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玉ねぎ収穫機はどう選ぶ? 小~中規模の農家向けの機械化体系とおすすめ製品を一挙解説

玉ねぎ収穫機はどう選ぶ? 小~中規模の農家向けの機械化体系とおすすめ製品を一挙解説
出典 : 山口トマト / PIXTA(ピクスタ)

本州以南の玉ねぎ産地では、掘り取りは機械化されていますが、根葉切り・整列・拾い上げは、まだ手作業というところが多いようです。時間的にも労力的にも負担の大きい収穫作業を楽にする収穫機やピッカーの導入について解説し、国内メーカーのおすすめ製品を紹介します。

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省力化に期待大! 規模別の玉ねぎ機械化体系

これまで、玉ねぎの根葉切り・拾い上げ・搬出を手作業に頼っていた北海道以外の産地でも、「機械化一貫体系」の導入が進みつつあります。中でも収穫作業は、身体的負担が大きく、機械化のメリットが大きい工程です。

この章では、小~中規模向け、大規模向け、地域独自にわけて、機械化体系の例を紹介します。

【小~中規模】玉ねぎの収獲・調整の機械化体系

小~中規模の圃場で、玉ねぎの収穫・調整を機械で行う場合の一般的な手順を紹介します。

これまで掘り取りのみ機械で行い、根葉切りと地干しのために並べる作業は手作業で行われていました。

これを、掘り取り・根葉切り・整列放出まで一気にできる収穫機で行い、地干し後の拾い上げと搬出をピッカーと運搬車の組み合わせで省力化するのが、収穫作業の一般的な機械化体系です。

宮城県での実証研究によれば、手作業での収穫・拾い上げが、10a当たり30.4時間かかっていたのに対し、玉ねぎ収穫とピッカーを導入した場合は10a当たり10.2時間になったことが報告されています。

出典:一般社団法人全国農業改良普及支援協会・株式会社クボタ「みんなの農業広場|全国農業システム化研究会|業務用たまねぎの機械化による省力生産技術の実証(宮城県農業振興課普及支援班、大崎農業改良普及センター 平成26~27年度)」

【大規模】玉ねぎの収獲・調整の機械化体系

上の図は、北海道を始めとする大規模栽培で採用されている機械化体系の例です。

小~中規模向けの機械化体系は、掘り取り・根葉切り・整列の一連の作業を1つの農機でできるようにして省力化しているのが一般的です。

これに対し、大規模向けでは、葉切り・根切り・掘り取り・拾い上げはそれぞれ特化した専用機が担う体系になっています。広いほ場での作業スピードと正確性を優先しているといえるでしょう。

【地域独自】玉ねぎの収獲・調整の機械化体系

暖地の「吊るし玉ねぎ」「青切り玉ねぎ」についても産地で機械化体系が開発されています。

淡路島の伝統的な「吊るし玉ねぎ」は、機械で掘り上げた玉ねぎを手作業で結束し、ミニコンテナにつめて運び出しています。

兵庫県の農林水産技術総合センターでは、ピッカーで拾い上げ、大型の鉄コンテナに積載して搬出し、これを積み上げて通風乾燥する体系を開発し、導入が少しずつ進んでいます。

香川県の青切り玉ねぎの収穫の機械化

出典:香川県「農業試験場|研究成果|その他の研究成果情報」所収「青切りタマネギの新収穫・調製体系作業マニュアル」よりminorasu編集部作成

香川県の乾燥しないで出荷する「青切り玉ねぎ」は、掘り上げた後、根葉切り・拾い上げ・搬出を手作業で行っています。今回、農業試験場が、葉鞘をつけたまま収穫・拾い上げができる新型収穫機と専用のフレコンバッグ、青切り専用の調整機を開発しました。

新型収穫機がフレコンバッグにつめた玉ねぎをフロントローダーなどで搬出し、今までほ場で手作業でしていた根葉切りを、新開発の青切り専用の調整機で仕上げるようになっています。

【ポイント解説】 小~中規模ほ場での玉ねぎ収穫機の選び方

玉ねぎ収穫機を選ぶ時の基本の確認ポイントを挙げます。

収穫機選びの確認ポイント

玉ねぎ 4条植え

けいわい / PIXTA(ピクスタ)

小~中規模ほ場では、歩行型の収穫機を使うのが一般的です。作業スピードも大事ですが、自園の栽培方式にあった仕様やオプションがあるかの確認が必要です。

マルチ栽培/裸地栽培

マルチ栽培のみの場合はマルチ仕様の収穫機を、裸地栽培とマルチ栽培どちらの作型も導入しているなら、裸地栽培使用の収穫機にマルチ用アタッチメントを付けられる機種を選びます。

畝の形状への対応

自園の畝の仕立てに対応できるかも重要です。畝の幅、高さ、形状に対応できる調整機能があるか?条数や条間にあった処理ができるか?などを確認します。

畝の幅や高さとともに、例えば4条植えなら、畝端と1条目・4条目との距離、2条目と3条目の間隔をよく確認してください。

残す葉鞘の長さの調節機能

前の章で紹介した「青切り玉ねぎ」など、調整・出荷の仕方によっては、葉切りで残せる葉鞘の長さの確認が必要です。

ピッカー選びの確認ポイント

乗用型 玉ねぎハーベスター

Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

これまで、小~中規模の玉ねぎ栽培では、歩行型のピッカーでポリのミニコンテナへ収容するのが一般的でしたが、鉄コンテナ対応の歩行型ピッカーや乗用型のハーベスターを使って省力化する産地もあります。

ミニコンテナの場合

ミニコンテナ収容の場合は、一度に積載できるコンテナ数と、運搬車を伴走させるか、が判断のポイントになります。

また、収穫機と同様に、自園の畝の仕立てに対応できるかも重要な確認ポイントです。

鉄コンテナを導入する場合

鉄コンテナを導入する場合、歩行型ピッカーで鉄コンテナ仕様の機種を選ぶか、乗用型のハーベスターを選ぶかの判断が必要になります。

乗用型のハーベスターは、歩行型ピッカーに運搬車を伴走させる場合より、導入コストは高くなりますが、大幅な作業時間の削減ができます。

前出の出典、兵庫県農林水産技術総合センター|私の試験研究|R元年度「大型コンテナを使ったタマネギの収穫、搬出、乾燥体系」によれば、乗用型の取得価格は約1,000万円と、歩行型ピッカー+運搬車で約300~350万円の約3倍ですが、理論作業時間が約3分の1、1シーズンの収穫可能期間で処理できる面積は約3倍になると試算されています。

ただし、約70haまでは歩行型ピッカー+運搬車が最も効率がよいとされています。

地域共同での収穫をする場合は、乗用型ハーベスターも検討の対象になるといえるでしょう。

2023年最新! 玉ねぎ収穫機“メーカー別”おすすめ3選

主要メーカーのおすすめの製品を紹介します。

機種選びの参考になるよう、裸地仕様のほかにマルチ仕様、ワイドトレッド仕様があるか、畝幅の対応目安となるトレッド寸法や、相性のよいピッカーとミニコンテナ・鉄コンテナ対応などを記載しています。

適応する畝形状の詳細などは、カタログをよく確認し、不明点があれば、販売店などに相談してください。

ヰセキ「たまねぎ収穫機 VHU20」シリーズ

井関農機株式会社 Youtube公式チャンネル「【野菜作機械】 たまねぎ収穫機 VHU20」

井関農機株式会社の歩行型玉ねぎ収穫機「VHU20」シリーズには、裸地仕様の「VHU20[L]R」、マルチ仕様の「VHU20M[L]R」、ワイドトレッド仕様の「VHU20WR」がラインアップされています。

製品名の[L]は低畝仕様を示し、基本トレッド寸法は、裸地仕様・マルチ仕様とも1,150~1,350mmですが、低畝仕様の場合は、1,080~1,280mmです。ワイドトレッド仕様の場合は、1,285~1,485mmです。

また、オプションとしてマルチキットがあり、裸地仕様の「VHU20[L]R」に装着することでマルチ栽培にも対応可能です。

同シリーズ向けのピッカー「たまねぎピッカーVHP101T」があり、ミニコンテナ仕様、鉄コンテナ仕様のそれぞれが用意されています。

メーカー希望小売価格:要問い合わせ

製品ページ:井関農機株式会社「たまねぎ収穫機VHU20R」

クボタ 「たまねぎ収穫機 Bonita」シリーズ

株式会社クボタ Youtube公式チャンネル「クボタたまねぎ収穫機ボニータ OH-4C」

株式会社クボタの歩行型玉ねぎ収穫機「たまねぎ収穫機 Bonita(ボニータ)」シリーズは、

裸地仕様の「OH-4C」、マルチ仕様の「OH-4CMS」、裸地・マルチ兼用の「OH-4CMSR」がラインアップされています。

いずれの機種もトレッド寸法は1,130〜1,370mmで、より広い玉ねぎの条間に適応できる、条間24cm用のデバイダがオプションとして用意されています。

ミニコンテナ向けには、歩行型の「まねぎピッカー KOP-1000」と追従仕様の作業車・運搬車が用意されています。鉄コンテナ向けには、ピッカーに「たまねぎコンベアTMK-20」を装着することで対応できます。

メーカー希望小売価格:1,582,900 ~ 1,763,300円(2023年6月22日現在)

製品ページ:株式会社クボタ
「クボタたまねぎ収穫機 Bonita」
「製品情報|野菜関連機器|たまねぎ収穫関連機器|たまねぎ収穫機」

ヤンマー「たまねぎ収穫機 HT20A」シリーズ

ヤンマーホールディングス株式会社 Youtube公式チャンネル「たまねぎ収穫機 HT20A」

たまねぎ収穫機「HT20A」は、歩行型の玉ねぎ収穫機です。

裸地栽培に対応した「HT20A(L)R」と、マルチ栽培に対応した「HT20A(L)MSET2R」、幅広の畝に対応したワイドトレッド仕様「HT20A,WR」がラインアップされています。

製品名の(L)は低畝仕様を示し、HT20Aの基本とレッド寸法は、1,150~1,350mmですが、低畝仕様(L)は1,080~1280mm、ワイドトレッド仕様は1,285〜1,485mmとなっています。

また、拾い上げ・運搬作業用に、ミニコンテナ収容向け、鉄コンテナ収容向けにそれぞれ、歩行型のピッカーと野菜作業車がラインアップされています。

メーカー希望小売価格:(2023年6月22日現在)
HT20A(L)R:(税込み)1,424,500円
HT20A(L)MSET2R:(税込み)1,637,900円
HT20A,WR:(税込み)1,661,000円
出典:ヤンマーホールディングス株式会社「たまねぎ収穫機HT20A 価格」

製品ページ:ヤンマーホールディングス株式会社「たまねぎ収穫機HT20A」

玉ねぎの収穫 ミニコンテナ

クレジット:モンキチ / PIXTA(ピクスタ)

これまで、小~中規模の玉ねぎ栽培の収穫・調整では、掘り取り以外は手作業が中心でした。しかし、近年は農家の高齢化や、担い手が担う農地の拡大などに伴い、玉ねぎ栽培全体の機械化体系が各産地で構築され、収穫・調整の機械かも進みつつあります。

小~中規模ほ場でも使いやすい歩行型の収穫機やピッカーが各メーカーから販売されているので、
玉ねぎの栽培方式、ほ場の特性、予算を考慮しつつ、収穫機・ピッカー・運搬車のよい組み合わせを選んでください。

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大森雄貴

大森雄貴

三重県伊賀市生まれ。京都を拠点に企業・団体の組織運営支援に携わった後、2020年に家業の米農家を継ぐためにUターン。現在は米農家とライターの二足の草鞋を履きつつ、人と自然が共に豊かになる未来を願いながら、耕作放棄地の再生、農家体験プログラムの実施、暮らしを大切にする経営支援などに取り組んでいる。

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