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アイメック農法とは? 初期投資のデメリットを補う高収益化のヒント

アイメック農法とは? 初期投資のデメリットを補う高収益化のヒント
出典 : 株式会社PR TIMES(NSGグループ ニュースリリース 2019年1月25日)

誰でも高品質かつ採算性の高い栽培を可能にする農法として注目を集めているのが、「アイメック農法」です。土作りが不要なため、農業未経験でも新規就農しやすい農法だといわれています。本記事ではアイメック農法の概要やメリット、デメリット、収益化やブランディングについて解説しますので、参考にしてください。

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アイメック(注)農法が注目されている理由は、高品質の作物を栽培しやすいことです。ほかにも、平坦であれば土地を選ばず栽培が可能なこと、水耕栽培と比較して利益率が高い傾向にあること、 環境へ及ぼす影響が少ないことも挙げられます。

(注)「アイメック」は、メビオール株式会社の登録商標です。

高品質作物を初年度から収穫? 話題のアイメック農法とは

アイメックを用いたフィルム農法を開発したメビオール株式会社 代表取締役会長 森有一氏

アイメックを用いたフィルム農法を開発したメビオール株式会社 代表取締役会長 森有一氏
出典:PR TIMES(CNN ニュースリリース 2017年11月13日)

アイメック農法(アイメック栽培)とは、研究開発を主体としたファブレス企業である「メビオール株式会社」が開発した新しい農法の1つです。もともとは医療用として利用されていた「アイメックフィルム」を転用したものです。高栄養価の作物を安全に生産できるとして、栽培の培地に転用したのです。

栽培では必要最小限の養液しか与えないため、作物の根がより多くの養液を吸収しようとして、フィルムに張りつきます。さらに、栄養を蓄えるために多くの糖分やアミノ酸などを作り出します。その結果、栄養価が高くておいしい、高品質の作物ができるのです。

アイメック農法によって栽培できる作物には、次のようなものが挙げられます。

トマト
イチゴ
メロン
きゅうり
パプリカ など

アイメック農法を取り入れるメリット

アイメック農法を取り入れることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。代表的な4つのメリットについて見ていきましょう。

メリット1. 「土作り」が不要。新規就農者でも参入しやすい

小田急グループは保有する未利用地でアイメック農法による高糖度ミニトマト栽培に参入。「かなか(神奈果)」として販売。

小田急グループは保有する未利用地でアイメック農法による高糖度ミニトマト栽培に参入。「かなか(神奈果)」として販売。
出典:PR TIMES(小田急電鉄株式会社 ニュースリリース 2016年12月22日)

アイメック農法のメリットは、新規就農者でも参入しやすいことです。その理由は、長年の経験を必要とする「土作り」が不要なこと、管理が容易で技術習得にかかる期間が短いことが挙げられます。

例えば、10年の経験が必要とされるトマトの「土作り」を、アイメック農法であれば、農業未経験の方でも1年で習得できます。さらに高品質の作物を栽培できることから、新規就農する際の選択肢としても人気です。

アイメック農法のコンサルタント企業である「株式会社農援隊」には、農業未経験の新規就農者に対して15件以上の導入実績があります。

出典:株式会社農援隊「導入実績」

メリット2. 平坦であれば、土地を選ばず栽培が可能

アイメック農法は、平坦であれば土地を選ばずに栽培できるのもメリットです。なぜなら、土壌の代わりにフィルムを使用するからです。

こうしたメリットを活かしているのが東北の農地です。東日本大震災の津波により、油などの有毒物質や塩で農地は汚染されました。そんな被災農地に対して、アイメック農法を使った復旧・復興プロジェクトが進められています。

出典:東北大学大学院 農学研究科・農学部「〜食・農・村の復興支援プロジェクト〜」所収「土壌を必要としない新農業技術(アイメック)を活用した被災農地の復旧・復興プロジェクト(食・農・村の復興支援プロジェクト報告 第1巻第2号)」

ほかにも、干ばつや水不足の影響を受ける地域において、土地を選ばずに栽培できる点もメリットとなるでしょう。

メリット3. 水耕栽培と比較して、利益率は高くなる傾向がある

アイメック農法は水耕栽培と比較すると、利益率が高い傾向にあります。これもメリットの1つです。なぜなら、養液を循環する設備や殺菌の設備を要する水耕栽培に比べて、初期段階の投資額が大幅に下がるからです。

また、止水シートによって水と肥料の漏出を防止できるため、従来の農法よりも少ない水と肥料の量で栽培が可能です。それにより水耕栽培と比較して、光熱費や労働力などを含めたランニングコストも抑えられます。

さらにアイメック農法では、高価格かつ高品質の作物を限定的に生産します。そのため、大量生産をめざす水耕栽培よりも売上額が上がりやすいといえます。

出典:株式会社農援隊「アイメック農法とは」

メリット4. 農薬使用量は最低限。環境へ及ぼす影響が少ない

アイメック農法は、水耕栽培や土耕栽培に比べて、環境に及ぼす影響が少ないのもメリットです。なぜなら、バクテリアやウイルス、細菌などの繁殖を防ぎやすいため、農薬の使用を抑えられるからです。

どんなデメリットがある? アイメック農法の導入前に知っておきたい注意点

アイメック農法には多くのメリットがありますが、デメリットも存在します。そこで導入前に知っておくべき注意点について確認していきましょう。

デメリット1. 導入にはまとまったコストがかかる

アイメック農法を導入した大規模施設

アイメック農法を導入した大規模施設
出典:株式会社PR TIMES(NSGグループ ニュースリリース 2022年2月10日 )

アイメック農法の導入には、まとまった初期投資が必要です。この点はデメリットの1つといえるでしょう。

例えば、「10a当たり約3,000万円〜4,000万円」が必要です。水耕栽培に比べれば、安価な傾向にはありますが、決して安い金額ではありません。

以上のことからアイメック農法は、個人向けではなく、農業によって生計を立てる農家あるいは農業法人向けだといえます。

デメリット2. 見込める収量は水耕栽培や土耕栽培よりも少ない

アイメック農法で見込まれる収量は、水耕栽培や土耕栽培よりも少ないのは、デメリットだといえるでしょう。具体的な収量は、水耕栽培の「50%程度」、土耕栽培の「62.5%程度」になります。

そんな中、収量を増加させるために工夫をする農家もあります。例えば、フィルムを介した灌水だけではなく、直接根に水を与えるなどです。

このように品質と収量を高める工夫を加えることが、アイメック農法で収益を増加させる重要なポイントとなるでしょう。

出典:株式会社農援隊「アイメック農法とは」

アイメック農法での収益化には「ブランディング戦略」が必須

アイメック農法を取り入れたとしても、収益化のためにはブランディング戦略が必須です。なぜなら高品質の作物を作っても、作物のもつ価値を販売価格に反映できないと収益を増やせません。

株式会社ドロップは、アイメック農法で栽培したトマトを「ドロップファームの美容トマト」としてブランディングしている。

株式会社ドロップは、アイメック農法で栽培したトマトを「ドロップファームの美容トマト」としてブランディングしている。
出典:PR TIMES(広島県公立大学法人 ニュースリリース 2019年11月20日 )

例えば、三浦綾佳さんが立ち上げた株式会社ドロップでは、アイメック農法で生産した高糖度トマトを女性の視点でブランディングし、「ドロップファームの美容トマト」として自社サイトと百貨店やスーパーマーケットを中心に販路を開拓してきました。現在では生産が追いつかないほどだそうです。

(注)「ドロップファームの美容トマト」(注)は株式会社ドロップの登録商標です。

その際に大事にしてきたのが、販路別に顧客のニーズを徹底して把握することと、そのニーズにあわせて商品開発することです。

株式会社ドロップ ホームぺージ「ドロップファーム、甘くて宝石のようなフレッシュトマト」

また、アイメック農法で生産したフルーツトマトにユニークなブランド名をつけ、地方創生や持続可能な農業につなげようと取り組んでいる地域もあります。

岩手県陸前高田市が復興のために整備した大規模園芸施設では、アイメック農法を導入し、生産したトマトを「恋するとまと」としてブランディングし、地域をあげてPRしています。

愛知県犬山市のシルバー人材センターでは、高齢者の就労機会をつくろうと、アイメック農法でのトマト栽培と販売に取り組んでいます。ブランディング、マーケティング面は、地元の大学が協力し「おいしい花子」として2018年に本格販売を開始しました。同市のふるさと納税の返礼品にも選ばれています。

このように、いかに付加価値を付けてブランド化できるかが収益化のカギとなります。アイメック農法にしかできない強みを活かし、儲かるビジネスモデルを確立しましょう。

陸前高田産「恋するとまと」

陸前高田産「恋するとまと」
出典:ソーシャルワイヤー株式会社(一般社団法人ドリームプロジェクト ニュースリリース 2018年11月30日 )

ここまで、アイメック農法の概要やメリットとデメリット、収益化の方法などについて解説してきました。アイメック農法を取り入れることによって、新規就農しやすく、利益率の向上をめざせます。

ただしアイメック農法には、メリットだけではなく導入コストや収量に関するデメリットもあります。この点を正しく理解することが大切だといえるでしょう。

また、収益を上げるためには、「ブランディング戦略」が必須であることも覚えておきましょう。

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光田直史

光田直史

高校時代は化学を専攻し、農業に関する内容についても学んでいたことから、かねてより農業や地球環境に強い関心を持っていた。 卒業後は地元の運送業界や不動産業界に従事し、以後8年をIT企業の製造部門で勤務。事業部長と内部監査室長も兼任した。その経験を活かし、2020年よりライターとして活動開始。 ビジネス、金融、IT、マーケティング、不動産、農業など複数ジャンルでの記事執筆を手がけている。

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