量50mmごとに、250mmまでの目盛りをつけます。

4.果樹の品種や農地の特性、経験に沿ってどのくらいの降雨量で防除するかを決め、目盛りの横に黄色や赤色などのカラーテープを貼って「要防除」「至急防除」などと記入し、一目でわかるようにしておきます。

5.雨量計をほ場に設置します。設置場所は以下の点に気を付けてください。
・水平な場所に置く
・樹に近いと落ち葉や枝などで詰まったり、梢に遮られて正確な雨量が測れなかったりするので、樹から少し離して置く
・強風などで倒れないように周囲をブロックなどで囲う

降水量と防除時期の確認方法

雨が降ったら雨量計の目盛りを確認し、防除時期を見極めて適宜防除を行いましょう。防除後は雨量計の中の水をすべて捨て、リセットして次の防除までの雨量を測ります。

なお、晴天が続くと溜まった雨水が蒸発してしまうので要注意です。前回の雨で溜まった位置に印をつけるなどして蒸発分を考慮するとよいでしょう。


※詳細はこちらの文献を参照してください。
出典:愛媛県病害虫防除所「カンキツ黒点病の防除適期判定に用いる簡易雨量計の製作法」
佐賀県果樹試験場「簡易雨量計でカンキツ黒点病の適期防除!」

あわせて防除すべき みかんの病害虫

ミカンハダニの被害 色が悪くなったスダチの葉

materialook / PIXTA(ピクスタ)

黒点病のほかにも、みかん栽培において重要な病害虫を紹介します。

そうか病

「そうか」とは、かさぶたのことで、かさぶたやいぼのような病斑が葉や枝、果実の表面に見られます。発芽期に、旧葉についた病斑が降雨で流れて伝染し、落弁後の若い果実に感染します。

剪定時に病斑のある葉を梢ごと剪除することと、発芽期の農薬散布が重要です。果実には「ストロビードライフロアブル」「ナリアWDG」「フロンサイドSC」「ファンタジスタ顆粒水和剤」などが有効で、いずれも黒点病を同時防除できます。

灰色かび病

花弁に発生する灰色のかびで、落花を助長するため多発すると着果数が減ってしまいます。発病した花弁が残って果実に触れると表面にかさぶた状の傷が付き、商品価値が低下します。また、貯蔵中の果実に発生すると果実が黒くかびて腐敗します。

多くの作物で発生し、開花期間に多く雨にあたることで感染・発病しやすくなります。花が満開になってから落弁するまでに「ストロビードライフロアブル」「ナリアWDG」「フロンサイドSC」「ファンタジスタ顆粒水和剤」などの農薬を散布します。

かいよう病

柑橘類 かいよう病

柑橘類 かいよう病 病斑
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

発病すると、葉や枝、果実にコルク化した病斑ができます。ネーブルやレモンでは病斑が大きくなり商品価値がなくなりますが、温州みかんではほとんど問題になりません。ただし、高糖系温州は比較的弱いので注意が必要です。

農薬で防除しますが、細菌性の病害で有効な農薬が少ないため、耕種的防除が重要です。果実に傷がつかないよう防風対策を講じ、感染した枝や果実の早期除去に心がけましょう。

ミカンハダニ

柑橘類 ミカンハダニ 被害葉

柑橘類 ミカンハダニ 被害葉
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

柑橘類に多く寄生するダニで、年間を通して活動し、春や秋に急増します。密度が高まると風に乗って近隣の柑橘樹に移動して広がるのでやっかいです。幼虫・成虫とも葉や果実を吸汁し、着色期以降の果実に多発すると着色が悪くなって商品価値が低下します。

数が少なければ大きな被害はありませんが、夏季に葉1枚当たり雌成虫が3~4匹以上見られたら防除を検討します。土着天敵(ミヤコカブリダニや捕食性昆虫類)が見られる場合はその種類を確認し、天敵に影響の少ない農薬を選んで散布すると効果的です。

適用のある農薬は多数ありますが、ミカンハダニは薬剤抵抗性を獲得しやすいので同一系統の農薬の連用には注意しましょう。

※この記事で取り上げた農薬は2020年9月14日現在、農薬取締法に基づき登録されているものです。農薬を使用する際には、事前にラベルの記載内容をよく確認し、使用方法を守って正しく散布してください。

みかんの病害は雨によって伝染するものが多く見られます。特に黒点病は発生件数が多く果実への影響も大きいため、早期の防除が重要です。

農薬は降雨によって効果が薄まることがあるため、降雨量を正確に測って適期防除を重ね、安定した効果を保ちましょう。農薬の効果を維持することで、黒点病だけでなくほかの病害虫の防除にもつながります。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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