
熊本県上益城郡で日々農業に励む、JAかみましき青壮年部 のメンバーたち。仲間と共に学び合いながら、スマート農業を取り入れることで、効率化と収量アップを実現しています。地域ぐるみで支え合う農業の形、そしてこれからの農業の可能性について語ってもらいました。
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スマート農業に挑む若手6人組

▲左から木田さん、松永さん、林田さん、木村さん、堀部さん、藤瀬さん
熊本県のほぼ中央に位置する上益城郡。湧き水が豊富で、農業用水に恵まれたこの地域で、スマート農業に取り組む6人の若手農家たちに話を聞きました。
- 木田健剛さん:米、麦、大豆を育てながら、冬場は近所でうなぎ釣りを楽しむ。
- 松永裕治さん:米、麦、大豆に加え、アスパラやニンニクも栽培。長い休みには家族で長距離ドライブへ。
- 林田総一郎さん:米、麦、大豆を栽培。趣味は草野球。もうすぐ生まれる子どものためにベビーグッズを準備中。
- 木村裕也さん:米、麦、大豆のほかに、ニンニクやタマネギ、じゃがいもも少しずつ栽培。温泉巡りが趣味。
- 堀部龍一さん:米、麦、大豆、白菜を栽培。休日は子どもと一緒に熊本駅まで新幹線を見に行くのが定番。
- 藤瀬健さん:米、麦、大豆、トマトを育てる。週末は息子のサッカーの応援に熱が入る。
仲間と支え合う、上益城の農業
──みなさんは、どんな集まりなんですか?
松永さん:JAかみましき青壮年部のメンバーですね。ほぼ毎日、田んぼや畑で顔を合わせています。農作業の合間にちょっと話したり、情報交換のために集まることもよくあります。
──すごく仲が良さそうですね!
松永さん:みんなおしゃべり好きなんですよ(笑)。集まると、自然と農業の話になります。「消毒、どうやってる?」とか「草刈り、どのくらいやった?」とか、情報交換がめちゃくちゃ役に立ちます。

▲インタビュー中も和気あいあいとした空気が流れる若手農家のみなさん
──農家同士のつながりが強いのは、上益城の特徴なんですか?
堀部さん:そうですね。収穫した作物はみんなで共選場に持ち込むので、「地域全体で品質をそろえよう!」という意識が強いんです。そのために、技術や情報を共有するのは当たり前。青壮年部に限らず、地域ぐるみで仲が良いんです。
木田さん:作物の特性もあるかもしれません。米・麦・大豆って露地栽培なので、みんなの作業が目に入りやすいんですよ。「あ、先輩農家さんが大豆を植え始めたな。うちもそろそろかな?」みたいに、自然と学び合う雰囲気がありますね。
──まさに「地域ぐるみの農業」ですね!
それぞれの農業との出会い
──みなさんが農業を始めたきっかけを教えてください。
堀部さん:うちは祖父母が農家で、小さい頃から手伝っていたので、自然と「継ぐんだろうな」って感じでした。農大に進学したのですが、卒業する頃に祖父が急に「もう農業やめる」って言い出して、慌てて就農しました。
藤瀬さん:うちは両親が農家でしたが、若い頃は「絶対やらない!」と決めていて、8年くらい会社員をしていました。でも、地元の産業を支えたいという気持ちが芽生えてきて…。会社の社長がよく「ピンチはチャンス」と言っていたのですが、農業の高齢化や人手不足はまさにピンチ。でも、そこに挑戦すればチャンスになると思い、就農しました。
──就農して、大変だったことはありますか?
林田さん:私は親元就農でしたが、農業を始めて1か月で父が急逝してしまい、突然田んぼを引き継ぐことになったんです。機械の操作も苗の植え方も何も分からなくて…。そんなときに青壮年部の仲間が支えてくれて、本当に助かりました。
──青壮年部のつながりが、大きな支えになったのですね。
藤瀬さん:この地域は、みんなオープンで、情報を教え合うのが当たり前。新しい機械を導入したら、「それ何? 使い心地はどう?」ってすぐに聞きに行くし、良いものはみんなで広める。そういう文化が根付いていますね。

▲就農のきっかけを語る藤瀬さん
最先端技術で農業が変わり始めた
──皆さんはスマート農業をどのように取り入れていますか?
藤瀬さん:私はハウス栽培で環境制御システムを使っています。湿度や温度をデータで管理して、自動で最適な状態を保ってくれるので、作業の手間がかなり減りました。導入する前は、温度が上がりすぎないように何度もハウスを見回って換気したり、細かい調整を手動でやっていたと思うのですが、今はほとんどシステムに任せられるので、かなり楽ですね。一度使うと、もう手放せないですよ。それに、収量がすごく伸びました。ハウス栽培の経験が少なくても、最適な環境でしっかり収量を増やせるので、コストをかける価値は十分にあると思いますね。
堀部さん:この前、直進アシスト付きのトラクターを試したのですが、これがすごく良かったです。操作しなくてもちゃんとまっすぐ進むんですよ。それに、使い方はYouTubeで学べるので、娘が高校を卒業して農業を始める時も、いちいち教えなくても自分で勉強できると思います。スマート農業を取り入れると、指導の手間も減って楽になりますね。

▲実際に農作業で活用している自動運転トラクター
──最近では、自動給水装置やドローンの活用も進んでいると聞きましたが、どんな効果を感じていますか?
松永さん:私は「Aquaport」という水田用自動給水機を導入しました。以前は、毎日必ず水田を見に行って水の量を確認しながら給水していたのですが、今は家で水位をチェックできるので、わざわざ見に行く必要がなくなりました。本当に楽ですね。まだ気になって水田の様子を見に行ってしまいますが、実際は週に1回くらいの確認でも十分だと思います。
堀部さん:ドローンも大活躍です。ほ場に入らずに作業できるので、麦を踏んでしまう心配がないですし、粒剤散布機を使えば水を汲む手間も省けるので、将来的にはもっと楽になると思います。

▲スマート農業の魅力を語る堀部さん
ザルビオで感じた手応え
──スマート農業の一つとしてザルビオも導入されているそうですが、実際にどんな変化がありましたか?
松永さん:ザルビオの可変施肥を使ったほ場と通常のほ場を比べたら、1反あたり100キロも多く収穫できました。これはかなり期待できる技術ですね。
堀部さん:地力マップもすごく便利です。今まで「なんとなく収量が少ない気がする」と思っていた場所が、実際に地力が弱いと分かったんです。最初から地力を把握できれば、営農の計画が立てやすくなりますね。

▲スマホでも確認できるザルビオの生育マップ
──これからザルビオをどのように活用していきたいですか?
堀部さん:病害アラートを活用したいです。赤さび病の発生タイミングを通知してくれるので、自分たちの予測と比較してどれくらいの差があるのか確かめたいですね。
藤瀬さん:ザルビオは農作業の負担を減らすだけでなく、収量もアップしてくれる点が大きな魅力です。オートトラクターなどは作業を楽にしてくれますが、収量を増やすわけではない。これからのスマート農業は、労力軽減だけでなく、収量向上にもつながる技術が重要になると思います。可変施肥などの技術には、特に期待しています。
──スマート農業を導入する前と後で、農業に対する意識は変わりましたか?
木村さん:農業のスタイル自体が変わってきていると感じますね。以前は経験や勘が必要だった部分を、データで補えるようになり、誰でも同じ条件で農業を始められるようになっています。これは便利ですが、一方で「誰でもできる農業」になっていくことに少し不安もあります。
松永さん:農業のイメージを変えていきたいと思うようになりました。以前は農業体験の子どもたちに手作業で田植えを体験してもらっていましたが、最近はコンバインに乗ってもらうなど、農業の進んだ一面も伝えるようにしています。

▲タブレットでザルビオを使う木村さん
スマート農業で広がるチャンス
──これからの農業において、スマート農業はどのような役割を果たすと思いますか?
松永さん:スマート農業の魅力をもっと若い世代に伝えたいです。技術を活用すれば、「きつい仕事」ではなく「効率的でやりがいのある仕事」になるので、農業の間口を広げられると思います。
吉田さん:定年後に農業を始める人も増えてくると思います。そういう方々がスマート農業を活用すれば、体力的な負担を減らしながら無理なく農業に関われるのではないでしょうか。
木村さん:これから農業をする人が減っていくと、1人あたりが管理する農地の面積はどんどん広くなります。もちろん、作業の負担が増えるという大変さもありますが、農地が広がる分、スマート農業を活かしやすい環境が整っていくチャンスでもあると思います。

▲春のほ場を背景に立つ若手農家のみなさん
データを活用したスマート農業で、収量の向上や効率的な経営を実現しているJAかみましき青壮年部の皆さん。しかし、ただ技術に頼るのではなく、経験に基づく観察や地域のつながりを大切にしながら、最適な判断を下している姿が印象的でした。
農業人口の減少が進んでいく中でも、「収量を安定させ、より良い作物を育てる」ためには、データを活用した精密な農業が欠かせません。ザルビオの可変施肥や地力マップを使えば、土壌の状態に応じた最適な施肥が可能になり、効率的な農業経営ができます。
従来の経験や勘に加えて、データを活かすことで、農業はさらに進化していくはず。これからの農業を支えるのは、地域の結びつきを大切にしながら、新しい技術にも柔軟に挑戦する姿勢なのかもしれません。
後編では、JAかみましきの組合長と課長 のお二人に、スマート農業への期待をじっくり伺っていきます。
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