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りんごを斑点落葉病から守るには?原因や防除方法、有効な農薬

りんごを斑点落葉病から守るには?原因や防除方法、有効な農薬
出典 : dr30 / PIXTA(ピクスタ)

斑点落葉病は品種によってかかりやすさが異なり、「デリシャス」や「印度」を祖先品種とする品種や、「王林」については特に注意が必要です。本記事では、斑点落葉病の葉と果実それぞれの症状の特徴や、効果的な防除方法について解説します。

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りんご栽培において「斑点落葉病」は、「黒星病」や「炭疽病」などと並ぶ重要病害の1つです。主に葉と果実に被害が生じ、果実に発生した場合は商品価値を大きく損ないます。有効な農薬があるので、防除体系を構築し、予防と早期防除を欠かさないことが大切です。

りんごの斑点落葉病とは?

りんごの斑点落葉病 発病葉表

りんごの斑点落葉病 発病葉表
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

「斑点落葉病」とは、糸状菌(かび)の一種を病原とするりんごの主要病害です。詳しくは次項で解説しますが、発症すると主に葉や果実、新梢に病斑が現れます。

病害名にある通り、進行すると大量に葉が落ちることが特徴ですが、経済的な影響は成果に感染した場合のほうが深刻です。

りんご斑点落葉病の主な病徴

斑点落葉病 暗褐色円形病斑

斑点落葉病 暗褐色円形病斑
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

斑点落葉病が多発した枝

斑点落葉病が多発した枝
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

斑点落葉病 葉表にできた病斑

斑点落葉病 葉表にできた病斑
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ここでは、葉・果実・新梢や枝それぞれに発症した場合の症状の特徴を解説します。

葉に見られる病徴

柔らかい若葉に発生しやすい傾向があります。はじめに葉の表面に直径3~5mmくらいの円形病斑が発生し、次第に拡大・融合して不定形な、5~6mmくらいの病斑になります。病斑の内部では組織が死んで、表裏にすす状の菌叢(きんそう)が見られることがあります。

多発すると、葉柄や主脈に拡大した不定形な病斑(「流れ型病斑」ともいいます)ができ、葉全体が黄化して早期落葉します。また、広範囲で激しい落葉が発生することもあり、病名の由来にもなっています。

果実に見られる病徴

斑点落葉病で最も重要な被害は、りんごの果実への感染によるものです。

幼果への感染は、花の残さが感染源となる場合が多く、花が付いていた「萼窪(がくあ)部」付近を中心に1mm程度の小さな病斑ができます。

幼果のうちに発症した場合、果実が肥大するにつれて斑がはげ落ち、収穫までには目立たなくなる場合があります。ただし、斑点症状が激しい場合は、商品価値が低下する可能性が高いので摘果しましょう。

特に、幼果のがくあ部(先端部のくぼみ)に発生が見られた場合は多発することがあります。病斑がでた果実の周囲の葉にも病斑があることが多いので、周囲の葉の発病経過をよく観察し、早めの防除対策を進めることが重要です。

りんごの斑点落葉病 果実への被害

Liudmila - stock.adobe.com

一方、成果になってからの感染では、表面に褐色や黒褐色の斑点が数個~数十個できます。病斑の周縁は赤くなり、やや窪むこともあります。病斑は目立つので商品価値が大幅に低下し、収益の低減につながってしまいます。

新梢や枝に見られる病徴

新梢や徒長枝には、特に秋頃に感染します。感染した枝には、2~6cmほどの円形や楕円形で褐色の病斑が皮目を中心に発生し、病斑の周囲に亀裂が入る場合もあります。また、芽の鱗片にも同様の病斑が見られることがあります。

枝や芽の鱗片に生じた病斑は、翌年の春に胞子を飛散させて第一次感染源となるので、見逃すことなく春になる前に防除してください。

褐斑病との違い

斑点落葉病と初期症状が似ているのが「褐斑病」です。多くの農薬で斑点落葉病と褐斑病は同時防除できるので、区別できず不安がある場合は、両方に適用のある農薬を選ぶとよいでしょう。

褐斑病も、斑点落葉病と同じく糸状菌(かび)の一種を病原としています。主な症状は、発生初期には葉に数mmの病斑ができ、次第に不定形な病斑へと拡大していきます。病斑の内部では、黒い虫の糞のような分生子を形成します。

この不定形な病斑の周囲は緑の葉色を残しますが、それ以外の健全部が次第に黄化します。罹患した葉は斑点落葉病と同様に、早期に落葉します。また、果実に感染すると褐色で丸い病斑を表面に生じ、次第に広がりながら黒色化します。

このように、褐斑病は斑点落葉病とよく似た特徴を持つ病害で、特に初期症状が似ています。褐斑病特有の症状は、葉に生じた病斑の上に、虫の糞状の小さい黒点が見られることです。この黒点が病斑の上にあるかどうかが、斑点落葉病との大きな違いとなります。

斑点落葉病伝染の原因

斑点落葉病の主要な第一次伝染源は被害落葉です。罹患した枝や芽の鱗片に病斑が残っている場合は同様に感染源となりますが、多くの場合、落葉のほうが量も多く感染の主要因となります。

前年に斑点落葉病が発生して落葉すると、その葉の病斑内で病原菌が越冬します。春になると越冬菌糸から生じた分生子が風によって飛散し、周囲のりんごの葉や枝に付着します。

その後、気温20~25℃で雨が降ると、付着した葉から発病し病斑を形成します。病斑には菌叢が作られ、そこから多量の胞子が飛散し第二次感染源となり、伝染を繰り返します。

発病条件

降雨のりんご園地

taka / PIXTA(ピクスタ)

斑点落葉病の発病適温は、葉では20℃以上、果実では15~25℃とされます。多湿・多雨の環境を好むので、日平均気温が18℃を超えて雨が続く梅雨の時期などに、感染・発病が急激に拡大します。

気温が高く乾燥した盛夏の間は、一時発病が収まります。秋に発病適温まで下がり、降雨が続くと再び病勢が強まり、成果や徒長枝などに感染します。

なお、「デリシャス」や「印度」を祖先とする品種は斑点落葉病が発生しやすいとされています。特に「王林」「ふじ」「スターキング・デリシャス」「千秋」などは注意が必要です。

王林とふじの園地

ikeda_a / PIXTA(ピクスタ)

りんご斑点落葉病の耕種的防除

斑点落葉病の発生は春から秋までと長いので、その期間を通した体系的な防除対策を行う必要があります。防除の基本は農薬散布ですが、耕種的防除を組み合わせて行います。

りんご園地 6月頃の作業

yoshi_yu / PIXTA(ピクスタ)

こまめに混んだ枝を整理する

葉が重ならないように枝を整理することで、農薬散布の際に効率的かつムラなく葉に農薬が行き渡ります。

被害葉、被害果実の摘み取り

感染した葉や果実は、病斑の内部で分生子を作り、風に乗って飛散し続けるため、病斑が多発した葉や実はこまめに摘み取ります。

被害残さを園地外に持ち出して埋却・焼却処分する

斑点落葉病が発病してしまった場合は、被害葉や果実を摘み取るだけでなく、摘葉・摘果した葉や果実も含め、感染が広がらないよう確実に処分します。埋却または焼却が確実な処分方法です。

りんご斑点落葉病の化学的防除

りんご園地 農薬散布 スピードスプレイヤー

dr30 / PIXTA(ピクスタ)

農薬による防除は、5月下旬頃から本格的に始めます。

雨が降る前の予防的散布

地域の防除暦にそって計画的に農薬散布計画をたてますが、被害の程度や降雨の多さなどを踏まえて、状況に応じた柔軟な防除を行うことが大切です。

特に、病原菌の好適気温となる6月下旬頃に多雨が予想される場合は、被害が急増する可能性が高まるので、雨が降る前に丁寧な予防散布を行いましょう。

有効な農薬

病原菌が有効成分への耐性を獲得しないように、同じ成分のものを連続散布せず、系統の異なる薬剤をローテーションで散布することが基本です。

斑点落葉病に効果の高い農薬の例をいくつか紹介します。ローテーション散布の参考になるよう、RACコードや使用時期、使用回数についても記載します。ただし、薬剤耐性は品種や地域の環境によって異なります。ここで紹介するものはあくまで参考として捉え、実際の薬剤耐性の対策については必ず地域の情報を確認してください。

※なお、ここで紹介する農薬は2023年5月11日現在、りんごと斑点落葉病に登録のあるものです。実際の使用に当たっては、必ず散布時点の登録を確認し、ラベルをよく読んで用法・用量を守りましょう。農薬の登録内容は、「農薬登録情報提供システム」で確認できます。

・ナリアWDG
農薬の種類:ピラクロストロビン・ボスカリド水和剤
FRACコード:11/7
使用時期:収穫前日まで
本剤の使用回数:3回以内

・フルーツセイバー
農薬の種類:ペンチオピラド水和剤
FRACコード:7
使用時期:収穫前日まで
本剤の使用回数:3回以内


・アリエッティC水和剤
農薬の種類:キャプタン・ホセチル水和剤
FRACコード:M4/P7
使用時期:収穫前日まで
本剤の使用回数:3回以内


・ポリオキシンAL水和剤
農薬の種類:ポリオキシン水和剤
FRACコード:19
使用時期:収穫3日前まで
本剤の使用回数:3回以内


・スコア顆粒水和剤
農薬の種類:ジフェノコナゾール水和剤
FRACコード:3
使用時期:収穫14日前まで
本剤の使用回数:3回以内

・キノンドーフロアブル
FRACコード:M1
使用時期:収穫14日前まで
農薬の種類:有機銅水和剤
本剤の使用回数:4回以内

FRACコードの出典:JCPA農薬工業会「RACコード(農薬の作用機構分類)」所収「FRACコード表日本版(2022年5月) 」

スピードスプレーヤーが並ぶ、防除重点期のりんご産地

1207Blue / PIXTA(ピクスタ)

りんご農家にとって、斑点落葉病は成果の商品価値を下げ、収益にも影響を及ぼすやっかいな病害です。地域の防除暦に沿った計画的な農薬散布とともに、枝や葉の整理や被害残さの処理など、根気よく防除対策を実施することが大切です。

斑点落葉病が発生しやすい品種を栽培する農家では、地域の防除情報を確認しながら発生予防・早期防除を心がけましょう。

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大森雄貴

大森雄貴

三重県伊賀市生まれ。京都を拠点に企業・団体の組織運営支援に携わった後、2020年に家業の米農家を継ぐためにUターン。現在は米農家とライターの二足の草鞋を履きつつ、人と自然が共に豊かになる未来を願いながら、耕作放棄地の再生、農家体験プログラムの実施、暮らしを大切にする経営支援などに取り組んでいる。

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