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【ブドウ栽培】施肥管理や土作りの方法は?高品質&多収を叶える生育のコツ

【ブドウ栽培】施肥管理や土作りの方法は?高品質&多収を叶える生育のコツ
出典 : テラス / PIXTA(ピクスタ)

ブドウ栽培では、土壌改善と適切な施肥管理によって、高品質なブドウを安定して生産できるようになります。そこで本記事では、ブドウ農家に向けた土作りや施肥管理の具体的な方法、コツについて解説します。

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ブドウは肥料に敏感な作物であり、施肥量によって糖度が変化します。そのため、適切な栽培管理ができないと、品質や収益に大きな影響があります。そこで本記事では、収量アップや品質向上を図りたいブドウ農家に向け、土作りのポイントや施肥管理のコツについて詳しく紹介します。

施肥量の基準は? ブドウに適した土作りのポイント

ブドウ栽培では土壌の物理性などを改善し、必要な養水分を供給できる環境を整えることが大事です。それにより、高品質なブドウを毎年安定的に生産できるようになります。

また、ブドウの品種によっては、施肥量により糖度が変化するなど、生育のみならず食味に影響を与えることがあります。

そのため、より高品質でおいしいブドウを安定的に生産するためには、しっかりとした土作りと適切な施肥管理が必須になるのです。

この項では、ブドウに適した土作りのポイントとして、ブドウの好む土壌条件や施肥量の目安、追肥時期の考え方について詳しく紹介します。

ブドウが好む土壌条件と、作型に応じた土壌改良時期

ブドウ落葉前の紅葉

yellow cab / PIXTA(ピクスタ)

ブドウは土に対する適応性が広い作物です。しかし安定して生産するためには、根群を深く張れるように排水や深耕、有機物施用に努める必要があります。

一般的には平地よりも水はけがよい丘陵地で、緩やかな傾斜地での栽培が適しています。

ブドウに適した土壌のpHは6.0~6.5で、カルシウムとマグネシウムの要求量が高いことから養分が不足することがあります。適宜に土壌を診断して、養分が不足していたら補給をしましょう。

土壌改良に適した時期は一般的に落葉後です。ただし、超早期加温栽培や早期加温栽培の場合、11月になっても落葉していません。そのため、落葉後の実施では手遅れとなります。この場合、まだ葉がついている9月頃から土壌改良を行いましょう。

土壌改良を行う範囲としては樹冠占有面積の30~40%が目安です。その部分を十分に肥沃化し、新根の密度を高めることで、水分と施肥管理を能率的に行うことができます。

堆肥と基肥の施用量目安

山梨県都留市の「ブドウ栽培マニュアル」によれば、成木における10a当たりの施肥量は、9月下旬に窒素3kgとカリ3kg、10月上旬に苦土石灰80kg、11月下旬に窒素5kg、リン酸6kg、カリウム3kgとなっています。地力が乏しい場合は、1~3年次にも少量の施肥を行います。

堆肥を投入する場合は、堆肥に含まれる肥料分を差し引いた分を基肥として供給します。例えば、鶏ふんを利用する場合は、9月下旬に100~150kgを施用し、その分基肥を減らします。また窒素流亡を抑えるため、根の多い樹の近くで施肥を行うのがコツです。

なお、この情報はあくまでも参考として記載しています。具体的な施肥量については、都道府県の施肥基準などを参照してください。

出典:都留市「令和4年 3月都留市果樹栽培研究会 都留市版 ブドウ栽培マニュアル~土づくり~」

追肥の必要性と、施肥時期の考え方

ブドウの健全な生育のために施肥は重要ですが、肥料を与え過ぎると樹勢が強くなり、実つきの不良、組織の軟弱化を引き起こす可能性があります。

もちろん生育が悪いときは施肥が必要になるため、追肥の必要性は樹勢や葉色、土壌pHなどから判断するといいでしょう。

詳しい判断方法については、後述を参考にしてください。肥料が不足していると感じた場合は、窒素成分を主体とした速効性肥料を夏肥や収穫後の礼肥として追肥します。

こんな症状に要注意! “過剰施肥”や“肥料不足”の見極め方と対策方法

実際に追肥を行う判断基準として、ブドウの肥料成分が過剰もしくは欠乏した場合にどのような症状が現れるのかを知っておくとよいでしょう。そこで次に、過剰施肥や肥料不足の見極め方や対応方法を、窒素やカリなど主な成分ごとに解説します。

窒素過剰症/窒素欠乏症

ブドウの新梢

yellow cab / PIXTA(ピクスタ)

窒素は、植物の生育に大きな影響を与える成分です。窒素が過剰になると枝や茎が必要以上に伸び、植物体が肥満化して軟らかくなり、病害虫の被害を受けやすくなります。また、花や実も付きにくくなるため注意が必要です。

窒素が欠乏した場合は、新しい枝の成長が悪くなって葉が小さくなり、悪化すれば淡黄色になります。原因は根から窒素を十分に吸収できないため、一時的に窒素を基部葉から先端へ転送することで起こります。

対策としては、尿素が0.3〜0.5%の市販の葉面散布剤を利用し、5~7日間隔で10a当たり300L目安で散布を行います。摘芯などによって新梢の成長を抑制するのも効果的です。

カリウム欠乏症

成熟前のブドウ

ひがさ / PIXTA(ピクスタ)

カリウムは根の発育を促し、植物体を丈夫にすることで病害や寒さに対する抵抗力を高める重要な成分です。カリウムが欠乏すると、下にある古い葉の先端から葉が黄色く変色し、最終的には緑が枯れます。

これはカリウムが植物体の中で移動しやすい成分であり、古い葉から症状が現れるからです。新芽は大きくならず、葉が暗緑色になります。根の伸びが悪いため根腐れも起きやすくなります。

成熟直前になって果軸が褐変し、果粒が脱粒することもあります。対策としては、炭酸ガスを利用することで樹体内のカリウム含量が高められます。

参考:島根県 農業技術センター「 ハウスぶどう(デラウェア)栽培指針 ~炭酸ガス施用について」

カリウムは過剰になっても症状があまり出ません。ただし、カルシウムやマグネシウムの吸収が悪くなるため注意が必要です。

苦土(マグネシウム)欠乏症

ブドウ開花期

東北の山親父 / PIXTA(ピクスタ)

マグネシウムは、光合成に必要な葉緑素をつくる重要な成分です。マグネシウム欠乏症は開花期の前後に発生しやすく、特に早期加温栽培で発生が多い傾向があります。マグネシウムが不足すると古い葉が黄色く変色し、生育不良となります。

また、生育期に入ってから発生した場合、生育の期間中に回復させることが極めて困難です。対策としては、前年の礼肥施用時に苦土肥料を十分に施します。生育初期であれば、硫酸マグネシウムを0.2〜0.5%、5〜7日間隔で数回散布することで回復することもあるでしょう。

マグネシウムが過剰になると、カルシウムやカリなど微量成分の欠乏症を誘発します。しかし、マグネシウムはカリウムのように土にたくさん含まれているわけではないので、あまり心配する必要はありません。

マンガン過剰症/マンガン欠乏症

マンガンは葉緑体に多く含まれ、光合成で水を分解して酸素を発生させる成分です。マンガンが欠乏すると葉緑素の組成が阻害され、葉が白または黄色に変色します。症状が進むと葉全体が淡色化し、壊死する場合もあります。

応急処置としては、0.2%の硫酸マンガン水溶液を葉面に散布してください。ただし、既に白くなった葉は回復しないこともあります。土壌のマンガンが欠乏している場合は、FTEやBMようりんなら10a当たり2〜4kg、硫酸マンガンならば10a当たり20kg程度を目安に施肥します。

マンガン過剰症では、葉脈に沿って赤紫やチョコレート色の斑が見られます。悪化すると壊死や鉄欠乏症を引き起こす可能性もあります。対策としては、カルシウム肥料などを施肥して土壌のpHを6.0~6.5にすることです。また、水分含有量を適切にすることも挙げられます。

▼参考記事

ホウ素過剰症/ホウ素欠乏症

ブドウ 花房の点検

suno / PIXTA(ピクスタ)

ホウ素が開花期に欠乏すると、花冠が離れなくなり、花振るいを助長します。また、果粒の中が変色し、壊死する「あん入り」と呼ばれる症状も引き起こします。

応急処置としては、0.4%程度のホウ素を葉面に散布する方法がありますが、実際にはあまり効果がありません。そこで、土壌の水分が不足しないよう灌水を心がけ、砂質土壌では有機物施用によって水分の保持力を高めてください。

一方で、ホウ素が過剰になると、葉緑部が丸みを帯びて壊死するほか、キウイフルーツの葉に類似した形になります。

対策としては、0.5〜1.0%の尿素を10a当たり200〜300L葉面に散布します。また灌水の頻度を上げ、土壌中のホウ素を洗い流すことなども有効です。

【併せて読みたい】 ブドウの品質向上のための生産技術情報

高品質なブドウの栽培管理や生産技術については、以下の2記事もおすすめです。最初の記事ではブドウを地植えする際の流れや注意点、品種など、ブドウ経営で収益を上げるヒントを解説しています。また2記事目では、ブドウ剪定の時期やポイントを紹介しているため、併せて参考にしてみてください。

本記事では、ブドウ栽培における土作りや、施肥管理について詳しく紹介しました。ブドウは特に肥料に敏感であり、あまり施肥を必要としないため、追肥のタイミングをしっかりと見極めることが大切です。

本記事を参考に適切な土作りと施肥管理を行い、ブドウの収量アップや品質向上につなげてください。

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百田胡桃

百田胡桃

県立農業高校を卒業し、国立大学農学部で畜産系の学科に進学。研究していた内容は食品加工だが、在学中に農業全般に関する知識を学び、実際に作物を育て収穫した経験もある。その後食品系の会社に就職したが夫の転勤に伴いライターに転身。現在は農業に限らず、幅広いジャンルで執筆活動を行っている。

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