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桃農家になるには? 年収の目安と“最短で高収益”を叶える方法

桃農家になるには? 年収の目安と“最短で高収益”を叶える方法
出典 : musashi / PIXTA(ピクスタ)

桃農家はほかの果樹農家と比べて所得率が高く、効率性の高い経営を実現できる傾向にあります。農家1戸当たりの期待できる年収や作業量、年間スケジュールなどについて紹介します。また、経営を早期に安定させるコツも解説します。

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桃の市場出荷

nolte / PIXTA(ピクスタ)

桃農家はほかの果樹と比べて農業所得率が高く、効率性の高い経営ができる傾向にあります。実際にどの程度の年収を期待できるのか、また、作業量や年間スケジュール、高収益を実現するポイントについて解説します。

桃農家の収入が知りたい! 期待できる年収の目安はいくら?

農林水産省では以前、「品目別経営統計」という調査を実施し、10a当たり、あるいは農家1戸当たりの平均年商や経営費などを毎年発表していました。

最後に実施された平成19年(2007年)度の品目別経営統計によれば、農家1戸当たりの平均年収額はおよそ122万5,000円でした。

桃農家の粗収益・経営費・農業所得

1戸当たり10a当たり
農業粗収益243.9万円56.6万円
農業経営費121.4万円28.0万円
農業所得122.5万円28.6万円

出典:農林水産省「平成19年度品目別経営統計 農業経営収支(1戸当たり)」よりminorasu編集部作成

農業所得率(農業所得÷農業粗収益)を計算すると、桃農家は約50%です。りんご農家の所得率は約44%、梨農家が約45%であることからも、桃農家の所得率は果樹の中でも高水準といえます。

また、この統計では桃の植栽面積平均が43aで、りんごの102aや梨の80aと比較しても狭いことがわかります。栽培規模を拡大すればさらに高収益化・経営効率化を望めるでしょう。

果樹農家 1戸当たり農業所得・所得率・植栽面積

農業所得農業所得率植栽面積
122.5万円50.2%43 a
りんご184.2万円43.8%102 a
日本梨214.1万円45.2%80 a

出典:農林水産省「平成19年度品目別経営統計 農業経営の概況・農業経営収支(1戸当たり)」よりminorasu編集部作成

実際きつい? 桃農家に求められる作業量と年間スケジュールの例

所得率が高いとはいえ、農家1戸当たりの農業所得は122万5,000円と決して高いわけではありません。栽培規模の拡大や、ほかの仕事を兼業することで収入増を見込めますが、作業量が多すぎると栽培規模の拡大や兼業は現実的とはいえません。

実際のところ、桃農家にはどの程度の作業量が必要なのでしょうか。

桃栽培に要する労働時間は、果樹の中でも意外と少ない

平成19年度品目別経営統計の「分析指標・労働時間(1戸当たり)」によれば、桃農家の年間労働時間は農家1戸当たり1,223時間でした。

これはりんご農家の2,781時間、梨農家の2,923時間からすると半分以下で、果樹栽培のなかでも作業時間が少ない作物であることがわかります。

主な果樹の年間労働時間

1戸当たり10a当たり
1,223時間284時間
りんご2,781時間273時間
日本梨2,923時間367時間

出典:農林水産省「平成19年度品目別経営統計 分析指標・労働時間(1戸当たり)」よりminorasu編集部作成

桃農家として専業で働く場合であれば、栽培規模の拡大も検討できるでしょう。袋掛けや収穫などの作業時間が増える時期と繁忙期が異なる作物を選び、複合経営で収入を増やすという選択肢も考えられます。

作業別にみると、平均労働時間が長いのは授粉や摘果、収穫・調整です。また、袋掛け・除袋にも時間がかかるため、無袋栽培が可能な品種を選ぶことで労働時間を削減することが可能です。

作業内容1戸当たり10a当たり構成比
全体1,223時間284時間100.0%
基肥26時間6時間2.1%
整枝・剪定148時間34時間12.0%
追肥3時間1時間0.4%
除草・防除131時間30時間10.6%
授粉・摘果340時間79時間27.8%
管理96時間22時間7.7%
袋かけ・除袋151時間35時間12.3%
収穫・調製214時間50時間17.6%
出荷98時間23時間8.1%
管理・間接労働18時間4時間1.4%

出典:農林水産省「平成19年度品目別経営統計 分析指標・労働時間(1戸当たり)」よりminorasu編集部作成

桃の摘花作業・授粉作業

あこたま / PIXTA(ピクスタ)

桃の袋掛け作業

papilio / PIXTA(ピクスタ)

桃の収穫作業

あこたま / PIXTA(ピクスタ)

桃の選別作業

taka / PIXTA(ピクスタ)

桃農家の年間スケジュール例

桃の栽培暦(例)

作業内容
3月摘蕾
4月人工授粉、摘花
5月摘果、夏季剪定
6~7月袋かけ、修正摘果
7~8月収穫、出荷
9月礼肥、秋季剪定
10月基肥・堆肥施用
12~2月剪定

出典:下記資料よりminorasu編集部作成
長野県「信州の環境にやさしい農産物認証制度|4.削減技術の事例紹介」所収「高森町(もも)」
福島県「農業総合センター技術マニュアル」所収「モモジョイント V 字樹形栽培管理マニュアル」
農薬工業会「旬素材の産地から~果樹王国・山梨が誇る日本一のブランド桃。」

これらの作業のほかに、適時、除草など栽培管理の作業があります。また、授粉時期や収穫時期が少しずつずれる品種を並行して栽培している場合は、スケジュール管理が大切です。

桃の栽培管理作業

eddiemg / PIXTA(ピクスタ)

めざすのは高収益化! 桃農家として早期に経営を安定させるコツ

めざすのは高収益化! 桃農家として早期に経営を安定させるコツ

高収益化を実現するためのコツとして次の2つが挙げられます。

優良品種の“多品種栽培”で単価向上と労力分散を実現
廃業する園地の後継者をめざす

それぞれの方法について、詳しく解説します。

優良品種の“多品種栽培”で単価向上と労力分散を実現

桃の専業農家として高収益化をめざすなら、食味や栽培のしやすさなどの点でよりメリットの大きい品種を選定することが必要になります。近年、糖度が高い、味が安定しているなどの優良品種が多く開発されているので、新品種にも注目してみましょう。

病害に強くて栽培しやすい品種であれば、作付面積を増やして大規模に経営することも可能です。また、無袋栽培ができる品種を選ぶと、労力のかかる袋かけや除袋の作業を省くことができ、さらに効率性の高い経営を実現できるでしょう。

複数の品種を同時並行で栽培するときは、作期の分散を意識した品種選定を行うことも重要です。収穫などの作業時間の多い作業が重ならないようにスケジュールを組み、無理のない経営をめざします。

作付計画の一例として、桃の生産量1位を誇る山梨県が提案する高収益農業経営実践モデルを紹介します。

複数の品種を組み合わせ、桃栽培に特化

日川白鳳の出荷

千和 / PIXTA(ピクスタ)

まずは、桃の品種を複数組み合わせた例です。

複数の品種を組み合わせ、桃栽培に特化した例です。早期収穫できる品種や低樹高の品種を選び、受光条件の向上と労力削減、作業者の安全確保を実現しています。

品種・作型別の経営面積

品種・作型経営面積
総経営面積130 a
日川白鳳、白鳳(施設)30 a
加納岩白桃15 a
白鳳15 a
浅間白桃15 a
川中島白桃40 a

経営形態と経営指標

項目指標
経営形態個人経営
労働力2名+臨時雇用3名
粗収益2,900万円
経営費1,800万円
農業所得1,100万円
所得率37.9%

出典:山梨県農政部「就農支援について」所収「高収益農業経営実践モデル~No.1 施設栽培に品種の組み合わせで労力分散を図り もも専作で高収益」よりminorasu編集部まとめ

桃とほかの果樹、加工柿の複合経営

桃(白鳳)・さくらんぼ(佐藤錦)・あんぽ柿

ToTheWorld / PIXTA(ピクスタ)

次は、桃とさくらんぼ(桜桃)、すもも、あんぽ柿を組み合わせて栽培している例です。異なる品目の果樹とあんぽ柿の加工を組み合わせて作業量を平準化することで、収益向上を実現しています。
特に、加工柿を加えることで、秋冬期に余る労力を活用でき、年間雇用を実現していることが特徴のモデルです。

品種・作型別の経営面積

品種・作型経営面積
総経営面積155 a
高砂(桜桃・施設)10 a
佐藤錦(桜桃・雨よけ)45 a
白鳳(桃)35 a
太陽(すもも)15 a
大和百目(あんぽ柿)50 a

経営形態と経営指標

項目指標
経営形態個人経営
労働力2名+臨時雇用8名
粗収益2,600万円
経営費1,600万円
農業所得1,000万円
所得率38.5%

出典:山梨県農政部「就農支援について」所収「高収益農業経営実践モデル所収「高収益農業経営実践モデル~No.3 施設栽培の導入と多品目生産(施設おうとう+もも+すもも+加工かき)で労力文案を図り高収益」よりminorasu編集部まとめ

借地を使った規模拡大と果樹の多品目栽培

山梨県 郊外にひろがる桃の園地

i-flower / PIXTA(ピクスタ)

次は、借地を使って規模拡大を実現し、法人経営する例を紹介します。

経営の効率化を図るため、ブドウの平行整枝短梢剪定などを導入しています。また、収穫時期が異なる品種や果樹を組み合わせ、労働力を有効活用していることもポイントです。

品種・作型別の経営面積

品種・作型経営面積
総経営面積1,330 a
桃(早生種)210 a
桃(中生種)350 a
桃(晩生種)300 a
ブドウ(4~5品種)370 a
黄桃40 a
柿(生食用、ころ柿)60 a

経営形態と経営指標

項目指標
経営形態個人経営
労働力5名+臨時雇用20名
粗収益2,600万円
経営費1,600万円
農業所得1,000万円
所得率38.5%

出典:山梨県農政部「就農支援について」所収所収「高収益農業経営実践モデル所収「高収益農業経営実践モデル~No.7 労力分散を重視した多品目化(もも+ぶどう+おうとう+かき)で高収益」よりminorasu編集部まとめ

廃業する園地の後継者を目指す

若手の桃農家

Carbondale / PIXTA(ピクスタ)

桃農家として新規就農する際にネックとなる点の1つは、苗木を植えてから桃が経済樹齢(安定して果実を収穫できる樹齢)に達するまでに2~3年程度かかることです。つまり、最初の数年は桃栽培による収益を得ることができません。

別の農地があれば、すぐに収穫・出荷が可能な野菜類などを栽培する方法もあるでしょう。しかし、農地がない場合や、野菜類の栽培にかかる初期投資が難しい場合には、生活がしばらく安定しないことになります。

この課題を解決する方法の1つとして「高齢化などを理由に廃業予定の園地を継承する」という方法が挙げられます。

例えば愛知県豊田市では、技術研修を終えたあとに園地の紹介も受けられる「桃・梨専門コース」を実施してきました。コースは2年間で、その間に桃や梨の栽培について基本を学び、実践指導を受けます。

将来にわたって豊田市内で農業経営を行う意思があり、なおかつ2年間のコース受講中の生活を確立できる方であれば、里親農家や地域の人々との信頼を得たうえで、園地の継承が可能です。

出典:豊田市ホームページ「桃・梨専門コース」

ほかの地域でも廃業農家は少なくないと考えられるため、すぐに経営できる園地を探したいなら、自治体に相談してみてはいかがでしょうか。

愛知県豊田市 猿股の桃

ポン爺 / PIXTA(ピクスタ)

桃はほかの果樹と比べると所得率が高く、効率性の高い経営ができる魅力があります。また、品種が多いため、複数の品種を栽培することで作業時期をずらしたり、無袋栽培が可能な品種を選ぶことで作業効率を高めることも可能です。

しかし、就農後すぐに利益を得られるとは限らないため、最初の数年は桃以外の作物によって収益を得る、あるいは廃業する園地の後継者をめざすなどの方法も検討してみるとよいでしょう。

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林泉

林泉

医学部修士、看護学博士。医療や看護、介護を広く研究・執筆している。医療領域とは切っても切れないお金の問題に関心を持ち、ファイナンシャルプランナー2級とAFPを取得。

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