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玉ねぎの病害虫対策! 農薬は生育時期にあわせた使用が鉄則

玉ねぎの病害虫対策! 農薬は生育時期にあわせた使用が鉄則
出典 : Good morning / PIXTA(ピクスタ)

玉ねぎで注意したい萎縮病、腐敗病、べと病、苗立枯病、灰色かび病などの病害やアブラムシ類、ヨトウムシ類、アザミウマ類、タマネギバエなどの害虫について、被害の特徴を解説します。あわせて病害虫に対する効果的な防除方法やおすすめの農薬5選も紹介します。

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玉ねぎは丈夫で栽培しやすい作物ですが、病害や害虫も多く、ネギ類特有の病害虫もあります。栽培にあたっては注意すべき病害虫の特徴を知り、予防と早期発見に努めることが大事です。

この記事では玉ねぎで要注意の病害虫と効果的な農薬について詳しく解説します。

玉ねぎに発生する主な病害と害虫

よく肥大した玉ねぎ

sglide / PIXTA(ピクスタ)

この項では、玉ねぎの生育を阻害し肥大を妨げ、商品価値を下げる代表的な病害と害虫について、それぞれの原因、発生時期、主な症状を解説します。

玉ねぎに発生する病害

苗立枯病

病原菌は糸状菌(かび)の一種で、被害作物植物の残さに菌核を作って病原になるほか、土壌中の有機物を利用して残さが含まれる土壌中で増殖繁殖し、幼苗の根から侵入します。

低温・多湿の環境で多発し、生育初期(発芽後1~2葉の時期)に苗の地際部が細くくびれて倒伏、枯死に至ります。種子が感染していた場合は発芽せずに腐ることもあります。

苗の病害としてはほかに、かいよう病・黒穂病などがあります。

萎縮病

病原はウイルスで、アブラムシ類によって媒介され、有翅のアブラムシ類の飛来が多くなる春と秋に多発します。

発病すると葉にモザイク状や筋状の淡黄色の斑が入り、次第に葉が扁平になって波打つように縮れるのが特徴です。進行すると葉が生育できず球の肥大も悪くなります。

腐敗病

土壌中の病原菌が、風や害虫の食害、農作業などでできた傷口から侵入することで感染します。病原菌が繁殖する温度は20~23℃で、被害が増大するのは秋作・春作の生育初期(2~3葉期)です。

葉に暗緑色で水浸状の小さな斑点が多数現れ、拡大して融合し、不成形の病斑になり、やがて鱗茎(注)は淡黄色や褐色に変色して軟化・腐敗します。

(注)鱗茎:玉ねぎの球部の白い部分。玉ねぎの球部の根元にある短い部分が茎で、そこから鱗葉(りんよう)が出て重なり集合体となったものを「鱗茎」といいます。

べと病

玉ねぎべと病の被害葉

玉ねぎべと病の被害葉
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

病原菌は糸状菌(かび)の一種で、休眠状態のまま10年以上も土壌中に生存可能です。気温15℃前後の春や秋に発生し、特に雨の多い春には大発生するので要注意です。

秋に雨による土の跳ね上がりなどによって感染します。感染して越年した株は春になると発病し、葉に光沢がなくなって淡黄緑色に変色し生育が遅れ、枯死に至ります。

これらの病株の胞子によって二次感染が起きると、葉などに楕円形で黄白色の大きな病斑が現れます。多湿であれば病斑にカビが生じ、触るとべとべとしていることが特徴です。

灰色かび病

病原菌は糸状菌(かび)の一種で、風によって飛散し葉や茎に付着し感染します。冬から春にかけて、暖かく雨が多いと多発します。

葉に水浸状の2mmほどの病斑が発生し、次第に灰色のかびを生じます。病斑が茎の内部に達するとその上部に水を吸い上げられず、枯死することもあります。

玉ねぎに発生する害虫

ヨトウムシ類

玉ねぎのヨトウムシ被害葉 葉基部に幼虫が潜んでいる

玉ねぎのヨトウムシ被害葉 葉基部に幼虫が潜んでいる
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ヨトウムシ類の代表的なものは、ヨトウガ、ハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウなどです。

地域によって発生する種類や時期が少し違いますが、全国的に初夏から秋にかけて2~4回ほど発生します。

卵は葉の裏に数十~数百まとめて産み付けられ、幼虫の間は集団でほ場の一部を集中的に、成虫になるとほ場全体に散らばって激しく食害します。葉を食べ尽くされることもある厄介な害虫です。

アブラムシ類

一年中見られますが、春先から秋にかけては特によく発生します。

葉や茎に密集して吸汁し、べたべたとして見た目が悪くなるほか、多発した場合は生育が悪くなることもあり、注意が必要です。

さらに、ウイルス病を媒介する、排せつ物上ですす病の病原菌が繁殖するなど、深刻な病害の原因にもなります。

タマネギバエ

北海道では6月中~下旬頃の生育期にタマネギバエの被害が発生します。葉のおおよそ半分が倒伏する成熟期開始以降にはあまり見られません。

表土や地際近くの葉や茎の表面に卵塊が産み付けられ、ふ化したあとも集団で表面から入り込み内部を食害します。進行するとやがて株ごと枯死し、欠株となります。

ネギアザミウマ

ネギアザミウマの成虫(体長1mm)

ネギアザミウマの成虫(体長1mm)
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ネギアザミウマは、玉ねぎなどユリ科ネギ属の作物の主要害虫ですが、ほかの科の作物にも寄生します。玉ねぎでは、北海道の春定植・秋収穫の作型で夏場に多発し大きな被害となる場合があります。

幼虫・成虫とも葉の表面をなめたり吸汁したりして、その傷口がかすり状の小さな黄白色の点になります。大発生すると葉の全体が白くなり生育が停まり球が肥大できなくなります。

また、ウイルス病を媒介し、玉ねぎではタマネギえそ条斑病が大きな被害をもたらすことがあります。

玉ねぎの病害虫防除法

病害虫の予防は、日ごろからほ場の排水をよくする、施肥などの栽培管理を適切に行う、被害株を速やかに排除するなどの耕種的防除と、農薬による防除をバランスよく組み合わせるのがコツです。病害虫に合わせ、栽培時期に適した防除方法を実施しましょう。

なお、この記事で取り上げる農薬は2021年1月19日現在登録のある農薬で、記載内容も同時点のものです。使用に当たっては、必ずラベルを確認し、使用方法を守ってください。

苗床の土壌消毒・定植時の防除で防ぐ

玉ねぎのハウス育苗

kiki / PIXTA(ピクスタ)

種子伝染や土壌中の病原菌から幼苗に伝染する病害については、播種前に苗床を土壌消毒することや定植時の防除で防ぎます。

糸状菌(かび)を病原とするべと病や乾腐病、苗立枯病などの病害が発生したほ場は使用しないのが基本です。やむを得ず使用する場合は徹底した土壌消毒を行いましょう。

苗床の土壌消毒

苗床の土壌消毒は農薬または太陽熱消毒で行います。太陽熱消毒はネキリムシやヨトウムシ類といった害虫の防除にもなります。農薬による土壌消毒の場合、バスアミド微粒剤やガスタード微粒剤といったダゾメットを含む農薬を用います。

いずれも、播種の2週間前には消毒を完了するように進めてください。

定植時の防除

定植先のほ場に注意すべき病害がある場合は、その病害に合わせて土壌消毒や農薬散布を行って防除しましょう。

例えば、乾腐病の防除には、定植前にフロンサイド水和剤、フロンサイドSCやベンレート水和剤で苗根部浸漬処理をすると効果的です。

タマネギバエの防除には、播種または定植時の土壌へのダイアジノン粒剤の施用が有効です。(ダイアジノン粒剤は剤型違いで数種類ありますが、使用時期・使用方法は異なりますのでそれぞれ確認して使用してください。)

生育期の防除

生育期の玉ねぎ

kiki / PIXTA(ピクスタ)

生育期に病害や害虫の被害を発見した場合は、できるだけ早期に農薬による防除を実施します。主な病害虫と適用のある代表的な農薬は以下の通りです。

軟腐病:ストレプトマイシン水和剤であるアグレプト水和剤、オキソリニック酸水和剤のスターナ水和剤など

べと病:マンゼブ・メタラキシルM水和剤のリドミルゴールドMZ、TPN水和剤のダコニール1000など

黒斑病:マンゼブ水和剤のジマンダイセン水和剤、イプロジオン水和剤のロブラール水和剤など

アブラムシ類:PAP乳剤のエルサン乳剤、MEP乳剤のスミチオン乳剤など

ヨトウムシ類:BT水和剤のバシレックス水和剤(野菜類・ヨトウムシ、ハスモンヨトウでの適用)、ペルメトリン乳剤のアディオン乳剤(たまねぎ・ハスモンヨトウでの適用)、レピメクチン乳剤のアニキ乳剤(たまねぎ・ハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウでの適用)など

アザミウマ類:ペルメトリン乳剤のアディオン乳剤、シペルメトリン乳剤のアグロスリン乳剤など

玉ねぎの病害虫対策に適した代表的な農薬5選

玉ねぎがかかりやすい病害の防除におすすめの農薬を厳選して5剤紹介します。

シグナムWDG

たまねぎでの適用:灰色腐敗病(苗根部浸漬および散布)、灰色かび病、べと病、小菌核病、白色疫病(いずれも使用方法は散布)

特徴:
作用性の異なるピラクロストロビンとボスカリドを効率よく混合した新しい野菜用殺菌剤です。粉立ちが少なく扱いやすいうえに、浸達性が高いため耐雨性も高く、効果が持続します。

ザンプロDMフロアブル

たまねぎでの適用:べと病(散布・無人航空機による散布)、白色疫病(散布)

特徴:
疫病・べと病について特異的な効果を示す、作用機作が異なる2成分が混合されており、疫病・べと病の生活環のほぼ全てを阻害します。作物の葉面ワックス層に高い親和性があるため、耐雨性にも優れ、効果が長く持続します。

ストロビーフロアブル

たまねぎでの適用:灰色かび病、灰色腐敗病(いずれも使用方法は散布)

特徴:
従来の殺菌剤とはまったく異なる系統の殺菌剤で既にほかの農薬に耐性のある病原菌に対しても効果が認められます。各種病害の胞子形成を強く阻害するため、既に病害が拡大してしまったほ場での二次感染も予防可能です。

リドミルゴールドMZ

たまねぎでの適用:べと病、白色疫病(いずれも使用方法は散布)

特徴:
浸透移行性が高いメタラキシルMと保護効果が高いマンゼブを用いているため耐雨性が高く、べと病菌・疫病菌に対して安定的な効果が得られます。ぺピット製剤(顆粒)を採用しているので計量・調製が容易なことも特長です。

ジマンダイセン水和剤

たまねぎでの適用:べと病、さび病、黒斑病、灰色腐敗病、灰色かび病、白色疫病(いずれも使用方法は散布)

特徴:
ジチオカーバメート系の保護殺菌剤で、植物体上に付着し主に胞子発芽を強く抑制することで病原菌の侵入を阻害します。保護殺菌剤のロングセラーで安定した防除効果を発揮します。

収穫期を迎えた玉ねぎのほ場

onestep / PIXTA(ピクスタ)

玉ねぎに発生する病害虫は少なくありませんが、耕種的防除と農薬による化学的防除を組み合わせることで被害を軽減することが可能です。

今回は主な病害虫とその防除方法を全体的に紹介しましたので、よく肥大し良品率の高い玉ねぎ栽培の参考にしてください。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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