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「観光農園事業」に依存しない! ニューノーマルにも対応できる王将果樹園の経営戦略

「観光農園事業」に依存しない! ニューノーマルにも対応できる王将果樹園の経営戦略
出典 : 画像提供:株式会社やまがたさくらんぼファーム

山形県内でも有数の規模を誇る観光農園「王将果樹園」。その経営会社である株式会社やまがたさくらんぼファームは、コロナ禍で観光農園への来客が見込めない中でも、例年通りの利益を上げています。この結果につながった取り組みと、組織の背景を伺いました。

株式会社やまがたさくらんぼファーム代表取締役 矢萩 美智(やはぎ よしとも)さんプロフィール

大学卒業後、祖父の代から続く有限会社王将観光果樹園に入社。当時経営を担っていた父との経営方針の違いにより、一度は農業から離れ一般企業に就職する。

2年後、農場経営について同じ考えを持っていた祖父に背中を押され、再び有限会社王将観光果樹園へ入社する。その後2006年に専務取締役、2011年に代表取締役に就任する。同年社名を有限会社王将観光果樹園から株式会社やまがたさくらんぼファームへ変更する。

ロゴマークの刷新や、新社屋建設、時局に合わせたキャンペーンの打ち出しなどを積極的に行っている。

株式会社やまがたさくらんぼファーム代表取締役 矢萩 美智(やはぎ よしとも)さん

株式会社やまがたさくらんぼファーム代表取締役 矢萩 美智(やはぎ よしとも)さん
画像提供:株式会社やまがたさくらんぼファーム

公式ホームページ:山形で、さくらんぼ・桃・ぶどう・りんご狩りは王将果樹園(やまがたさくらんぼファーム)

祖父の代から引き継がれてきた基盤を進化させた観光農園事業

株式会社やまがたさくらんぼファームが運営する「王将果樹園」は、山形県内でも人気の温泉地「天童温泉」のある天童市にあります。

「王将果樹園」は、代表取締役・矢萩さんの祖父である矢萩光芳さんが1969年に創業した「ヤマゴ果樹園」を、2代目の矢萩美明さんが法人化した観光果樹園です。

株式会社やまがたさくらんぼファーム代表取締役 矢萩美智さん(以下役職・敬称略) 祖父が果樹園を運営していた頃は、農協への出荷と直売所での販売がメインだったと聞いています。この頃から祖父は果実の直販に強いこだわりがあったといいます。

2代目である父が果樹園を法人化し、有限会社王将観光果樹園としての運営を始めてからは、観光農園事業と直販の2本柱で利益を上げてきました。天童温泉が近かったこともあり、特にバブルの時代には多くの観光客が詰めかけました。

多いときは年間6万人ものお客様が「王将果樹園」にいらっしゃいました。その中には祖父や父の代からずっと贔屓にしてくださっているお客様も多くいらっしゃいます。

東日本大震災での集客減をきっかけに6次産業化スタート

多くの来園者が訪れていた「王将果樹園」でしたが、2011年の東日本大震災を境に来園者数が激減したといいます。来園客が収穫するはずだった果実が収穫できなくなってしまったことで、多くの果実が廃棄されました。

矢萩 せっかく丹精込めて栽培してきた作物ですから、ただ廃棄するのでは忍びないですよね。そこで余剰となったさくらんぼをなんとか活用しようと始めたのが、加工食品の製造・販売でした。

冷凍のさくらんぼから始まり、さくらんぼ果汁を活用したソフトクリームなど、さまざまな加工食品の生産に乗り出しました。

さくらんぼ果汁を用いたソフトクリームを敷地内のプレハブ店舗にて販売したところ、年間でおよそ6,000個を売り上げたのです。

王将果樹園 カフェで販売されているパフェとソフトクリーム

カフェで販売されているパフェとソフトクリーム
画像提供:株式会社やまがたさくらんぼファーム

矢萩 ソフトクリームは、全国各地の観光農園や道の駅などで定番になっている商品です。しかし「王将果樹園」のプレミアムさくらんぼソフトクリームは、オリジナルのさくらんぼ果汁を用いた加工によって、市販品との差別化を明確にしました。

プレミアムさくらんぼソフトクリームの販売は「王将果樹園」にご来園くださるお客様から好評をいただき、6次産業化のいいスタートを切ることができました。

やまがたさくらんぼファームは、地元の酒造会社や和菓子店とコラボし、さくらんぼ果汁を活用したリキュールやお菓子などの製造・販売も行い、積極的に6次産業化を推進しています。

「王将果樹園」の魅力の幅を広げる施設を増設

矢萩 ソフトクリームの売れ行きが好調だったことに加えて、お客様にゆったりと「王将果樹園」を楽しんでいただけるようにと、2015年にショップ併設のカフェ「oh!show!cafe」を開設しました。

王将果樹園 真っ白な建物が印象的な「oh!show!cafe」

真っ白な建物が印象的な「oh!show!cafe」
画像提供:株式会社やまがたさくらんぼファーム

果実狩りを満喫した後には、カフェでゆっくりひと休みして、旬のフルーツを使ったスイーツを楽しむことができます。「oh!show!cafe」のオープンによって「王将果樹園」の観光農園としての楽しみ方がさらに広がりました。

農業をしながら観光を楽しむファームステイを企画

やまがたさくらんぼファームは、さくらんぼの収穫期に農園の近隣に宿泊しながら、さくらんぼの収穫を楽しむことができるファームステイ「体”換”農泊」の企画を立ち上げました。

矢萩 「体”換”農泊」の企画では、地元で離農された方が住んでいた空き家を買い取って整備した研修棟の活用を計画しました。宿泊料金の代わりに4時間の農作業をしていただいて、農業を体験していただくというコンセプトの企画です。

近郊のビジネスホテルに宿泊するのではなく、農園近くの住宅型研修棟にお泊りいただくことで、参加者様に「第二の故郷のような“繋がり”を感じていただきたい」という思いがありました。

王将果樹園 住宅型研修施設「やまさくハウス」

住宅型研修施設「やまさくハウス」
画像提供:株式会社やまがたさくらんぼファーム

残念ながら「体”換”農泊」のイベントは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で受け入れ中止となってしまいました。しかし企画時には温泉地付近の民泊で農業体験をしながら、その合間に観光もできるという魅力を打ち出し、多くの反響があったといます。

新型コロナウイルス感染拡大により相次ぐ予約キャンセルと臨時休園

さまざまな取り組みで観光農園事業を進化させていったやまがたさくらんぼファームですが、新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う外出自粛の影響で、2020年春以降「王将果樹園」への客足も遠のいていったのです。

矢萩 新型コロナウイルスの影響が拡大していくにつれて、ほとんどの予約がキャンセルになりました。
さらに2020年5〜7月は、繁忙期であるさくらんぼ狩りの時期にもかかわらず「王将果樹園」と「oh!show!cafe」を臨時休園せざるを得なくなりました。

地元企業やボランティアの協力で廃棄するさくらんぼの量を大幅に削減

来園客が収穫することを想定して栽培されていた果樹ですが、その来園客がいないのであれば従業員で収穫しなければなりません。しかし従業員だけでは収穫しきれず、せっかく栽培したさくらんぼを廃棄する可能性がありました。

そこで、やまがたさくらんぼファームは、天童温泉にある宿泊施設や旅行代理店の従業員、地元に住む大学生や障がい者などに協力を依頼したのです。

矢萩 古くからお付き合いのある天童温泉の従業員の方々を中心に、私たちに力を貸してもらえないかと打診しました。その結果、天童温泉の従業員の方だけでなく、地元大学生やボランティアなど多くの方々にご支援いただきました。

地元の皆様のご協力のおかげで、約17tのさくらんぼを収穫し、廃棄するさくらんぼの量を大幅に削減することができたのです。

観光農園事業に依存しない3つの工夫でコロナ禍を生き抜く

コロナ禍の中でも、地元企業や地元の大学生、ボランティアの協力により収穫したさくらんぼや、丹精込めて栽培した果実を「1人でも多くのお客様に届けたい」という思いから、やまがたさくらんぼファームはインターネットを活用した取り組みに力を入れました。

合計31kgの「ワケあり果物」が届く通信販売「ワケあり倶楽部」

収穫した果実の中には、選果の段階で商品にならないと判断されるものがあります。それらのうち、見た目に難があっても味には問題のない果実が「ワケあり果物」です。

「ワケあり果物」は「王将果樹園」の店頭販売で人気がある商品でした。そこでやまがたさくらんぼファームは、さまざまな種類の「ワケあり果物」を、旬の季節に合わせて購入者に届ける頒布会「ワケあり倶楽部」をスタートさせました。

矢萩 自粛期間中は外出を必要最低限に抑え、店頭での買い物を避けたいというお客様が多くいらっしゃいます。

そんなお客様にも、まるで観光農園で収穫したようなたくさんの果実を、1番おいしく召し上がっていただけるタイミングでお届けしたいという思いで「ワケあり倶楽部」を始めました。

「ワケあり倶楽部」は通信販売でお客様に旬の果実を届けられるだけではなく、食品ロスの削減にもつながる取り組みです。

ワケあり倶楽部|やまがたさくらんぼファーム(王将果樹園)

王将果樹園「ワケあり倶楽部」

出典:王将果樹園 ホームページ

自社製品だけでなく地域の産業も知ってもらえる通信販売「山形応援福袋」

前述した通り、コロナ禍の影響は観光地である天童温泉に大きなダメージを与えました。観光による収入が期待できない中で、「王将果樹園」の果実や地元の特産品を販売して売り上げにつなげようと企画したのが「山形応援福袋」です。

「山形応援福袋」には「王将果樹園」のさくらんぼを始め、地元農家が生産しているお米や地元企業が製造しているお菓子や地酒など、地元ならではのものを詰め合わせて、オンラインで販売されました。

王将果樹園 山形応援福袋の案内

山形応援福袋の案内
出典:王将果樹園 Facebook

「山形応援福袋」の企画は、観光産業の損失を補うためだけではなく、コロナ禍で旅行ができない中でも「王将果樹園」や天童温泉の魅力をPRすることができる取り組みです。
購入者に「旅行ができるようになったら、山形や天童温泉に行ってみたい」と思ってもらえるプロモーションとしても成功しました。

オンラインで収穫体験ができる「AIR農園部」

コロナ禍で全国的に外出自粛が求められるようになった影響で、オンラインミーティングやライブ配信が急速に普及しています。やまがたさくらんぼファームでも、Zoomを活用した「AIR農園部」という企画をスタートさせました。

「AIR農園部」では、参加者と矢萩さんがオンラインでつながり、「王将果樹園」の農園内を一緒に散策していきます。

オンラインでラ・フランスの収穫の様子を見てもらったり、矢萩さんがラ・フランスのおいしい食べ方を説明したりします。オンラインでやりとりができるからこそ、参加者が疑問に思ったことにもすぐに答えることができます。

やまがたさくらんぼファーム ラ・フランスの収穫について説明する矢萩さん

動画内で、ラ・フランスの収穫について説明する矢萩さん
出典王将果樹園 Youtube公式チャンネル「王将果樹園 AIR農園部はじめます。」

王将果樹園 Youtube 公式チャンネル「王将果樹園 AIR農園部はじめます。」

矢萩 まるで一緒に収穫を楽しんでいるようなオンライン体験を楽しんでいただいた後には、食べごろになったラ・フランスを参加者の元へお届けします。
オンラインとはいえ、収穫する様子を目の当たりにしながらラ・フランスを購入できる「AIR農園部」は、子供の食育活動の1つとしてファミリー層からの人気を集めました。

、やまがたさくらんぼファーム ラ・フランス収穫の様子

ラ・フランス収穫の様子
画像提供:株式会社やまがたさくらんぼファーム

矢萩 これまでは売り上げの大部分が観光農園事業に偏っており、有事の際には売り上げが大幅に下がるというリスクがありました。
しかし通信販売やオンラインでの取り組みを工夫したことで、コロナ禍における観光農園事業での損失をほぼカバーすることができました。

観光農園事業以外のアプローチでお客様とのつながりを作り、お客様のニーズを敏感にとらえていくことの重要性を強く感じています。そしてそのニーズを商品開発や業務改善に活かし、積極的に発信していくことで、私たちはコロナ前と同程度の利益を確保することができたのです。

観光農園事業では徹底したコロナ対策を実施

その一方で「王将果樹園」では、観光農園事業としての収穫体験やカフェ運営を再開するため、徹底したコロナウイルス感染予防対策の実施に取り組んでいます。

YouTubeとデジタルサイネージを活用し接客人員削減

コロナ禍以前、「王将果樹園」では果物狩りのお客様に対して、20人ほどの人員を割いて対応していました。しかし「3密」を避けるためには、今まで通りの人員で接客することはできません。

矢萩 そこで、私たちは「王将果樹園youtubeチャンネル」を開設しました。YouTubeの動画で果実狩りの注意点や当日の流れを案内し、来園前に事前にご覧いただくようにアナウンスしています。

王将果樹園Youtube公式チャンネルはこちら

矢萩 さらに果樹園内にも動画を再生するディスプレイ(デジタルサイネージ)を設置し、ご案内までの待ち時間に動画をご覧いただけるようにしています。これにより接客にかかる従業員の負担が激減しました。

現在、接客に当たっている従業員の人数は3人だけであり、業務改善としての効果も大きいといいます。

非接触で果実を購入することができる「くだものじはんき」を設置

2020年12月に、非接触でやまがたさくらんぼファームの果実や加工品を購入できる「くだものじはんき」を、国道沿いにある「王将果樹園」の駐車場内に設置しました。この「くだものじはんき」では「王将果樹園」の営業時間に関わらず、24時間いつでも果実や加工品を購入できます。

矢萩 緊急事態宣言が出ていなくても、できる限り買い物時には人との接触を避けたいと考える方は多いでしょう。「くだものじはんき」はコロナ前から導入したいと考えていたものですが、まさにコロナ禍の消費ニーズに応えられる設備だと実感しています。

やまがたさくらんぼファーム くだものじはんき

やまがたさくらんぼファームの作物以外にも地元の特産品が購入できる
画像提供:株式会社やまがたさくらんぼファーム

ニューノーマルな営農で得られたメリット

やまがたさくらんぼファームは、コロナ禍に対応したさまざまな取り組みを実践してきました。ニューノーマルな営農でメリットがあったのは、経営的な利益面だけではなかったといいます。

さくらんぼの全体収量を正確に把握できるようになった

コロナ前は観光農園を主軸に運営をしていたため、来園客がどの程度果実を収穫していたかを把握できず、自社全体の収量を正しく知ることができずにいました。

矢萩 2020年のシーズンは、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて観光農園は臨時休園していました。そのため、この時期のさくらんぼは従業員とご協力いただいた地域の方々で収穫しました。

自分たちで全てを収穫する機会が生まれたことで、さくらんぼの全体収量を正しく把握できるようになったのです。加えて、20以上あるほ場エリアごとや、栽培する品種ごとの収量も把握することができました。

さくらんぼの全体収量を正しく把握できたことは、今後の効率的な栽培や観光農園の運営に活かしていけるでしょう。

地元企業との連携によって発信力が強化された

「王将果樹園」の近くには山形県内でも人気の温泉地である天童温泉があります。そのため観光の一環として「王将果樹園」へ来園する方も多くいます。

その天童温泉や近隣の見所の情報を発信している企業が、株式会社DMC天童温泉です。
DMCとはDestination Management Companyの頭文字をとったもので、地域と協同して観光地域づくりを行う法人のことです。

株式会社DMC天童温泉

DMC天童温泉は天童温泉エリアの観光ツアーを始め、地域ブランディングなど情報発信以外にもさまざまな事業を行っています。しかしコロナ禍によってツアーやイベントの中止が余儀なくされてしまいました。

矢萩 地域に積極的に観光客を呼び込むことが難しくなった状況で、何か力を合わせてできることはないかと始めたのが、やまがたさくらんぼファームとDMC天童温泉のコラボ企画であるライブコマース動画の配信です。

DMC天童温泉 TENDO DAYS Youtube公式チャンネル「王将果樹園からライブツアー&ショッピング」

DMC天童温泉 TENDO DAYS Youtube公式チャンネル

「王将果樹園」のほ場を舞台に、さくらんぼや桃を始めとしたさまざまな果実のおいしさを伝える生配信では、特設ページとリンクしたクイズ企画やオンラインショップの紹介も行われました。ライブコマース動画は、やまがたさくらんぼファームとDMC天童温泉のYoutubeチャンネルで生配信され、多くの視聴者から注文をいただいたそうです。

矢萩 DMC天童温泉の方々にはコラボ配信企画だけではなく、さくらんぼ収穫の際にも力をお借りしました。
普段から地元企業との連携を高め、助け合う関係性を築くことで、お互いのために今できること、やりたいと思うことを発信し実現につなげられたのだと思います。

柔軟な企画力を育む企業風土と組織体制

やまがたさくらんぼファームは、東日本大震災やコロナ禍といった危機的状況を、さまざまな取り組みで乗り越えてきました。危機を乗り越えられる柔軟な企画力の秘密は、やまがたさくらんぼファームが培ってきた企業風土にあります。

従業員が挑戦しやすい環境づくり

状況に応じたさまざまな企画を打ち出していくやまがたさくらんぼファームですが、企画を練るための会議は行っていません。

矢萩 形式ばった会議は行っていませんが、普段からお昼時の雑談や従業員のチャットグループなどで意見を出し合っています。もっぱら私からアイデアを出すことが多いですが、従業員がカフェメニューや新商品、新企画のアイデアを出してくれることもあります。

「やりたい!」と声が上がった提案はとりあえず小規模から手がけてみて、お客様の反応を見ながらその後の展開を決めます。販売戦略だけでなく、システムや業務改善についても従業員が意見を出してくれることも少なくありません。

分野ごとに組織を分けて状況を的確に判断する

新しいアイデアを出し、実行に移す際には現状を正しく把握することが重要です。やまがたさくらんぼファームでは組織を「生産」「販売」「観光」「加工」「飲食」の5部門に分けています。

各部門の責任者からその部門で行っている取り組み内容や進捗具合を吸い上げることで、細かく状況を把握できるしくみを確立しているのです。

気兼ねなく休みを取れる組織づくり

農業は年間を通して作業が必要な仕事です。農家の規模や栽培する作物によって労働時間は異なりますが、労働時間の長さや過酷さから、農業全体が過酷な仕事だという根強いイメージがあるのは事実です。

矢萩 農業は確かに休みも少なく、ワークライフバランスを取りにくい仕事です。やまがたさくらんぼファームでは、さくらんぼ以外にも桃やブドウ、りんご、梨も栽培しているため、必然的に従業員の仕事は多くなります。

しかし、従業員にもそれぞれの生活があり、妊娠や出産、介護などで生活の変化もあるでしょう。

そのような中でもメリハリをつけて働ける工夫として、労働時間を繁忙期にあたるサマータイムと閑散期にあたるウィンタータイムで分けています。さらに長期休暇も年に2回、10日間ずつ取得してもらっています。

休日はしっかり休んでリフレッシュし、働く時はキッチリ切り替えて業務に取り組むことで、柔軟な発想力が養われます。体力的にも決して楽な仕事ではないからこそ、メリハリをつけて働くことが大切です。

また、やまがたさくらんぼファームでは、従業員がいつ産休育休や介護などで現場を離れることになっても、現場が滞りなく運営できるよう、あらゆる業務をこなせるオールラウンダーな従業員の育成に力を入れています。

矢萩 自分が抜けると周りに迷惑がかかると思ってしまうと、休む権利があってもなかなか休みにくくなってしまうものです。従業員が安心して休みを取れる体制を整えることは、持続可能な農業経営において非常に重要です。

矢萩さんがこのような考えに至った背景には、過去にサラリーマンとして働いた経験があるからだといいます。「雇用される側の気持ちを知っているからこそ、自分が先頭に立つときは従業員と同じ方向を見ることを心がけている」と語ってくださいました。

誰でも農業ができるような未来をめざして

やまがたさくらんぼファームは、農福連携の取り組みも始めています。

矢萩 今年、障がい者雇用で採用した従業員がいます。地元の高等養護学校に通っていて、高校3年生の時に2回、インターンシップとして一緒に働いてくれた人材です。その時の経験から「やまがたさくらんぼファームで働きたい」と感じ、当園への就職を希望してくれました。

障がいのある方や継続的な治療が必要な病気を患っている方でも取り組めるのが「農業」なのだと再認識しました。今後も多様な人材を受け入れていくことで、組織全体がよい方向に変化していけると考えています。

株式会社やまがたさくらんぼファームのスタッフ

株式会社やまがたさくらんぼファームのスタッフ
画像提供:株式会社やまがたさくらんぼファーム

公式ホームページ、オンラインショップ、SNSはこちらから
公式ホームページ:山形で、さくらんぼ・桃・ぶどう・りんご狩りは王将果樹園(やまがたさくらんぼファーム)
王将果樹園オンラインショップ
王将果樹園Facebook
王将果樹園Instagram

「ユニバーサル農業を実現したい」と語る矢萩さんがめざしているのは、障がいの有無だけでなく、日本人も外国人も、どんな人でも挑戦できる農業と、どんな人でも農業を楽しめる観光農園です。

コロナ渦でもオンラインによる販売に素早く切り替え成功したこと、地域との連携によるサポート体制構築、アイデアを出し合い働きやすい仕組みづくりを実現した組織体制は、今後の農業経営を盤石にするうえでも重要な要素だと感じました。

1つの要素や固定観念に囚われず、多様性を受け入れ時局に柔軟に対応していくことで、やまがたさくらんぼファームのように、一歩先へ進化していけるのではないでしょうか。

福馬ネキ

福馬ネキ

株式会社ジオコス所属。「人の心を動かす情報発信」という理念のもと、採用広告を中心にさまざまな媒体で情報発信を手がける株式会社ジオコスにてライターを務める。

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