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【春菊】農家が抱える悩みやそれを解決する手段と効果とは?年収の目安と抱えがちな悩み、解決策の具体例

【春菊】農家が抱える悩みやそれを解決する手段と効果とは?年収の目安と抱えがちな悩み、解決策の具体例
出典 : Carbondale / PIXTA(ピクスタ)

春菊は、ほうれん草などと同じ軽量野菜で、温暖な地域では周年栽培できます。比較的育てやすく短期間で収穫でき、収益性も高いため、取り組みやすい葉菜類の1つです。とはいえ、春菊栽培農家ならではの苦労もあり、取り組む際にはそうした問題への備えも重要です。

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新たに春菊栽培への取り組みを検討するのであれば、春菊栽培ならではの問題点をあらかじめ把握し、おおよその収入を予測したうえで計画的に導入することが重要です。本記事では、春菊農家をめざす際に必要な情報や、実際の春菊栽培農家の悩みについて解説します。

春菊農家は難しい? 栽培・経営の基礎知識

春菊 雨除け栽培 ハウス

wifineko / PIXTA(ピクスタ)

まずは、春菊の栽培上の特徴や栽培の難易度、基礎的な注意点について解説します。

栽培難易度が低めで取り組みやすい春菊

春菊は、発芽適温・生育適温ともに15~25℃で冷涼な気候を好み、夏は27~28℃を超えると生育阻害が起きます。また、寒さには強いですが、本葉展開するまでは寒害をうけやすくなります。温度適応性の幅が広く、簡易な防暑・防寒対策をすることで東北以南の広い地域が産地となっており、都市近郊を中心に広く栽培されています。

軽作業が中心で、生育中の栽培管理も比較的手がかからないため、初心者にも取り組みやすい作物といえます。

春菊の種類×収穫方法|「摘み取り」と「抜き取り」

春菊には葉の大きさと形状から、大きく分けて「大葉種」「中葉種」「小葉種」の3つのタイプがあります。大葉種は葉の切れ込みが少なく丸い葉が特徴で、中葉種、小葉種になるほど切れ込みが細かく多くなります。

春菊の種類

株立ち中葉被張り中葉大葉
摘み取り
抜き取り
出回り市場関東に多い関西に多い中国・九州地方に多い
代表的な品種さとゆたか
おきく3号
など
冬の精
大阪中葉
など
大葉春菊
おたふく春菊
など

出典:以下資料よりminorasu編集部まとめ
独立行政法人 農畜産業振興機構「野菜ブック」所収「(12)しゅんぎく」
福岡県「福岡県野菜主要栽培品種一覧表」所収「Ⅰ 品種・作型」
広島県「旬の野菜|広島県産 春菊」

大葉種は主に四国や九州など関西以西の地域で流通し、ほかの地域では中葉種が多く見られます。中葉種はさらに、株の形状によって「株立ち型」「株張り型」の2種類に分かれ、それぞれ収穫方法が大きく異なります。

春菊 摘み取り収穫 抜き取り収穫

PHOTO NAOKI / PIXTA(ピクスタ)・wifineko / PIXTA(ピクスタ)

株立ち型は、根元から茎が長く立ち上がって分岐するので、伸びた茎を摘み取り、そのあとは脇芽をどんどん摘んでいきます。一方、株張り型は根元から横に株が張るので、根が付いたまま、または根を切り取って収穫します。

夏・冬ともに需要が高く、周年栽培も可能

春菊の栽培暦

出典:一般社団法人日本種苗協会「ダウンロード資料 学校関係者様用」所収「シュンギク」よりminorasu編集部作成

春菊は、3~5月に播種する春播き栽培と、8~9月に播種する秋播き栽培が基本的な作型です。しかし、冬は鍋物需要が高く、近年は健康野菜として夏場を含めて消費ニーズが高まっていることから、卸売価格は出荷量が減る夏と需要の高い冬に高くなります。

温度に対する適応幅が広いという春菊の特性を活かし、冷涼地では秋冬のトンネル保温、ハウス加温、ハウス無加温などの作型を組み合わせ、温暖地では夏場に日よけをすることで、周年収穫できる作型も各産地で確立されています。

春菊農家の10a当たり収量と年収の目安

春菊 中葉

はねそら♪/ PIXTA(ピクスタ)

春菊農家の収量や年収の目安を把握しておくことも、収入を安定的に得るためには必要です。ここでは平均的な春菊農家の収入目安を計算するため、全国平均の値をもとにします。
農林水産省の令和3(2021)年産の作況調査を参照すると、10a当たり収量の全国平均は1,510kg、これに出荷率 82.4%(出荷量÷収穫量)を掛けると、10a当たりの出荷量は1,244kgとなります。

春菊の粗収益試算

指標
10a当たり収量1,510kg
出荷率※82.4%
10a当たりの出荷量1,244kg
東京都中央卸売市場の
平均価格
752円/kg
推定粗収益935,134円

※出荷率=出荷量÷収穫量

出典:農林水産省「作物統計調査 作況調査(野菜) 確報 令和3年産野菜生産出荷統計」、東京都中央卸売市場「市場統計情報|品目別取扱実績(しゅんぎく)」よりminorasu編集部作成

これに、最も取扱量の多い東京都中央卸売市場の年間平均価格を掛け合わせると10a当たりの推定粗収益は、93万5,134円ということになります。
10a当たり粗収益×作付延べ面積を全体の粗収益とし、そこから年間にかかった経費を差し引くことで、おおよその農業所得が推測できます。

参考までに、主要産地の1つである群馬県の2020年の農業経営指標を見てみましょう。10a当たり収量は2,000kgと高めに、販売価格は520円で前出の東京都中央卸売市場の平均価格より低めに設定されています。

群馬県 ハウス栽培春菊の経営指標

指標
10a当たりの収量(出荷量)2,000kg
販売価格520円/kg
粗収益1,040,000円
生産費522,000円
農業所得518,000円
農業所得率49.8%

出典:群馬県 農政部ぐんまブランド推進課「ぐんまアグリネット|農業経営指標」所収「令和2年R2農業経営指標/単位当たり」

農業所得率は49.8%で10a当たり所得は518,000円になっています。

なお、これらの数値はあくまで参考にすぎません。10a当たり収量や経費は、地域や栽培方法、作型などによって異なり、また栽培技術によっても差が出ます。出荷先や出荷時期によって単価も変わります。

平均値を踏まえて、どの作型でどの時期の出荷をめざすのか、経費はどれくらいかけられるのかなどを勘案したうえで、ほかの作物との作業が競合しないようにしながら、あらかじめ年間計画と収入予測を立てましょう。

経営課題は? 春菊農家のよくある3つの悩み

春菊は比較的栽培しやすいといわれますが、実際の栽培に当たっては、さまざまな課題や悩みが生じます。ここでは、多くの春菊栽培農家に共通の悩みを3つ挙げます。

価格の季節変動が大きい

東京都中央卸売市場 春菊の1kg当たり価格の月次推移

出典:東京都中央卸売市場「統計」よりminorasu編集部作成

前出の東京中央卸売市場の統計表を見てもわかる通り、春菊は季節によって価格に変動があります。極端に単価が下がることはありませんが、やはり多く出回る3月は441円、11月には482円と価格が下がり、それに対して流通量が減る8月と9月は1,277円、1,089円と、最も低い時期の2~3倍の値になります。

この点から、夏場に安定した収量を確保することが、春菊の専作農家として経営を安定させるコツといえます。

夏場の高温対策が難しい

春菊 葉枯病 発病葉

春菊 葉枯病 発病葉
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

前項の問題にも通じますが、夏場に収穫・出荷できる栽培体系を確立することが難しい点が、春菊農家の大きな悩みといえます。需要は年間を通してあるものの、産地リレーをしても、夏場は需要を満たす十分な出荷量を確保できない状況です。

そもそも春菊は冷涼な気候を好み、同じ葉菜類であるほうれん草と比較すると夏の高温期でも栽培しやすいものの、夏は発芽や生育が悪く収量が落ちやすい傾向にあります。周年栽培へ取り組むには、夏の高温対策が欠かせません。

春菊が好む15~20℃は「べと病」が発生しやすい温度でもあり、さらに高温多湿になると「葉枯病」なども発生しやすくなります。そのほか、「炭疽病」や「ヨトウムシ」、「ハモグリバエ」といった病害虫にも注意が必要です。

品種選択の段階で高温や病害虫に強い特性の品種を選び、温度管理と病害虫防除を徹底します。

また、春菊は連作障害がでるリスクがあります。本来なら1年程度休栽するのがよいのですが、施設栽培ではそうはいきません。収穫後に湛水状態をつくるなどの工夫で連作を可能にしている生産者もあります。

収穫・調製作業の機械化が困難

春菊の栽培工程の中で、最も時間や労力を費やすのが収穫~調製(袋詰め)の作業です。特に中葉種の株立ち型の場合、収穫は腰くらいの高さに生長した春菊から、収穫に適した脇芽を見つけ、下から2葉を残して収穫します。

収穫できる脇芽の選別は、周囲との違いを色などで明確に分けることができないため、機械による判別が困難で機械化ができません。それゆえ熟練のベテランでも、1時間以上かがんだ姿勢のまま収穫を続ける必要があります。

摘み取りが終わると、そこから傷んだ葉や子葉などを取り除き、そろえて袋詰めをします。この袋詰め作業も機械化できず、人力で行います。収穫した脇芽は鮮度が落ちるため、収穫後は長く放置できません。そのため、収穫は調整まで終わり出荷できる分を考えながら行う必要があります。

こうした点から、特に大規模化して増収を狙うなら、収穫・調整の作業をいかに効率化・省力化するかがポイントになります。

春菊農家で安定経営をめざす! 課題の解決策

春菊 発芽 条播き

T Koyama / PIXTA(ピクスタ)

前項で挙げた春菊農家の抱える3つの悩みを解決する方法として、3つの具体的なアイデアを紹介します。

夏期の生産安定技術を取り入れる

夏場には春菊の生育が悪くなり、病害虫も発生しやすくなり収量が落ちます。そのため、夏播き春菊を安定して栽培するには、暑さ対策が不可欠です。まず、夏の栽培では、「炭疽病」などの病害虫を防ぐために雨除け栽培が基本となります。

さらに、温度を低く保つためと、「芯枯れ症」の発生を防ぐために、白寒冷紗などを使って遮光することもポイントです。ただし、遮光率が高すぎると生育が遅れて収量低下につながるので、遮光率22%程度の白寒冷紗が適しています。低日照の場合は使用しなくてよいでしょう。

加えて、夏期栽培に強い品種の選定も重要です。特に「さとゆたか」「きわめ中葉」「おやさと株張中葉」がおすすめです。

「さとゆたか」は中葉タイプで品質がよく、夏に激発しやすい「べと病」に非常に強い特性があります。「きわめ中葉」「おやさと株張中葉」は、やはり夏場に発生しやすい石灰欠乏による「芯ぐされ症」が比較的少ない点で、農研機構が推奨している品種です。

夏場の播種のポイントは、種を1日浸水して発芽のそろいをよくすること、播種の際は土壌も十分に灌水すること、条間20cm、株間12.5cm程度のすじ播きとし、覆土を薄くすることです。

夏期の栽培では、乾燥しやすいので灌水の管理を徹底し、生育が早いので間引きなどの作業が遅れないように注意しましょう。

出典:農研機構「夏まきシュンギクの生産安定技術」

栽植密度と仕立て方に工夫を施す

春菊では収穫・調製作業の省力化が困難ですが、その実現のため、福島県農業試験場が栽植密度と仕立て方の技術を開発しました。これにより、株立ち品種で収穫を繰り返しても脇芽が細くならず、AL規格の収量が増えることから、収穫と袋詰めの作業を従来の約70%に省力化できます。

その方法は、春菊の栽植密度を20×20cmほどの疎植にして、脇芽の仕立てを4本に制限することです。主枝1本を収穫したあと、脇芽が出たら4本に制限しながら収穫を繰り返します。

その結果、収穫後半になっても脇芽が細くならず、一定のサイズで収穫できるため、収穫もしやすく、その後の袋詰めもやりやすくなり、作業の省力化につながります。

出典:福島県農業試験場「シュンギクの仕立て法と栽植密度の改善による省力高品質生産技術

栽植密度と仕立て方に工夫を施す

春菊では収穫・調製作業の省力化が困難ですが、その実現のため、福島県農業試験場が栽植密度と仕立て方の技術を開発しました。これにより、株立ち品種で収穫を繰り返しても脇芽が細くならず、AL規格の収量が増えることから、収穫と袋詰めの作業を従来の約70%に省力化できます。

その方法は、春菊の栽植密度を20×20cmほどの疎植にして、脇芽の仕立てを4本に制限することです。主枝1本を収穫したあと、脇芽が出たら4本に制限しながら収穫を繰り返します。

その結果、収穫後半になっても脇芽が細くならず、一定のサイズで収穫できるため、収穫もしやすく、その後の袋詰めもやりやすくなり、作業の省力化につながります。

出典:福島県農業試験場「シュンギクの仕立て法と栽植密度の改善による省力高品質生産技術」

スマート農業機械を導入する

株立ち品種の収穫は、何度も繰り返しできて収益性が高い点が特長ですが、その収穫作業は人力でしかできず、かなりの労力と時間を要します。しかも、ずっと中腰で行うため作業者の身体的負担が大きく、長く作業を続けるうちに効率の低下も懸念されます。

この作業を少しでも軽減できる技術が、アシストスーツです。アシストスーツとはスマート技術の1つで、モーターによって動きをアシストしたり、人工筋肉などによって荷重を分散させたりする効果があります。これを装着すれば、重いものを持ち上げたり下げたりする際に、腰や腕などにかかる負担が軽減されます。

実際に、茨城県小美玉市の株式会社ユニオンファームでは、春菊の収穫作業にアシストスーツを導入し、収穫作業での中腰姿勢による腰の負担が軽減された効果を実感しており、多くの従業員が利用しています。

出典:株式会社イノフィス マッスルスーツEvery「進化させてきた有機野菜生産で、機械化できなかった春菊の収穫。マッスルスーツ導入で長年の課題を解決【株式会社ユニオンファーム】」

春菊は軽量野菜で、導入や栽培が比較的しやすく、ほかの作物との輪作としても取り組みやすい作物です。しかし、周年需要が安定してあるにもかかわらず、単価の高い夏場の栽培・収穫が難しいことや、特に株立ち品種において、収穫にかなりの労力と時間がかかるという課題があります。

そうした課題の解決には、夏期栽培での暑さ対策を徹底したり、収穫作業を省力化するスマート技術を導入したりするのが有効です。より効率的に春菊栽培での安定的な収益アップをめざしましょう。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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