【ナスの整枝方法】収量最大化のための仕立て方と栽培管理のポイント
ナスは長期間にわたって収穫できますが、品質と収量を最大化させるには適切なタイミングで整枝作業を行うことが重要です。支柱の仕立てや摘葉・追肥といった栽培管理を適切に行うだけでも、着果量をコントロールできます。この記事でナスの整枝・摘葉や栽培管理のポイントを確認して、収量最大化を目指しましょう。
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ナス栽培では日照量が品質や収量を左右するため、計画的に整枝などの栽培管理を進めていく必要があります。まずは、ナス栽培で定植後の整枝が重要な理由を確認してみましょう。
ナス栽培で定植後の整枝が重要な理由
ベーやん / PIXTA(ピクスタ)
ナスの整枝では主枝と2~3本の側枝を仕立てて、わき芽や残りの側枝を取り除きます。ナスの生育期間は長いので、着果を促進して栽培期間中の収量を増やすためには定植後の整枝作業が重要です。
整枝せずに側枝を放置すると株全体に日光が当たらず、着果不良や徒長の原因になります。通風も不十分となるため、病害虫の発生によって収量や品質が低下するリスクも高まります。
また、着果が特定の側枝に集中すると着果負担が増し、草勢が弱まってしまいます。草勢が落ちると側枝が果実の重さを支えきれなくなるため曲がり果が多くなり、出荷できる量も減少します。
整枝作業を定期的に行うことで病害虫の発生リスクを減らすと同時に、ナスの収量・品質の向上につながります。さらに、側枝を適正な量に保つことで効率的にほ場管理を進められ、生産性も高まります。
ナス栽培における仕立て方や整枝、摘葉のポイント
栽培期間中の草勢を保って高品質のナスを収穫するためには、定植後の誘引はもちろん、生育状況に合わせた整枝・摘葉が欠かせません。誘引にはいくつかの方法がありますが、3本の支柱で仕立てる方法が主流です。支柱の仕立て方や整枝・摘葉を行う際のポイントを解説します。
支柱は3本仕立てで枝を誘引
定植後1ヵ月前後が経過し、草丈が50cm程度になったら枝の誘引を行います。
ナスの施設栽培 ハウスの梁からひもを吊す仕立て
hamahiro / PIXTA(ピクスタ)
施設栽培の場合は、ハウスの梁などを利用して畝の両側に番線を張り、番線からひもをつるして主枝を巻きつけて誘引します。
ナスの露地栽培 典型的なV字仕立て
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
露地栽培の場合は、草勢を保って品質を安定させるためには支柱の利用が効果的です。主枝と側枝2本の3本仕立てで支柱を組めば、枝の間に空間ができてほ場管理もしやすくなります。側枝を選ぶ際は、一番花の下で勢いよく育っているものを選ぶようにしましょう。
主枝がまっすぐに伸びるように、主枝1本ごとに支柱を立てていきます。主枝を基準としてV字形に支柱を組み、側枝が左右にバランス良く伸びるように支柱と側枝をひもで軽く結びます。きつく結ぶと側枝の生育が妨げられるのでご注意ください。
ナスの露地栽培 支柱の間に張ったビニールテープに誘引する仕立て
hamahiro / PIXTA(ピクスタ)
畝と並行する形で2~3m間隔でV字形に支柱を立てて、支柱の間に張ったビニールテープに誘引してもよいでしょう。テープに誘引する場合は、20~30cm間隔で地面と水平になるようにテープを張ります。
枝を誘引することで、枝や果実の重みで枝が垂れ下がるのを防げるのはもちろん、雨や潅水時に泥がはねてナスに病原菌が付着するリスクも軽減できます。曲がり果や作物の傷みも減らすことができ、品質・収量の向上にも効果的です。
整枝は「一芽切り返し」で日照量を確保
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
主枝・側枝の生長度合いに応じて、整枝を行います。初回の整枝では主枝と2本の側枝に養分が集中するよう、一番花より下のわき芽をすべて摘み取ります。
2回目以降の整枝では、細めの側枝を間引く形で整枝して収量を重視する方法もありますが、品質の高い果実を収穫するためには「一芽切り返し」が効果的です。一芽切り返しでは、収穫が終わるまで以下の工程を繰り返し行います。
(1)側枝が伸びて花が蕾になったら、花の上の葉を1枚残して摘心する
(2)果実を収穫後、主枝に近いわき芽を1つだけ残してその先を切り戻す
主枝が背丈より高くなった場合は、手の届く範囲の摘心で問題ありません。一芽切り返しを繰り返すことでナスの過繁茂を防ぎ、日照量を確保できます。着果量も適正化されるため、果実の品質低下の原因となる成り疲れや肥料不足・水分不足の防止にもつながります。
なお、主枝から果実を収穫する場合は切り返しを行いませんが、収穫と同時に果実のすぐ上の葉を取り除くようにします。
適切な摘葉で通気性を保ち病気を防ごう
田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)
葉が重なり合ったり株元に影ができたりするなど、日当たりが不十分な部分を見つけたら摘葉を行います。光合成を行っている葉を必要以上に摘葉すると生育に支障をきたすので、1枝当たり1~2枚程度にとどめるようにしましょう。以下のような葉を中心に摘葉してください。
(1)重なり合っている葉
葉が重なっていたり混み合ったりしている部分があれば、古い方の葉を摘葉します。果実のすぐ上の葉は、果実に栄養を送る役割を持っているので可能な限り摘葉を避けます。
(2)役目を終えたと考えられる葉
しおれた葉や黄変した葉を中心に摘葉します。果実から数えて2~3枚分は果実の生育に必要な葉なので、4枚目より下の葉を摘葉しましょう。
(3)病害虫の兆候がある葉
害虫が寄生している葉や病斑が現れている葉は、病害虫のまん延を防止するために摘葉しておきましょう。摘葉に使ったハサミは使い回さず、消毒するなど慎重に手入れするようにします。
適切なタイミングで摘葉を行うことで、株全体の通気性と日当たりが確保されます。病害虫の発生を抑制し、収量・品質の向上も期待できるでしょう。
定植後の栽培管理に関するその他のポイント
ナスの定植後に品質の良い果実を収穫し続けるには、追肥や温度管理などの栽培管理が重要です。一番花を順調に着果させることで成りぐせがつき、収量増加も期待できるでしょう。定植後の栽培管理のポイントも紹介します。
追肥
Ystudio / PIXTA(ピクスタ)
ナスは数ヵ月間にわたって果実や茎・葉を成長させるため、収量に応じた追肥が必須です。最初は一番果の収穫時期に、それ以降は10~14日程度の間隔で10aあたりの窒素成分が2~3kgになるように施肥します。
ナスを1,000kg収穫するには窒素3.4kg・リン酸1.0kg・カリ5.7kgが必要とされています。収量から逆算して、肥料不足にならないよう追肥しましょう。
また、マグネシウムが不足すると葉脈が黄変して樹勢が弱り、果実の品質低下につながります。対策としては、水200Lに対し硫酸マグネシウム1kgの割合で希釈し、着果前の段階から数回葉面散布するのが有効です。
温度管理
hamahiro / PIXTA(ピクスタ)
ナスは高温性の作物ですが、品質・収量を安定させるためには生育適温にあわせた温度管理が重要です。生育適温は昼間が23~28℃、夜間は16~20℃です。昼間の温度が高すぎると赤果・青ベタ果の発生が多くなり、5℃以下の低温が続くと石ナスの発生しやすくなります。
そこで、ハウス栽培の場合は日中の温度が30℃を超えないよう、必要に応じて換気を行ってください。冬場などの寒い時期は夜間の温度が8~12℃になるように加温します。
露地栽培の場合は、定植後に低温や霜による生育阻害が起こらないよう、ビニールマルチやトンネルで保温しましょう。
着果促進
定植後に草勢のバランスをとり、収量の安定を目指すには一番花を確実に着果させることが大切です。着果促進は、ホルモン処理またはハチ交配によって行います。
ホルモン処理を行う場合は「トマトトーン」の50倍溶液を使用し、開花当日に散布します。同じ花にホルモン処理を行うと果実の品質低下につながるため、溶液に食紅を混ぜるなど処理状況がわかるようにしておくことが重要です。
※ホルモン処理に用いる「植物成長調整剤」は農薬です。使用に当たっては、必ず「農薬登録情報提供システム」で使用時点での登録を確認し、ラベルをよく読み、用量・用法を守って使用してください。
また、ハチ交配を行う場合はミツバチ・マルハナバチが利用できます。10a当たり巣箱1~2箱を導入し、ハチが花を訪れたかどうかはバイトマーク(雄しべの先が茶色くなっている)で確認します。マルハナバチで交配すると果肉が硬くなるものの、曲がり果の発生が少なくなる傾向があります。
NUS / PIXTA(ピクスタ)
ナスは定植後に整枝することで果実に肥料分が行き渡りやすくなり、品質・収量の向上が期待できます。整枝をスムーズに行うためには、3本仕立ての支柱で主枝・側枝の誘引が欠かせません。整枝とあわせて摘葉を行えば日当たりと通気性が確保でき、病害虫の発生リスクも軽減可能です。
また、ナスの収穫可能期間は長期にわたるため、収量に応じた追肥も実施しましょう。
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舟根大
医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。