【空豆(そらまめ)の連作障害対策】輪作年限や前作・後作に適した作物は?
空豆は、豆類の中でも特に連作障害を起こしやすく、収量への影響が大きい作物です。空豆の連作障害の基礎知識と連作を避ける方法、連作せざるを得ない場合の対策について解説します。
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春から夏にかけて旬を迎える空豆は、豆類の中でも特に連作障害が起こりやすい野菜です。
この記事では連作障害への対策を中心に、空豆栽培のポイントを解説します。
空豆(そらまめ)栽培における連作障害について
豆類は全般的に連作障害を起こしやすく、同じほ場で栽培をくり返すと、生育不良や病害虫などのトラブルが多く発生します。
空豆は豆類の中でも特に連作障害が出やすく収量に大きく影響がでる作物なので、上手に栽培するためには連作障害について理解しておく必要があります。
空豆(そらまめ)に必要な休栽期間
連作障害を回避するには、当然ですが、必要な休栽期間を確保することが基本です。空豆に必要な休栽期間は3~4年程度で、同じほ場では最低でもこの期間をあけながら栽培しなければなりません。
ウイルス性の「えそモザイク病」が発生したほ場では、さらに長めの4~5年以上の休栽期間が必要です。(このウイルス病の伝染は、アブラムシなどによる汁液を介した伝染と土壌を介した伝染があるため)
実際には、農地を数年以上空けておくことはできないので、複数のほ場で科の異なる複数の作物をローテーションする輪作を行います。連作せざるを得ない場合は、土壌消毒や天地返しを入念に行います。(輪作と土壌消毒については後述します)
空豆(そらまめ)の連作障害で発生する症状
連作障害の原因としては、大別して次の3つが考えられます。症状とともに簡単に説明しておきます。
1. 土壌病害
同じ作物を連作すると、その作物が分泌する物質などにより、土壌中の微生物や細菌のバランスが崩れることがあります。その結果、特定の細菌が増えすぎてしまい、葉が緑色のまま急にしおれる「青枯病」や、根に多くのコブができる「根こぶ病」などのさまざまな病害を引き起こします。
2. センチュウ類
「センチュウ類」はどのような土の中にでもいる小さな虫で、腸内細菌のように悪玉と善玉が存在します。連作するとセンチュウ類のバランスも崩れて、ネグサレセンチュウ・ネコブセンチュウ・シストセンチュウなどの、作物に害を与える悪玉が増えてしまいます。
これらの悪玉センチュウは作物の根から侵入し、主に生育不良を引き起こします。成長が遅くなったり収量が減ったりするほか、重症になると作物そのものが枯れてしまいます。
3. 生理障害
作物は種類によって必要な養分が違いますが、同じ作物を連作すると、土壌中の特定の養分が不足したり過剰になったりします。このように土壌の養分のバランスが崩れることで、生育不良や病害虫の被害が発生しやすくなります。
空豆(そらまめ)の前作・後作に適した作物と輪作例
ヨシヒロ/PIXTA(ピクスタ)
前述したように、作物には、それぞれ、連作障害を避けるのに必要な休栽期間があります。休栽期間を確保するために、複数のほ場で複数の作物をローテーションするのが輪作です。
輪作を想定する場合、必要な休栽期間を「輪作年限」といいます。
空豆の輪作年限は3~4年なので、まったく科が異なり、同じ輪作年限かそれよりも短い作物を組み合わせ、空豆が4年1作、5年1作になるように作付け計画を立てます。
また空豆は、水稲の裏作として導入される場合も多いようです。水田は1度水を張ってから排水するため、連作障害が起こりづらいと言われています。
天地返しを行う
天空のジュピター/PIXTA(ピクスタ)
ほ場の土壌を一定の深さまで掘り、深層部の土と表層部の土とを入れかえるのが「天地返し」です。通常はバックホーなどの重機を使って、上層30cmと下層30cmの土を完全に入れかえる「60cm天地返し」を行います。
天地返しを行ったあとは、新たに表層部になった土をロータリーなどで細かく砕土します。土壌を3層に分けて、最下層と表層部を入れかえる「1m天地返し」もありますが、空豆の場合は根張りが浅いので60cm天地返しで十分でしょう。
新たに表層部になった土は栄養分が不足しているため、堆肥や石灰質の投入と、適切な施肥管理による土壌改良が必要です。
土壌消毒を行う
連作障害の原因になる病害虫を除去する方法が土壌消毒で、ほ場環境に合わせていくつかのやり方が選べます。
効果やコストの面から最も一般的に行われているのが、「土壌消毒剤」を使った方法です。クロルピクリンやD-Dなどの土壌消毒剤から、防除したい病害虫に対応したものを選んで土壌に注入します。
土壌消毒剤を用いない方法もあります。
「太陽熱消毒」は、土壌に十分な水分を蓄えてから表面をビニールなどで覆い、太陽熱で土壌の温度を上げて病害虫を除去する方法です。
「土壌還元消毒」は、分解されやすい有機物を土壌に混入してから、たっぷりと水をしみ込ませて太陽熱により加温する方法です。
また直接土壌に蒸気や熱水を注入して、その熱で病害虫を除去する方法が「蒸気・熱水消毒」です。
これらの土壌消毒と天地返しを併用することも、より効果の高い連作障害対策として有効です。
空豆(そらまめ)栽培で発生しやすいそのほかのトラブル
shimanto/PIXTA(ピクスタ)
作物の栽培全般で注意が必要な病害虫は、空豆栽培でも複数発生します。連作障害と関連が深い病害もあるので、病害虫対策はしっかりと立てておくべきでしょう。
ここでは空豆栽培で発生しやすい病害虫と、その対策について簡単に紹介します。
害虫の発生(アブラムシ、アザミウマ類など)
代表的な害虫は「アブラムシ」と「アザミウマ類(スリップス 英名:Thrips)」です。作物の芽・葉・花などから栄養分を吸い取るだけでなく、病害を媒介することもあるため厄介です。
また、アザミウマ類に産卵された空豆のさやは白ぶくれ症を発症し、商品価値がなくなります。
どちらの害虫も光を嫌うため、露地栽培ではシルバーポリマルチを敷くなどの対策を行います。殺虫剤を使う場合は効果が長続きするタイプで、開花期以降に防除を行います。
ウイルス病(モザイク病、えそモザイク病など)
空豆がかかりやすい病害ではウイルス性の「えそモザイク病」と「モザイク病」に特に注意します。感染するとモザイク症状や委縮の症状を起こします。
アブラムシによる吸汁伝染と土壌伝染があり、これが連作を避けなければならない大きな理由にもなっています。
アブラムシによる吸汁伝染を防ぐには、定期的にアブラムシを防除することと、ほ場と周縁の環境を整えておくことが重要です。
具体的には、ほ場内・ほ場周縁の除草を定期的に行いアブラムシの生息場所をつくらない、育苗時の寒冷紗被覆など、アブラムシの飛来を防ぐ対策を行います。
その他の病害・生理障害(赤色斑点病、種皮しみ症など)
糸状菌(カビ)による病害である「赤色斑点病」「褐斑病」などにも注意が必要です。予防策としてほ場の排水性を高め、発生初期に、それぞれの病害と空豆に適用登録がある農薬によって予防的防除を行うことが基本になります。
さやが褐色になる「サビさや」は、赤色斑点病の一症状と考えられていますが、収穫が遅れると発症しやすいので、適切な収穫期を守ることもポイントです。
また、豆の部分に褐色のしみができる「種皮しみ症」は、さやが肥大するときのカルシウム不足が原因の生理障害です。さやの肥大期に乾燥するとカルシウムの吸収が悪くなるので、乾燥が続く場合は充分に灌水を行います。
空豆(そらまめ)の取引価格情報
sarakazu/PIXTA(ピクスタ)
空豆は、旬を感じられる初夏の代表的な野菜の1つであり、ブランドによってはかなりの高値で取り引きされているケースもあります。
東京都中央卸売市場のデータを見ると、例年の空豆の出荷ピークは5月頃で、2018年5月の取引平均価格は1kg当たり492円でした。年間平均価格はおおむね400円台後半から500円台前半を推移しており、比較的安定した市場といえるでしょう。
高品質な空豆を栽培するためには、ここで紹介した知識や方法を活用して、連作障害を回避することが極めて重要です。また、連作障害はほかの作物でも起こり得ることなので、上手な予防方法を確立して安定的な野菜栽培をめざしましょう。
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大澤秀城
福島県で農産物直売所を立ち上げ、店長として徹底的に品質にこだわった店づくりを行い、多くの優れた農家との交流を通じて、農業の奥深さを学ぶ。 人気店へと成長を遂げ始めたさなかに東日本大震災によって被災。泣く泣く直売所をあきらめ、故郷の茨城県で白菜農家に弟子入りし、畑仕事の厳しさを身をもって体験する。 現在は農業に関する知識と体験を活かしながら、ライターと塾講師という2足のわらじで日々歩みを進めている。