「青年等就農資金」とは? 利用条件&メリット・デメリットを徹底解説
新規就農者を支援するしくみの1つに、農業経営を開始するために必要な資金を無利子で借入できる「青年等就農資金」があります。青年等就農資金は返済期間が長く法人も対象になるため、これから農業を始める人にとって利用しやすい融資制度です。この記事では、青年等就農資金の利用条件などをわかりやすく紹介します。
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新規就農を考える人にとって、資金の準備は非常に大きな問題です。借り入れを検討する場合は、返済の負担を小さくする必要があります。その1つの選択肢として、無利子の青年等就農資金を考えてみるとよいでしょう。この記事では、「青年等就農資金」の詳細について解説します。
新規就農をサポートする「青年等就農資金」とは?
mapo/PIXTA(ピクスタ)
日本政府は、2023年度までに40代以下の農業従事者を40万人以上にまで増やすという方針を掲げています。そのための支援策として位置付けられているのが、青年等就農資金の制度です。
新規就農を計画中の人にとって、この制度は力強いバックアップになります。まずは制度の概要と基本要綱について確かめておきましょう。
制度の概要
青年等就農資金は新規就農者を対象に、国が無利子で資金を融資する制度です。実際には国の出資金をもとにして、株式会社日本政策金融公庫が融資に関する諸手続きを行います。資金の使いみちは農業関係に限られ、就農準備に幅広く活用できます。
青年等就農資金を検討するに当たって不安や疑問が生じたら、日本政策金融公庫の窓口機関か、市町村または都道府県の普及指導センター、都道府県青年農業者等育成センターに相談するとよいでしょう。
利用できる人
融資の対象になるのは、認定新規就農者として市町村から青年等就農計画の認定を受けた個人、または法人です。利用できる青年の定義は18歳以上45歳未満ですが、45歳以上65歳未満の人も知識や技能を有していれば、特例として利用できます。
法人の場合は、これらの青年が役員の過半を占めていれば、融資の対象になります。役員の農業経験年数は問われません。すでに農業経営を始めている個人や法人でも、青年等就農計画の認定を受けている場合には、農業を始めて5年以内に限って青年等就農資金の融資を受けることができます。
利用の条件&融資限度額
融資限度額は3,700万円(特認1億円)で、返済終了まで無利子です。返済期間は12年で、据置期間は最大5年以内と設定されています。なお青年等就農資金を利用する際には、融資対象物件を担保とします。
保証人は個人の場合には不要で、法人では必要な場合は代表者が保証人を立てます。運転資金や資材購入費などの資金の使いみちは、経営改善資金計画書で明示しましょう。
青年等就農資金の融資を受けるまでの流れ
HM/PIXTA(ピクスタ)
青年等就農資金の申し込みに当たっての必要書類は、以下の通りです。
・借入申込希望書
・経営改善資金計画書
・認定就農計画の写し
・認定就農計画認定書の写し
これらの必要書類を日本政策金融公庫の窓口か、公庫の受託金融機関に申請します。その後、公庫内や融資機関で審査が行われ、融資が可能と判断された場合は申請者に融資の可否が伝えられます。
もしも融資の条件に問題がある場合は、公庫から市町村に書類が送付され、特別融資制度推進会議で審議を受けることになります。最終的な融資の可否は日本政策金融公庫から申請者に伝えられます。
申請をしてから融資が実行されるまでには、およそ1ヵ月半~2ヵ月ほどかかります。必要書類の準備も含め、余裕を持って計画を立てるとよいでしょう。
注意点はある? 青年等就農資金のメリット・デメリット
Flowersandtraveling/PIXTA(ピクスタ)
青年等就農資金の融資枠は135億円と予算が決まっているものの、融資条件はそれほど厳しくありません。そのため、条件を満たせば多くの農家が利用できる制度だといえます。ではそのメリットとデメリットには、どのようなものがあるのでしょうか?
青年等就農資金のメリット
農家にとってのメリットの1つとして、幅広い用途に活用できることが挙げられます。農業経営で必要な経費のほとんどが、青年等就農資金の対象になっています。
返済期間が最大で17年以内と長いことも(注)、経営への負担を抑えるポイントになるでしょう。また、青年等農集資金では、多額の融資をしてもらった場合でも、保証料が必要ないこともメリットです。
(注)返済期間は12年で、据置期間は最大5年以内
さらに、無利子なので、利子負担を心配することなく返済計画を立てられます。借入担保は融資対象物件だけで、そのほかの資産を担保にする必要はありません。
青年等就農資金のデメリット
青年等就農資金融資による融資に関するデメリットの1つとして、融資の決定が申し込み順に行われることが挙げられます。
毎年国の予算が決まっているため、予算内で募集が締め切られてしまいます。そのため、青年等就農資金を利用したい場合には、準備を早く始め、募集期間内の早いタイミングで申請をする必要があります。
もう1つは農業関係の費用のうち、農地の取得費用は融資の対象外だという点です。農地の取得は、別の融資制度を利用したり自己資金を利用したりすることになるでしょう。
低リスクな資金調達手段としてうまく活用するのがおすすめ
青年等就農資金を利用するうえでは、融資に必要な条件のうち、事業計画が特に重要視されます。必要な場合は事前に指導農業士などに相談して、申請時に意見書を添付してもらうと安心です。
無利子・無担保という条件で、極めて低リスクで融資を受けられる制度ですから、資金が必要な場合は、積極的に活用しましょう。
青年等就農資金の詳細はこちら
青年等就農資金の概要を紹介してきましたが、詳細は株式会社日本政策金融公庫のホームページをご覧ください。
株式会社日本政策金融公庫の青年等就農資金の概要ページはこちら
同 「新規就農に係る融資制度Q&A(よくあるご質問)」はこちら
新規就農時に使えるそのほかの補助金制度
mits/PIXTA(ピクスタ)
青年等就農資金のほかにも、新規就農や農業経営の資金繰りをサポートしてくれる制度があります。ここでは2つの補助金制度を紹介します。
農業次世代人材投資資金(旧・青年就農給付金)
「農業次世代人材投資資金」には、2つの類型があります。
1つは「準備型」と呼ばれるタイプで、都道府県の研修機関で1年以上の研修を受けた新規就農希望者に対して、年間最大150万円が最長2年間給付されます。
もう1つは「経営開始型」というタイプで、新規就農者に対して最長5年間、年間最大150万円が給付されます。
どちらのタイプも原則として、就農予定時に年齢が50歳未満であり独立・自営就農または雇用就農をめざすことなどが条件として定められています。
詳細は、農林水産省「農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)」のページをご覧ください。
経営体育成支援事業
「経営体育成支援事業」は国が主体になって行う事業であり、主に農業用機械や施設にかかる費用を補助する制度です。農業経営体が設備投資で融資を受ける際、その融資残高に応じて補助金が給付されます。
補助率は基本的には事業費の3/10以内ですが、経営規模が小規模な地域で共同利用機械を導入する場合は事業費の1/2以内となります。借入額が1,000万円以下なら償還期限が25年以内であり、償還期間延長はうち5年です。
詳細は、農林水産省「経営体育成支援」のページをご覧ください。
新規就農者または経験の少ない農家にとって、最初に立ちはだかる壁が資金問題と経営の安定化です。この2つを解決するためには、返済負担の少ない融資制度を利用することが大切です。
青年等就農資金は、低リスクの融資制度の1つとして頼れるサポーターになるでしょう。
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大澤秀城
福島県で農産物直売所を立ち上げ、店長として徹底的に品質にこだわった店づくりを行い、多くの優れた農家との交流を通じて、農業の奥深さを学ぶ。 人気店へと成長を遂げ始めたさなかに東日本大震災によって被災。泣く泣く直売所をあきらめ、故郷の茨城県で白菜農家に弟子入りし、畑仕事の厳しさを身をもって体験する。 現在は農業に関する知識と体験を活かしながら、ライターと塾講師という2足のわらじで日々歩みを進めている。