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とうもろこしの一種「ワキシーコーン」とは? 特徴や用途、主な品種を紹介!
出典 : Phanthit Malisuwan/ PIXTA(ピクスタ)
  • 農業経営

とうもろこしの一種「ワキシーコーン」とは? 特徴や用途、主な品種を紹介!

「ワキシーコーン」は独特の食感や高い有用性が魅力のとうもろこしの一種です。しかし、日本での栽培は少ないため、あまり知られていません。そこで今回は、ワキシーコーンの特徴や用途などについて詳しく紹介します。

ワキシーコーンの雌穂

Nungning20 / PIXTA(ピクスタ)

独特のもちもち食感! とうもろこしの一種「ワキシーコーン」とは

はじめに、ワキシーコーンにはほかの品種と比べてどのような特徴があるのか、穀粒の特徴や用途について見ていきましょう。

とうもろこしの種類と主な用途を確認|ワキシーコーンは「糯種」

とうもろこしは種類によって特性が異なり様々な用途に使用される

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とうもろこしは、穀粒の性質や特徴から次の7種類に分類されます。

デントコーン(馬歯(ばし)種)

馬歯のような粒が特徴。コーンスターチ製造用に最も多く使用される品種で、ほかに飼料、工業用途などに使用される。近年はバイオエタノールの原料としても注目されている。

フリントコーン(硬粒種)

穀粒全体に広がる硬いでん粉層が特徴で、加工後、食用、工業用の原料、飼料として利用される。

ポップコーン(爆裂種)

穀粒が小さく硬いコーンで、加熱によって膨張して弾ける。ポップコーン用。

スイートコーン(甘味種)

でん粉含量は少ないが糖質の含まれる量が高い品種で、全世界的にも食用として広く利用されている。

フラワーコーン(軟粒種)

軟らかいでん粉が特徴の粉に挽きやすい品種。コーングリッツ、コーンフラワーなどに加工される。

ワキシーコーン(糯(もち)種)

粒の外観がワックス様なのでワキシーと呼ばれる。でん粉がアミロペクチンのみで構成されており強い粘りがある。食品増粘用のワキシーコーンスターチ、接着剤や光沢紙の原料など加工される。

ポッドコーン(有稃(ゆうふ)種)

穀粒が1つずつ穎(えい)に包まれている品種。観賞用として栽培され、店舗装飾などインテリアに利用されている。

ワキシーコーンの特徴と、主な用途について

多糖類(アミロースとアミロペクチン、グリコーゲン、セルロース)

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コーンスターチの原料として最もよく用いられるデントコーンには、ブドウ糖がほぼ一直線につながったアミロースが約25%、アミロペクチンが75%含まれています。

一方、ワキシーコーンの場合はアミロペクチンがほぼ100%を占めており、これを「ワキシー形質」といいます。

アミロペクチンには、水と一緒に加熱すると強い粘りが出るという性質があるため、蒸したワキシーコーンには独特のもちもち食感が生まれているのです。

精製したでん粉にも強い粘りがあり、増粘用のワキシーコーンスターチなどに加工されます。工業用途では接着剤や光沢紙の原料となることもあります。

加工したらどうなる? ワキシーコーンスターチの特徴

ワキシースターチは、ソースやたれ、レトルト食品・冷凍食品の増粘剤として使われている

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デントコーン由来の通常のコーンスターチと比較すると、ワキシーコーンスターチには、糊化した状態の透明性や粘度が高く、低い温度でも糊化しやすいのが特徴です。

粘度が高く食材によくからみ、低温でも品質が落ちず長期保存に向くことから、ソースやたれ、レトルト食品や冷凍食品の増粘用によく利用されています。

また、少ない熱量で糊化するため、食品加工の効率やコストパフォーマンスの面でも大きな利点があります。

食用ワキシーコーンはどんな形で売られている?市場流通価格の目安

海外産のワキシーコーンは、蒸しとうもろこしに加工されている

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食用のワキシーコーンは、インターネットを中心に販売されています。

国内でもワキシーコーンは栽培されていますが、実際に生産・販売している農家は少なく、販売されているワキシーコーンのほとんどは中国を中心とした海外産のものです。

海外産のワキシーコーンは、軸付き蒸しとうもろこしに加工されて流通しており、一般市場での流通価格は1kg当たりおよそ800~1,000円です。

一方、国内産のワキシーコーンは、生の状態で「もちとうろもこし」として販売されており、1kg当たりの価格はおよそ1,500円程度です。

栽培するならどれ?国内のワキシーコーンの主な品種と特徴

もちとうもろこし

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次に、実際に栽培を検討する上で重要な要素となるワキシーコーン(もちとうもろこし)の品種について、その特徴を紹介します。

色によって性質にも差が! 「白・黄・黒」のもちとうもろこし

日本では、種苗会社が在来種を固定した品種が「もちとうもろこし」として販売されています。

もちとうもろこしには「白・黄・黒」の3種類があり、色によって性質が異なります。「白もち」は甘味が少ないもののもち感が強く、「黄もち」はほかのもちとうもろこしよりは甘みがあります。「黒もち」は、風による倒伏に強く作りやすい点が特徴で、蒸して食べると腹持ちがよいといわれています。

もちとうもろこしの栽培時期

播種はどの色でも4月上旬から5月中旬に行い、初春は温床育苗が必要です。別品種の花粉がかかると品質に影響が出る場合があるため、数種類のとうもろこしを栽培する場合は200m以上離すか、開花時期がずれるように播種時期の調整を行います。

収穫期は品種によって異なりますが、中間地で7月下旬頃から9月上旬頃にかけて、冷涼地では10月頃です。

2019年発売の新品種!糖度の高さが特徴の「もちもち太郎」

2019年に発売が開始された新品種「もちもち太郎」は、ワキシーコーン特有のもちもち食感を残しつつ、従来の品種よりも食味がよく、糖度も高いことが魅力です。また収穫物も大きく、収量性も向上しています。

「パープル」と「バイカラー」の2種類があり、穀粒の色はパープルが濃い紫色、バイカラーが白と紫の混合で、紫粒の発生率は35%前後です。両品種ともスイート種と比べ草丈が高くなりますが、根張りがいいため倒伏に強い点も魅力でしょう。

播種時期は一般地で4月下旬から6月、播種後約80~85日が収穫目安となります。このワキシーコーンも近くでほかの品種を栽培すると交雑するため注意が必要です。

大和農園グループ
「もちもち太郎パープル」製品ページ
「もちもち太郎バイカラー」製品ページ

新品種開発の最新情報! ワキシーコーンの収量の低さを克服

ワキシーコーンの種子

deaw59 – adobe.stock.com

ワキシーコーン栽培における現状の課題として、ワキシーコーンの形質をもった品種の開発に時間がかかるのにかかわらず、通常のとうもろこしと比較して5%程度収量が低いことが挙げられます。

ワキシーコーンの品種は、アミロースの合成に必要な酵素を作る遺伝子(Wx遺伝子)に変異があり、アミロペクチンからなるでんぷんのみを作る形質(ワキシー形質)を持つとうもろこしの系統から開発します。

実際の品種開発では、ワキシー形質の系統と、多収で病害に強いといった優良な形質をもつ通常のとうもろこしの系統との交配を繰り返し(戻し交配)、通常のとうもろこしの形質を保ちながらワキシー形質ももつ品種をつくっていきます。

この方法で形質が安定した品種をつくりあげるには、6~7回の戻し交配が必要で長い年月がかかります。また、ワキシー形質の系統の親が持つ収量性の低さといった形質を完全には取り除けないため、どうしても収量が低くなります。

コルテバ社の研究チームは、Wx遺伝子の両端を切断する機能を持ったゲノム編集ツール(CRISPR/Cas9)などを使ってゲノム編集ワキシー系統を作出した

コルテバ社の研究チームは、Wx遺伝子の両端を切断する機能を持ったゲノム編集ツール(CRISPR/Cas9)などを使ってゲノム編集ワキシー系統を作出した
Dmitry Kovalchuk / PIXTA(ピクスタ)

この問題を克服したのが、アメリカのコルテバ社が成功した「ゲノム編集」です。コルテバ社はゲノム編集技術により元々優良な形質を持った通常のとうもろこしのWx遺伝子を編集し、ワキシー形質を発現させることに成功しました。


ゲノム編集では、優良系統のWx遺伝子のみを置き換えるため、収量の低さなどワキシー系統が持つ形質を受け継がず、優良な形質を受け継ぐことができます。従来の品種と収量を比較すると、1ha当たり平均350kg多収だったという結果も得られました。

ゲノム編集によって開発された品種についてはさまざまな議論のあるところですが、収量面で通常のとうもろこしに引けをとらず、開発期間が短いゲノム編集ワキシーコーン品種は注目に値するといえそうです。

ワキシーコーンスターチの顕微鏡写真

ワキシーコーンスターチの顕微鏡写真
KJchang / Shutterstock.com

今回は、ワキシーコーンと通常のとうもろこしとの違い、特徴と主な用途、国内で入手可能なもちとうもろこし品種などを紹介しました。

食品加工用、工業用のワキシーコーンはほとんどが輸入で賄われているので、国内では、もちもち食感の懐かしい味のとうもろこしとして生産・販売されているようです。

独特の色を活かした食材として販路拡大をめざしている産地もあり、希少価値のある作物として検討してみてもよいかもしれません。

百田胡桃

百田胡桃

県立農業高校を卒業し、国立大学農学部で畜産系の学科に進学。研究していた内容は食品加工だが、在学中に農業全般に関する知識を学び、実際に作物を育て収穫した経験もある。その後食品系の会社に就職したが夫の転勤に伴いライターに転身。現在は農業に限らず、幅広いジャンルで執筆活動を行っている。

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