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ニンジンの生産量ランキング! 需給の推移と今後の見通し

ニンジンの生産量ランキング! 需給の推移と今後の見通し
出典 : トマト大好き / PIXTA(ピクスタ)

ニンジン栽培では、各地の生産・消費の動向を掴み、ニーズに適した生産体制を組むことが大切です。そのうえで、コスト・労働力を省力化できる作業環境を構築して、高い収益性をめざしましょう。本記事では、ニンジン栽培を始める前に知っておきたい生産量の推移や、各地の栽培事例を紹介します。

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ニンジンは恒常的に需要が高く、生産量も多い野菜の1つで、全国各地で栽培されています。春夏ニンジン・秋ニンジン・冬ニンジンと収穫時期によって分けられており、各産地では収量アップのために、さまざまな栽培技術開発や作業効率化などの対策が講じられています。

2021年都道府県別のニンジン生産量ランキング

スーパーの野菜売り場に並ぶニンジン

asaki106 / PIXTA(ピクスタ)

ニンジン生産の現状を知るため、まずは農林水産省の「令和3年産野菜生産出荷統計」をもとに、2021年産のニンジン収穫量上位10道県を紹介します。

2021年産 ニンジン収穫量 都道府県別ランキング

出典:農林水産省「作物統計調査|作況調査(野菜)| 確報 令和3年産野菜生産出荷統計」よりminorasu編集部作成

ランキングを見ると、北海道・千葉県・徳島県の上位3道県までで、全国の収穫量の約6割が占められています。特に、1位の北海道と2位の千葉県は生産量が突出しています。

冷涼な地域である北海道と温暖な千葉県という、異なる気候の地域が1位と2位を占めているのは、それぞれ環境に適した時期に収穫・出荷しているためです。

北海道産のニンジンはおおむね7月~11月頃、千葉県産は11~3月頃および5月~7月頃に収穫されます。3位の徳島県産ニンジンは、主に3月~5月頃に収穫されます。

2021年産 ニンジンの旬別収穫量ランキング

順位春夏収穫量収穫量収穫量
1位徳島県5.0万t北海道19.5万t千葉県8.8万t
2位青森県2.5万t青森県1.0万t茨城県2.2万t
3位千葉県2.5万t長崎県2.1万t
4位長崎県1.2万t鹿児島県2.0万t
5位茨城県0.9万t愛知県2.0万t
6位その他4.4万tその他1.3万tその他8.2万t
全国計16.5万t全国計21.9万t全国計25.2万t

出典:農林水産省「作物統計調査|作況調査(野菜| 確報 令和3年産野菜生産出荷統計」よりminorasu編集部作成

作況統計を旬別分類で見ると、北海道は秋ニンジンで1位、千葉県は冬ニンジンで1位、春夏ニンジンで2位、徳島県は春夏ニンジンで1位になっています。これらの産地をリレーすることで、ニンジンの通年供給が確保されています。

次に、作付面積と10a当たり収量を見ると、作付面積が小さくても10a当たり収量が高い産地があるのががわかります。

■2021年産 ニンジンの作付面積・10a当たり収量ランキング

2021年産 ニンジンの作付面積と10a当たり収量 ランキング

出典:農林水産省「作物統計調査|作況調査(野菜)| 確報 令和3年産野菜生産出荷統計」よりminorasu編集部作成

収穫量では3位の徳島県、5位の長崎県は作付面積が1万ha未満ながら、徳島県の10a当たり収量は5,330kgと全国2位、長崎県は4,040kgで全国4位となっています。

ここから、この2県は狭い作付面積でも高い収量を上げる、効率のよい栽培をしていることがうかがえます。

なお、収穫量ではランク外ですが、ニンジンの「10a当たり収量」の1位は、5,530kgの愛知県です。387haの作付面積で、全国8位となる21,400tの収穫量を上げています。

主要生産地を知ることは、気候や環境に適したニンジンの品種・作型を知る手掛かりとなります。また、それらの産地では栽培に関する情報量が豊富で、技術開発が進んでいるケースも多くあります。

主要産地に学ぶことも、ニンジン栽培を成功させるために大切なポイントです。

ニンジンの収穫期別生産量

次に、同じく農林水産省の作況統計をもとに、収穫期ごとに生産量の多い産地を紹介します。

春夏ニンジン

初夏 収穫直後の春夏ニンジン

sasuke / PIXTA(ピクスタ)

春夏ニンジンの収穫量は全国で16万4,800tと、年間収穫量63万5,500tのおよそ26%を占めています。

生産量上位の都道府県を見ると、10a当たり収量が圧倒的に高い徳島県が、収穫量でも2位に倍近い差をつけトップとなっています。

2021年産 春夏ニンジンの収穫量・作付面積・10a当たり収量 ランキング

出典:農林水産省「作物統計調査|作況調査(野菜)| 確報 令和3年産野菜生産出荷統計」よりminorasu編集部作成

温暖な地域が多い中、冷涼な気候である青森が2位、北海道も7位に入っています。寒冷地でもべた掛けやトンネルなど栽培方法の工夫を行うことで、気候や環境の違いに関わらず、春夏ニンジンの栽培が可能であることがわかります。

春夏ニンジンの作付面積と10a当たり収量の推移

出典:農林水産省「作物統計調査|作況調査(野菜)」の「 確報 令和3年産野菜生産出荷統計」「長期累年」よりminorasu編集部作成

作付面積は少しずつ減っていますが、10a当たり収量も少しずつ増えており、供給量が確保されていることがうかがわれます。

2021年は全国的に天候に恵まれたため、全体の10a当たり収量は4,020kgで、前年産に比べ5%上回りました。

秋ニンジン

北海道 秋ニンジンの収穫作業

川村恵司/ PIXTA(ピクスタ)

秋ニンジンの収穫量は21万8,700tで、年間収穫量63万5,500tの3割を超えます。この収穫量のほとんどを北海道が占め、青森県と福井県を加えた3道県が秋ニンジンの市場を支えています。

2021年産 秋ニンジンの収穫量・作付面積・10a当たり収量 ランキング

出典:農林水産省「作物統計調査|作況調査(野菜)| 確報 令和3年産野菜生産出荷統計」よりminorasu編集部作成

2021年の秋ニンジンは、春夏ニンジンと同様に気候条件がよく、10a当たり収量が前年産に比べ9%上回りました。

長期で見ると、作付面積の減少と10a当たり収量増が、冬春ニンジンに比べて顕著なことがわかります。

秋ニンジンの作付面積と10a当たり収量の推移

出典:農林水産省「作物統計調査|作況調査(野菜)の「 確報 令和3年産野菜生産出荷統計」「長期累年」よりminorasu編集部作成

冬ニンジン

関東地方 冬ニンジンの収獲

四季写彩 / PIXTA(ピクスタ)

冬ニンジンの収穫量は25万2,000tで、年間収穫量63万5,500tの4割近くを占めます。

2021年産 冬ニンジンの収穫量・作付面積・10a当たり収量 ランキング

出典:農林水産省「作物統計調査|作況調査(野菜)| 確報 令和3年産野菜生産出荷統計」よりminorasu編集部作成

冬の期間は、千葉県をはじめとした関東以西の温暖地や暖地で冬ニンジンを収穫します。1位の千葉県は突出して収穫量が多いものの、2位以下はほとんど差がなく、冬ニンジンは広い地域で栽培されていることがわかります。

2021年の冬ニンジンは、ほかの季節と同様に気候条件に恵まれ、全体の10a当たり収量は前年に比べ9%上回りました。

冬ニンジンの作付面積と10a当たり収量の推移

出典:農林水産省「作物統計調査|作況調査(野菜)の「 確報 令和3年産野菜生産出荷統計」「長期累年」よりminorasu編集部作成

ニンジンの需給推移と今後の見通し

次に、ニンジンの需要について確認するため、消費者の「ニンジン年間購入量」と、東京都中央卸売市場におけるニンジンの価格の推移を見てみましょう。

1人当たりのニンジンの購入数量の推移

出典:総務省「家計調査年報(二人以上の世帯)」よりminorasu編集部作成

上記のグラフから消費動向を見ると、消費者1人当たりのニンジン年間購入量は2,700~3,000gの間で推移しています。

ニンジンの卸売価格の月別推移

出典:東京都中央卸売市場「統計月報」よりminorasu編集部作成

また、東京都中央卸売市場での価格も、2020年夏の北海道で起きた干ばつなどの影響による高騰以外は、ほぼ安定しています。

一方、近年、一般消費者向けでなく、加工・業務用の需要が伸びています。

主な野菜の産出額に対する加工・業務用の需要割合の推移

※農林水産政策研究所による推計
出典:以下資料よりminorasu編集部作成
農林水産政策研究所「主要野菜の加工・業務用需要 6割に近づく」(研究成果|2017年度)所収「主要野菜の加工・業務用需要の動向と国内の対応方向(セミナー・研究成果報告会 2017年10月3日)」
独立行政法人農畜産業振興機構「加工・業務用野菜需要に対する産地の取り組みについて(2)~共同調査~」

そして、カット加工されたニンジンの輸入量が増加傾向にあります。

しかし、コロナ禍やウクライナ情勢の影響で輸入食品の安定供給が不安視されている現在、加工・業務用野菜も全般に国産への期待が高まっており、今後も需要が落ちないものとみられています。

ニンジン農家が収益性を上げるポイント

ニンジン トンネル栽培

川村恵司/ PIXTA(ピクスタ)

ニンジンの価格が安定している一方、資材や燃料は高騰を続けています。このような厳しい経済状況の中、ニンジン栽培を始めるに当たっては、収益性を向上させる対策が不可欠です。

そこで以下では、ニンジン農家の所得の現状と、具体的な収益向上対策事例を紹介します。

ニンジン栽培の所得率はおよそ3割

ニンジンは高い需要に支えられ、安定した価格を維持しているものの、ニンジン農家の所得は決して楽観的なものではありません。現状を知るために、2020年の営農類型別経営統計をもとに、ニンジン農家の経営収支を見てみましょう。

露地にんじん作部門の経営収支(2020年)

出典:農林水産省「営農類型別経営統計]|野菜作経営、果樹作経営、花き作経営 個人経営体の部門収支(野菜作、果樹作、施設ばら作)|2020年」よりminorasu編集部作成

2020年統計では、作付延べ面積は238.5a、この面積に対する当該品目収入(粗収益のうちニンジン作の収入)は1,345万8,000円です。

一方、部門経営費は9,407万円で、収益から経費を引くと、部門所得は427万5,000円、所得率は31.2%です。また、10a当たりの所得は17万9,000円です。

※この統計数値は、北海道などの大規模経営や小規模な家族経営も合わせたニンジン作部門の全国平均であり、規模によって実情が大きく異なる可能性もあります。そのうえで、おおよその実情を把握するための目安としてください。

露地野菜作の10a当たり経営収支比較(2020年)

出典:農林水産省「営農類型別経営統計]|野菜作経営、果樹作経営、花き作経営 個人経営体の部門収支(野菜作、果樹作、施設ばら作)|2020年」よりminorasu編集部作成

この統計で、ニンジンをほかの露地野菜作と比べると、果菜類以外では、所得率は高い方であることがわかります。

経営課題としては規模拡大に伴う生産性の向上が挙げられます。

ニンジン栽培は、担い手不足や高齢化によりほ場が集約され、規模が拡大する傾向にあります。

昨今の肥料・資材高騰の影響を最小限に抑えるべく、規模拡大に見合った生産性向上が求められています。

また、ニンジン栽培においては、特に間引きと収穫・調整・出荷の作業負担が大きく、中でも春夏ニンジンはトンネルの管理にも多大な労力とコストがかかります。こうした作業の効率化・省力化が、生産性向上のカギを握っています。

▼ニンジンの播種・間引きの省力化についてはこちらの記事をご覧ください。

春夏ニンジンでコスト削減や大規模化に取り組む千葉県

ニンジンのトンネル栽培

くっぴー / PIXTA(ピクスタ)

春夏ニンジンの主要産地である千葉県では、収益性を高めるために各地でさまざまな対策が講じられています。

例えば、JA千葉みらいでは「農家手取り最大化」として、比較的単価の高い春夏ニンジンの生産拡大を図っており、ニンジン生産では「ハウス」「トンネル」「べたがけ」の3つの作型を確立しました。

管内のニンジン農家は、この3つの作型を意図的にずらすことで、収穫期を1ヵ月以上に延長し、労力の集中を避けて分散させるとともに、規模拡大をしやすくしました。

また、ニンジンのトンネル栽培では、被覆資材であるPOを1作で使い捨てるため、コストがかかってしまう点が課題となっています。八千代市では、これを改善するため、POの代わりにべたがけ資材を使用した栽培実験を行いました。

べたがけ資材はPOに比べて頑丈ですが、保温性に劣り、生育が悪くなることが懸念されます。しかし、収穫を1週間遅らせることで、その問題を解消できると実証されました。べたがけ資材は3年ほど使用できると見込まれるため、POと比べ生産コスト削減につながります。

香取地域では、高品質のニンジンを生産できる土壌を持つことから、基幹品目であるさつまいも(甘藷)の輪作品目として、ニンジンの生産拡大を図っています。

そのための取り組みとして、新たな雇用対策などを進めながら、集選果場を整備して労力軽減を図ったり、補助事業を活用して作業機械導入を支援したりしています。

出典:
株式会社農林中金総合研究所「調査と情報 2018年11月号第69号」所収「春夏ニンジンによる「農家手取り最大化」─ JA千葉みらいの取組み ─」
千葉県香取農業事務所|「成果集香取地域におけるにんじん産地の維持拡大に向けて」

「低コスト・省エネ・省力化」で生産拡大をめざす長崎県

長崎県雲仙地域のニンジンほ場

Kumako / PIXTA(ピクスタ)

同じくニンジンの主要産地である長崎でも、徹底した作業の省力化・効率化・コストカットに取り組んでいます。

施肥の適正化や畝内全層施肥により、施肥にかかる労力とコストの削減を進めました。そのほか、中耕除草機の導入や、収穫や運搬作業へのフレコン導入によって作業効率化を図るなど、各地で生産コスト削減対策を講じています。

中でも、島原市とJA島原雲仙では、経営規模の拡大を図ってきたものの、収穫作業の労力不足という課題が生じていました。そこで洗浄選別機の導入や、JAの選果施設の整備、選果場へのフレコンによる持ち込み体制確立などを進め、作付面積の大幅拡大に成功しています。

出典:
長崎県「農業品目別コスト縮減戦略品目別コスト縮減戦略(平成29年度版)」所収「「にんじん_生産コストの縮減に向けた取り組み・今後導入および普及が期待される取り組み」

大産地 北海道は? 基盤整備を進め所得向上へ

北海道 夏ニンジンの収獲 フレコン出荷

川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)

ニンジンの作付面積・収穫量1位の北海道では、以前から品種特性を考慮して、作型や地域に合った品種選定を推奨してきました。

地方独立行政法人北海道立総合研究機(道総研)構では、青果用の晩春まきと初夏まき、加工用の晩春まきそれぞれについて、作型との適合や耐病性などさまざまな切り口から品種の調査を行い、調査結果の詳しい情報を花・野菜技術センターホームページ内で公開しています。

出典:
地方独立行政法人北海道立総合研究機(道総研)「農業研究本部|農業技術広場|研究成果|一般課題H21(H20年度)」所収「にんじんの品種特性Ⅲ」(野菜技術センター 研究部 野菜科)
ホクレン営農技術情報誌「あぐりぽーと No.83 2010年02月号」所収「「にんじん」の栽培技術と研究成果~特集:野菜(根菜類)の高品質・安定生産に向けて」

また、美幌町ではJAびほろと農家が一体となって、区画整理、暗きょ排水や灌漑設備の整備、客土などの基盤整備を行っています。それによって大型機械での作業がしやすくなり、大規模化や作業の効率化が進みました。

これと並行して、生産組合が各ほ場の作業適期を管理して高品質・長期出荷体系の確立に取り組んだり、普及センターと生産組合が連携して適正な農薬使用量を確認したりするなど、地域ぐるみで適正かつ省力的な栽培を支援しています。

そのほか、コントラクターによる収穫・洗浄を行って農家の作業負担を軽減したり、ニンジンを活用したJAびほろのオリジナルソースの開発や、シンガポール市場への輸出など、販路の拡大を図ったりしています。

将来を見据え、担い手確保のために新規就農者の教育研修を行い、ICT技術の導入にも積極的に取り組んでいます。

こうした活動の結果、美幌町のニンジン作付面積は2006年から2016年までに約1.6倍に増加し、ニンジンを含む野菜の栽培に取り組む農家の農業所得も1.5倍になりました。

出典:
北海道「農業農村整備事業の事例集、女性活躍事例集」「平成30年度 産地収益力向上事例集(後編)」1ページ目「大規模畑作地域におけるJAびほろ産にんじんの生産拡大」

ニンジンの洗浄機

Tomo / PIXTA(ピクスタ)

ニンジンは安定した需要があり、比較的高い収益が見込める作物です。幅広い気候や作型に対応できるため、北海道から九州までほとんどの地域で栽培できます。地域を挙げてほ場の大規模化や作業の効率化などを進め、経費を削減することで、一層の所得アップをめざしましょう。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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