かいよう病はレモンの大敵! 早期に防除の徹底を
レモンのかいよう病は、細菌が原因で発生する病害です。ほかの柑橘類に比べて、樹勢が強いのがレモンの特長ですが、かいよう病に弱いという側面もあります。この記事では、適切に防除し、栽培しやすくなるように、レモンのかいよう病の病徴や防除方法について解説します。
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消費者から人気の高いレモンは、温暖な地域を中心として盛んに栽培されています。レモン栽培でブランド化に成功し、安定した収量を確保できれば農家所得向上も期待できるでしょう。
lucky cat / PIXTA(ピクスタ)
レモンはかいよう病のリスクが高い
かいよう病は細菌が原因で発生する病害です。感染力の強い細菌で、防除が難しいことから、難防除病害として分類されています。主に柑橘類で多く発生する病害であり、その中でもレモンは発生するリスクが高いため注意が必要です。
発生初期の葉に生じる病斑は、円形の淡黄色で、周囲は水浸状となります。その後、病状が進行すると中央部がコルク化し、周囲の広い面積で黄色いハローが生じます。
柑橘類 かいよう病 葉表病斑
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
果実や緑枝に発生した場合も病斑(濃緑色)が生じます。その後、コルク化(淡褐色)してかさぶたのように盛り上がるのが特徴です。
かいよう病が新葉に多発すると落葉の原因になり、樹勢低下を引き起こすことがあります。また、果実に発生した場合、外観を著しく損ねることから商品価値がなくなります。農家所得の低下につながるため防除の徹底が必要です。
橘類 かいよう病 発病葉はゆがむ
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
レモンのかいよう病に注意すべき時期
かいよう病の発生リスクが高いのは、「葉や果実の組織が軟弱である時期」です。かいよう病を引き起こす細菌の増殖に適した温度は「25~30℃」で、枝や病斑部で越冬した細菌は暖かくなってくる3月頃から増殖を始めます。
その後、増殖した細菌は風雨などの影響によって流出します。傷口や気孔から、葉または果実に入り込むことで発病します。
主な感染時期は以下のようになっています。
・葉の気孔感染:6月頃の硬化期まで
・果実:直径6mm程度に生育する8月頃まで
ただし、強風が原因の傷口感染は、台風被害の可能性がある10月頃まで考えられます。
そのほかでは、ミカンハモグリガによる食害痕から感染するケースもあり、暖地を中心に、やはり10月頃まで注意が必要でしょう。
レモンのかいよう病の防除のポイント
toraya / PIXTA(ピクスタ)
レモンのかいよう病は、防除が難しい「難防除病害」に位置付けられています。しかし正しい防除を心掛ければ、被害を抑えられる場合もあります。かいよう病の防除方法を紹介しますので参考にしてください。
耕種的防除:発生しにくい環境を作る
かいよう病は細菌病であることから、農薬防除だけでは十分な効果が得られないケースがあります。そのため、強風対策や伝染源の防除といった耕種的防除の徹底も大切です。
強風対策としては、防風林やネットの設置が考えられます。また、窒素過多も枝や葉の過繁茂を助長して、強風による傷口感染の原因となりやすいため避けましょう。
発病した枝や果実の適期防除は重要ですが、細菌の越冬原因となる夏秋梢の剪除も大事です。夏秋梢はミカンハモグリガの病害も受けやすいことから、株全体を確認し、見落としのないように気を付けましょう。
柑橘類 ミカンハモグリガ 幼虫による食害痕
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
化学的防除:農薬の予防散布が重要
農薬による化学的防除は、主に以下のようなケースで実施されています。
・発芽前の防除
・強風および台風の襲来が予想される前の防除
・ミカンハモグリガの防除
かいよう病は発生後の防除が難しい病害であることから、発病前に防除することが特に重要です。農薬による防除効果が高いとされるのは銅水和剤です。「ICボルドー」は予防的散布だけでなく、発芽期以降にかいよう病が多発したほ場で散布(希釈倍数50倍)しても効果が期待できます。
ただし、「ICボルドー」はカイガラムシ類の防除に効果的な「マシン油乳剤」との混用はできません。使用する場合は1ヵ月程度の間隔を空ける必要があります。
また、同じく銅水和剤の「ムッシュボルドー」の散布(希釈倍数500倍~1,000倍)も、かいよう病の防除に有効ですが、薬害軽減のため「クレフノン」や「アプロン」などの炭酸カルシウム水和剤を加用することが望ましいといえます。
かいよう病に耐性のあるレモンの品種は?
「璃の香(りのか)」の親系統 リスボンレモンと日向夏
fox☆fox / PIXTA(ピクスタ)・natsu / PIXTA(ピクスタ)
かいよう病の病原菌は、感染力の強い細菌です。そのため、化学的防除と耕種的防除を組み合わせても発病するケースがあります。そこで栽培の現場では、かいよう病に耐性のある品種が求められていました。そんな中、近年では期待に応えられるような品種が登場しつつあります。
例えば、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が開発した「璃の香(りのか)」という新品種は、従来の品種に比べてかいよう病に対する強い抵抗性を示しました。
また、レモンの産地である広島県の「県立総合技術研究所農業技術センター」でも、かいよう病に抵抗性のある品種の開発が始まっています。今後のレモン栽培の現場では、かいよう病に抵抗性のある品種の導入が進んでいく可能性があるので、最新情報をチェックしておきましょう。
コミヤカメラ / PIXTA(ピクスタ)
レモンは柑橘類の中でもかいよう病に弱い作物です。かいよう病が発生し病害が拡大すると、果実や葉がかさぶた状になり、品質低下や出荷量の減少につながります。
強い抵抗性を示す品種の開発も徐々に進められているので、過去にかいよう病に悩まされた経験のある方や心配な方は、導入を検討してみてはいかがでしょうか。レモンの栽培農家の方は、今回紹介した防除方法も参考にしながら、安定経営に役立ててください。
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中原尚樹
4年生大学を卒業後、農業関係の団体職員として11年勤務。主に施設栽培を担当し、果菜類や葉菜類、花き類など、農作物全般に携わった経験を持つ。2016年からは実家の不動産経営を引き継ぐ傍ら、webライターとして活動中。実務経験を活かして不動産に関する記事を中心に執筆。また、ファイナンシャルプランナー(AFP)の資格も所持しており、税金やライフスタイルといったジャンルの記事も得意にしている。