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“契約農家”になるメリットは? 契約栽培の収入例と、契約先の探し方

“契約農家”になるメリットは? 契約栽培の収入例と、契約先の探し方
出典 : tsukat / PIXTA(ピクスタ)

契約農家は、特定の企業と契約を交わしたうえで作物の栽培を行うため、通常の農家よりも安定した収入を得ることが可能です。そこで本記事では、契約農家とはどのようなものか、契約するメリットや収入例、契約先を探す方法、マッチングサービスについて詳しく紹介します。

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現在日本では、契約農家のニーズが高まってきています。なぜなら、食品メーカーや飲食店などは、農家と契約することで、条件に合った作物の栽培と仕入れ、加工をできるからです。そこで本記事では、契約農家を検討している方に向け、情報をまとめました。まずは契約農家とは何かについて見ていきましょう。

そもそも「契約農家」とは?

カゴメ株式会社「カゴメトマトジュースプレミアム」の契約栽培ほ場

カゴメ株式会社「カゴメトマトジュースプレミアム」の契約栽培ほ場
出典:株式会社PR TIMES(カゴメ株式会社 ニュースリリース 2018年7月5日)

契約農家とは、食品メーカーや飲食店などが指定した条件で契約を行い、条件を満たす作物を栽培する農家のことです。食品メーカーや飲食店が指定する条件には、主に以下のようなものがあります。

栽培する作物の種類
数量
価格
など

通常の農家は不特定多数からの需要を受け、そのほかの農家と共同体的な制約のもとに栽培を行っています。一方で、契約農家はこれらの制約がなく、自由な契約のもとで栽培が行えます。

現在日本では食生活の多様化が進んでおり、農家から消費者に商品が届くまでに幅広い加工が行われるようになっています。それにつれて、食品メーカーや飲食店は、少数多種の生産販売への対応が困難になってきています。

そのため、農家と契約を結び、品目や品種、作物の規格、栽培管理の方法などを特定して作物を栽培してもらいます。それにより、自社や市場のニーズを満たしながら、負担やコストを抑える動きを可能にしています。

代表的なケースとしては、品質や規格を満たした特定の作物を大量に使用する食品メーカーが複数の農家と契約したり、食材の品質を重視するレストランが化学肥料や農薬の使用を抑えている農家と契約を結ぶといった例が挙げられます。

金沢の老舗酒蔵「福光屋」のの契約栽培米「山田錦」のほ場

金沢の老舗酒蔵「福光屋」のの契約栽培米「山田錦」のほ場
出典:株式会社PR TIMES(株式会社福光屋 ニュースリリース 2021年5月18日)

契約農家として農産物の栽培を行うメリット

契約農家としては、特定の企業や飲食店、業者と契約を結ぶことで、どのようなメリットがあるのでしょうか?主なものとしては、経営の安定性と、企業による技術や資金の援助が挙げられます。以下より詳しく見ていきましょう。

販売価格が固定されることにより、経営が安定する

食品メーカーや飲食店の契約農家になる最大のメリットは、販売価格が市場価格に左右されないことにあります。前述したように、契約農家ではあらかじめ作物の価格を決めたうえで契約を行っているため、豊作の年に市場価格が下がって利益に繋がらないということもありません。

また、契約によって一定量は必ず買い取ってもらえるため、安定して収益を上げることも可能です。よいものを作れば収入面でも必ず結果が出るため、農家としても栽培に力を入れやすく、モチベーションの向上も期待できるでしょう。

栽培手法や作業体系について企業のサポートを受けられることがある

契約先によっては、高品質な作物をより効率的に生産するために、契約先の企業から作業体系や栽培手法のアドバイスを受けられるケースも存在します。

具体的な例を見ていきましょう。

日本デルモンテ株式会社の事例

生活クラブ連合会がトマトケチャップに利用する加工用トマトについて、日本デルモンテ株式会社と契約農家2社との業務連携協定を締結した際のニュースリリース

生活クラブ連合会がトマトケチャップに利用する加工用トマトについて、日本デルモンテ株式会社と契約農家2社との業務連携協定を締結した際のニュースリリース
出典:PR TIMES株式会社(生活クラブ生協連合会 ニュースリリース 2020年2月14日)

日本デルモンテ株式会社では加工用トマトの品種開発と改良を重ねており、雨に強い品種や採りやすい品種などを開発しています。それらを農家の地域や営農スタイルに合わせて提案しています。

また、集荷用のコンテナを無料で支給し、出荷経費も同社が負担するなど、資金面での支援も充実しています。

カルビー株式会社の事例

カルビー株式会社 契約農家と二人三脚で取り組むジャガイモ作りを消費者に伝えるサイト「じゃがいも Diary」

契約農家と二人三脚で取り組むジャガイモ作りを消費者に伝えるサイト「じゃがいも Diary」
出典:PR TIMES株式会社(カルビー株式会社 ニュースリリース 2021年3月31日)

カルビー株式会社では、各地域におけるほ場の土壌分析や適切な肥料の検証などを行っています。そのうえで、契約農家に対して農薬の種類や施用時期を整理した防除プログラムの提案などを行っています。

そのほか、大型機械の導入により、最も負担のかかる収穫作業をサポートしています。それにより、省力化やジャガイモ(馬鈴薯)の作付面積の拡大を図っていることも魅力です。

出典:カルビーポテト株式会社「代表中村が想うカルビーポテト」

このように、契約農家は幅広い支援を受けられる可能性があるため、契約先の企業によっては作業負担やコストの軽減も期待できるでしょう。

契約農家は実際儲かるの? 加工用ジャガイモ(馬鈴薯)の収入例

ジャガイモ(馬鈴薯)の大型掘取り機

ジャガイモ(馬鈴薯)の大型掘取り機
嘉門 / PIXTA(ピクスタ)

カルビーとの契約の場合を考えてみましょう。

買取価格

品種はポテトチップの加工に向くじゃがいも「トヨシロ」が中心です。

買取価格は基本価格にでんぷんの濃度と傷や病害・生理障害の有無で変動します。品質が高ければインセンティブが上乗せされ、品質が悪ければ歩引きが発生するしくみになっています。

独立行政法人農畜産業振興機構が2014年にまとめた青森県横浜町の事例では、40~43円と報告されています。

同機構が2012年に実施した「加工・業務用野菜に関する調査」によれば、加工用ジャガイモ(馬鈴薯)は1kg当たり30円前後と報告されており、買取価格は高めといえるでしょう。

10a当たり収量

前述の青森県横浜町の事例では、10a当たり収量の目標は3.5tですが、気象条件などによって2.5~3t程度に減少する年もあると報告されています。

収入の概算

前述の1kg当たりの買取価格で計算すると、不作の年は10~13万程度、目標の10a当たり3.5tの場合は14~15万円程度になります。

収益について

青森県横浜町の事例では、10a当たり収量が2.5tになると赤字になってしまうとされています。

ただし、加工用ジャガイモ(馬鈴薯)の場合は、高い品質を求められるものの、選別の手間や余剰がでないという面では、特定のサイズが求められることが多い生食用の契約栽培より有利といえそうです。

加工用ジャガイモ(馬鈴薯)の収穫には大型掘取り機が用いられ、農家は、サイズに関係なく「混玉」の状態でJAに出荷します。JAではでんぷん濃度による選別のみを行い、洗浄・風乾はせず、1tのコンテナでメーカーに渡されます。

大型農機の導入や品質維持のための防除作業の効率などを考えると、大規模栽培で、より収益がでやすいといえるでしょう。

この項の出典:独立行政法人農畜産業振興機構
「産地限定ポテトチップスと大規模化による産地再生の可能性~青森県横浜町の加工用ばれいしょ生産~((野菜情報 2014年6月号)」
「加工・業務用野菜に関する調査」所収の「 加工・業務用野菜取引実態等調査~ 農業協同組合等における加工・業務用野菜の取引実態について ~ 」(21ページ)

契約農家になるには? 農家が契約先を探す方法

このようにメリットの大きい契約農家ですが、どのように契約先を探せばいいのかがわからない方も多いのではないでしょうか。そこで以下に、契約先を探す方法について詳しく紹介します。

大手食品加工企業や飲食店へ直接問い合わせてみる

食品メーカーへ契約栽培の問合せ

こしあん / PIXTA(ピクスタ)

まずは自身の栽培する作物、もしくは栽培予定の作物をメインに取り扱っている食品加工の企業や飲食店に問い合わせてみましょう。このとき、契約農家の募集に関する情報が、公式サイト等に掲載されていない場合でも、直接問い合わせてみることが大切です。

なぜなら、既に複数の農家と栽培契約を結んでいる企業に関しては、追加で契約できる農家を募集しているケースがあるからです。日本デルモンテ株式会社やカゴメ株式会社などの大手企業でも新規の契約農家を募集していることが多々あります。興味のある企業には一度連絡してみましょう。

マッチングフェアなどのイベントや、オンラインマッチングサービスを活用する

そのほかの方法としては、マッチングフェアなどのイベントやマッチングサービスなども利用できます。

マッチングフェアは、増加する加工用や業務用の需要に対応するため、種苗会社や農家、流通業者、加工業者などの関係者に対し、商談や交流の場を提供するために開催されるものです。

商品などの展示や出展者による自社のプレゼンテーションのほか、農林水産省による6次産業化関連支援策の説明が行われるなど内容も充実しており、2018年に開催されたマッチングフェアでは1,000人を超える来場者が訪れました。

出典:独立行政法人農畜産業振興機構「第30回国産野菜の契約取引マッチング・フェアの概要」

マッチングサービスとしては、「ベジマチ」と呼ばれる農家と実需者をつなぐオンラインの商談サイトがあります。

ベジマチは、登録から相談成立までを無料で利用することが可能です。全国から実需者の検索ができ、メッセージ機能で直接やりとりができるため、いつでもどこでも空いた時間に契約先を探せるでしょう。

独立行政法人 農畜産業振興機構 野菜振興部 需給業務課が運営する「ベジマチ」

契約農家は作物の価格が市場に左右されず、一定量の買い取りを行ってもらえるため、安定的な収益が期待できるといえるでしょう。現在は、契約農家になるための方法が多く存在するので、ぜひ本記事を参考に、契約栽培を検討してみてはいかがでしょうか。

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百田胡桃

百田胡桃

県立農業高校を卒業し、国立大学農学部で畜産系の学科に進学。研究していた内容は食品加工だが、在学中に農業全般に関する知識を学び、実際に作物を育て収穫した経験もある。その後食品系の会社に就職したが夫の転勤に伴いライターに転身。現在は農業に限らず、幅広いジャンルで執筆活動を行っている。

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