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ニンジンの“1粒播種”で間引きを省力化! 収量も確保する効率栽培のコツ

ニンジンの“1粒播種”で間引きを省力化! 収量も確保する効率栽培のコツ
出典 : くま / PIXTA(ピクスタ)

ニンジンを「1粒播種」することで、負担の大きい間引き作業の時間短縮や負担軽減ができます。こうしたメリットがある一方で、1粒播種には生育が揃いにくいなどのデメリットもあります。そこで本記事では、1粒播種のメリット・デメリット、実施手順について解説します。

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ニンジンの「1粒播種」とは、1ヵ所に1粒ずつ種子を播くことです。機械化が難しい間引き作業の負担軽減ができる一方で、デメリットもありますので、本記事で詳しくまとめました。まずは、1粒播種とは何かについて解説します。

ニンジンを大規模栽培するなら導入するべき手法、「1粒播種」とは?

ニンジンの発芽

四季写彩 / PIXTA(ピクスタ)

ニンジンを大規模に栽培するのであれば、作業の省力化について考える必要があるでしょう。例えば、ニンジン栽培における負担が大きいのが間引き作業です。なぜなら、機械化が難しいからです。しかし、「1粒播種」を実施することで、負担の軽減ができます。

機械化が困難な“間引き作業”を省力化する栽培技術

ニンジンの間引き差作業

スター / PIXTA(ピクスタ)

ニンジンの慣行栽培では、1ヵ所に2~3粒ほど播種し、その後本葉が2~3枚程度になった頃に間引きを行います。この間引き作業は機械化が難しく、手作業で行うことが一般的です。しかし負担が大きく10a当たり20~30時間ほどかかります。そのため、ニンジンの大規模栽培を行うのであれば、間引きにかかる作業の省力化が必須といえるでしょう。

また、間引き作業はかがんだ姿勢で行うので、腰痛などの原因にもなっています。そのため、作業の省力化は、身体への負担軽減にもなるでしょう。

こうした背景から、播種量を1ヵ所に1粒までに限り、間引きを行わずに栽培する「1粒播種」と呼ばれる栽培技術が開発されました。間引き作業がない分、時間を大幅に削減できます。

ニンジンのコート(ペレット)種子

トマト大好き / PIXTA(ピクスタ)

負担減が大きなメリットになる一方で、生育が揃いにくいデメリットも

1粒播種を実施すると間引き作業がなくなり、栽培にかかる時間を大きく削減できます。しかし、慣行栽培からそのまま播種量を1粒に変更しただけでは、生育が不ぞろいになったり、欠株割合が増えたりなどのデメリットが生じます。

収量を確保しながら省力化を実現するためには、単純に播種量を減らすのではなく、株間を狭める工夫など、方法を検討する必要があるでしょう。実際にどのように工夫すれば負担軽減と収量確保を両立できるのか、次項で詳しく解説します。

コツを押さえて収量も確保! ニンジンの「1粒播種」実施手順

1粒播種のコツを押さえることで、間引き作業の負担軽減と収量増加の両立ができます。ここでは温暖地(中間地)での夏播き栽培における手順とそれぞれのコツを紹介します。

ニンジン 大規模栽培 発芽直後

くま / PIXTA(ピクスタ)

(1)土作り

まずは土作りです。播種の1ヵ月~2ヵ月前までに堆きゅう肥を施用し、ほ場の準備をします。土壌が粘質のときは堆きゅう肥の量を増やし、土がしまらないようにしましょう。

耕盤があればプラソイラなどで心土破砕し、土塊の大きさが10mm以下になるように調整します。粘質土のときはさらに何度も耕転し、発芽が不安定にならないようにしましょう。ちなみに、金時ニンジンであれば耕深は35cm程度、五寸ニンジンであれば20cm程度が目安です。播種1週間前までに基肥を施用すると、準備作業は完了します。

(2)播種

播種前には、土壌に十分な水分が含まれていることが必要です。水分が不足していると思われるときは、20~30mm灌水しておきましょう。

播種は深さ1~2cm、株間は6cmを目安とし、播種機を用いて実施します。慣行栽培では株間は10cmですが、1粒播種では欠株の割合が増える可能性があるため、通常よりも株間を狭める点に注意が必要です。なお、種子はコート種子(コーティング種子)を施用します。

参考:1粒播きが可能な播種機の例

手押しシーダー
株式会社向井工業「ごんべえ HSー801」

シーダーマルチ
アグリテクノサーチ株式会社 「AMS-601C」
総和工業株式会社「シーダーマルチ」

アグリテクノサーチ株式会社 Youtub公式チャンネル「トラクタ用播種マルチ クリーンシーダ【AMS-601C】」

(3)表土の鎮圧

播種後、鎮圧ローラを用いて鎮圧すると土壌の水分が安定し、発芽率や秀品率の向上につながります。また、深起こしを実施することや砕土率の向上に効果が高い改良ロータリを利用することも、収量や品質の向上と安定に役立ちます。

(4)除草剤の散布

播種が終わった後、すぐに散水を行います。土壌に含まれる水分が少ないときには、乳剤や水溶剤を施用しましょう。散水した水が土壌に行きわたったのを確認してから、播種翌日を目安にして、速やかに土壌処理の除草剤を散布します。

除草剤には、ゴーゴーサン乳剤などのペンディメタリン乳剤を施用します。施用時期は播種後の出芽前です。液料は10a当たり200~400ml、希釈水量は10a当たり70~150Lです。ゴーゴーサン乳剤を含むペンディメタリン乳剤の使用回数は、基本的に栽培1回当たり1回のみとなります。そのため、ほかのペンディメタリン乳剤を施用するときは、ゴーゴーサン乳剤を施用しないように注意しましょう。

なお除草剤を使用する前にラベルの記載内容をよく確認し、使用方法を守って正しく散布してください。また、地域によって除草剤の施用について決まりが定められている場合があります。確認の上で使用しましょう。

栽培管理のポイントは? ニンジンの播種~発芽までのよくある疑問

1粒播種を実施することで、ニンジンの間引き作業を削減できます。また、株間を通常よりも狭くすることで、欠株割合が増えたとしても収量を増やせるようになるでしょう。

しかし、播種後の栽培管理がうまくいかないときは、収量減となる可能性があります。播種後、発芽までの栽培管理のポイントについて解説するので参考にしてください。

ニンジンの発芽・生育が成功しやすい播種時期は?

冷涼地の夏秋どりニンジン

川村恵司 / PIXTA(ピクスタ)

温暖地(中間地)の露地栽培における夏播き栽培の播種時期は、「年内どり」が7月下旬~8月上旬、「越冬どり」は8月中旬です。ニンジンは気温が低いと発芽しにくい作物ですが、気温が高すぎても発芽が難しくなります。地温が35℃以上のときは、ほとんど発芽しないとされているので、夏の播種は気温をチェックして実施するようにしましょう。

発芽に最適な地温は15~25℃です。適温の時期に播種をすると8~10日で発芽しますが、10℃では14日程度、5℃では30日以上の日数がかかるだけではなく、発芽率が下がって生育が不揃いになるので注意しましょう。

冷涼地では5月頃に播種し、8月下旬~11月上旬の収穫をめざす「夏秋どり」を実施することがあります。この場合は、発芽率が下がらないように平均気温が10℃になってから播種します。

一方、生育に適した地温は18~21℃です。地温が13℃以下では着色が阻害され、3℃以下では肥大が阻害され、商品価値が下がることがあります。ニンジンは生育後半には、ほとんど水や肥料を必要としないため栽培しやすいという特徴があります。しかし、温度には強く悪影響を受けるので温度管理に注意を払いましょう。

発芽までの灌水方法やタイミングは?

播種後は、灌水チューブなどで20mm散水します。その後は発芽するまで、畝面が乾いたならば灌水を実施するようにしましょう。地温が高くなる時期や空気が乾燥する時期は、1日1回、あるいは朝と夕方2の回ほど、潅水が必要です。1回当たり5mmを目安に潅水しましょう。

発芽後は、本葉が6葉になるまで乾燥したタイミングで灌水実施します。灌水の目安は5日間隔です。ただし、除草剤を散布した日は潅水しないでおきましょう。

なお、夏に播種する場合は、潅水量を減らします。播種後は6mm、その後は1回当たり3~5mmが目安です。

発芽不良による失敗が多発するのはなぜ?

ニンジンは生育後半になると水も肥料もほとんど不要で、負担がかからない点が特徴です。しかし発芽は容易ではなく、発芽させることがニンジン栽培の成功のポイントになるといえるでしょう。

発芽不良の原因としては、地温が適温ではないことが挙げられます。地温が15℃を下回るとき、あるいは25℃を上回るときは発芽に時間がかかるだけではなく、発芽率が大幅に下がる可能性があります。播種するときは今後の気温変化にも注意を払い、時期を選ぶようにしましょう。

また、乾燥にも注意が必要です。ニンジンの発芽には大量の散水を必要としませんが、土壌が乾燥したまま放置すると、発芽率を低下させる原因になることがあります。特に播種から発芽までの間は、乾燥を避けるようにしましょう。

乾燥しやすい夏は1日2回、砂丘などの土壌が乾燥しやすい場所では1日3回の灌水が必要になることもあります。1回当たり3~5mmを目安として、灌水しすぎないように灌水を記録しておきましょう。

灌水チューブを用いると、土壌にまんべんなく散水できるようになるだけではなく、灌水作業の負担を軽減できます。土壌が乾燥しやすい土地や夏に播種をする場合には、灌水チューブを導入してみてはいかがでしょうか。

ほ場へのチューブ灌水

Akiphoto / PIXTA(ピクスタ)

ニンジンは水や肥料の管理が比較的容易で、栽培に負担がかかりにくい野菜です。しかし、発芽は容易ではありません。温度や土壌の水分量が適切でないときは、発芽に時間がかかるだけではなく、発芽率が低下する可能性があります。

また、1ヵ所に2~3粒ずつ播種をする慣行栽培では、間引き作業の負担が大きいという点もニンジン栽培を難しくしています。間引き作業は機械化が難しく、人の手で行うことが一般的ですが、腰をかがめた姿勢を継続するため、腰痛などの原因になっています。

1ヵ所に1粒ずつ播種する「1粒播種」を実施することで、間引き作業を削減できます。株間を慣行栽培の10cmよりも狭くして6cm程度にすれば、間引き作業を削減するだけではなく、収量の向上も期待できるでしょう。

播種後の散水と除草剤の散布も大切なポイントです。播種後は適量を灌水し、翌日を目安にペンディメタリン乳剤などの除草剤を散布しましょう。また、温度や土壌の水分をこまめにチェックして、適切な散水を心掛け、ニンジンの収量増加をめざしてみてはいかがでしょうか。

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林泉

林泉

医学部修士、看護学博士。医療や看護、介護を広く研究・執筆している。医療領域とは切っても切れないお金の問題に関心を持ち、ファイナンシャルプランナー2級とAFPを取得。

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