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ナス農家は儲かる? 露地・施設別の年収や高収入をめざすポイントを紹介

ナス農家は儲かる? 露地・施設別の年収や高収入をめざすポイントを紹介
出典 : スミレ/ PIXTA(ピクスタ)

ナス栽培で儲かる経営をめざすには、露地栽培・施設栽培それぞれの経営の特徴に合わせた工夫をする必要があります。本記事では、高収量を実現した農家の実践事例を交えながら、それぞれの収支構造や、注意点などについて解説します。

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ナスは、消費者には夏野菜としてイメージされがちですが、実際には年間を通して出荷されています。露地と施設では導入コストも収支構造も異なるため、それぞれの特徴を知り、自身の経営を考えることが重要です。

ナスの反収は増えている!

農林水産省の「作物統計|作況調査(野菜)」によれば、2021年産のナスの作付面積は全国で8,260ha、収穫量は29万7,700tでした。

ナスの作付面積はこの10年、約17%減少しているのに対し、全体の収穫量は約8%減にとどまっています。これは、10a当たり収量が、各産地の努力によって増えているためです。

ナスの作付面積と収穫量の推移

出典:農林水産省「作物統計調査|作況調査(野菜)|確報|令和3年産野菜生産出荷統計」及び「品目別(季節区分別)作付面積、収穫量及び出荷量累年統計」よりminorasu編集部作成

ナスの10a当たり収量の推移

出典:農林水産省「作物統計調査|作況調査(野菜)|確報|令和3年産野菜生産出荷統計」及び「品目別(季節区分別)作付面積、収穫量及び出荷量累年統計」よりminorasu編集部作成

10a当たり収量を10年前と比べてみると、2011年の10a当たり収量は3,224kg、2021年は3,604kgで、+約320kg、約12%増えています。

冬春ナスは出荷期間が長いこともあり、11,010kgと11tを超えており、夏秋ナスは2,534kgでした。冬春ナスはこの10年で11%、夏秋ナスは9.6%増えています。

主な産地を冬春ナスと夏秋ナスに分けて見てみましょう。

2021年産 ナスの収穫量ランキング

冬春ナス収穫量夏秋ナス収穫量
1位高知県3.79万t群馬県2.03万t
2位熊本県2.50万t茨城県1.77万t
3位福岡県1.41万t栃木県1.03万t
4位愛知県0.73万t熊本県0.83万t
5位群馬県0.71万t埼玉県0.75万t
その他2.31万tその他11.92万t
全国計11.45万t全国計18.32万t

出典:農林水産省「作物統計調査|作況調査(野菜)|確報|令和3年産野菜生産出荷統計」よりminorasu編集部作成

施設栽培の冬春ナスの収穫量1位は高知県、夏秋ナスの1位は群馬県です。次の章では高知県と群馬県の経営モデルを見ていきます。

ナス農家の売上(粗利益)は? 利益(農業所得)は?

冬春ナスの収穫量1位の高知県、夏秋ナスで1位の群馬県の収支モデルを紹介します。

施設ナス農家の収支例

高知県安芸市 ナスの施設栽培

hamahiro / PIXTA(ピクスタ)

冬春ナスの生産量が多い高知県の経営モデル(促成ハウス加温栽培)と農業経営統計の施設ナス作部門の収支を見てみましょう。

2021年
農業
経営統計
高知県
新規就農
センター
経営面積30a
作付延べ面積3,180a
生産量42.3t54.0t
1kg当たり販売価格342円215円
粗収益1,447.5万円1,174.0万円
経営費1,010.5万円766.0万円
所得437.0万円408.0万円
所得率30.2%34.8%
労働時間5,244時間5,907時間

※高知県の生産量は、室戸市の10a当たり18,000kgを採用して算出
出典:高知県「主要営農モデル」(施設ナスの項)、同「産地提案書」所収の室戸市の提案書、
農林水産省「令和3年 営農類型別経営統計|個人経営体の部門収支(野菜作、果樹作、施設ばら作)」よりminorasu編集部作成

両方からいえるのは、所得率が30~35%程度を見込める点です。また、9月下旬から6月頃まで収獲・調整・出荷が続く冬春ナスでは、家族と雇用を合わせて5,000~6,000時間がかかることもわかります。

もちろん、10a当たり収量によって粗収益は変わりますし、経営費も社会情勢によって変化します。また、経営面積によってかかる初期費用やその後の減価償却費も変わってきますが、30a程度の規模のハウス栽培の参考として見てください。

露地ナス(夏秋ナス)農家の収支例

ナスの露地栽培に関して、最も生産量の多い群馬県の指標を参照し、ナス農家の所得、売上高などを紹介します。

群馬県西部農業事務所普及指導課がまとめた「露地ナス産地の生産安定」によると、平成29(2017)年の「高崎安中地域の栽培状況」は、栽培面積9.9ha、生産者115戸となっています。

ここから、一戸当たりの平均経営面積を80a程度と仮定したうえで、群馬県令和年農業経営指標を参照すると、計算上の数値ではありますが、以下のような経営モデルが想定できます。

・期待できる農業所得は11,176,000円
・年間の総売上高は19,641,476円
・支出合計8,465,476円

このモデルにおける年間総労働時間は6,648時間程度、想定されるナスの収量は年間56,000kgです。

出典:
群馬県農政部ぐんまブランド推進課運営「ぐんまアグリネット」内「農業経営指標|R2農業経営指標/単位当たり」所収「R2農業経営指標/単位当たり」
群馬県「農政部 | 技術支援課 | 令和元年度 普及活動外部評価(西部)の結果について|外部評価結果|露地ナス産地の生産安定|課題1説明資料」所収「露地ナス産地の生産安定」

▼露地栽培ナスの収益性については、以下の記事もご覧ください。

ナス農家が高収入をめざすためのポイント

ナス 収穫 ハウス栽培

KY/ PIXTA(ピクスタ)

ナス農家が高収入をめざすためには、収量を増加することが必要です。適切にポイントを押さえることで、10a当たり20tの収量を超える農家も報告されています。

以下では、高収量を実現した農家の実践のポイントについて紹介します。

作業工程の改善

ナスの施設栽培では日本一の生産量を誇る高知県では、栽培の作業工程を改善することにより高収量を実現しています。

作業工程の改善として、農作業の省力化や身体的負担軽減のための新しい整枝方法と環境制御技術の導入が事例として報告されています。

整枝方法については、促成ナス栽培で実証試験を行った結果、慣行地区と変わらない収量を実現した事例が報告されました。

さらに、環境制御技術を導入した農家の約7割が増収を実現しているほか、反収20tを超える事例も報告されています。

出典:
安芸農業振興センター 農業改良普及課・室戸支所「ナスの「カイゼン」の取組みについて」
独立行政法人農畜産業振興機構「高知県 JA高知県安芸地区 ~全国一のなす生産量と機能性表示食品「高知なす」の産地~」

健苗の育成、優良苗の購入

ナスの高収量を実現するうえで、健苗の育成と優良苗の購入は不可欠な要素です。

高知県農業技術センター・営農機械科が、ナス農家と栽培指導関係機関を対象にアンケート調査を実施した結果、収量が高い農家ほど健苗の育成、優良苗の購入に力を入れていたことが判明しました。

また、同調査では単位面積当たり収量が高くなるに従い、労力に合った適正規模の評価も高くなる傾向がみられます。

出典:農研機構 西日本農業研究センター「推進会議推進会議| 近畿中国四国農業研究成果情報|1997年度(平成9年度)|ナス栽培農家における収量向上対策の有効性評価」

ナスの栽培には大きく露地栽培と施設栽培の2種類の栽培方法があり、それぞれ設備投資やコスト、収穫時期など注意すべきポイントが異なります。

高収量を実現するためのポイントを押さえつつ、自身の経営状況や環境に応じた栽培方法を選択することで高収入を実現しましょう。

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大森雄貴

大森雄貴

三重県伊賀市生まれ。京都を拠点に企業・団体の組織運営支援に携わった後、2020年に家業の米農家を継ぐためにUターン。現在は米農家とライターの二足の草鞋を履きつつ、人と自然が共に豊かになる未来を願いながら、耕作放棄地の再生、農家体験プログラムの実施、暮らしを大切にする経営支援などに取り組んでいる。

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