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【みかんの農薬】防除暦と効果を上げるコツ! 病害別のおすすめ農薬も紹介

【みかんの農薬】防除暦と効果を上げるコツ! 病害別のおすすめ農薬も紹介
出典 : nanohana / PIXTA(ピクスタ)

外観・食味ともに高品質なみかんを出荷するためには、栽培暦に合わせた防除を実践し、病害虫が発生しにくい環境を作ることが大切です。この記事では、みかん栽培で防除すべき病害虫や使用できる農薬、効果的な防除のポイントについて解説します。

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みかん栽培で発生する病害虫は、黒点病・灰色かび病などの病害や、貯蔵中に発生する病害、カメムシ類・ミカンハダニなどさまざまです。みかんの基本的な防除暦を確認したうえで、具体的な防除体系を検討してください。

みかんの基本的な防除暦

みかん栽培では、年間を通じた防除作業が欠かせません。

▼みかんの栽培暦・防除暦

みかんの栽培暦・防除暦

出典:下記資料よりminorasu編集部まとめ
ありだ農業協同組合(JAありだ)「みかんができるまで」
ブランドありだ果樹産地協議会「有田みかんデータベース|防除指針」
わかやま農業協同組合(JAわかやま)「令和4年産果樹病害虫防除暦・施肥例」
あいら農業協同組合(JAあいら)「営農情報」掲載「鹿児島県園芸振興協議会姶良支部|温州ミカ ン・小ミカンの栽培・防除暦(令和4年版)」

5~6月の開花期は、みかんの防除暦の中で最も重要な時期に当たります。この時期の防除が不十分だと果樹・果実への被害が大きくなり、収量低下につながります。

黒点病・灰色かび病・そうか病やゴマダラカミキリなどの病害虫の発生に注意し、農薬を適切に用いて防除を行います。

7~12月の成熟期・収穫期には、アザミウマ類・カメムシ類やミカンサビダニなどの害虫が増える傾向が見られます。害虫の発生密度を見極めながら、農薬の組み合わせに注意したうえで防除を進めてください。

開花期に引き続き、黒点病などの病害防除も実施します。収穫後に出荷できなくなる事態を防ぐため、青かび病・緑かび病・軸腐病といった貯蔵病害に対する防除も必要です。

1~3月の休眠期は、耕種的防除が中心になります。病害虫の影響を受けた枝・葉を剪定し、園地の枯れ葉・枯れ枝も園外に持ち出します。

かいよう病や黒点病の病原菌は葉や枝で越冬するため、翌年の収量低下を防ぐには枝・葉の病変を早期に発見することが重要です。併せて、農薬を使用してミカンハダニやヤノネカイガラムシへの防除も行います。

なお、防除暦は栽培環境や天候などで変化する場合があります。JAや普及指導センターなどの最新情報を入手したうえで、適切な防除方法を検討してください。

※なお、この記事に記載する農薬は、2022年11月現在登録があるものです。実際の使用に当たってはラベルをよく読み、用法・用量を守りましょう。また、地域によっては農薬使用の決まりが設けられている場合もあるため、事前に確認しておいてください

1〜4月:開花前は越冬した病害虫を防除

柑橘類のマシン油乳剤散布

toraya / PIXTA(ピクスタ)

収穫後から開花前にかけては、枝や葉に寄生して越冬する病害虫の防除を徹底します。耕種的防除として枯れ枝・枯れ葉の除去や果樹の間伐を実施することも大切です。

防除すべき病害虫

【かいよう病】

葉や果実・緑枝に、淡褐色でコルク化した病斑が発生します。

春・夏にも感染しますが、秋に感染して越冬した病斑に含まれる菌量が多いので要注意です。夏秋梢のミカンハモグリガの食害痕も感染源となります。3月頃から菌の増殖が始まるため、被害を防ぐためには開花前の防除が重要です。

柑橘類 かいよう病 発病葉

柑橘類 かいよう病 発病葉
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

【ミカンハダニ】

葉や緑枝の吸汁によって葉緑素が抜け、光合成を阻害します。年間13~14回発生し、休眠しないため卵・幼虫・成虫すべてが越冬するのが特徴です。気温が8~10℃になると増殖が始まりますが、暖冬の年には4~5月の発生量が多くなります。

ミカンハダニ 卵 第1若虫、成虫

ミカンハダニ 卵 第1若虫、成虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

【ヤノネカイガラムシ】

葉や果実・枝に寄生します。葉・果実に寄生した場合は周辺の着色が遅れ、果実の肥大が阻害されます。枝に寄生した場合、害虫の密度が高くなると果樹を枯死させる場合があるので要注意です。

雌は成熟成虫、雄は2齢幼虫が越冬しますが、暖冬の年には成虫の生存率が高くなり春の発生量が多くなります。

柑橘類 ヤノネカイガラムシが寄生した枝・葉

柑橘類 ヤノネカイガラムシが寄生した枝・葉
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

使用できる農薬と防除のポイント

【かいよう病】

みかんの発芽前に、「ICボルドー66D」などのボルドー液を散布します。ドローンなどの無人航空機による散布も可能です。

かいよう病以外の防除で、マシン油乳剤やマンゼブ剤を使用した場合は、無機銅剤の薬効低下がみられるので、散布間隔を2週間以上あけるようにします。

散布直後の降雨で薬害が発生する懸念があるので、気象情報を確認しながら散布時期を検討してください。発病が多い園地では農薬の付着性を高めるため、展着剤を加用するとよいでしょう。

【ミカンハダニ・ヤノネカイガラムシ】

みかんの収穫後、12月下旬~1月中旬の暖かい日に、95%または97%のマシン油乳剤を散布します。農薬に含まれる油成分が害虫を覆って窒息死させるので、抵抗性の発達がほとんどないのが特徴です。

浸透移行性がないため、害虫に農薬が直接かかるよう散布前に剪定・整枝を行うようにします。ただし、樹勢の弱い木に散布すると落葉を助長する恐れがあるので注意してください。

▼ヤノネカイガラムシの防除についてはこちらの記事をご覧ください。

5〜6月:開花期・幼果期は、防除の重要時期!

みかん 開花期 農薬の散布直後

5x5x2 / PIXTA(ピクスタ)

開花期・幼果期の防除は果実の品質を維持し、収量低下を防ぐために重要です。病害虫の発生を見つけたら、初期の段階で防除を徹底してください。除草や罹病した枝葉の除去といった耕種的防除とともに、農薬散布を行います。

防除すべき病害虫

【黒点病】

葉や緑枝・果実に発生しますが、感染時の病原菌の密度により症状の出方が異なるのが特徴です。病原菌の密度が低い場合は直径0.1~0.5mm程度の黒点が散発し(黒点型)、密度が高い場合は水滴が流れた跡に黒点が集中して形成されます(涙斑型)。

6~7月の梅雨期が果実への感染のピークです。また、貯蔵病害の1つである軸腐病の原因にもなるため、開花期から防除を徹底するようにします。

【灰色かび病】

花きや野菜・雑草などで発生した胞子がみかんの花弁に付着して、灰色のかびを発生させます。開花期から落弁期までの降雨回数が多い年や、施設栽培時の換気が不十分な場合に多発する傾向です。

感染によって落花が助長されるだけでなく、着果数が減少したり落果につながったりする場合もあります。病原菌に感染した花弁が果実に付着すると果皮にかさぶた状の傷ができ、灰色のかびも発生します。

みかん果実 灰色かび病の発病部

みかん果実 灰色かび病の発病部
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

【そうか病】

葉や果実に感染した場合は、いぼ型の病斑またはかさぶた状の病斑(そうか型病斑)が発生します。枝に感染した場合は、ほとんどの症例で筋状またはかすり状の病斑が発生します。

夏枝・秋枝に感染した病原菌は越冬して、翌年の感染源となります。苗木を植樹してから10年程度は発病しやすいので、慎重に防除を行うのがポイントです。

【ゴマダラカミキリ】

幼虫が幹の地際部から木質部に侵入し、食害により樹勢が低下します。数年後に枯死するのが一般的ですが、幼虫の寄生数が多い場合には翌春に枯死する恐れがあるので要注意です。

成虫は5月下旬~6月下旬にかけて発生し、羽化後2週間前後で産卵を開始します。地表から高さ50cmの範囲内の主幹部にかみ傷が見つかれば、産卵した可能性が高いといえます。

ゴマダラカミキリ 成虫

風を感じて / PIXTA(ピクスタ)

使用できる農薬と防除のポイント

【黒点病】

花の満開期から8月下旬にかけて、マンゼブ水和剤である「ジマンダイセン水和剤」または「ペンコゼブ水和剤」を散布します。

マンゼブ水和剤は薬液の表面張力が高く、定着力が高いのが特徴です。乾燥後は農薬の粒子が固着するため、多雨条件下でも防除効果が高いとされます。チャノキイロアザミウマ、ミカンサビダニとの同時防除も可能です。

マンゼブ水和剤の総使用回数は最大4回なので、「エムダイファー水和剤」や「ストロビードライフロアブル」と組み合わせて防除を検討するとよいでしょう。また、灰色かび病・そうか病とあわせて防除する場合は、「ナティーボフロアブル(テブコナゾール・トリフロキシストロビン水和剤)」の散布も選択肢の1つです。

【灰色かび病・そうか病】

花の満開期から落弁期にかけて、「フロンサイドSC」「ナリアWDG」「ファンタジスタ顆粒水和剤」「フルーツセイバー」を散布します。

フロンサイドSCは灰色かび病・そうか病だけでなく、ミカンハダニやミカンサビダニの防除にも有効です。フルーツセイバーは、開花期・幼果期はもちろん収穫前日まで使用できます。

【ゴマダラカミキリ】

5月下旬~6月中旬の成虫発生初期に合わせて、地際に近い主幹の分枝部分等に「バイオリサ・カミキリ」のシートを施用します。バイオリサ・カミキリはカタツムリ・ナメクジ類に食害される恐れがあるため、土壌が多湿にならないよう注意が必要です。

6月中旬~7月中旬の幼虫発生期には、「ダントツ水溶剤」や「モスピランSL液剤」を散布します。「スプラサイドM」や「オリオン水和剤40」も施用可能ですが、殺虫効果が低いという意見もみられます。

7〜12月:収穫期までは腐敗対策を徹底

みかんの摘果

藤 / PIXTA(ピクスタ)

病害虫が果実に寄生すると、商品価値が下がり減収につながります。天候や害虫の発生量を見極めながら適切に防除を実施するのが重要です。

また、収穫後の果実の腐敗を防ぐため、収穫前に農薬での防除を実施します。果皮の傷から病原菌が侵入するリスクも考えて、収穫や選果・貯蔵・出荷時には果実を丁寧に取り扱うのもポイントです。

防除すべき病害虫

【貯蔵病害】

主に青かび病・緑かび病や軸腐病の病原菌によって貯蔵病害が引き起こされます。貯蔵中や出荷後に病害が発覚することが多いのが特徴です。商品価値が低下したり産地の信頼を損ねたりする恐れがあるため、収穫前に農薬での防除を丁寧に行います。

みかん 緑かび病の発病果

みかん 緑かび病の発病果
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

【アザミウマ類】

チャノキイロアザミウマの成虫・幼虫が吸汁加害することで、果皮に灰白色から茶褐色の雲状の傷を作ります。空梅雨で7~8月も少雨の時に多発する傾向です。

また、ミカンキイロアザミウマの被害は施設栽培で発生しやすいです。着色初期から収穫期にかけて成虫が吸汁加害し、果皮が白くかすり状に変質します。

【ミカンハモグリガ】

幼虫が若葉や緑枝の柔らかい組織を食害して、表皮の下に白い筋を引いたような模様を残します。葉の密度が高まる夏・秋に多発する傾向です。食害痕がかいよう病菌の侵入口となるため、かいよう病と併発することが多いといわれています。

【ミカンサビダニ】

越冬した成虫が新芽・新葉で成長し、果実へ移動して加害します。果実が加害されると果面全体が黒褐色に変色します。高温少雨の環境で増殖しやすい反面、長雨や強風雨の時期には増殖しにくいのが特徴です。

柑橘類 ミカンサビダニの被害果

柑橘類 ミカンサビダニの被害果
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

【カメムシ類】

カメムシ類はチャバネアオカメムシ・ツヤアオカメムシ・クサギカメムシが主要種ですが、地域によって生息するカメムシが異なります。

幼果から着色期の果実を吸汁し、果肉を海綿状に変化させます。成虫は落葉下や家屋内などで越冬するほか、集団で新梢を吸汁加害した場合は果樹の枯死に至る場合があるので要注意です。

柑橘類 クサギカメムシによる被害

柑橘類 クサギカメムシによる被害
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

使用できる農薬と防除のポイント

【貯蔵病害(青かび病・緑かび病・軸腐病)】

収穫前に、「ベンレート水和剤」「トップジンM水和剤」「ベフラン液剤25(青かび病・緑かび病)」を混用または単独で施用します。ベンレート水和剤・トップジンM水和剤を施用する場合は、黒腐病の多発を防ぐため「石灰硫黄合剤」を混用するとよいでしょう。

【アザミウマ類】

5~10月にかけて、「スピノエースフロアブル」または「ディアナWDG」を施用します。チャノキイロアザミウマとミカンサビダニを同時防除する場合は、「ハチハチフロアブル」「コテツフロアブル」の施用が有効です。

「キラップフロアブル」や「キラップJ水和剤」もアザミウマ類の防除に使用できますが、薬害防止の観点から着色始期以降は使用しないようにします。

【ミカンハモグリガ】

7月中旬~8月上旬にかけて、「スピノエースフロアブル」「カスケード乳剤」「テルスター水和剤」を施用します。薬剤抵抗性の発達を遅らせるため、同系統の農薬は連用しないよう注意が必要です。ミカンハモグリガが多発している場合は、7~10日間隔での散布も検討します。

【ミカンサビダニ】

ミカンサビダニだけを防除する場合は、6月から10月にかけて「サンマイト水和剤」「ダニカット乳剤20」を施用します。収穫前の防除には、「サルファーゾル」も施用可能です。「バロックフロアブル」「ダニエモンフロアブル」はミカンハダニの防除にも効果を発揮します。

【カメムシ類】

発生期に合わせて「スタークル顆粒水和剤」「ロディー乳剤」を施用します。カメムシの発生量は越冬量や針葉樹の球果の量によって大きく異なります。JAや普及指導センターなどから最新の営農情報を入手して防除計画を立てることが重要です。

みかんの収獲作業

藤 / PIXTA(ピクスタ)

みかんの病害虫は多岐にわたり、なかにはゴマダラカミキリ・カメムシ類のように果樹を枯死させるものもあります。

また、黒点病の病原菌が貯蔵中に軸腐病を引き起こしたり、ミカンハモグリガの食害痕からかいよう病の病原菌が侵入したりするなど、複合的な要因で病害・虫害が発生する可能性もあります。

農薬の組み合わせを検討したうえで年間の防除計画を立てて実践することが、収量増加と果実の品質確保、さらには産地の信頼を守るためにも大切です。

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舟根大

舟根大

医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。

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