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ブドウ栽培管理のポイントと省力化・品質向上につながる技術

ブドウ栽培管理のポイントと省力化・品質向上につながる技術
出典 : kikisorasido / PIXTA(ピクスタ)

ブドウは、園地の準備から結果して出荷するまでに時間がかかる作物です。そのため、ブドウ栽培を始めるに当たって、収益化までにどれぐらいの期間がかかるのか心配する方も多くいます。この記事では、ブドウ栽培のスケジュールや作業のポイントを解説します。

近年、消費者からはシャインマスカットのニーズが高まっており、各地でブランド化に向けた動きが続いています。これからブドウ栽培に挑戦しようと考えている方の中には、どれぐらいで収益化を達成できるか、難しい作業がないかを心配している方もいるのではないでしょうか。

そこで、今回はシャインマスカットを中心に、ブドウ栽培の園地選びから出荷するまでの流れと年間の栽培管理について紹介します。また、栽培上の注意点や経営安定化に役立つ新しい技術も紹介していくので、すでにブドウを栽培している農家の方も参考にしてください。

ブドウの栽培管理|苗木の植え付けから仕立てまで

ブドウ(シャインマスカット)の園地

kikisorasido / PIXTA(ピクスタ)

ブドウは植え付けから理想の樹形を整えるまで、概ね3年程度かかります。また、永年作物であることから、初年度の管理は非常に重要です。これからブドウ栽培に取り組む方のために、園地選びから仕立てまでの流れと、そのポイントをまとめてみました。

園地の準備|ブドウは始めが肝心

ブドウは永年作物であり、状態の悪い苗木を植え付けると、その後の管理に労力がかかり続ける恐れがあります。そのため、植え付けに当たっては苗木の選定を慎重に行いましょう。

可能なら、植え付け予定の前年から優良な苗木選びを始め、あらかじめ注文しておくことをおすすめします。

園地については一般的に日当たりがよく、風当りの強くない場所を選びます。水はけがあまりよくない園地では生育が悪くなる恐れがあるので、定植前に暗渠または明渠排水の設置、畝立てをするなどの対策を行いましょう。

また、ブドウ栽培は石灰飽和度の高い土壌が適していることから、必要に応じて客土の実施も検討します。

苗木の定植と初期管理

ブドウ苗

nero / PIXTA(ピクスタ)

苗木の定植に適した時期は11月~翌年3月とされています。ただし、厳冬期の定植は難しいことから、実際には秋植え(10月~11月)または春植え(3月~4月上旬)のどちらかで行うのが一般的です。

購入した苗木は1晩ほど水に漬け、十分に給水させたあと、定植まで仮植えをしておきます。定植場所は、定植予定の1ヵ月以上前に直径0.8~1.5m、深さ30cm程度の穴を掘り、堀った土に苦土石灰や堆肥、熔成リン肥を混ぜて土壌改良しておきましょう。

定植時期が来たら、仮植えしていた苗木の接ぎ木部を地上から15cm以上出した状態で土壌改良しておいた土で埋めます。その後、定植した苗木の太さに応じて30~50cmを目安に枝先を切り返し、誘因ヒモなどで支柱に固定したら、十分な潅水を行います。

定植直後の苗木は根が少ないので、土壌の乾燥が続く場合は、苗木の周りに敷きワラをしましょう。

また、同様の理由から苗木は貯蔵できる養分が少なく、芽の数を減らしたほうが順調に生長しやすくなります。発芽後は生育良好な2芽を残し、そのほかの芽をかき取ることが初期管理のポイントです。

整枝と剪定|樹勢が強い品種には短梢H型整枝

H型仕立てのブドウ園地(シャインマスカット)

POPO / PIXTA(ピクスタ)

ブドウの整枝には、主に一文字仕立てやH型仕立て、WH仕立てといった方法があります。その中でも、樹勢の強いシャインマスカットのような品種に推奨されるのが、短梢H型整枝です。

短梢H型整枝には、「作業性に優れている」「技術の習得が容易である」というメリットがあり、多くの栽培現場で取り入られています。

1年目

具体的な仕立て方は、まず1年目に棚面から10cm程度を超える長さに生長した1本の新梢を、棚面下25cm程度で摘心します。その際に、新梢の欠損を防ぐのと作業性向上を目的として、主枝誘引線を棚面より20cm程度低くしておくのがポイントです。

その後は副梢を2手に分け、主枝誘引線を20cm程度超える長さになったら、主枝誘引線の手前5cm程度で摘心し、再度伸長した枝を真上から見たときにアルファベットのH型になるように誘引していきます。

2年目

2年目になり、主枝の先端からまっすぐに伸ばした新梢が3m程度にまで伸長したら、それも摘心しましょう。そのほかの新梢に関しては棚面に誘引後、向かい合う主枝の中間付近まで伸びた時点で摘心します。

その後に出てくる副梢は、1枚の葉だけを残してすべて摘心してかまいません。仮に着生した場合は、花穂をすべて摘除しましょう。

太さ12mm以上の主枝延長枝は冬期剪定の際に15芽まで切り戻し、そのほかの結果母枝については2芽ほど残して犠牲芽剪定をしてください。

3年目

3年目については、主枝延長枝の基部から3分の2の芽に対して発芽前に芽傷処理を行います。新梢の処理や冬期剪定については2年目と同様ですが、短梢剪定した結果母枝から伸びた枝は2本とも誘引して、新梢10本に3房程度を目安に着果させましょう。

4年目

4年目は、主枝延長枝の管理も3年目と同様になりますが、短梢剪定した結果母枝から伸びた枝は、状況によって芽座当たり1~2本程度に整理し、主枝1mにつき新梢10本ほどを誘引して7房程度着果させます。

5年目以降

5年目以降は、主枝1m当たりの着房数の目安を9房にしてください。

▼ブドウの剪定についてはこちらの記事もご覧ください。

ブドウの栽培管理|収量と品質を左右する新梢管理・果房管理

新梢管理と果房管理は、ブドウ栽培において収量と品質を大きく左右する作業です。ここでは、高品質なブドウをたくさん収穫するために欠かせない作業のポイントについて解説していきます。ブドウ栽培を軌道に乗せていこうと考えている方は、しっかり確認しておきましょう。

新梢管理・花穂整形はタイミングが重要

新芽が萌芽したブドウ

テラス / PIXTA(ピクスタ)

新梢管理の基本は、「芽かき」「誘引」「摘心」の3つです。芽かきは新梢の生育を揃えるための作業で、展葉5~6枚程度になって枝の生育状況がわかりだしてくる時期に行います。

樹勢が強すぎる、または弱い新梢を取り除きますが、その際に弱い枝は空枝として利用できるように、1割程度残しておくとよいでしょう。

ブドウの新梢

yellow cab / PIXTA(ピクスタ)

芽かきをした新梢が50cm程度まで伸びたら、それぞれが重ならないようにバインド線などで誘引線に固定します。誘引は早すぎると基部から折れることがあるので、十分生育してから行うことがコツです。

摘心は果粒肥大の促進や花振るい防止など、樹勢促進のために行います。展葉13枚程度の開花始期に先房の先端3~4節を目安に摘心すると、果粒肥大に効果があります。なお、副梢の各節から伸びた葉は1~2枚程度を残し、切除してください。

ブドウの花穂整形

suno / PIXTA(ピクスタ)

見た目の美しさや品質安定などのために行われる花穂整形は、開花始期に花穂の先端から4cm程度残し、そのほかの支梗を取り除く作業です。その際に、上部の支梗2つは後述するジベレリン処理の目印として残しておきましょう。

なお、作業時期が早すぎると花穂の湾曲や間延び、反対に遅すぎると花振るいしやすくなるので、開花始期を見逃さずに行うことが大切です。

果房管理

ブドウの摘果と袋掛け

まめつん / PIXTA(ピクスタ)

食べやすさから消費者に人気の高い種なしブドウを生産する場合、ジベレリン処理が2回必要です。

1回目は完全満開時に花穂をジベレリン25ppmで浸漬します。その際には、果粒肥大促進と着粒安定を目的に、ホルクロルフェニュロン(フルメット液剤)を加用するとよいでしょう。また、作業を行う時間については、薬液の浸透時間をできるだけ長く確保する観点から、早朝や夕方に行うのがポイントです。その後、満開後10~15日を目安に2回目のジベレリン処理(25ppm)を行ってください。

2回目のジベレリン処理後は、目印に残しておいた上部の支梗2つを切除したうえで摘粒や摘房を行います。摘房は1つの新梢に形のよい果房1房、摘粒は主に奇形果やさび果実を間引き、目標とする果粒重や果房重になるように調整してください。

収穫|適期を見逃さないよう注意

シャインマスカットの収穫

1207Blue / PIXTA(ピクスタ)

摘粒や摘房が終わり、袋かけや傘かけを行ったら、いよいよ収穫まで待つことになります。シャインマスカットの収穫開始時期の目安は糖度と果皮色です。

糖度は一般的に18度以上がよいとされ、地域によっては品種別に専用のカラーチャートが用意されているところもあるので、それらを参考に収穫時期を確認してください。

収穫に適した時間は気温の低い早朝で、収穫時は果粉(ブルーム)を落とさないよう果粒に触れず、穂軸を持つことが大切です。シャインマスカットは比較的樹上で日持ちしやすい品種ですが、熟すと徐々に黄色くなり、果皮のかすり症が発生する恐れが高まるので収穫時期を見逃さないようにしましょう。

ブドウ栽培で対策すべき病害虫

ブドウ チャノキイロアザミウマ 果実及び果軸の食害

ブドウ チャノキイロアザミウマ 果実及び果軸の食害
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ブドウに被害をもたらす害虫として知られているのは、チャノキイロアザミウマ、カメムシ、カイガラムシです。これらの害虫が多発すると果実の食害によって、収量減につながる恐れがあります。

また、ブドウトラカミキリやブドウスカシバといった害虫も結果母枝を食害し、最悪のケースでは翌年に枯死することがあるので気を付けましょう。

ブドウトラカミキリが食入した枝

ブドウトラカミキリが食入した枝
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ブドウがかかりやすい病害には、べと病や黒とう病、灰色かび病、うどんこ病、晩腐病などが挙げられます。特に葉や新梢、果実に発生するべと病はブドウに大きな被害をもたらすことの多い病害です。

雨水などを介して病原菌が広がることから、梅雨時期に当たる6月下旬ごろからよく発生します。生石灰や硫酸銅を使用した農薬による防除を行うのが基本ですが、雨よけ栽培でも被害軽減に効果があります。

ブドウ べと病 (上)葉表の病斑 (下)葉裏の白いカビ

ブドウ べと病 (上)葉表の病斑 (下)葉裏の白いカビ
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ブドウ栽培を効率化する技術

ここまで、ブドウ栽培における園地の準備から収穫までの流れを説明してきました。

ブドウ栽培は新梢管理や果房管理など、生育ステージに合わせてさまざまな作業が必要なので、大変そうだと感じた方もいるかもしれません。しかし、近年では作業の省力化に貢献する新しい栽培技術が開発されています。紹介しましょう。

花穂整形器を利用した省力化

ブドウ 開花期の作業

jun / PIXTA(ピクスタ)

花穂整形は適期が開花期のわずかな期間であるうえ、その時期は摘心やジベレリン処理など、ほかの作業も行わなければいけないことから作業負担が大きくなりがちです。また、果樹によくある腕を上げた状態での作業は肩や腕などへ負担がかかるので、現場では省力化が求められていました。

そうした問題点を解決するために生み出されたのが、花穂整形器です。

花穂整形器は手のひらサイズのハサミ状の器具であり、連結版で穂軸を固定しながら切り羽を下方向に動かすだけで支梗を簡単に取り除けます。年間の作業時間を35%程度も短縮できるといわれているので、専業農家としてやっていく予定の方は積極的に導入を検討してみてください。

参考商品:株式会社サボテン「替刃式 ぶどう花穂整形器」

有色果実袋を使った収穫期延長

ブドウ シャインマスカット 有色袋による袋掛け

1207Blue / PIXTA(ピクスタ)

ブドウは摘粒作業後に、病害虫の防除や農薬の付着防止を目的として袋かけを行います。従来は白色の袋が多かったのですが、シャインマスカットについては白色よりも有色袋を使用したほうが、果皮の黄化防止やかすり症の被害対策になることがわかっています。

実際の現場では、緑色や青色の袋がよく使われており、遮光率の高さ(青色、緑色、白色)の順に晩熟傾向で、最大4週間程度の収穫期間延長が期待できることが大きなメリットです。

なお、緑色は袋かけが遅れると成熟遅延効果があまり期待できなくなる点、青色は袋かけが早すぎると糖度不足になる恐れがある点には注意してください。

出典:農研機構・青森県産業技術センターりんご研究所・山形県農業総合研究センター園芸試験場「ブドウ『シャインマスカット』収穫期延長と長期貯蔵技術」

収穫後の長期貯蔵

シャインマスカットは収穫後、長期間保存するにつれて穂軸の褐変と果粒の萎凋が起こり、徐々に商品価値が失われます。貯蔵後も商品性を保つために考案されたのが、穂軸にプラスチック容器を装着し、水分補給を行う方法です。

具体的には、まず保存期間に応じて水道水を満たした専用容器を穂軸の先端2.5cmに装着します。その後は、底面に緩衝材を敷いた収穫用コンテナにブドウを並べ、乾燥防止のための新聞紙をかぶせて保存するだけです。

保存中は、温度と湿度(0.5~2.0℃、湿度90~95%)を保つことに気を付ければ、途中の水の補給なしで2~4ヵ月程度の鮮度保持が可能になっています。

出典:農研機構・青森県産業技術センターりんご研究所・山形県農業総合研究センター園芸試験場「ブドウ『シャインマスカット』収穫期延長と長期貯蔵技術」

シャインマスカット 荷姿

Ushico / PIXTA(ピクスタ)

シャインマスカットに代表されるブドウは、園地の準備から収穫が軌道に乗るまでに数年程度かかるので、栽培を始めるに当たっては入念な準備が大切です。特に開花期は花穂整形やジベレリン処理など、仕事量が増えがちなので、あらかじめ年間の栽培管理スケジュールを確認しておきましょう。

ブドウ栽培に本格的にチャレンジしようと考えている方は、病害虫にも気を付けながら今回紹介した省力化に貢献する技術などを用いて効率的な経営に役立ててください。

中原尚樹

中原尚樹

4年生大学を卒業後、農業関係の団体職員として11年勤務。主に施設栽培を担当し、果菜類や葉菜類、花き類など、農作物全般に携わった経験を持つ。2016年からは実家の不動産経営を引き継ぐ傍ら、webライターとして活動中。実務経験を活かして不動産に関する記事を中心に執筆。また、ファイナンシャルプランナー(AFP)の資格も所持しており、税金やライフスタイルといったジャンルの記事も得意にしている。

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