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果樹農家の年収はどれくらい? 成功事例とともに利益最大化の経営のポイントを解説

果樹農家の年収はどれくらい? 成功事例とともに利益最大化の経営のポイントを解説
出典 : Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

果樹農家の年収は、他の作物を栽培する農家と比べて高めの傾向です。この記事では、主要果樹を栽培する農家の参考年収や利益の最大化を目指す取り組みについて解説します。合わせて高収益化に成功した果樹農家の事例もご紹介します。

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国内産の果実は高品質だと国際的にも評価されていますが、結果果樹面積は伸び悩み、園地拡大も進んでいないのが現状です。

しかし、それは、栽培方法の改善などで単位面積当たりの収量を向上させたり、産地で協力してブランド化を図るなど、収益を高めるチャンスともいえるでしょう。

果物や農園自体のブランド化をはじめ、ネット販売や6次産業化などさまざまな取り組みで利益の拡大を実現している事例が少なくありません。栽培技術の向上により、収量安定と低コスト栽培を両立する農家もみられます。

まずは果樹ごと、営農類型ごとの参考年収をご紹介します。

果樹農家の年収は? 農業所得からみたほかの作物との比較

農林水産省「農業経営統計調査 令和元年営農類型別経営統計」によると、果樹農家の農業所得は181.9万円で、畜産部門もあわせた農業経営体の全国平均118.8万円より高い水準です。

露地作の部門別農業所得 2019年

出典:農林水産省「農業経営統計調査 令和元年営農類型別経営統計」よりminorasu編集部作成

果樹農家以外の露地作部門の経営収支と比較してみましょう。

得られる農業粗利益は少ないものの、農業所得率は28.9%で非常に高いのがわかります。

露地作の部門別経営収支 2019年 農業粗収益に対する生産費と所得の割合

出典:農林水産省「農業経営統計調査 令和元年営農類型別経営統計」よりminorasu編集部作成

労働生産性指標として農業従事者1人当たりの付加価値額をみると、農業従事者数が多いこともあり、46.5万円と全体平均を下回ります。中山間地の園地が多く、整枝・剪定や受粉・摘果などの作業負担が大きいことがうかがわれます。

露地作の1人当たり付加価値額

出典:農林水産省「農業経営統計調査 令和元年営農類型別経営統計」よりminorasu編集部作成

品目別に農業所得をみると、栽培する果樹によっても農業所得が変わり、ブランド品種の多い果樹ほど高所得の傾向がみられます。

果樹作(個人経営)の品目別農業所得 2018年

出典:農林水産省「農業経営統計調査 平成30年営農類型別経営統計(個別経営)」 よりminorasu編集部作成

果樹の収益性向上のポイント

国内産の果実は高品質だと国際的にも評価されていますが、結果果樹面積は伸び、園地拡大も進んでいないのが現状です。

しかし、それは、栽培方法の改善などで単位面積当たりの収量を向上させたり、産地で協力してブランド化を図るなど、収益を高めるチャンスともいえるでしょう。

果樹の収益性を向上させる効果的な方法について解説します。

ブランド力の強化による高単価化

「不知火(しらぬひ)」

manoimage / PIXTA(ピクスタ)

自治体・生産団体と農家が一体となり、果実のブランド化を進めて高い付加価値を得る事例が増えています。

例えば、デコポンで知られる中晩柑品種「不知火(しらぬひ)」のブランド化ではJA熊本果実連が商標登録を行い、商標の再使用契約を結んだ農協等に限り出荷を認めています。

品質基準の統一を通じて、産地をまたいで高単価化を実現しているのが特徴です。ブランド果実を活用して、6次産業化によるさらなる収益増も期待できるでしょう。

新技術・新品種導入などによる収量向上と安定生産

マルドリ方式(周年マルチ点滴灌水同時施肥法)

出典:独立行政法人 農業・生物系特定産業技術研究機構「周年マルチ点滴灌水同時施肥法技術マニュアル」よりminorasu編集部作成

新技術の積極的な導入も、安定生産を目指す1つの方法です。

柑橘栽培を中心に取り入れられている「マルチドリップかんがい方式(マルドリ方式)」では、水分・施肥量のコントロールによって品質向上と安定生産を両立する効果を期待できます。

新品種を導入し、市場の反響に合わせて栽培面積を拡大して収益増を目指す方向性も考えられます。

定時・定量・定質を図る安定出荷体制の構築

柑橘類の共同選果場

Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

安定した出荷体制の構築も、果樹の収益性向上には欠かせません。

地域の共同選果場を活用することで出荷作業の負担やコストが軽減されると同時に、定時性が確保できるメリットが生まれます。選果機で糖度・酸度を測定後に出荷するため、果実の品質が見える化されると同時に高単価での販売も期待できます。

果樹栽培における成功事例

慣行栽培にとらわれない発想で農業経営を実践し、市場・消費者の支持を得ている果樹農家は少なくありません。高収益化を実現した果樹農家の、経営戦略や成功のポイントを紹介します。

耕作放棄地の活用と「のれん分け」で成長(マルサフルーツ古屋農園)

山梨県笛吹市一宮町の桃の園地

はすまん / PIXTA(ピクスタ)

「有限会社マルサフルーツ古屋農園」(山梨県笛吹市)では、遊休農地を活用して桃とブドウを中心とした果樹を栽培し、6次産業化や次世代の農業の担い手育成に取り組んでいます。

高齢化によって廃業した農地を借り上げて栽培規模を拡大、地域の農業振興にも貢献しているのが特徴です。土作りから取り組む環境に配慮した農園であることをアピールし、贈答用の桃・ブドウとしての評判を高めています。

酒造メーカーと提携して缶カクテル生産用の桃を供給、知名度の拡大にもつながっています。近隣の農家が栽培した柿やサツマイモ(甘藷)を加工して、アンポ柿や干し芋として販売する6次産業化に取り組むなど、収益の安定化にも積極的です。

後継者を育成する一環として、所定の研修を修了した社員に対し自社が運営する農園の一部を貸し出して自身の裁量で運営させる取り組みも行っています。

マルサフルーツ古屋農園が所有する農機具や設備を利用できるため、将来的に独立を希望する社員は低リスクで営農手法を習得できます。

収穫した果実はマルサフルーツ古屋農園側が買い取る仕組みなので、果実のブランドを守りながら会社・社員双方の収益が安定する相乗効果が生まれています。

マルサフルーツ古屋農園 ホームぺージ

農業の価値観にとらわれない差別化戦略でリピーターを獲得する観光農園(フルトリエ中村果樹園)

「フルトリエ中村果樹園」(福岡県久留米市)では、生産者としての農業の価値観にとらわれず、顧客目線での果樹園づくりを実践して観光農園のリピーターの獲得につなげています。

SNS(Instagram)による情報発信にも積極的で、果実の魅力発信や新規顧客の開拓にも抜かりがありません。

農園内のバリアフリーにも積極的に取り組み、平日の高齢者施設・障害者施設からの訪問需要にも対応しています。車椅子の人や子どもでも果物狩りを楽しめるように、梨の栽培にジョイント栽培を取り入れて木の高さを低く抑えているのが特色です。

ブドウ・イチゴやブルーベリーも栽培しており、季節ごとに楽しめる工夫もこらされています。収量低下をいとわずに幅広い顧客層を取り入れる姿勢を貫いているのです。

6次産業化の一環としてカフェを併設しており、地元のケーキ店と協働で季節の果物を使ったスイーツを提供しています。地元野菜を使ったフードメニューも用意されており、地産地消への取り組みにも積極的です。

フルトリエ中村果樹園は地元で100年以上続く果樹農家ですが、時代の変化に合わせて経営スタイルの変革に取り組んでいるといえます。

フルトリエ中村果樹園 ホームぺージ

高付加価値化の1点集中で成功した有田みかんの6次産業化(早和果樹園)

株式会社早和果樹園の「おふくろスムージー」

株式会社早和果樹園の「おふくろスムージー」
出典:株式会社PR TIMES(シビレ株式会社 ニュースリリース 2021年10月12日)

「株式会社早和果樹園」(和歌山県有田市)では、有田みかんの品種改良と加工品の販路拡大による高付加価値化に取り組んだ結果、年商10億円を稼ぐ果樹農家に成長しました。

地域のみかん農家と有限会社を設立、完熟みかんジュースをはじめゼリーやジャムといった加工品販売にも力を入れています。

デパートや高級青果店など高価格帯の販路を開拓したことも、価格低下の防止に一役買っているといえます。近年では試食販売を通じて海外での販路を広げているほか、従来は処分していたみかんの皮・ふくろの加工商品化にも取り組んでいます。

品種改良による「完熟早生みかん」栽培に特化、前述した「マルチドリップかんがい方式」を導入して品質を確保しています。

ほ場管理にドローンやICT技術を積極的に導入し、営農の省力化につなげているのも特徴的です。自社主催のイベントを通じて有田みかんの情報を発信し、自社だけでなく地域全体の価値向上にも取り組んでいます。

早和果樹園 ホームぺージ

生産者ならではの意識を大切にしながら、生産・加工・販売を充実させた「有田みかんの6次産業」に取り組む「株式会社早和果樹園」

生産者ならではの意識を大切にしながら、生産・加工・販売を充実させた「有田みかんの6次産業」に取り組む「株式会社早和果樹園」
出典:株式会社PR TIMES(Karakami HOTELS&RESORTS株式会社 ニュースリリース 2021年9月20日)

果樹農家は経営規模が小さいながらも、全国平均の農業所得は年間180万円ほどで収益性が高い部類に入ります。他の営農類型と比べて農業経費が少なく、経営戦略次第では高収益をめざしやすいのが特徴です。

ブランド化の推進や通年出荷の体制整備、知事の海外向けトップセールスなど、自治体が農家の収益安定を支援する事例もみられます。

6次産業化に取り組んで収益増に成功した農家もあるので、独自の発想で高収益化に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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舟根大

舟根大

医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。

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