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養液土耕栽培とは? 養液栽培・土耕栽培との違い&導入のメリット・デメリット

養液土耕栽培とは? 養液栽培・土耕栽培との違い&導入のメリット・デメリット
出典 : hamahiro / PIXTA(ピクスタ)

高品質な作物を栽培できる土耕をベースに、養液栽培のメリットを取り入れたものが「養液土耕栽培」です。比較的新しい栽培システムですが、さまざまな作物の栽培において期待が寄せられています。本記事では、この養液土耕栽培について詳しく解説します。

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「養液土耕栽培」とは、昔からの土耕栽培に養液栽培の優れた点をプラスした、新しいタイプの管理型栽培システムです。今回は、この養液土耕栽培のメリット・デメリットや具体的なしくみ、市販のシステムなどについてご紹介します。

養液栽培と土耕栽培のハイブリッド! 両者の利点を活かす「養液土耕栽培」とは?

ピーマンの養液土耕栽培

hamahiro / PIXTA(ピクスタ)

「養液土耕栽培」とは、土耕栽培と養液栽培の両者のメリットを融合させ、同時にそれぞれのデメリットを抑えた栽培方法です。まずは、養液土耕栽培の概要と特徴から紹介します。

養液土耕栽培とは、土と自動灌水施肥装置を用いた栽培方法

養液土耕栽培の基本的なシステムは養液栽培に近いといえますが、名前の通り、培地に土を使う点が大きな違いです。

培地に土を使用することで、土耕栽培の作物の品質や味を担保しつつ、養液栽培の灌水システムで水と肥料を供給することで、作物の栽培管理を簡略化します。
特にトマト・ピーマン・イチゴ・アスパラガスなどの栽培に適しており、大規模化も可能です。

肥料成分は養液によって供給されるため、培地への基肥はほとんど必要なく、土壌の性質などの外部環境に左右されず安定的に作物を栽培できます。

生育状況に合わせて適切な頻度での適量の灌水と施肥ができるので、作物の収量アップと品質向上も期待できます。

ハウス栽培 灌水システム

Al_K / PIXTA(ピクスタ)

土耕栽培や養液栽培と異なる点

養液土耕栽培のメリットをご紹介する前に、慣行の土耕栽培や養液栽培と異なる点について見てみましょう。

本来、植物が生育する環境は土の上なので、養液栽培のような人工的な培地に比べて、養液土耕栽培は作物の品質や味がよくなるといわれています。

また、人工培地の場合は定期的な交換が必要ですが、養液土耕栽培ではその負担を軽減できます。水と肥料を養液として与える点は、慣行の養液栽培と変わりません。

養液土耕栽培のメリット

続いて、養液土耕栽培のメリットについて見ていきましょう。養液土耕栽培の主なメリットとしては、以下の5つが挙げられます。

1)作物の生育の安定化

養液土耕栽培では、培地全体に点滴チューブを設置して、作物の生育に合わせながら、肥料濃度や灌水量をコントロールできます。養液は少量ずつゆっくりと土に浸透するため、作物の根にストレスをかけることもありません。その結果、作物の生育が揃い、収量アップが期待できます。

2)作業の省力化

液肥混入器と灌水チューブにより、自動で養液を供給できるので、人の手による作業が大幅に軽減でき、これまで灌水や施肥にあてていた作業時間のカットが可能になる場合があります。

3)肥料にかかる費用の低減

効率よく施肥量と灌水量を管理するため、肥料にかかる費用を低減できる場合があります。

4)土の緩衝力の向上

施肥量と土壌の水分量をコントロールすることで、急激な乾燥などによる地力の劣化や、肥料による作物へのストレスの回避が期待できます。

肥料成分を適切に管理すれば、土壌のpHやEC値(電気伝導度)の変動を抑えることも可能です。

5)養液栽培よりも初期費用が抑えられる

培地と養液循環システムを合わせた場合、慣行の養液栽培に比べると初期の設備投資が少なくて済みます。一般的な養液栽培の導入時の設備投資に対して、1/3~1/4程度といわれています。

一方でデメリットも? 養液土耕栽培の抱える課題

養液土耕栽培には多くのメリットがある反面、いくつかデメリットがあることもしっかり把握しておきましょう。

1つは土壌管理に関することで、土の培地を使用するので、連作障害や土壌病害のリスクがある点です。そのため、栽培できる作物の品種や台木が制約される可能性があります。

さらに、土作りとして堆肥を投入したり、土壌消毒が必要になる場合もあります。こうした作業の発生も考慮し、ある程度の労力とコストを見込んでおかなければなりません。

もう1つは、システムの導入に関することです。慣行の養液栽培と同様に設備投資が必要なため、収入とコストを比較し、どの程度の栽培規模で採算が取れるかどうかを検討する必要があります。

ほかにも、必ずしも作物の品質向上につながるとは限らない点にも要注意です。

実際にトマトの養液土耕栽培と慣行栽培とを比較したところ、栽培方法による糖度・味の違いは認められなかったというデータがあります。生理障害果実の割合や病害の発生状況も、ほとんど変わらないようです。


出典:北海道立総合研究機構農業研究本部道南農業試験場「ハウストマト養液土耕マニュアル」

始めるには何が必要? 養液土耕栽培のしくみと導入方法

イチゴの養液土耕栽培設備

田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)

養液土耕栽培のしくみを概説すると、ほ場全体に設置した点滴チューブにポンプをつなぎ、水に液体肥料を混合して送り出すことにより、培地の土に均一に水と肥料を散布する構造となっています。システム導入に際し、最低限必要な資材は以下の通りです。

・給水ポンプ
・点滴チューブ(専用のもの)
・液肥混入機(チューブに液肥を希釈して送り出す)
・フィルター(原水のゴミや異物を取り除く)
・電磁弁とタイマー(自動で給水を行う)

こうした資材に配管を組み合わせると、決まった時刻に自動で灌水と施肥を行う養液土耕栽培システムが出来上がります。設備にかかるコストの目安は、約10aほどのほ場で最低でも50万円以上。そのほか、一から配管が必要な場合は、その資材コストと作業コストも必要となるでしょう。

出典:北海道立総合研究機構農業研究本部道南農業試験場「ハウストマト養液土耕マニュアル」

農作業の省力化・効率化を叶える! おすすめの養液土耕システム2選

現在では、養液土耕栽培が一体化したシステムを導入することも可能です。以下では、いくつかのメーカーが販売しているシステムの中から、特徴的な2つのシステムをピックアップしてご紹介します。

灌水・施肥作業をAIにより完全自動化! AI灌水施肥ロボット「ゼロアグリ」

ルートレック・ネットワークス AI潅水施肥ロボット 「ゼロアグリ」の概要

株式会社ルートレック・ネットワークス AI潅水施肥ロボット 「ゼロアグリ」の概要
出典:株式会社 PR TIMES

「ゼロアグリ」は、明治大学とIT企業「株式会社ルートレック・ネットワークス」が共同開発した養液土耕システムで、クラウドサービスと連携した新しい栽培技術です。同システムは「AI潅水 施肥ロボット」と呼ばれる通り、ほとんど人手を介することなく作物の栽培管理が行えます。

その特徴は、複数のセンサーで測定したデータをクラウドに集約し、作物の生育に最適な施肥と灌水を自動で行うことにあります。ゼロアグリはハウス内の土壌センサーと、ハウス外の日射センサーのデータから、その時点で最適な養液濃度を判断し、作物が水と肥料を必要とするタイミングで灌水・施肥を行います。

出典:株式会社ルートレック・ネットワークス「ゼロアグリの特徴」

安定かつ高精度な液肥注入を実現! OATアグリオの養液土耕栽培システム「TTシリーズ」

OATアグリオ株式会社の「TTシリーズ」は、大流量タイプの液肥混入機が特徴の養液土耕栽培システムです。1分間で最大200Lの灌水・施肥が可能なので、大規模なハウス栽培のほか、露地栽培でも活用できます。

液肥混入機にコントロール部分を集約し、最大で8系統への灌水~施肥を任意の時刻に、高い精度で実行します。複数の設定項目を組み合わせて、最大で50のパターンを作成できるため、ほ場や天候に合わせてさまざまなパターンの灌水・施肥が行えます。

さらに、土壌の肥料濃度をECメーターで測定できるほか、原水流量と液肥流量、その中の窒素・リン酸・カリウムの成分量などもいつでも表示できます。液肥混入機の自動エア抜きやエラー警告など、農家に役立つ機能も標準装備されています。

出典:OATアグリオ株式会社 製品案内「養液土耕栽培」

ナスの養液土耕栽培

hamahiro / PIXTA(ピクスタ)

作物が本来生育する土の上で、灌水や施肥をきめ細かに自動でコントロールできれば、効率化の面でも収量や品質の安定化の面でもメリットが大きいといえるでしょう。

養液土耕栽培システムは、その理想に一歩近づく新しい栽培方法といえ、経営拡大をめざす農家にとっては、検討すべき選択肢の1つかもしれません。

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大澤秀城

大澤秀城

福島県で農産物直売所を立ち上げ、店長として徹底的に品質にこだわった店づくりを行い、多くの優れた農家との交流を通じて、農業の奥深さを学ぶ。 人気店へと成長を遂げ始めたさなかに東日本大震災によって被災。泣く泣く直売所をあきらめ、故郷の茨城県で白菜農家に弟子入りし、畑仕事の厳しさを身をもって体験する。 現在は農業に関する知識と体験を活かしながら、ライターと塾講師という2足のわらじで日々歩みを進めている。

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