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【みかんの害虫】ヤノネカイガラムシの防除方法&最新の有効農薬一覧!

【みかんの害虫】ヤノネカイガラムシの防除方法&最新の有効農薬一覧!
出典 : HP埼玉の農作物病害虫写真集

ヤノネカイガラムシを含むカイガラムシ類は、介殻(かいがら)に覆われているため農薬が効きにくく、柑橘類の難防除害虫の1つとされています。しかし、天敵も定着しており、適期を見極めて適切な防除対策を施せば被害を抑えることが可能です。

近年、柑橘の各産地からカイガラムシ類の被害が増えているという声が挙がってきます。中でもヤノネカイガラムシの被害が目立ち、カイガラムシ類の中でも被害が拡大しやすいため防除の徹底が重要です。
そこで、防除適期や効果的な農薬を含めた防除のポイントを解説します。

みかんなどの柑橘類へ大きな被害をもたらす「ヤノネカイガラムシ」

ヤノネカイガラムシはみかんやレモンなどの柑橘類に発生し、葉や枝、果実に付いて吸汁する害虫です。目につきやすい雌成虫の介殻(かいがら)は長さ2.5~3.5mmの紫褐色で、名前の示すとおり矢じりのような形をしています。

ヤノネカイガラムシ雌成虫(体長3mm)

ヤノネカイガラムシ雌成虫(体長3mm)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

近年、柑橘の産地においてカイガラムシ類の被害が増えていますが、特にヤノネカイガラムシは繁殖力旺盛で被害が拡大しやすいため注意が必要です。寄生密度が高いと葉や枝が枯れ、多発した場合には樹全体が枯れることもあります。

柑橘類 ヤノネカイガラムシの寄生枝葉

柑橘類 ヤノネカイガラムシの寄生枝葉
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

夏以降の発生では果実に付くこともあります。ヤノネカイガラムシが定着した場所には着色不良や肥大阻害が起こり、介殻を取り除いても回復しません。

雌成虫が多数定着した果実は、ゴマを振ったように見えることから「ゴマミカン」とも呼ばれ、商品価値は著しく低下し大きな損害を被ります。

柑橘類 ヤノネカイガラムシの寄生果

柑橘類 ヤノネカイガラムシの寄生果
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ヤノネカイガラムシをはじめカイガラムシ類が増加傾向にある原因としては、密植園が増えて農薬がかかりにくくなっていることや、温暖化によって発生時期が早くなり、防除適期が合わなくなっていることなどが考えられます。

ヤノネカイガラムシの生態と、多発時期の目安

発生時期

みかんの開花期 5月頃

5x5x2 / PIXTA(ピクスタ)

ヤノネカイガラムシは、地域によって年間で2~3回発生します。

越冬した雌成虫から生まれる第1世代は5月上旬に発生しはじめ、6月上旬頃をピークに7月下旬まで発生が続きます。

第2世代は7月中旬に発生しはじめ、8月中旬までがピークで10月上旬に終期を迎えます。

地域によっては第3世代が9月中旬に発生しはじめ、11月中旬頃が終期です。冬になると雄や幼虫は死に、雌の未熟成虫または成虫のみが越冬します。

世代ごとの発生期間が長く幅があるのは、雌がおおよそ2ヵ月という長期にわたって産卵するためです。

前述した発生時期は1つの目安であり、地域や年によって異なります。特に第1世代は2月以降の気温に大きく左右されるので、毎年枝葉を注意深く観察して、早期に発見することが大切です。

生態サイクル

ヤノネカイガラムシ雌成虫及び雄介殻

ヤノネカイガラムシ雌成虫及び雄介殻
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

産卵されたヤノネカイガラムシの卵は、数時間のうちにふ化します。

幼虫は雄、雌とも1齢期間が12~15日、2齢期間が20日前後です。

雌幼虫は歩行で新葉や果実に移動し、定着して紫褐色の介殻を形成します。介殻の中で幼虫から未成熟成虫、成虫と不完全変態し、一生をその場で過ごします。

雄幼虫は母虫の近くの古葉に集団を作って定着し、白い綿のようなロウ物質を分泌します。その後、葉裏に白い繭を作って蛹になり完全変態します。

白い繭は目立つので、発生を知る手掛かりにもなります。雄の成虫は小さなユスリカのような姿で2枚の羽をもち、飛んで移動します。

ヤノネカイガラムシは、柑橘類に寄生するほかの害虫に比べて環境条件による発生の増減が少ないものの、高温で乾燥した条件では発生が増える傾向があります。また、冬期に暖かいと成虫の生存率が上がるため、第1世代の発生が増えます。

収益を守る!ヤノネカイガラムシの防除体系&有効農薬一覧

ヤノネカイガラムシの農薬による防除効果を高めるためには、散布方法や時期に注意が必要です。そこで、効果的な防除方法について解説します。

なお、ここで紹介する農薬は、2021年11月現在、柑橘類のヤノネカイガラムシに登録のあるものです。実際の使用にあたっては、ラベルの記載内容をよく読み、容量や用法を遵守してください。

また、地域によって農薬の使用についての決まりが定められている場合がありますので、必ず確認し、守ってください。

天敵による生物的防除の効果を高める「冬期のマシン油乳剤散布」

みかん収穫後のマシン油散布

toraya /PIXTA(ピクスタ)

ヤノネカイガラムシの防除にあたっては、有力な天敵である「ヤノネキイロコバチ」と「ヤノネツヤコバチ」の2種が1980年頃に中国から導入されました。この2種は現在、全国の柑橘産地に定着しています。

この天敵による防除効果が高いので、冬期~春期の間にマシン油乳剤を散布しヤノネカイガラムシの初期密度を抑え、天敵による防除効果を安定させる方法が有効です。

また、冬期はロウ物質が薄くなるのでマシン油が浸透しやすく防除効果が高いのも利点です。冬期に95%マシン油乳剤の30倍、もしくは97%マシン油乳剤の60倍を散布するのが有効とされています。

ただし、寒さによる薬害の発生を防ぐため、冬期のマシン油散布は1月上旬までに行うとよいでしょう。樹勢が低下している樹に対してはマシン油の散布を控えたほうがよいため、適切に散布できるよう健全な樹勢を維持しておくことも重要です。

やむを得ず春期に散布する場合は、7月上旬までに、97%マシン油乳剤150倍程度に希釈して散布するとよいでしょう。

農薬散布のタイミングは? 春期以降の防除対策

みかんの摘果 6月頃

藤 / PIXTA(ピクスタ)

冬期にマシン油乳剤を散布し、初期発生の密度を減らしたら、第1世代発生ピークである6月中旬頃に1回目の農薬散布を行います。さらに、発生状況に応じて必要であれば、第2世代発生ピークである8月下旬にも2回目の散布を行います。

ヤノネカイガラムシは樹冠の内側の葉裏に付くので、樹冠の奥や葉裏までたっぷりと行き渡るよう丁寧に散布しましょう。

ただし、第2世代以降は発生が長期間にわたって続くため、防除適期を絞るのがむずかしくなります。できるだけ冬期と1回目の防除を的確に行い、十分に密度を下げておきましょう。

また、天敵である2種の寄生蜂を保護するため、天敵の産卵時期にあたる7月と9月はなるべく農薬散布を控え、ヤノネカイガラムシの密度が低ければ第2世代への防除も避けます。

なお、1回目、2回目の散布時期はあくまでも目安で、発生時期は気温などの条件次第で変わります。

第1世代では1齢幼虫の初発日を基準にその35~40日後、第2世代では30日後を目安に防除を行うのがよいでしょう。2齢幼虫をすぎると効果が薄くなるため、やはりこまめに発生を確認することが大切です。

ヤノネカイガラムシに適用のある農薬の例

冬期の散布としておすすめした97%マシン油乳剤は、夏期の防除でも効果があります。農薬メーカー各社から製品が出ているので、ヤノネカイガラムシに適用のあることを確認して選びましょう。

そのほかには、ジノテフラン水溶剤の「スタークル顆粒水溶剤」や「アルバリン顆粒水溶剤」、PAP乳剤の「エルサン乳剤」などが、春期以降の防除に有効です。

カイガラムシ類幼虫に適用のある「アプロード水和剤」は天敵類への影響が少なく、5月下旬から6月下旬に散布できます。ただし、感受性が低下している地域があるので注意しましょう。

ヤノネカイガラムシはカイガラムシ類の中でも特に被害が大きいので注意が必要です。柑橘類の栽培にあたってはこまめなチェックで発生状況を把握し、冬期や春期の早めの対策に心がけましょう。農薬を使用して発生密度を下げつつ、天敵の力を有効活用すると安定した効果が期待できます。

大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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