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ナスの半身萎凋病対策のカギは土壌消毒!特徴や防除方法

ナスの半身萎凋病対策のカギは土壌消毒!特徴や防除方法

ナス半身萎凋病は、まず葉など半身に症状が現れ、病状が進展すると枯死に至ることもあります。典型的な土壌伝染性の病害であり、土壌消毒などで原因菌の密度を下げることが防除の基本です。この記事ではナス半身萎凋病の被害と発生条件、防汚方法を紹介します。

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ナスの主要病害の中でも半身萎凋病は感染が拡大すると大きな被害をもたらすことで知られています。半身萎凋病にかかると最終的に株が枯死してしまい、まったく収穫できないというケースも珍しくありません。

そこで本記事では、半身萎凋病の特徴や発生条件、具体的な防除対策について紹介していきます。

ナスの半身萎凋病の特徴

栽培作物を病害から防ぐには、「どのような症状が出るか」や「なぜ発生するのか」を知っておくことが大切です。まずはナスの半身萎凋病の特徴を紹介します。

ナス 半身萎凋病 発病株

ナス 半身萎凋病 発病株
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

細菌による土壌伝染性の病害

半身萎凋病を引き起こすのは、カビの仲間であるバーティシリウム・ダーリエ(Verticillium dahliae)という糸状菌です。この糸状菌はナス以外にも、トマトやピーマン、ブドウなど、さまざまな作物に被害をもたらすことで知られています。主に定植した苗の根から侵入し、導管を通って徐々に株全体を侵食していきます。

株を侵食していく過程では茎中や罹病葉に多数の微小菌核を作り、それが伝染源となって感染を拡大させていきます。

特に葉身の基部や分枝部など、導管が密に存在する部分に糸状菌が定着しやすいのが特徴です。定着した糸状菌は導管を塞いでしまい、それによって株の半身だけに症状が現れやすい傾向です。それが名前の由来となっています。

ナスの維管束 健全株(左)・半身萎凋病株(中)・青枯病株(右)

ナスの維管束 健全株(左)・半身萎凋病株(中)・青枯病株(右)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

半身萎凋病は典型的な土壌伝染性の病害であり、菌核の生存期間は適した条件が整えば3年以上といわれています。一度発生すると長期間にわたって被害を及ぼす恐れがあるので、安定した収量を求めるには防除がとても大切です。

基本的に病原菌の密度が高いほど発病リスクも高まるので、栽培初期からほ場管理の徹底が重要になります。

被害と発生条件

半身萎凋病に感染すると青枯病と同じような萎凋症状が見られます。導管の褐変はやや薄く、発病初期を中心として株の片側だけに現れることが多いのも特徴です。

病原の糸状菌は根から株に侵入して発病するため、下部から症状が現れます。初期の段階では下葉2~3枚程度に、葉の片側だけが黄化して萎れが起こります。

ナス 半身萎凋病 生育初期発病株

ナス 半身萎凋病 生育初期発病株
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

また、日中になると葉のふちが巻き上がる症状が見られるほか、結果しにくくなるのも特徴です。病状が進行すると、萎凋症状が徐々に株全体に広がっていき、最終的には枯死に至ります。

ナス 半身萎凋病 半身の葉が日中しおれる

ナス 半身萎凋病 半身の葉が日中しおれる
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

半身萎凋病が発生しやすい条件は、糸状菌の増殖が活発になる条件が整ったときです。具体的には、「地温22~28℃」「湿潤状態」「日照不足」が挙げられます。基本的にはカビが好む、ジメジメした暖かい環境で発病しやすいと考えておきましょう。

一方で、18℃以下の低温や30℃以上の高温では一時的に病勢が衰えるケースが多いです。そのほか、根の傷も糸状菌が株に侵入しやすい原因となり、発病を助長するので気をつけなくてはいけません。条件が整えば露地栽培や施設栽培といった栽培形態にかかわらず発生する可能性があります。

ナスの半身萎凋病の防除方法

ナスの半身萎凋病は、典型的な土壌伝染性の病害であり、原因菌の密度を下げることが防除の基本です。ここからはナスの半身萎凋病に有効な対策を3つ紹介します。

1.土壌管理・消毒が第一

ナス 育苗 ポット鉢上げ後

まっちゃん / PIXTA(ピクスタ)

半身萎凋病は土壌内に含まれる糸状菌の密度が高まると発生しやすくなります。そのため、栽培中のほ場はもちろん、育苗中の土壌にも気を配らなくてはいけません。育苗の際には必ず無病培土を用い、ほ場に病害を持ち込まないような工夫をしましょう。

マルチングによる土壌消毒

daichi_takara - stock.adobe.com

ただし、どれほどほ場内に病害を持ち込まないように気をつけていても、すべてのリスクを防ぐことは困難です。もしも前作で半身萎凋病が発生してしまった場合は、そのほ場で太陽熱消毒や還元消毒を実施しましょう。

また、「ガスタード微粒剤」や「クロルピクリン錠剤」を用いた土壌消毒も防除に有効です。ガスタード微粒剤は、10a当たり20〜30kgを目安に播種又は定植21日前までに1回、 ロータリーなどを用いて土壌内に混和します。

クロルピクリン錠剤は、1平方m当たり10錠を地表面に散布処理します。いずれの方法も処理後はマルチやビニールなどで土壌を被覆し、一定期間放置してガスが抜けてから次の作業を行うようにしてください。

また、半身萎凋病の防除においては、「発病株は速やかにほ場外へ持ち出して処分する」「根の傷への対策を怠らない」の2点も重要です。特に根の傷は発病を助長する可能性が高いことから、土壌内の湿度を適切に保つことや、センチュウ類の防除も重要です。

ここで紹介した農薬は、2022年4月14日現在、ナスの半身萎凋病に登録のあるものです。農薬を使用する前にラベルの記載内容をよく確認し、使用方法を守って正しく散布してください。また、地域によって農薬の使用について決まりが定められている場合があります。確認のうえ使用ましょう。

ナスのほ場 定植直後

dorry / PIXTA(ピクスタ)

2.耐病性台木を用いた接ぎ木栽培

ナスの接ぎ木苗

アオフジマキ / PIXTA(ピクスタ)

半身萎凋病に対しては、耐病性のある台木を使用した栽培も防除に有効だとされています。具体的には、「トナシム」や「トルバム・ビガー」といった台木品種を用いた接ぎ木栽培です。

トナシムは接ぎ木までの生育が遅くなりがちである点に注意しなければいけませんが、葉裏にトゲがないことから台芽とりや接ぎ木が容易です。夏秋栽培のとげなし千両二号や早生大丸などの穂木と相性がよいとされています。

トルバム・ビガーも接ぎ木までの生育があまり早くないのが難点ですが、半身萎凋病以外に青枯病にも耐病性があるのが魅力です。こちらも夏秋栽培ではとげなし千両二両や筑陽といった穂木の品種と相性がよいです。

また、近年では複数の台木を利用した、「多段接ぎ木法」による防除にも注目が集まっています。

農研機構 中央農業総合研究センターの試験研究によると、台木にトナシム、中間台木に青枯病に強い抵抗性を示す品種の「台太郎」を接いだ苗で栽培したところ、半身萎凋病の防除効果はトシナム単独の接ぎ木と同等で、青枯病に対してより高い防除効果を示したとのことでした。


出典:農研機構 中央農業総合研究センター「多段接ぎ木法を用いたナス科果菜類の複合土壌病害の防除」

新潟県農業総合研究所の試験研究でも、台木にトシナム、中間台木に台太郎を用いた多段接ぎ木で、半身萎凋病・青枯病ともに発病を軽減できたと報告されています。

出典:新潟県農業総合研究所 基盤研究部 園芸研究センター「多段接ぎ木法によるナス青枯病と半身萎凋病に対する発病抑制効果(農総研便り 42号)」

自家育苗で接ぎ木栽培をされている方、接ぎ木苗を購入されている方は、多段接ぎ木について自治体の農政部署や研究機関に相談してみてください。

3.ナス科作物の連作回避

半身萎凋病のような土壌伝染性の病害は、発病を繰り返すごとに土壌に病原菌が蓄積し、密度が高まります。それによって被害が拡大しやすくなるため、ナス科作物の連作は避け、輪作体系を組むことも検討しましょう。

例えば、半身萎凋病を引き起こす原因の微小菌核は、湛水によって死滅することが知られています。そのため、水田との輪作を行うことで、半身萎凋病による被害を抑えられるケースがあります。

また、群馬県農業技術センターの試験研究によると、ブロッコリーとの輪作でもナス半身萎凋病の防除に効果があるというデータが示されました。試験では対策をしていないほ場と比べて、ブロッコリーを栽培したほ場では半身萎凋病の発病を53%にまで抑えられています。

出典:
群馬県農政部 広報誌「ぐんまの農業研究と普及活動 」所収「前作としてブロッコリーを作付けすることによるナス半身萎凋病の発病抑制」
群馬県農業技術センター 環境部「ナス半身萎凋病を抑制する輪作体系の実証」(農林水産省 消費・安全局 第21回病害⾍防除フォーラム資料)

群馬県 ブロッコリーの露地栽培

TATSU / PIXTA(ピクスタ)

ナスの半身萎凋病の発病初期は、株の半身に特徴的な症状が現れ、病状が進むにつれて株全体が萎れていき、最終的には枯死することもあります。典型的な土壌伝染性の病害であり、発生ほ場で連作すると、病原密度が高まってしまいます。

半身萎凋病による被害を拡大させないために、本記事で紹介した土壌消毒や台木の使用といった病原密度を低くする対策を実施して安定経営をめざしましょう。

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中原尚樹

中原尚樹

4年生大学を卒業後、農業関係の団体職員として11年勤務。主に施設栽培を担当し、果菜類や葉菜類、花き類など、農作物全般に携わった経験を持つ。2016年からは実家の不動産経営を引き継ぐ傍ら、webライターとして活動中。実務経験を活かして不動産に関する記事を中心に執筆。また、ファイナンシャルプランナー(AFP)の資格も所持しており、税金やライフスタイルといったジャンルの記事も得意にしている。

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