【レタス栽培】播種や植え付けの時期は? 品質を上げる栽培技術
レタスは年間を通じて需要が高く、地域ごとの作型が確立している野菜です。安定的な収穫・売り上げを実現するためには、ほ場の状態に合わせた施肥を行い、栽培環境に応じて適切な時期に播種するのがポイントです。さらに、高品質なレタスを収穫するためには、新しい栽培技術についての情報収集も重要です。
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レタスの栽培方法について、主な作型・栽培地ごとの栽培暦(栽培時期)・主要品種などを総合的に解説します。播種から出荷までの管理方法を体系的に説明し、収穫するレタスの品質向上や栽培時の省力化につながる栽培技術も紹介します。
作型別! レタスの主な栽培暦(栽培時期)と品種
kikisorasido / PIXTA(ピクスタ)
1年間を通して栽培されるレタスにはさまざまな作型がありますが、播種時期と収穫時期に応じて「春播き(春夏どり)栽培」「初夏播き(夏秋どり)栽培」「夏播き(秋冬どり)栽培」「秋播き(冬春どり)栽培」の4種類に大別されます。
高品質なレタスを収穫するためには、栽培地域の環境に適した作型と品種選びが重要です。以下に作型ごとの栽培暦と主要品種をまとめました。
出典:タキイ種苗株式会社「野菜の作型と品種生態 栽培の幅を広げるために 12 キク科野菜 レタス・シュンギク・ゴボウ(タキイ最前線 2013年冬春号)」よりminorasu編集部作成
※この図以外に、寒冷地でも初冬播きや冬播きで春に収穫するハウス栽培を行う地域もあります。
春播き(春夏どり)栽培
「春播き(夏どり)栽培」は暖地・温暖地から寒冷地まで幅広い地域で行われています。
暖地・温暖地では、3月に播種・4月に定植・5月から6月に収穫となり、主な品種として「ステディ」「スターレイ」「デローサ」が挙げられます。播種期は低温のため、育苗時にはハウスなどによる保温が重要です。
寒冷地では、4月に播種・5月に定植・7月に収穫となり、「オアシス」「ラプトル」「クリスタル」などが主な品種です。暖地・温暖地と同様に播種期は低温のため、育苗時の保温が必要となります。
初夏播き(夏秋どり)栽培
「初夏播き(夏秋どり)栽培」は、5~6月に播種・6~7月に定植・8~9月に収穫する作型です。
最も抽苔しやすい時期の作型のため、実施可能な地域は寒・高冷地に限定されます。「シーカー」「マイヤー」「シルル」などがこの作型に適した品種として挙げられます。
夏播き(秋冬どり)栽培
「夏播き(秋冬どり)栽培」は、寒冷地・温暖地・暖地と幅広い地域で実施される露地栽培で、寒冷地・温暖地・暖地の順番に、播種・定植・収穫時期が遅くなります。
播種は寒冷地で7月・温暖地で8月・暖地では8~9月に行い、3週間~1ヵ月の育苗期間を経て定植します。収穫は寒冷地で9~10月・温暖地で10月・暖地では11月から年内に行う作型です。
この作型で栽培される代表的な品種は、「サウザー」「サーマルスター」「ラプトル」などです。
秋播き(冬春どり)栽培
「秋播き(冬春どり)栽培」は、トンネル・ハウスなどの保温設備を使って温暖地・暖地で実施される作型です。
9月から12月に播種・10月から翌年の2月に定植・翌年の1月から4月に収穫となり、主な品種として「D・Jジョイグリーン」「レオグランド」「チアフル」などが挙げられます。
▼冬春どりレタスの栽培方法については、以下の記事も参照してください。
【プロ農家向け】 レタスの栽培方法・管理手順
まちゃー / PIXTA(ピクスタ)
レタスは、播種から収穫・出荷まで、次の工程があります。
1. 播種
2. 育苗
3. 土づくり
4. 施肥
5. 畝立て・マルチ
6. 定植
7. 温度管理・追肥
8.生育障害と対策
9.病害虫防除
10. 収穫・出荷
それぞれの工程の具体的な方法や注意点を説明します。
1. 播種
レタスの育苗方法には、「セルトレイ育苗」「箱播き育苗」「ペーパーポット育苗」などがあります。この中で育苗・定植作業の省力化や機械移植を可能にする「セルトレイ育苗」の播種作業について解説します。
育苗培土を均一に入れた200穴セルトレイの1穴に1粒ずつ種子を入れ、種子が見えるか見えないか程度に覆土します。セルトレイ全体にムラなく十分灌水すれば完了です。
芽が出るまで寒冷紗・新聞紙などで覆い、乾燥させないように注意する必要があります。発芽中は基本的には灌水を行わず、芽が出たら被覆材を取り除いて灌水します。
2. 育苗
kazunagi / PIXTA(ピクスタ)
播種直後の芽出し期には、温度管理に注意が必要です。レタスの発芽適温は15~20℃であり、25℃以上になると極端に発芽率が悪くなるので、特に注意してください。
外気温が25℃以下の時期には、ハウス内で発芽させます。外気温に合わせてハウスを開け閉めし、適切な温度を保つのがポイントです。外気温が25℃以上の時期には、風通しのよい日陰に不繊布をかけた状態でトレイを置き発芽させます。
発芽までの1~2日間はこの状態を保ち、発芽が確認できたら、ハウスなどの育苗場所へとセルトレイを移動させます。
育苗期間中は高温多湿にならないよう、十分な換気が必要です。定植の5~7日前からは、定植後の環境に苗を慣らすために、ハウスを全開にするかセルトレイをハウスの外に出しましょう。ただし、強雨や霜が予想される場合には、ハウス内での育苗を続けます。
kazunagi / PIXTA(ピクスタ)
子葉展開期から本葉1~2枚期には、基本的に午前中に灌水し、夕方には覆土が乾燥しているのが理想的な状態です。なぜなら、夜間に培土に水分が残っていると徒長苗が発生しやすいからです。
本葉3枚以降期は初期より灌水量を増やし、定植前日または定植当日は十分な量を灌水し定植に備えます。生育時期ごとの灌水量の目安を以下にまとめました。
出典:井関農機株式会社「レタス栽培に使用する機械」内「ヰセキセル成型トレイ育苗」よりminorasu編集部作成
育苗日数は栽培地域・栽培時期・栽培品種によって異なりますが、ひとつの目安は春が25~30日、夏と秋が12~18日、冬が30〜40日です。
播種後10~14日経過すると、セルトレイ内の培土の肥料がなくなり、苗の葉色が淡くなってきます。子葉の葉色が少し淡くなったら、追肥を開始するタイミングです。葉色を見ながら1週間に2回程度の頻度で液肥を散布します。
3. 土作り
レタスは過湿に弱いので、排水性の高い土壌が適しています。水はけの悪い土壌で栽培する際には、畝を高くしたり、明渠(めいきょ)や暗渠(あんきょ)の整備などの排水対策を施す工夫が求められます。
また、レタスは酸性土壌での生育が悪いので、苦土石灰などの石灰資材を散布して、pH6.0~6.5を目標にpHを調整するのがポイントです。
良質な土作りのためには、堆肥の施用も重要です。良質な堆肥を土に混ぜ込むことで、水分と肥料成分の保持能力を向上させる土壌改良効果が見込まれます。堆肥散布量の目安は、10a当たり2〜3tです。
4. 施肥
1回のレタス栽培に必要な施肥量の目安は、10a当たりの成分量換算で冬どり栽培ではチッソ・リン酸・カリとも25~35kg、春・秋どり栽培ではチッソ・リン酸・カリとも10~20kgです。マルチ栽培では全量基肥として散布します。
5. 畝立て・マルチ
レタス栽培での畝立ての効果には、排水性の向上、作土層が増えることによる根の伸長促進、通気性向上による生育促進などがあります。
長野県や群馬県などに代表される1畦1条体系では、畝幅が50~65cm、畝高が15~35cmです。茨城県や兵庫県などに代表される1畦2条体系では、畝幅が105~130cm、畝高が15~30cmです。
福岡県・静岡県・茨城県などに代表される1畦4条体系では、畝幅を145~175cm、畝高を15~25cmに設定します。
畝にマルチを張る場合は、用途に応じて使い分けるのがポイントです。低温期の栽培となる12~3月どりには、地温を上げて雑草発生を防止するために黒マルチを使い、高温期には地温を下げるために白黒ダブルマルチを使います。
夏播き栽培時にアブラムシ類を防除する目的でマルチを張る場合には、シルバーマルチが適しています。
6. 定植
kikisorasido / PIXTA(ピクスタ)
200穴セルトレイでのレタス苗の育苗期間は約3~4週間で、定植前には苗に十分な量を灌水します。定植後の苗の活着と生育を良くするために、弁当肥として定植前日に液肥を散布する場合もあります。
栽植密度は、1畦1条体系では株間24~47cm、1畦2条体系では105~130cmの幅の畝に27~38cmの株間で2列に定植します。1畦4条体系の場合は、畝間27cm・株間20~34cmで1畝につき4列での定植です。
手作業での定植では浅植えや深植えに注意しつつ、苗の地際をしっかりと押さえます。野菜植機などの機械化ができれば、大幅な作業時間削減が期待できます。
7. 温度管理・追肥
レタスは冷涼な気候が栽培に適していますが、秋播き(冬春どり)栽培のような低温期にはトンネルまたはハウスで栽培します。
トンネル設置後は、レタスの生育ステージに応じて適切な温度を保つために、天候に応じたトンネルの開閉が必要です。栽培地域によっては、極寒期の対策として不織布のべたがけを実施します。
レタス栽培において追肥は基本的に不要ですが、極端にレタスの生育が悪いときには、灌水と同時に液肥を散布することをおすすめします。
8.生育障害と対策
レタスの生育障害に伴う結球異常は、干ばつ・高低温・多肥栽培などによる葉の形状や生育量の短期間での変化に伴い起こります。
結球異常には、レタス全体に生じるものと球葉の一部に異常が生じるものの両方があります。代表的な生育障害の種類・症状・原因・対策を以下にまとめました。
出典:タキイ種苗株式会社「野菜栽培マニュアル |レタス」内「玉レタスの生育障害」、同「レタスの結球異常」などよりminorasu編集部作成
結球異常以外で、レタスの代表的な生理障害はチップバーンです。レタスの葉の先端や周辺部に異常がみられる症状で「縁腐れ症」とも呼ばれます。チップバーンの原因はカルシウム欠乏であり、根の痛みや地上部の生育不良、土壌の過乾湿があると症状が助長されてしまいます。
9.病害虫防除
病害虫の防除方法には、物理的防除、耕種的防除、生物的防除、化学的防除の大きく4つがあります。
本記事内で紹介する農薬はすべて2024年6月現在、登録のあるものです。農薬の使用に当たっては、必ずラベルをよく読み、使用方法を遵守してください。また、地域によって使用に決まりがある場合には、必ず守るようにしてください。
ベト病
レタスのべと病 被害株
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
葉に輪郭不明瞭で不整形な淡黄色の病斑を形成し、葉裏にはカビが発生します。施設栽培やトンネル栽培など湿度が高い環境で特に発生しやすい病気です。
換気を十分に行うなど湿度を低く保つことで、発生予防・被害軽減の可能性が高まります。農薬散布が必要なときには、シグナムWDGなどの殺菌剤を使用します。
根腐病
土壌伝染性病原菌(糸状菌)により、根が被害を受けることで、植物全体が萎れて生育が極端に遅くなり、最終的には枯れてしまいます。排水不良が原因となることが多いので、高畝栽培などにより排水性を高めた土壌で栽培することが必要です。
レタスを連作することで被害が大きくなるので、他作物との輪作が根腐病の発生抑制に有効です。農薬による防除方法では、クロルピクリン錠剤などを使った土壌消毒が挙げられます。
アブラムシ類
レタスに寄生したモモアカアブラムシ
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
葉裏に群がり吸汁してレタスの生長を妨げます。また、アブラムシの抜け殻・排泄物にすす病が発生したり、ウイルス病の媒介者になったりすることがあります。定期的な観察による早期発見と、スタークル顆粒水溶剤、セフィーナ®DC などの殺虫剤散布による防除が重要です。
10. 収穫・出荷
karikari / PIXTA(ピクスタ)
外葉の湾曲した部分と露出した球の高さがほぼ同じになった状態で、手で頭を押さえて球が締まっていれば収穫適期です。収穫作業は早朝の涼しい時間帯に行い、収穫後のレタスは品質保持のため速やかに低温保管施設に移します。
レタスの切り口から乳汁が出るので、湿った布・食塩水を浸した布などで拭き取り、栽培地域・出荷先のルールに則り所定のフィルムで包むなどして、出荷できる状態に整えます。
▼レタスの収穫については、以下の記事も参照してください。
品質向上や省力化につながるレタスの栽培技術
収穫するレタスの品質を高めたり、栽培時の省力化を可能にしたりするための参考となる栽培技術情報を紹介します。
作型に応じた品種の選定
高品質なレタスを生産するためには、栽培環境や作型に適した品種選びが重要です。熟期・抽苔性・耐暑性・耐寒性などを考慮して、栽培計画に適した品種を選択するのがポイントです。レタスの主な品種分類とそれぞれの特性、代表的な品種について以下にまとめました。
出典:タキイ種苗株式会社「野菜栽培マニュアル|レタス」内「玉レタスの主な品種分類、野菜なんでも百科|レタスの品種分類と特性(玉レタス)」などよりminorasu編集部作成
苗の生育環境の整備と水分管理を徹底
軟弱徒長を防ぎ、健常なレタス苗を仕立てるために最も重要なのは水管理です。
灌水の目安は午前中に灌水したものが、タ方には培養土表面が乾いている状態です。余分な水を素早く排水するために、セルトレイをビールケースなどの上に置き地面から30cm以上は空ける環境を作るのがポイントです。
育苗環境が高温多湿や光不足になると、徒長苗の原因になるので、十分に換気する・過剰な遮光は行わない、などの環境作りも必要です。やむを得ない事情により、苗の生育を意図的に抑制したい場合には、海水を利用したレタスの育苗方法などを検討してみてください。
出典:一般社団法人園芸学会「平成7年度(1995年)園芸学会中四国大会発表」所収「海水を利用したレタス苗の生育制御」
初期成育を促進・均一化する「植穴施肥技術」
レタス栽培の省力化のために収穫の機械化が注目されていますが、機械の一斉収穫を困難にしている理由の1つにレタスの生育のバラツキが挙げられます。
静岡県内では特に1~2月の厳寒期には、レタスの生育のバラツキが顕著であり、収穫作業の機械化を難しくしている要因となっています。
レタスの初期生育を促進・均一化するための技術として「植穴施肥技術」を紹介します。
この技術は、レタス苗定植時に植穴(レタス苗直下)に少量の緩効性肥料を施用するものです。栽培試験では、植穴施肥技術の実施によりレタスの生育のバラツキが軽減するという結果が得られました。
実用化に向けては、さらなる栽培試験が必要となりますが、レタスの生育の均一化の実現と収穫作業の機械化が期待されます。
出典:独立行政法人農畜産業振興機構「野菜情報 2015年01月号|静岡県の冬レタス栽培における省力機械化技術開発への取り組み」
「通気性トンネル・べた掛け資材」で温度管理を省力化
kikisorasido / PIXTA(ピクスタ)
秋播き(冬春どり)栽培では、冬季には保温のためにトンネルを設置するのが一般的ですが、温度管理・換気のために天候に合わせたトンネルの開閉作業が欠かせません。
トンネル換気の省力化のために、兵庫県淡路地方で空隙率10~20%、透光率90~100%の各種資材をべた掛けまたはトンネル資材として使った栽培試験が行われました。
栽培試験では、作型に合わせた資材をトンネルまたはべた掛けに使うことで、重量と形状に優れたレタスを生産できる結果となりました。
出典:農研機構 西日本農業研究センター「2001年度(平成13年度)近畿中国四国農業研究成果情報|野菜推進部会|通気性トンネル・べた掛け資材を用いた冬・春どりレタスの省力高品質生産」
レタスは栽培地域ごとに、さまざまな作型が確立されているので、播種時期を調整することで長期間に渡り収穫・出荷が可能になり、安定的な売り上げが期待できます。
レタスの栽培方法・管理手順は、今回紹介した内容を基本にしつつ、ほ場の条件に応じて微調整をしながら、最適解を見つけることをおすすめします。
「植穴施肥技術」や「通気性トンネル・べた掛け資材」など、レタスの品質向上・栽培時の省力化に有効な栽培試験結果も出てきているので、レタスを栽培する際には参考にしてください。
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