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ハダニ類を農薬で徹底防除!効率的な対策とおすすめの農薬一覧

ハダニ類を農薬で徹底防除!効率的な対策とおすすめの農薬一覧
出典 : HP埼玉の農作物病害虫写真集 梨のナミハダニ被害葉

ハダニ類は野菜類、果樹、花きなどほとんどの作物に寄生する厄介な害虫です。薬剤抵抗性を持ちやすく、一度多発してしまうと完全な防除が難しいといわれます。ハダニ類の被害から作物を守るために、その生態や特徴をよく知り、早期に発見して適切な防除を心がけましょう。

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梅雨明けから夏期にかけて、ハダニ類が発生しやすくなります。高温・乾燥の環境を好むハダニ類は、条件が良ければ短い間に大繁殖し、作物に大きな被害をもたらします。

この記事では、ハダニ類の生態や被害を解説し、効果的な防除方法についてポイントを挙げながら紹介します。

梅雨明け~夏に多発!ハダニ類の生態と作物被害の特徴

ハダニ類は、アブラムシ類やアザミウマ類と並び、ほとんどの作物に被害をもたらすため、多くの農家を悩ませる代表的な害虫です。

早期に発見して確実な防除ができるように、生態と作物への被害の特徴をしっかり把握しましょう。

主なハダニ類の種類と発生原因

吐いた糸を伝うナミハダニ

吐いた糸を伝うナミハダニ
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ハダニ類の仲間は約70種類といわれ、ナミハダニとカンザワハダニ、ミカンハダニ、リンゴハダニなどがよく知られています。

発生の原因は、ほ場周辺にある草むらからの歩行や、風による飛来、人体に付着する、苗とともに持ち込まれる、といったものがあります。

クモのように体から糸を出すので、大量発生すると葉先などにクモの巣のようなコロニーを作ったり、糸を吐き風に乗って周囲の植物に移ったりします。

水に弱く、高温・乾燥を好み、好条件下では約10日間という短いサイクルで卵から成虫になります。短期間で繁殖を繰り返すために、薬剤抵抗性を持つ個体が出現しやすいことがハダニの厄介な特徴です。

メスだけで単為生殖ができ、単為生殖の卵からは必ずオスが生まれ、交尾して生まれた卵からは必ずメスが生まれます。そのため、メスが一匹いれば交尾の有無にかかわらずどんどん増えていきます。

ミカンハダニの卵・幼虫・第1若虫・成虫

ミカンハダニの卵・幼虫・第1若虫・成虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ハダニ類による被害の例

ハダニ類は植物の葉裏に寄生して吸汁し、その痕は小さな白い斑点になります。この時点では気づきにくく、数が増え、白い部分がまとまってカスリ状になると気づきやすくなります。

作物によって、葉が褐変したり葉脈の間が黄化したり葉色が悪くなったりし、落葉して枯れる場合もあります。

養分を吸収されてしまうため開花期間が短くなり、果菜類や果樹は果実の出来が悪くなったり収量が減ったりすることもあります。

柑橘類のミカンハダニ被害葉

柑橘類のミカンハダニ被害葉
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ハダニ類の被害を防ぐには?農薬による効果的な防除方法

ハダニ類の防除に有効な農薬は多数あります。しかし、薬剤抵抗性がつきやすいため、使用にあたってはいくつかの注意が必要です。そこで、防除効果を上げる農薬の使い方のポイントについて解説します。

発生状況に応じた適切な農薬の選び方

ハダニ類は短期間で爆発的に繁殖するため、早期発見・対処が特に重要です。葉色が悪い、白っぽくかすれているなどの異変に気づいたら、葉裏を念入りにチェックしましょう。ハダニ類の発生を確認したらすぐに被害株を除去し、速やかな農薬散布で被害を食い止めます。

栽培初期や定期散布には、殺卵性・残効性が高く、かつ、訪花昆虫やカブリダニなどの天敵に影響が少ない農薬を選びましょう。大量発生してしまった場合は、幼虫・成虫に対して効果が高く、即効性のある農薬を選びます。

薬剤抵抗性の発達を防ぐためには、異なる系統の農薬を数種類選び、ローテーションで使うのがポイントです。ハダニ類を窒息させて防除する気門封鎖系の殺虫剤は薬剤抵抗性がつきにくいといわれていますので、ローテーションに取り入れましょう。

ローテーション散布の参考に。おすすめの農薬一覧

以下に、ハダニ類に適用があり系統が異なる代表的な農薬を紹介します。

スターマイトフロアブル:シエノピラフェン水和剤。抵抗性のハダニ類に効果が高く、卵から成虫まで低温時でも安定した効果があります。

マイトコーネフロアブル:ビフェナゼート水和剤。適用作物の範囲が広く、各種のハダニ類に効果を発揮するため、使いやすい農薬です。

カネマイトフロアブル:アセキノシル水和剤。天敵への影響が少なく、卵から成虫まで速効性があり特に幼虫~成虫に効果的です。

フーモン:ポリグリセリン脂肪酸エステル乳剤。幼虫・成虫の気門を封鎖することで窒息死させます。展着剤の効果も併せ持っています。

このほかにも、METI剤のピラニカEW、マクロライド系のコロマイト乳剤、ピロール系のコテツフロアブルなど、ハダニ類に適用がある農薬は多数あり、ローテーション散布の一環に組み入れることができます。

適用作物や適用できるハダニ類の種類、訪花昆虫や天敵への影響などはそれぞれ異なるので、ローテーション散布に当たっては自治体の農政部署や最寄りのJAに問い合わせることをおすすめします。

農薬の使用の際は、ラベルの記載内容をよく確認し、使用方法を守って正しく散布してください。

ハダニ類に適用のある農薬の系統については「イチゴ栽培におすすめの殺ダニ剤は? ハダニ類防除の効率的な散布方法」「殺ダニ剤はローテーション使用が大原則!使える農薬の例」の項もご参照ください。

農薬の効果を最大限に発揮するには?上手な散布方法

ハダニ類は葉裏に寄生しているため、上から散布しただけでは効果が十分に発揮されません。中途半端に防除すると生き残ったハダニ類が薬剤抵抗性を持ちやすく、ますます農薬が効きづらくなるという悪循環に陥ります。

効果的に防除するため、普段から葉が混み合って重ならないよう整枝して余分な葉を除去しましょう。散布の際には、葉の表だけでなく裏にもしっかり薬剤がかかるように、満遍なく丁寧に散布して下さい。

併用で効果増!ハダニ類の物理的&生物的防除方法

施設栽培のイチゴ

Rise/ PIXTA(ピクスタ)

薬剤抵抗性の発達を防ぐために、物理的防除や生物的防除を併用して農薬使用回数を減らすことも、防除の効果を上げるポイントです。

ハダニ類は高温・乾燥の環境下で爆発的に増えるため、夏場の施設栽培で発生すると被害は深刻です。そのため、施設栽培においては、より確実な防除方法が模索されています。

ハダニ類の被害の影響が大きいイチゴの施設栽培について、新しく有効な防除方法とされているのが、二酸化炭素くん蒸剤による防除と、紫外線による防除です。

二酸化炭素くん蒸剤による防除

イチゴ育苗期のハダニ類防除の有効な方法として「炭酸ガス処理システム」が開発され、徐々に導入が進んでいます。

「炭酸ガス処理システム」は、専用の装置を使って定植前の苗にくん蒸処理を施します。処理により、苗についたハダニ類の成虫・幼虫・卵のほとんどが死滅します。

装置は2014年時点で1回当たり約1万株処理できるもので約200~300万円と高額ですが、地域で購入し貸し出ししているところもあるので、自治体などに問い合わせてみましょう。

2021年3月現在、農薬として登録されている二酸化炭素くん蒸剤は2剤です。化学合成農薬ではありませんが、農薬取締法に基づいて農薬として登録されています。くん蒸実施前には説明文書の記載内容をよく確認し、使用方法を守って正しく実施してください。

・エキカ炭酸ガス(倉庫、天幕等)
  ・適用害虫:ナミハダニ
  ・使用量:二酸化炭素濃度40~60%を維持するに必要な量
  ・くん蒸時間:24時間
  ・くん蒸温度:25~30℃

・くん蒸用炭酸ガス(倉庫、天幕等)
  ・適用害虫:ナミハダニ
  ・使用量:二酸化炭素濃度50%程度を維持するに必要な量
  ・くん蒸時間:24時間
  ・くん蒸温度:20~30℃

紫外線を用いた防除

紫外線を照射することによる防除方法は、施設の天井に紫外線ランプを設置し上から照射するとともに、地表部に紫外線反射シートを張り、葉の表と裏に紫外線を当てます。

紫外線が当たった部分のハダニ成虫と卵はほぼ死滅しますが、当たらない部分のダニが生き残ってしまうため、農薬散布や天敵による防除(後述)など、ほかの防除方法と組み合わせて行うことが推奨されています。

イチゴ栽培のナミハダニ対策として、定植前の二酸化炭素くん蒸処理と定植後の紫外線照射を組み合わせるという方法も研究されています。

出典:農研機構中央農業研究センター「紫外光照射を基幹としたイチゴの病害虫防除マニュアル」

物理的防除との併用も効果的!天敵製剤による生物的防除

ナミハダニを追いかけるチリカブリダニ成虫

ナミハダニを追いかけるチリカブリダニ成虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

ハダニ類にとって天敵であるミヤコカブリダニやチリカブリダニなどを放飼する方法です。

ハダニ類を捕食することで徐々にその数を減らしていくため遅効性で、すでに大量発生している場合の防除には向きません。あらかじめほかの殺ダニ剤や紫外線照射によりハダニ類の密度を低くしてから使用すると非常に高い効果が得られます。

化学合成農薬ではありませんが、農薬取締法に基づいて農薬として登録されています。ラベルや説明文書の記載内容をよく確認し、使用方法を守って正しく管理してください。

ハダニ類はあらゆる作物で発生し、夏場の生態サイクルが短いため、薬剤抵抗性を得やすかったり短期間で大繁殖したりと、非常に厄介な害虫です。

系統の異なる農薬をローテーションで施用したり、複数の防除方法を組み合わせたりすることで、効果的な防除が可能です。

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大曾根三緒

大曾根三緒

ビジネス、ペット、美術関連など多分野の雑誌で編集者として携わる。 全国の農業協同組合の月刊誌で企画から取材執筆、校正まで携わり、農業経営にかかわるあらゆる記事を扱かった経験から、農業分野に詳しい。2019年からWebライターとして活動。経済、農業、教育分野からDIY、子育て情報など、さまざまなジャンルの記事を毎月10本以上執筆中。編集者として対象読者の異なるジャンルの記事を扱った経験を活かし、硬軟取り混ぜさまざまなタイプの記事を書き分けるのが得意。

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