ニンジン品種一覧|甘くて人気の定番品種&最新おすすめ品種
ニンジンは全国で広く栽培される主要野菜の1つですが、各地域の栽培条件や市場ニーズに合った品種選びが収益を大きく左右します。本記事では、主な産地で栽培されている代表的な品種や、昨今注目されている新品種の特徴を解説します。
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目次
ニンジンの品種を選ぶ3つのポイント
ビニールハウスでのニンジン栽培の現場
通りすがり / PIXTA(ピクスタ)
ニンジンの品種選びでは、以下の3つのポイントを考慮することが大切です。
1.作型に合った品種であること:
ニンジンの生育適温は18〜21℃であり、この温度帯から外れると収量・品質の低下リスクが高まります。特に高温期の栽培では、根の肥大不良や根形の崩れ、表皮粗化など品質低下の恐れがあります。
一方で、耐寒性は比較的強く、根部の温度適応性の幅が広いという特徴があります。
これらの生育条件から、作型は「春播き初夏どり」と「夏播き秋冬どり」が主流です。作型に適した品種を選ぶことが大切です。
2.病害抵抗性のある品種であること:
ニンジンの主な病害に、黒斑病、黒葉枯病、軟腐病、うどんこ病などがあります。特に栽培地域で発生しやすい病害への抵抗性持つ品種を選ぶことによって、防除コストを削減でき、収量の安定化につながります。
3.地域の環境に適した品種であること:
土壌の種類や気候条件(寒暖の差、降水量など)に適した品種を選ぶことで、生育がよく、高品質なニンジンを収穫できる可能性が高まります。また、新品種も含めて地域の市場ニーズが高い品種を検討することで、経営の安定化と収益性の向上が期待できます。
全国で人気! ニンジンの定番品種
3つの主要品種とは?
Koenig / PIXTA(ピクスタ)
ニンジンの主な生産地は北海道、千葉県、徳島県、長崎県などで、各地域の気候や栽培時期に適した品種が選ばれています。
これらの主要産地を中心に、全国のニンジン産地で栽培されている定番の品種を紹介します。
向陽二号(こうようにごう)
発売から30年以上経過した現在も、安定した生産性で市場の信頼を得ている五寸ニンジンが「向陽二号」です。
晩抽性と耐暑性を備え、春作から夏作まで幅広い作型に対応できることが最大の強みです。また、土質を選ばない適応性の広さと、黒葉枯病や根腐病の耐病性を持ち合わせています。
根長約18cmの揃いのよさと、肩張りで尻部までよく太った根形、滑らかでツヤのある鮮紅色の外観が特徴です。市場評価が高く、収益の向上が期待できます。
北海道から九州まで主要産地での栽培実績が豊富で、技術情報も蓄積されているため、新規導入しやすい品種といえます。
出典:タキイ種苗株式会社「 野菜品種カタログ・向陽二号」
彩誉(あやほまれ)
「彩誉」は極早生品種で、甘味が強くえぐみの少ない食味特性を持ちます。根長約16~19cm、やや肩張りで尻まで充実した形状と、鮮やかな濃紅色の外観は、市場での商品性を高めます。
また、病気への抵抗性が強く、収穫まで葉が青々としている点も特長として挙げられます。
出典:株式会社フジイシード にんじん紹介「彩誉」
愛紅(あいこう)
「愛紅」は、早期肥大性に優れ、高い収量性を持つ早生品種です。根形は総太りの円筒形で尻詰まりがよく、皮目が目立ちにくく肌質がきれいなため、商品性に優れています。
また、シミ症に比較的強く、病害対策の負担軽減が期待できます。さらに、地上部は立性で強健なため、機械収穫に適しています。
出典:住化農業資材株式会社 「製品情報・愛紅」
【秋ニンジン】 生産量上位県で栽培されている主な品種
秋の北海道で始まったニンジンの収穫作業
川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)
2022年産の全国の秋ニンジンの収穫量(生産量)は180,900tで、そのうち北海道が163,900tと全国シェアの90.6%を占めています。
北海道の主要品種には「晩抽天翔」「天翔五寸」「向陽二号」「紅うらら」などがあり、それぞれの特性を活かした栽培が進められています。
出典:農林水産省「令和4年(2022年)産指定野菜(秋冬野菜等)及び指定野菜に準ずる野菜の作付面積、収穫量及び出荷量」
晩抽天翔(ばんちゅうてんしょう)
北海道で最も多く栽培される「晩抽天翔」は、その名の通り晩抽性に優れ、冷涼地の春播きに適した早生多収品種です。肩張りがあり尻部までよく肉がつき、形状の揃いもよいとされています。
出典: 株式会社サン園芸「北海道のニンジン」
天翔五寸(てんしょうごすん)
「天翔五寸」は、発芽揃いの良好さと初期生育の旺盛さを強みとする早生品種です。北海道では「晩抽天翔」に次いで多く栽培されています。 「向陽二号」と同様にしっかりとした肉質で変色が少なく、洗浄後のテリ・ツヤも良好です。
出典:株式会社サン園芸 「北海道のニンジン」
紅うらら
「紅うらら」は、「愛紅」の改良品種です。ツヤのある鮮紅色で尻詰まりがよく、高い収量性を実現しています。
晩抽性を向上させた品種で、北海道での冬播きトンネル栽培における抽苔リスクを軽減します。低温条件下での肥大性に優れ、しみ症への抵抗性が比較的強いニンジンです。
出典:住化農業資材株式会社 製品情報「紅うらら」
カーソン
加工用品種の「カーソン」は、根長約18cm程度の冷涼地向け品種です。円筒形に近い根形により加工時のロスを抑えられるという特徴を持ちます。極晩抽性と黒葉枯病への強い耐性により、栽培管理の効率化と防除コストの削減を両立します。
出典:ベジョー・ジャパン株式会社 ニンジン「カーソン」
【冬ニンジン】 生産量上位県で栽培されている主な品種
ニンジンの収穫の様子
keiphoto / PIXTA(ピクスタ)
2023年産の全国の冬ニンジンの収穫量(生産量)は239,700tで、千葉県が第1位となる91,000tを生産し、全国シェア37.9%を占めています。千葉県は冬期の主要な出荷産地として、市場供給の重要な役割を担っています。
出典:農林水産省「令和5年(2023年)産指定野菜(秋冬野菜等)及び指定野菜に準ずる野菜の作付面積、収穫量及び出荷量」
れいめい五寸
「れいめい五寸」は、春播き・夏播き兼用の早生品種です。肩部の肉付きと尻詰まりのよさ、優れた形状揃いが特徴です。トンネル栽培や冷涼地の露地栽培での不時抽苔が少なく、しみ腐病や黒葉枯病への強い耐病性も持ち合わせています。
出典:横浜植木株式会社 商品情報「れいめい五寸」
らいむ五寸
「らいむ五寸」は夏播き専用の中生系品種です。旺盛な草勢と優れた耐寒性を持ち、黒葉枯病への抵抗性も備えています。ややなで肩の円筒形で尻詰まりがよく、光沢のある滑らかな外観は、商品価値を高める要素となっています。
出典:横浜植木株式会社 商品情報「らいむ五寸」
ベータ441
「ベータ441」は、夏播き秋冬どり用の中早生品種です。安定した生育で形が揃いやすく、作業効率の向上が期待できます。葉枯病やしみ腐病への耐病性を持つことで、防除作業の効率化にも寄与します。
出典:株式会社サカタのタネ ニンジン 「ベーター441」
【春夏ニンジン】 生産量上位県で栽培されている主な品種
青々と葉が茂るニンジンのほ場
Kumako / PIXTA(ピクスタ)
2022年産の春夏ニンジンの全国の収穫量(生産量)は155,700tです。
生産量上位の都道府県は、徳島県が48,300t(全国シェア31.0%)、青森県が21,200t(同13.6%)、千葉県が20,300t(同13.0%)と続き、これらの産地が春夏期の市場供給を支えています。
出典:農林水産省「令和4年(2022年)産指定野菜(秋冬野菜等)及び指定野菜に準ずる野菜の作付面積、収穫量及び出荷量」
紅ひなた
「紅ひなた」は早生品種で、「愛紅」の姉妹品種です。肩張りのよさと形状安定性が特徴で、高い収量性を実現しています。根色と肉色は鮮紅色で、ツヤのある滑らかな肌質を持ちます。
極晩抽性でしみ症に比較的強いため、暖地や中間地の冬播きトンネル栽培にも向いています。
出典:住化農業資材株式会社 製品情報「紅ひなた」
べによし五寸
「べによし五寸」は、晩抽性と耐暑性があり、春播きや夏播き年内どりに適していますす。尻詰まりのよい短円錐形で早期肥大性を持ち、肌は滑らかで、根色と芯色のどちらもよく着色します。
出典:渡辺農事株式会社 ニンジン「べによし五寸」
翔彩(しょうさい)
「翔彩」は、晩抽性に優れた早生品種として、作型の幅を広げます。形状揃いがよく、やや硬めの肉質と光沢のある外観が特徴です。しみ症への耐病性を持ちます。
出典:株式会社フジイシード にんじん紹介「翔彩」
甘くておすすめ! 近年注目の最新品種・人気品種
採れたてのニンジン
Taro / PIXTA(ピクスタ)
ニンジンは日本の食卓に欠かせない野菜の1つですが、近年、消費者の好みや食生活の変化に合わせて、多様な品種が開発されています。ここでは、機能性や食味特性による差別化が期待され、特に注目を集めている新品種を紹介します。
オランジェ
「オランジェ」は、従来品種と比較してカロテン含有量が約50%多く、外皮から芯まで鮮やかな濃いオレンジ色が特徴です。
夏播き専用の冬どり品種で、葉の耐寒性が強く、葉軸がしっかりしているため、年明けでも機械収穫に適しており、作業効率の向上が期待できます。
出典:タキイ種苗株式会社 野菜品種カタログ「オランジェ」
ベーターリッチ
「ベーターリッチ」は、周年栽培が可能な中生品種です。晩抽性に加え、耐暑性、耐寒性、低温での肥大性と着色性に優れ、しみ腐病や斑点細菌病への耐病性を備えています。
従来の西洋ニンジンよりもカロテンが多く含まれており、糖度が高く甘みがあり、ニンジン特有の臭みが少ない傾向にあります。
出典:株式会社サカタのタネ ニンジン 「ベーターリッチ」
ニンジン栽培の品種選定は、収量や栽培のしやすさ、市場ニーズなどを総合的に考慮する必要があります。
「向陽二号」や「紅うらら」などの春夏作兼用品種による作期分散、「晩抽天翔」や「カーソン」などの機械化適性の高い品種による効率化、「れいめい五寸」や「ベータ441」などの病害抵抗性品種による防除コスト削減が重要です。
さらに、「彩誉」や「翔彩」による早期出荷戦略、「オランジェ」や「ベーターリッチ」などの特殊品種による差別化も検討に値します。
産地の気象条件、労働力、販路に応じて、これらの品種特性を活かした品種構成を確立することが、持続的な経営発展のカギとなるでしょう。
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