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冬野菜の敵!ハクサイダニを防除しよう!生態や防除方法について紹介

冬野菜の敵!ハクサイダニを防除しよう!生態や防除方法について紹介
出典 : keke / PIXTA(ピクスタ)

冬野菜の栽培で「ハクサイダニ」の被害に悩まされている農家は少なくありません。今回は、ハクサイダニの生態と防除方法、有効な農薬などについて解説します。

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ハクサイダニは、ほうれん草・春菊・小松菜などの冬の葉菜類に寄生し、その吸汁被害は大きく、ときには株全体が枯死してしまいます。冬の葉菜類を栽培するうえでは、防除対策が欠かせない重要害虫の1つといえるでしょう。

冬野菜に発生する「ハクサイダニ」とは?   

ハクサイダニ 成虫

ハクサイダニ(体長0.8mm)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ハクサイダニとは?

かつては、「ムギダニ」として扱われていましたが、1993年に新種として確認されました。

当時は、ほうれん草などの被害が少数報告されているのみでしたが、1980年代以降はほうれん草や白菜のほか、春菊、小松菜など、冬の葉菜類の被害が拡大しています。

ハクサイダニの姿

成虫は、黒い胴体に赤紫色の足が8本ある独特の姿をしています。胴の背後部に肛門があり、水滴状の排泄物をつけています。

ムギダニにも酷似していますが、ハクサイダニのほうがひとまわり大きめです。0.7~1mm程度で肉眼でもはっきりと確認できます。

ハクサイダニはメスだけの単為生殖の生物で、オスなしでの繁殖が可能です。そのため、突然多発することがあります。

ハクサイダニの生態

活動期間と発生サイクル

ハクサイダニの主な活動期間は11月~5月上旬で、特に12月と3月に多発します。

10月~11月頃、土壌中で夏を越した休眠卵がふ化し、活動を始めます。幼虫から成虫となるのが11月~12月頃です。

活動期間中に1~2回の世代交代がありますが、活動期間の後期、主に第2世代以降が産卵した卵は、休眠卵となって、土壌中で夏を越します。そしてその休眠卵は、秋になってふ化して活動する、というサイクルを繰り返します。

暖冬の年はハクサイダニの発生時期が早く、大量発生する傾向があります。

ハクサイダニの活動

昼間は、葉の陰や地表に生息し、夕方や曇りの日に葉の上に移動して活動します。人の気配などの危険を察知すると、すばやく葉裏や地表に移動します。

ハクサイダニの被害

ハクサイダニは、作物の葉の汁を吸うので、葉が灰色から白っぽく変色し、萎れてカールするように枯れていきます。芯葉付近に加害が多く、その場合は、株全体が萎縮していき、最後は枯死してしまいます。

白菜などの結球する野菜では、内部にも侵入するので注意しましょう。

ハクサイダニの被害葉(ミブナ)

ハクサイダニの被害葉(ミブナ)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ハクサイダニの防除方法は?

ハクサイダニの耕種的防除

現在、ハクサイダニに使用できる登録農薬の適用作物の範囲は広くはありません。そのため、耕種的防除をしっかり行うことをおすすめします。

被害株は直ちに処分する

ハクサイダニの発生を認めたら、被害株を直ちに株ごと取り去ります。
被害株には卵が付着している可能性があるので、焼却するなどして処分します。

ほ場周縁の除草を徹底する

ハクサイダニは多くの植物に寄生するため、ほ場周縁の雑草にも生息する可能性があります。

ほ場周縁の除草を徹底しましょう。また、除草した雑草は、作物の被害株と同様、卵が付着している可能性があるので、焼却するなどして処分します。

収穫残さはすみやかに処分する

収穫残さは、ハクサイダニの餌となるとともに、多くの卵が産み付けられ、次の発生源となります。放置しないで、収穫後はすみやかに処分しましょう。

多発ほ場での連作を避ける

ハクサイダニが多発したほ場では、翌年の冬もハクサイダニが発生する可能性が高いので、連作しないことが基本となります。

夏季に太陽熱消毒を行う

夏季にほ場の太陽熱消毒を行うことで休眠卵を防除できます。

ほ場全体に灌水(かん水)した後、ビニールで被覆します。太陽熱によって温度を上げることで、ハクサイダニの休眠卵を含む、土壌中の病害虫の防除を行う方法です。期間は20日以上が目安です。

ハクサイダニの農薬による防除

春菊はハクサイダニの被害が発生する作物の1つ

Carbondale/PIXTA(ピクスタ)

ハクサイダニという名前にも関わらず、実は、ハクサイダニに適用がある農薬で、適用作物に白菜が登録されている農薬はありません。

この章では、ハクサイダニについて登録がある農薬を4剤紹介します。

コテツフロアブル

ハクサイダニの防除

ハクサイダニについては、「こまつな」が適用作物です。

使用方法

「こまつな」:適用害虫は、ハクサイダニ、アオムシ、コナガ
2000培希釈で収穫3日前まで使用可能。総使用回数は1回。液量は10a当たり100~300L。


なお、コテツフロアブルは劇薬のため、購入の際には届け出が必要です。購入する際は身分証明書と印鑑を忘れずに持参しましょう。

アディオン乳剤

ハクサイダニについては、「しゅんぎく」と「ほうれんそう」が適用作物です。

使用方法
「しゅんぎく」:適用害虫は、ハクサイダニ、アブラムシ類。
4000倍希釈で収穫21日前まで使用可能。総使用回数は2回。液量は10a当たり100~300L。

「ほうれんそう」:適用害虫は、ハクサイダニ、アブラムシ類。
3000倍希釈で収穫14日前まで使用可能。総使用回数は2回。液量は10a当たり100~300L。

ディアナSC

ハクサイダニについては、「なばな類」が適用作物です。

使用方法
「なばな類」:適用害虫はハクサイダニ、コナガ、ハスモンヨトウ。
2500~5000倍希釈で収穫前日まで使用可能。総使用回数は2回。液量は10a当たり100~300L。

サンクリスタル乳剤

ハクサイダニについては、「しゅんぎく」が適用作物です。

使用方法
「しゅんぎく」:適用害虫は、ハクサイダニ、アブラムシ類、コナジラミ類、ハダニ類。適用病害はうどんこ病。

ハクサイダニ、アブラムシ類、コナジラミ類:300培希釈で収穫前日まで使用可能。
ハダニ類、うどんこ病:300~600倍希釈で収穫前日まで使用可能。
いずれも液量は10a当たり150~500L。

※この記事で紹介した農薬は、2020年12月現在の農薬登録情報に基づきます。
※農薬を使用する前にラベルの記載内容をよく確認し、使用方法を守って正しく散布してください。

ほうれん草はハクサイダニの被害が発生する作物の1つ

スプリング/PIXTA(ピクスタ)

ハクサイダニは、冬季の害虫として近年被害が拡大しています。しかし、登録農薬は多くはありません。都道府県の病害虫発生情報に留意しながら、耕種的防除をしっかり行うことで被害拡大を抑えましょう。

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上澤明子

上澤明子

ブドウ・梨生産を営む農家に生まれ、幼少から農業に親しむ。大学卒業後は求人広告代理店、広告制作会社での制作経験を経て、現在フリーランスのコピーライターとして活動中。広告・販促ツールの企画立案からコピーライティング、取材原稿の執筆などを行う。農業専門誌の制作経験があり、6次産業化や農商工連携を推進する、全国の先進農家・農業法人、食品会社の経営者の取材から原稿執筆、校正まで携わったことから農業分野のライティングを得意とする。そのほか、食育、子育て、介護、健康、美容、ファッションなど執筆ジャンルは多岐にわたる。

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