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ココピート(ヤシ殻培地)とは?メリット・デメリットや使い方、導入事例を紹介

ココピート(ヤシ殻培地)とは?メリット・デメリットや使い方、導入事例を紹介
出典 : ajcespedes - stock.adobe.com

通気性や保水性があり、軽く扱いやすいココピート(ヤシ殻培地)は、施設栽培の培地や育苗用培土などに使われています。今回は、養液栽培で利用されるヤシ殻培土の概要や特徴について、ロックウールやピートモスと比較しながら紹介します。

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ココナッツ 果実 殻の繊維 ココピートのブロック ココピートによる養液栽培

shige hattori / PIXTA(ピクスタ)・natamata / PIXTA(ピクスタ)・Coprid / PIXTA(ピクスタ)・ tortoon / PIXTA(ピクスタ)

養液栽培は土壌障害や連作障害の回避に有効であるうえ、土耕に必要な耕起や畝立て、土寄せといった作業を省略できるのが魅力です。

日本では、ロックウールやピートモスなどの培地が利用されていますが、使用済培地の廃棄コストや採掘資源に限りがあるなどの理由で地球環境に与える影響が問題視されつつあります。

そこで、これらの課題を解決するヤシ殻培地が注目されています。この記事では、その特徴と、ロックウールやピートモスとの違いについて紹介します。

ココピート(ヤシ殻培地)の特徴と利点

ヤシ殻培地 設置後のビニールハウス

tortoon / PIXTA(ピクスタ)

ココピート(ヤシ殻培地)とは、ヤシの実の殻を細かく粉砕した有機培土のことです。

ヤシ殻培土の原料となるヤシ殻の表面には、小さな穴が無数に空く多孔性となっており、そこにたくさんの空気や水分を蓄えることが可能です。

また、粒は荒めで粒子同士には適度な空間ができるので、余計な水分は流れていく性質を持っています。保水性・透水性・通気性に優れていて、養液栽培に適した培地といえます。

さらに、天然のヤシ殻が原料であることから循環型農業に適しているほか、成型が容易なため土壌改良用や隔離栽培用など、用途に合わせた形状変更がしやすいのも特徴です。

ロックウールとの違い

トマトの養液栽培 ロックウール培地

hamahiro / PIXTA(ピクスタ)

ロックウールが無機物なのに対して、ヤシ殻培地は天然素材を使用した有機物です。

ロックウールとは

ロックウールは玄武岩などの天然岩石が原料で、それらの岩石を高温で融解し、繊維状に固めた人工鉱物なので、養液に対してほとんど影響を及ぼすことがなく、栽培管理をしやすいのがメリットです。

廃棄のしかたの違い

一方で、ロックウールは人工鉱物であるがゆえに使用後の廃棄処理が課題として挙げられます。ロックウールは、産業廃棄物に指定されており、使用後は、専門の排出業者に委託して埋め立て処理をしてもらわなくてはなりません。

農業用ロックウールのリサイクルは、業界として取り組まれており、使用済みロックウールがメーカーによって回収され、再び農業用ロックウールとして再利用する仕組みが整いつつあります。

しかし、運送費・処理費がかかること、当該メーカーの製品しか引き取ってもらえないことなどから、また普及しているとはいえないようです。

それに対して、ココピート(ヤシ殻培地)は、培地として使用したあとはほ場にすき込んだり、堆肥にして再利用したりすることが可能です。

廃棄する場合には、多くの自治体で園芸用土については決まりがあり、また、農家が出す場合は事業系になりますが、処理コストはロックウールほどかかりません。

費用と収量

ココピート(ヤシ殻培地)は、ロックウール培地より、一般に費用が安く、同程度の収量を得られれば、費用対効果は優れているといえます。

徳島県立農業試験場のトマト栽培での試験では、ロックウール培地よりもヤシ殻培地のほうが収量や品質が同等もしくは優れていたという結果が出ました。当該試験では、ヤシ殻培地なら6カ月間にわたって培養液を更新しなくても問題なく栽培できるとしています。

さらに、福岡県農林業総合試験場が促成ナスのかけ流し養液栽培で行った試験では、ヤシ殻培地はロックウール培地に比べて価格が安価であるにもかかわらず、収量と上中物率は同等という結果が出ました。

これらの結果はあくまでも特定の条件下で行われた試験であり、すべてのほ場で同じ結果が出るわけではありません。しかし、導入コストや環境への配慮といった点で、ヤシ殻培地には大きな優位性があることがわかります。

出典:
徳島県立農業試験場「ヤシガラ培地を用いたトマトの循環式養液栽培」

福岡県農林業総合試験場「促成ナスの養液栽培用培地としての「細粒礫」および「ヤシガラ」の適応性」


ピートモスとの違い

ピートモス

freshft / PIXTA(ピクスタ)

ピートモスは、苔などの植物が腐植、・堆積した泥炭を乾燥させた天然の有機物です。土壌改良資材として使われているほか、やロックウール同様、養液栽培の固定培地の主材料となっています。

環境への影響

ピートモス培地の使用後は、ヤシ殻培地と同様、ほ場にすき込んで処理することができます。

しかし、天然資源のため採掘できる量には限りがあることや、泥炭が堆積した湿地には希少な動植物が生息しているなどの理由で、環境や生態系への影響が懸念されています。

その点、ヤシ殻培地は、これまで捨てられていた部分が材料であり、環境や生態系に与えるリスクがより少ないと考えられています。

pH調整

ピートモスは酸性なので、酸性度調整済の製品ではない場合、作物の特性に合わせたpH調整が必要です。

それに対し、ヤシ殻培地は多くの作物が好む弱酸性なので、使用前のpH調整が軽微で済むことがメリットといえます。

ココピート(ヤシ殻培地)の欠点

トマトの養液栽培 ココピート培地

ajcespedes - stock.adobe.com

ココピート(ヤシ殻培地)は養液栽培の培地として高い適性がある一方で、欠点がないわけではありません。使用する際に気をつけるべき点としては、「有機物であるため物理性が変化しやすい」ことが挙げられます。

例えば、ココピート(ヤシ殻培地)は連用していくと、窒素分によって分解が進み、C/N比が低くなる傾向があります。

具体的には、繊維が細くなって容積が減ったり、保水性が高くなる一方、透水性が低くなったります。そのため、千葉県では、トマトの長期どり栽培では3年を目途に交換するよう奨めています。

出典:
千葉県「 農業改良普及情報ネットワーク| フィールドノート令和2年 |ヤシ殻培地耕によるトマトの長期どり栽培」

岐阜大学機関リポジトリ収録「高設栽培イチゴの生産性向上に関する研究(内容の要旨)(遠藤昌伸)」

また、輸入されているココピート(ヤシ殻培地)には品質にバラツキがあることにも留意しなくてはなりません。

日本に輸入されているココピートは主にスリランカ産で、中でも、長期間晒すことで得られる「ブラックピート」は、塩分が洗い流されており、品質に定評があります。

しかし、近年は、早期熟成させた「レッドピート」が出回っており、EC値にバラツキがあることが問題になっています。

輸入企業や生産国の組合などが基準をつくって品質の安定を図っていますが、使用に当たっては、成分内容、特にEC値を確認するようにしてください。

出典:公益社団法人国際緑化推進センター「海外の森林と林業 第98巻」 所収「途上国森林ビジネスデータベース(BFPRO)の構築と森林ビジネスモデルの紹介」

ココピート(ヤシ殻培地)に向く作物

切り花 バラの養液栽培

Takasah / PIXTA(ピクスタ)

ココピート(ヤシ殻培地)は主に養液栽培の培地としてさまざまな作物に利用されていますが、利用が多くみられるのは、トマトやイチゴのほか、イチゴ、パプリカ、といった果菜類や、バラ、トルコギキョウ、ガーベラなどの切り花です。

施設栽培の果菜類や切り花は、販売単価が高く資材に資金を投じられることと、高いレベルの施肥管理が求められることが要因といわれています。

逆に多量の培土を必要とする根菜類では、反収とコストが見合わず、養液栽培自体の採用がほとんどないのが実情です。

周年栽培の葉菜類では、水耕栽培が採用されることが多いようですが、農研機構の試験では、ベビーリーフなどの葉菜類の養液栽培にも適していることが示されています。

葉菜類は、回転率や販売単価が高い場合に、導入検討の対象になるといえそうです。

出典:農研機構 東北農業試験研究協議会「東北農業研究 第56号(平成15年12月)」所収「期待される新野菜の固形培地耕栽培における生育特性」

ほかにも優れた保水力や保肥力、透水性、通気性など特徴を活かし、ブルーベリーなどのポット耕や、露地栽培の果樹のタコつぼ施用にも使われています。

ココピート(ヤシ殻培地)の主な製品

ココピート(ヤシ殻培地)にはいくつかの製品があります。ここでは、養液栽培の固定培地が主な用途の「ココカラピート」と、果樹類向けのの「トップココピート」を紹介します。

ココカラピート

ココカラ 合同会社「ココカラピート」のイチゴ高節栽培での導入事例

出典:PR TIMES株式会社(ココカラ 合同会社 プレスリリース 2021年4月15日)
ココカラ 合同会社「ココカラピート」のイチゴ高節栽培での導入事例

ココカラ合同会社が販売している「ココカラピート」の特徴は、自社工場と厳選したOEM先のみで製造することで実現した「高品質で安定した品質」です。

前述のようにココピート(ヤシ殻培地)は、品質にバラツキがあるのが課題です。

しかし、ココカラ合同会社は、生産国の生産拠点でpHやEC値のチェックを定期的に実施しているのはもちろん、仮に設定した品質基準より1%でも異なる製品があった場合は、その時間帯に製造されたものをすべて廃棄するなど徹底した品質管理を行っています。

そうした努力の結果、ゴミや砂といった異物混入率は3%以下に保たれるなど、安定した品質を実現しました。

また、同社は、成型が容易である利点を活かして、高設栽培用や育苗用など、農家ニーズに合わせた豊富なラインアップとサービスを用意しているのも特徴です。高設栽培のベンチサイズに合わせた形成サービスも展開しています。

ココカラ合同会社 ホームぺージ

トップココピート

株式会社トップと有限会社エムアンドケイが販売する「トップココピート」は、果樹類の培養土(たこつぼ施用、苗木用培土など)として開発されています。

マットやロープなどに加工する際に生じるヤシ殻繊維を、3~5年かけて堆積・発酵させて製造しています。

果樹のたこつぼ施用向けには「トップココピートオールド」というトップココピートよりもグレードの高い製品があります。

この製品は、スリランカにある自社山で40~70年ほど堆積し、完熟したヤシ繊維を使った製品で、トップココピートよりもさらに土壌改良効果に優れるとしています。

特に団粒構造の改善に効果のある腐植酸(フミン酸)と有機物の含有率が高いので、地力向上を期待できるのが魅力です。

株式会社トップ・有限会社エムアンドケイ ホームぺージ

ココピート(ヤシ殻培地)の活用事例

ここまでココピート(ヤシ殻培地)の概要や使い方などについて紹介してきました。製品紹介を見て、より具体的な活用方法をイメージした方もおられるのではないでしょうか。最後にココピート(ヤシ殻培地)を実際に使用した事例を2つ紹介します。

ココピート(ヤシ殻培地)を使ったトマトの養液栽培|狭い農地を活かす都市型農業の事例

東京の街中農園「ネイバーズファーム」代表 川名桂さん。株式会社にんべんとの共同企画で、日本橋COREDOで「トマト祭り」を開催した。

出典:株式会社PR TIMES(株式会社にんべん プレスリリース 2022年4月15日)

ココピート(ヤシ殻培地)を使用した養液栽培は都市型農業との相性もぴったりで、その事例として挙げられるのが、東京都日野市でトマトの養液栽培に取り組む「ネイバーズファーム」の川名桂さんです。

川名さんは地産地消を目標にどうしても都心に近い場所で農業を営みたいと考えていました。しかし、住宅街に近い場所での農業は近隣住民との間で土埃などの問題でトラブルを抱えてしまいがちです。また、大きなトラクターが通れるような道路が少なく、広大なハウスを建設することも農地面積の関係から難しいという課題を抱えていました。

そこで、問題を解決するために出した結論が、ココピート(ヤシ殻培地)を使用したトマトの養液栽培です。培地を利用した養液栽培なら土埃も起きにくく、また軽いことは女性農家にとって作業しやすいなど、抱えていた多くの課題解決につながりました。

現在では、地元の人たちがリピーターとなって野菜を買いに来てくれるなど、自らの夢の実現に向けて着々と歩みを続けています。

出典
農林水産省「aff(あふ)2022年8月号 トマト農場を訪ねて」

一般社団法人全国農業会議所 運営 全国新規就農相談センター「農業をはじめる.JP」掲載「私らしく、東京で農業を。農業経営で感じた、生まれて初めての地元愛」 

ココカラ合同会社「【東京】 有機培地のココピートでのびのびと育ったトマト。都市型農業の新たな形を示す」

使用済みココピート(ヤシ殻培地)の有効活用

長野県松本市でイチゴの高設栽培を営んでいる株式会社佐藤工務店の佐藤亮太さんは、露地野菜を栽培するほ場に使用済みココピート(ヤシ殻培地)をすき込み、再利用しています。

ほ場一帯はかつて河原であり、作土層が薄いため、定期的に土の量を増やすことが品質のよい作物を栽培するために必要でした。そこで、緑肥としてのソルゴーと使用済みのココピート(ヤシ殻培地)を併用してほ場にすき込み、土量を増やしています。

出典:ココカラ合同株式会社
「【長野】少量多回数かん水でココピートの乾燥課題を解決!」
「【イチゴ導入事例】入れ替え作業が3週間短縮!ココピートで女性にもやさしい職場に」

使用済みのココピート(ヤシ殻培地)を有効活用するための試験は実際に各地域で行われています。

例えば、香川県農業試験場が行った試験ではイチゴの養液栽培の培地を「ピートモス+ロックウール」から「ピートモス+ヤシ殻」に変えることで、使用後の処理が容易になったうえ、すき込んだ水田の収量が増加したという結果が出ました。

出典:
香川県「近畿中国四国農業研究成果情報(平成12年度(2000))」 所収イチゴらくちん栽培システムにおけるヤシ殻混合培地の活用」

また、愛知県農業総合試験場では、乳牛の糞尿を堆肥化する際に生じるアンモニアによる悪臭を防ぐため、ヤシ殻を副資材として利用した試験を実施しています。

その結果、慣行のオガクズを利用したときに比べて60℃以上の高温を維持する期間が短く、発酵が十分に進まない可能性があるものの、アンモニア揮散濃度は低下したとのことでした。

出典:愛知県「農業総合試験場 研究報告 第52号」所収「ヤシ殻およびトマト培養土を乳牛ふん尿の堆肥化で副資材として 利用した場合の発酵と臭気に対する特徴」

トマトのポット耕

ノブモ / PIXTA(ピクスタ)

ココピート(ヤシ殻培地)は、これまでの代表的な固形培地の主材のロックウールやビートモスに比べると環境への負荷が低いことで新たな養液栽培の培地として注目されています。

固形培地にどのくらいの比率で混ぜるかなど、各地域の農業試験場などでさまざまな試験が行われています。

環境に配慮した農業をめざす農家の方は、ココピート(ヤシ殻培地)の導入を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

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中原尚樹

中原尚樹

4年生大学を卒業後、農業関係の団体職員として11年勤務。主に施設栽培を担当し、果菜類や葉菜類、花き類など、農作物全般に携わった経験を持つ。2016年からは実家の不動産経営を引き継ぐ傍ら、webライターとして活動中。実務経験を活かして不動産に関する記事を中心に執筆。また、ファイナンシャルプランナー(AFP)の資格も所持しており、税金やライフスタイルといったジャンルの記事も得意にしている。

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