ブドウのハウス栽培のメリット・デメリットは? 初期費用を抑えて取り組むなら水稲育苗ハウスの活用も
ブドウ栽培では、ハウス栽培が増加傾向にあります。この記事ではブドウをハウスで栽培するメリットとデメリットを紹介します。また初期費用をかけずにブドウのハウス栽培に取り組む方法として、水稲育苗ハウスを活用する方法について解説します。
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ブドウのハウス栽培には、天候による影響を減らせる、農薬の使用を減らせるなどさまざまなメリットを享受できます。
この記事では、ブドウのハウス栽培を検討している方に向けて、ハウス栽培のメリットやデメリット、必要な準備、注意点などを紹介します。
ブドウをハウスで栽培するメリットとデメリット
kikisorasido / PIXTA(ピクスタ)
ブドウのハウス栽培にはさまざまなメリットやデメリットがあります。ハウス栽培を行う前に、両者を十分に比較検討しておきましょう。
メリット
まずはハウス栽培のメリットを4つ解説していきます。
1.天候の影響を受けにくい
ブドウの露地栽培の場合、長雨が続くことで水分量に大きな影響が出ます。また、ブドウは雨に弱く、雨が続くと病害にかかりやすくなります。さらに、日差しが強いとブドウにそのまま降り注ぎ、日焼けの原因にもなります。
ハウス栽培の場合は、温度や水分量、日射量を自分である程度コントロールすることができ、天候の変動による影響を減らせるメリットがあります。また、遮光カーテンや換気扇などを利用することで栽培環境を調整でき、スムーズな栽培につながります。
2.農薬を使用を減らすことができ、コスト削減につながる
ハウス栽培では、害虫が侵入しにくく、降雨の影響が小さいため、病害虫の発生リスクは露地栽培に比べると低くなります。農薬の使用回数を減らせることから、農薬にかかるコストを削減することができます。
3.草刈りにかかる手間を減らせる
Yoshitaka / PIXTA(ピクスタ)
ハウス栽培では、露地栽培に比べて雑草の発生が少なく、草刈りをする回数を減らせます。草刈りにかかる時間を栽培計画の検討など、より重要なことに充てることができます。
4.栽培計画を立てやすい
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ハウス内は雨が降っても作業できるため、栽培計画を立てやすいというメリットがあります。露地栽培では天候により作業を休まなければならない場合もありますが、ハウス栽培なら、雨が降っても栽培計画通りに作業を進めることができます。
デメリット
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ハウス栽培にはメリットだけでなく、デメリットもあるため把握しておきましょう。
1.初期投資が発生する
ビニールハウスを建てる際には、初期投資が発生します。そのため、事前に資金を用意しておくことはもちろん、かかった費用をしっかり回収できるよう収益性を意識しながら栽培計画を立てなければなりません。
2.被災した場合の影響が大きい
台風などでビニールハウスが破損した場合、復旧に時間とコストがかかります。ビニールが破れるなど軽度の被害であれば、復旧に膨大な時間はかからないでしょう。しかし、災害により全壊・大破してしまった場合は、復旧まで時間がかかってしまい、栽培を進めることができません。
ビニールハウスの被災リスクを考え、ハウスの構造に十分な強度を持たせ、万一被災したときのために保険に加入するなどの備えが必要になります。
3.ビニールハウスの維持費がかかる
ビニールハウスは初期投資だけでなく、維持費も発生します。ビニールの張り替えや、換気扇・遮光カーテンなどの修理・交換などさまざまなコストがかかります。これらの維持費がかかることも考慮して栽培計画を立てたうえで、ビニールハウスを建設する必要があります。
4.栽培面積が減る
ハウス栽培は、露地栽培に比べて栽培面積が減り、レイアウトの自由度も落ちます。降雪地域で単棟を並べる場合は、雪対策のために棟と棟の間を適切な間隔で空けなければなりません。
ハウス内の通路の確保などによって、想定した以上に栽培できる面積が減ってしまう可能性があることを考慮しながら栽培計画を立てる必要があります。
ブドウのハウス栽培に新たに取り組むなら、水稲育苗ハウスでの栽培もおすすめ
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初期費用をあまりかけないで、ブドウのハウス栽培に取り組むなら、水稲育苗ハウスを活用する方法があります。水稲育苗ハウスに簡易的な設備を追加することで、水稲育苗と並行してブドウを栽培する方法です。
水稲の育苗期には、ブドウの葉はまだ展開初期のため、水稲育苗は通常通り行えます。水稲の育苗が終わり苗を出し終わったら、伸びてきたブドウの新梢を誘引し始めます。
ブドウの作業時期は6〜9月頃に集中していますが、うまく品種を選ぶことで稲刈りとブドウの収獲が重ならないように調節できます。
水稲育苗ハウスでブドウ栽培を行うのに必要な準備
水稲育苗ハウスでブドウを栽培するためには、品種の選定や排水対策などさまざまな準備が必要です。ここからは水稲育苗ハウスでブドウを栽培するための必要な準備について解説します。
初めて取り組むなら、品種はシャインマスカットがおすすめ!
shige hattori / PIXTA(ピクスタ)
ブドウにはさまざまな品種がありますが、水稲育苗ハウスで、新たにブドウを栽培する方には「シャインマスカット」がおすすめです。その理由は「需要が大きい」「初心者でも栽培しやすい」という2点です。
シャインマスカットは消費者に人気の品種で需要が高いことから、安定した収益が期待できます。さらに、高温による着色不良を心配する必要がないため、初心者でも栽培しやすいというメリットがあるのです。
仕立て方はハウスの形状に合わせて3種類のなかから選択
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水稲育苗ハウスでのブドウ栽培では、ハウスの形状などに合わせて仕立て方を選択します。仕立て方には、主に以下の3つがあります。
・アーチ型
・U字型
・オールバック型
アーチ栽培の場合は、ハウスアーチに沿って主枝を誘引します。高度な剪定技術を必要としないため初めて取り組む方でも行いやすいでしょう。
土壌は排水対策とpH調整が重要
ブドウ栽培には、排水性がよい土壌を選ぶことが大切です。ブドウは耐湿性・耐乾性が強いといわれていますが、排水性の悪い土壌では枯死してしまうこともあるためです。
土壌の排水対策は、必要に応じて暗きょや明きょの設置、畝立てを行います。そして、たい肥など有機物資材も投入し、適切な土作りを行ってください。
また、ブドウは弱アルカリ性の土壌が適しています。pH6.5を目標に石灰資材などによって調整しましょう。
ブドウ棚を設置する
ブドウ棚の設置は直管パイプやユニバーサルジョイントなどを用意し、これらを組み合わせることで完成します。育苗ハウスの状態によって棚の形状を変える必要があるため、業者と相談しながら資材を選ぶことが大切です。
棚の設置では、すべて業者に任せることで丈夫に作ってもらえますが、コストがかかります。少しでもコスト削減したい場合は、自分でできるところは自力で行うことも検討しましょう。棚の高さは、作業者の身長からプラス20cmを目安に設定します。
出典:福島県「農業者向け情報」内「情報誌・栽培マニュアル等(農業振興普及部発行)」の項 所収「あなたもできる!水稲育苗ハウスでブドウを栽培する手引き | 福島県会津農林事務所 農業振興普及部」
苗箱を地面に直置きしないように注意
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ブドウが水稲育苗で使用した農薬の影響を受けないように苗箱の直置きを避け、不透水性シートなどを用意してその上に苗箱を置きましょう。または、育苗期間中はプール育苗を実施する方法もあります。
プール育苗とは、ハウス内に設置した簡易的なプールに育苗箱を並べて湛水状態で育苗する方法です。
プール育苗を設置する際には、ハウス内を可能な限り均平してから高さ10cm程度のプール枠を作り、プール用のシートを敷きます。適切な水深を保ちつつ換気を徹底することが管理のポイントです。
参考サイト:千葉県農業改良普及情報ネットワーク 「 フィールドノート平成29年」掲載「水稲プール育苗のポイント」
高温対策
水稲育苗ハウス内が高温になると、ブドウが日焼けを起こすことがあります。そのため、気温が上がりやすい夏期は風通しをよくしておくことが大切です。天窓や妻窓を設けておくほか、小型の換気扇を設置して換気を行います。
病害虫の発生予防
ハウスの開口部には赤色の防虫ネットを張り害虫の侵入を防ぎます。果実の袋掛けは、アザミウマ類、うどんこ病、晩腐病、べと病などの発生予防になるので必ず実施します。
kuku / PIXTA(ピクスタ)
ブドウのハウス栽培には、草刈りや防除の回数を削減できる、天候に影響されず作業を進められるなどのメリットがあります。一方で、初期投資の資金が必要で、栽培面積が限られるなどのデメリットもあるため、十分な検討が必要です。
ブドウのハウス栽培の新しい形として水稲育苗ハウスの活用も紹介しました。新たにブドウ栽培に取り組む際の参考にしてください。
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大矢隼平
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