みかん(柑橘類)のアブラムシ類対策! 種類別の特徴と効果的な防除方法
みかん(柑橘類)に寄生するアブラムシ類は、新芽を加害し樹勢を弱めるだけでなく、すす病などの病害を誘発することもあります。大量に発生すると、収量減や品質低下につながるため、早期発見と適切な防除が重要です。本記事では、アブラムシの種類や被害の特徴、有効な農薬と散布時期、使い分けについて解説します。
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みかん(柑橘類)に寄生するアブラムシ類の種類ごとに想定される被害と防除のポイントを解説します。
みかんの収量に影響大! アブラムシ類被害の特徴
hamahiro / PIXTA(ピクスタ)
春から秋にかけて、みかんなどの果樹にはアブラムシ類が発生することがあります。新芽への加害によって、葉が縮れるなど樹勢に影響を与えます。それだけではなく、分泌する甘露によってすす病などの病害を伝播する害虫でもあるので注意が必要です。
アブラムシ類が大量に発生すると、収量が減少するだけではなく品質低下の原因にもなります。アブラムシ類の増殖時期は新梢の発芽時期と重なるので、早期発見や発生状況に応じた対策が求められます。
みかん(柑橘類)へ寄生するアブラムシ類の主な種類
みかんに発生する主なアブラムシの種類は、次の3つが挙げられます。
●ミカンクロアブラムシ
●ワタアブラムシ
●ユキヤナギアブラムシ
それぞれのアブラムシについて、見た目や被害の特徴、発生しやすい条件について解説します。これらのアブラムシ類はみかん以外の植物にも寄生するため、園地の周囲で気を付けるべき作物・植物についても紹介しています。
ミカンクロアブラムシ
ミカンクロアブラムシの成虫(体長2.5mm)と幼虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ミカンクロアブラムシは、黒色で、体長は3mmほどあり、みかんなどの柑橘類に寄生するアブラムシ類の中でも大型です。若枝に集団で寄生し吸汁している様子が見られます。
柑橘類のほ場内や樹上、あるいはその周辺の山林で卵として越冬し、新梢が発芽する前の3月頃にふ化して、4~10月にかけて多発します。
ミカンクロアブラムシに集団寄生された枝は萎縮し、葉がしおれることが多くあります。みかんの樹体全体に寄生するときは、生長を妨げることもあります。
ミカンクロアブラムシの寄生枝
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ミカンクロアブラムシは果実にも寄生することがあるので注意が必要です。幼果に寄生するときは落果することもあり、排泄物によってすす病を引き起こすこともあります。
また、ミカンクロアブラムシは、萎縮病の原因となるトリステザウイルスを伝播する主な媒介虫でもあります。特に新梢に寄生する傾向があるので、被害を広げないためにも、新梢が発芽する前に農薬散布が必要になります。
ワタアブラムシ
ワタアブラムシ成虫(体長1.5mm)と幼虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ワタアブラムシは、みかんなどの柑橘類に寄生するアブラムシ類の中では比較的小型です。体長は翅(はね)がないものは1mm前後、翅があるものは2mm前後です。個体によって色に違いがあり、薄い黄白色から濃い緑色まで、さまざまな色のワタアブラムシが生息します。
ワタアブラムシもミカンクロアブラムシと同じく新梢につき、吸汁して枝や樹体全体に被害を与えます。
ワタアブラムシは、みかんなどの柑橘類だけでなく、多くの果樹や樹木、ウリ科とナス科の果菜類や雑草などにも寄生します。春、ちょうど新梢の発芽・展開する頃に、翅のあるワタアブラムシが果菜類のほ場や雑草から飛来して園地内での発生が始まることが多いようです。
ナスに多発したワタアブラムシ
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ワタアブラムシもトリステザウイルスを伝播する媒介虫です。発見したときは被害を広げないために速やかに防除を行いましょう。
薬剤抵抗性が短期間で発達することもワタアブラムシの特徴です。散布したことのある農薬の中から効果があるものだけを選んで使用する必要があります。秋にも大量発生することがありますが、秋枝を生長させる予定がなければ防除の必要性は高くありません。
ユキヤナギアブラムシ
ユキヤナギアブラムシ成虫(体長2mm)と幼虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ユキヤナギアブラムシは、体長は2.5mmほどでくすんだ濃い緑色の害虫です。若葉の裏側に寄生していることが多く、寄生葉は裏側を中心に横向きに巻いた形になります。
ユキヤナギアブラムシの寄生葉 葉裏を内側に巻いている
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
主に新梢に寄生し、大量発生するとみかんの樹体の生長を阻害するだけでなく、すす病を引き起こすこともあるので注意が必要です。
ユキヤナギアブラムシは落葉果樹やバラ科の樹木などにも寄生することがあります。卵で冬を越して、みかんなどの柑橘類に飛来して無翅虫(むしちゅう)を生み、さらに増殖します。
ボケ(バラ科ボケ属)に寄生したユキヤナギアブラムシ
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ミカンクロアブラムシと比べると発生から被害が生じるまでの期間が短いことも特徴です。
ユキヤナギアブラムシは春だけではなく、夏や秋にも被害を引き起こします。一般に農薬に対する耐性が高く、防除が難しいとされています。
みかんをアブラムシ類から守るには? 農薬による効果的な防除対策
5x5x2 / PIXTA(ピクスタ)
みかんをアブラムシ類から守るには、アブラムシの種類に合った農薬を選ぶことと、散布時期を見極めることが大切です。また、農薬を散布することでアブラムシ類の天敵を減らしてしまうのでは、効果的な散布とはいえません。農薬散布について、3つのポイントに分けて詳しく見ていきましょう。
1.農薬の適期散布
2.農薬は「アブラムシの種類」によって検討する
3.農薬散布時は「天敵生物」の保護を意識する
1. 新梢生育時期は、農薬の適期散布で「発生させない・増やさない」!
新梢が発芽・展開する時期に、アブラムシ類も成長して増殖します。特に幼木や高接樹のあるほ場では、アブラムシ類による新梢加害に注意しましょう。発生を認めたら、農薬による防除を検討します。
アブラムシ類の天敵生物が繁殖している成木園では、必ずしも防除する必要はありません。しかし、多発しているときや、生育阻害などの影響が見られている場合は、農薬の散布が必要です。
また、新梢の生育が年によって異なる点にも注意しましょう。暖春の年はアブラムシ類の増殖開始期も通常以上に早まるので、農薬散布も早める必要があります。
農薬の希釈濃度を高くすると、葉に薬斑が生じることもあります。それぞれの農薬において、ラベルの記載内容をよく読み、正しく散布しましょう。
2. 農薬は「アブラムシの種類」によって検討しよう
発生しているアブラムシの種類によって農薬への耐性などが異なるため、発生の予測や確認ができる場合には、どの種類のアブラムシなのかを見極めたうえで農薬を選定するようにしましょう。
特に様々な農薬への薬剤抵抗性を持つワタアブラムシは、毎年最新の情報を確認するようにしてください。
「モスピラン顆粒水溶剤」「ベストガード水溶剤」「ダントツ水溶剤」などネオニコチノイド系の農薬が広く使われてきましたが、効果が低いワタアブラムシが見つかっているという報告もあります。
農薬散布時は「天敵生物の保護」にも注意を!
アブラムシ類は、テントウムシやクサバカゲロウなどを天敵としています。ほ場周辺に天敵となるテントウムシやクサバカゲロウなどがアブラムシを捕食している場合は、これらの天敵への影響がないかを調べて農薬を選択しましょう。
七味 / PIXTA(ピクスタ)
みかんの園地にアブラムシ類が発生すると、葉や枝の生育が阻害され、収量の減少や品質低下などの深刻な被害を引き起こすことも珍しくありません。
みかんに発生することが多いミカンクロアブラムシやワタアブラムシ、ユキヤナギアブラムシの生態それぞれに有効な農薬と天敵への影響について理解し、より効果的な防除計画を立てるようにしましょう。
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林泉
医学部修士、看護学博士。医療や看護、介護を広く研究・執筆している。医療領域とは切っても切れないお金の問題に関心を持ち、ファイナンシャルプランナー2級とAFPを取得。