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【ナス育苗】播種から定植までの栽培方法や徒長を防ぐ温度管理のポイントを解説

【ナス育苗】播種から定植までの栽培方法や徒長を防ぐ温度管理のポイントを解説
出典 : Ystudio / PIXTA(ピクスタ)

ナス栽培では、育苗期の管理の良し悪しが、定植後の収量や食味を左右します。そのため、育苗するときは、自家育苗のメリットや作型に応じた栽培暦を理解したうえで実施することが大事です。この記事では、ナスの自家育苗について、育苗方法や定植までの流れ、温度管理のポイントについて解説します。

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ナスの収穫可能な時期は長く、暖地での露地栽培では5月下旬~11月上旬までの間に、何度も収穫ができます。そんな中で収量を増やすためには、育苗期に適切な苗作りをすることが欠かせません。そこで、ナスの育苗について詳しくまとめました。まずは、自家育苗の重要性について解説します。

ナスにおける自家育苗の重要性

ナス 自家育苗

まっちゃん / PIXTA(ピクスタ)

ナスの栽培は、苗が決め手といわれるほど、育苗管理は重要視されています。定植後の樹勢が強ければ着果率が上がり、食味のよい作物が収穫できるからです。

市販の苗は連作障害や病気、害虫に強い反面、栽培コストが高くなります。一方、自家育苗だと床土の施肥や灌水などの負担はかかりますが、栽培コストは抑えられます。市販されていない品種の苗も栽培できるため、作物の差別化にも効果を発揮します。

ナスの代表的な作型・栽培暦

ナス 露地栽培

スミレ / PIXTA(ピクスタ)

夏野菜の代表格であるナスは、施設栽培を活用した周年供給体制が確立されています。7~11月に出荷される夏秋なすを例に挙げると、関東地方をはじめ全国各地で露地栽培によって生産されています。また、12~6月に出荷される冬春なすの場合、高知県や熊本県、福岡県といった温暖な地域で、施設栽培されています。

ナスの露地栽培では、冬場から育苗して早期に収穫する早熟栽培や、播種時期を遅くして収穫時期を後ろ倒しする抑制栽培をすることで、出荷時期を拡大しています。施設栽培では、栽培初期のみハウスで保温する半促成栽培も取り入れられるなど、作型も多種多様です。

以下の表で、ナスの栽培暦の目安についても作型ごとに確認しておきましょう。

茄子の作型と栽培暦

作型播種時期定植時期収穫期
露地栽培2月上旬~3月中旬5月上旬~中旬6月中旬~10月下旬
早熟栽培1月上旬4月中旬~4月下旬5月中旬~10月下旬
抑制栽培5月上旬~6月中旬7月上旬~8月中旬9月上旬~11月下旬
促成栽培8月下旬~9月下旬9月上旬~9月中旬10月~翌年7月上旬
半促成栽培10月下旬~1月上旬12月~2月3月上旬~8月下旬
ナス 促成栽培

hamahiro / PIXTA(ピクスタ)

収量や食味を左右するナスの育苗方法と管理のポイント

ナスを自家育苗する場合の、播種から定植までの流れや播種後の管理ポイントについて解説します。定植後に品質の高い作物を収穫できるよう、ほ場の準備方法についても紹介します。

【播種】育苗日数は約2ヶ月半。播種前の土壌作りが肝

ナスの播種 播種溝・発芽直後・子葉

トマト大好き / PIXTA(ピクスタ)

ナスの播種日は、平均気温が15~17℃以上を確保できる時期から、育苗日数を逆算して設定します。育苗日数は育苗時期や苗の品種などによって異なりますが、約2ヶ月半が目安です。育苗ハウスなど、温度管理が可能な場所を用意し、害虫などの侵入を防ぐため開口部には防虫ネットを張りましょう。

遅くとも播種の1ヶ月前までに、有機資材と土を1:3に混合した上で、十分に基肥を加えて培養土を準備しておきます。培養土はph6.0~6.5、EC(導電率)0.5~0.7の状態への調整が必須です。

播種前にセルトレイまたは育苗箱に培養土を入れ、条間を5~8cm前後空けて深さ1cmの溝を作ります。その後、5mm間隔で播種して覆土します。土壌環境を改善するために、バーミキュライトをかぶせてもよいでしょう。

ナスの種子は嫌光性のため、覆土が不十分だと発芽しなくなる恐れがあるので注意が必要です。発芽までの間は昼間26~28℃、夜間22~23℃になるように管理します。

【発芽】乾燥と水の与え過ぎによる徒長を防ぐ適切な灌水サイクルがポイント

ナス 発芽までの温度管理

ミン / PIXTA(ピクスタ)

播種後の温度管理が適切であれば、5~7日で発芽が始まります。発芽後2~3日は乾燥を防ぐために、十分な灌水が必要です。しかし、それ以降は苗立枯病を予防するために灌水量を控えめにします。夜間に水分が多い状態だと苗が徒長する原因になるため、朝のうちに灌水を行うことが大切です。

苗の生長には太陽光が欠かせませんが、育苗する場所が高温になりすぎないように、必要に応じて換気も行いましょう。発芽して1週間ほど経過した頃から、周囲の環境への順化を促すために、夜間の温度を16~18℃に下げて管理します。

育苗箱の場合は、1枚目の本葉が出始めたら、苗の間隔が2cm程度となるように間引きを行います。株が混み合っていると、病害虫が発生しやすくなったり、株の生育が阻害されたりするので注意が必要です。

葉が触れあわない程度を目安に、茎が細い株や葉の形が悪い株などを間引いていきます。株と株の間に十分なスペースが確保できれば、根が太く育って定植後の生長も期待できるでしょう。

【移植・鉢上げ】接ぎ木は晴天が続いたタイミングで

鉢上げ後のナス苗

kari / PIXTA(ピクスタ)

2枚目の本葉が出始めたら、15cm(5号鉢)ポットに1本ずつ苗を移植します。苗の生育が順調であれば、播種から約1ヶ月後が移植の目安です。移植後の土壌によくなじむよう、移植前後に十分灌水するようにします。

移植する際は苗の根を傷つけないよう、慎重に作業を進めましょう。また、葉が重なり合って光合成を妨げないように、ポットの間隔を十分に確保することが大切です。

台木・穂木の本葉が5枚程度になったら、青枯病と半身萎凋病の防除対策として接ぎ木を行います。台木と穂木の活着をよくするため、接ぎ木する数日前から灌水を控え、晴天が続いたタイミングで接ぎ木作業を行いましょう。接ぎ木後は、黒寒冷紗などで5日程度遮光し、徐々に強い光に慣らしてから黒寒冷紗を取り除きます。

また、接ぎ木後3~4日間は台木・穂木に時々水を噴霧します。本葉が黄色く変色した場合は、400~500倍の液肥を施用します。

【ほ場の準備】土作りは定植の「30日前まで」「15日前まで」の2段階

ナスは土質を選ばないとされていますが、生育には多くの肥料成分を必要とします。定植後に十分な収量を確保するためには、良質な土作りが欠かせません。

定植の30日前までに、土壌pHが6.5程度となるように、有機資材と苦土石灰を混ぜて耕うんして土作りを行います。苦土石灰の代わりに、硫酸マグネシウムを10a当たり50~60kg施用しても問題ありません。また、有機資材は切りわら又はバーク堆肥を用いるのが一般的です。

土作り後、定植の15日前までに基肥として、チッソ・リン酸・カリを10a当たり20~30kgを目安に施用します。その後、土壌に適度な水分を含んだ状態で、幅1.8~2.0mで畝立てします。

露地栽培の場合は、遅くとも定植の1週間前までにマルチすると、水分と地温を確保でき、苗の根の伸張がよくなります。

【定植】前日と定植直前には十分な灌水を

定植直後のナス 仮支柱を添えている

dorry / PIXTA(ピクスタ)

定植に適した時期は、苗の本葉が7~8枚になり、一番花の花蕾ができた頃です。最低気温が10℃以上となり、晩霜の心配がなくなった頃が目安となります。苗と土壌が活着しやすくなるよう、定植作業は晴天日の午前中に行います。

必要な苗は、10a当たり800~1,000株が目安です。定植前日の夕方に、鉢に十分灌水し、定植前にも植穴にたっぷりと灌水しておくようにします。

定植時は深植えせず、鉢土の植えが畝面から少し出る程度にして、土壌の間にすき間ができないよう細土を詰めます。定植後に苗が倒れないよう、長さ50~80cmの仮支柱も設置しておきましょう。

活着まで約7~10日かかるため、根鉢が乾かないように手で灌水します。活着が思わしくない場合は、1番果を摘果するか、薄めの液肥を施用して草勢の回復を試みましょう。

整枝されたナス

ももぞう / PIXTA(ピクスタ)

長期にわたって良質なナスを収穫し続けるためには、育苗の段階から温度や水分の管理徹底が大切です。根が太く生長するよう、必要に応じて間引きも行うようにします。

市販の苗にも病害虫に強いなどのメリットがありますが、自家育苗には的確な育苗管理によって、作物の品質と収量を高められる可能性が秘められています。市販の苗と比べてコストも抑えることができるので、自家育苗に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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舟根大

舟根大

医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。

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