新規会員登録
BASF We create chemistry

ハウス栽培も可能! むかご・山芋・自然薯の栽培方法を解説

ハウス栽培も可能! むかご・山芋・自然薯の栽培方法を解説
出典 : 1207Blue / PIXTA(ピクスタ)

山芋は、ながいも・自然薯などヤマノイモ科ヤマノイモ属の野菜の総称です。豊富な栄養を含んでいるだけでなく、消化促進など健康を整える機能性も持っています。山芋の肉芽にあたる「むかご」も、畑の珍味として消費者に人気です。この記事では、山芋の好適な栽培方法について紹介します。

  • 公開日:

記事をお気に入り登録する

ヤマノイモ科ヤマノイモ属は世界に約600種あることが知られています。海外では健康食品として山芋の需要が根強く、輸出量の推移も堅調です。まずは、ヤマイモ類の生態的特徴から解説します。

出荷前の長芋

kikisorasido / PIXTA(ピクスタ)

ヤマイモ類の生態的特徴

山芋の原産地は中国南部の雲南地方で、紀元前2000年には薬用として使用されていたといわれています。中国で山芋の栽培が始まったのは、紀元前3世紀頃です。

その後、台湾や朝鮮半島を経由して日本に渡来しました。17世紀には国内各地でも山芋が栽培されています。縄文時代の後期が栽培開始だったとする意見もみられます。

なお、自然薯は、ヤマノイモ科ヤマノイモ属ヤマノイモ種に属し、日本各地の山中で自生する、日本が原産の山芋です。

(左)収穫された自然薯(右)山中で自生する自然薯

SS7 / PIXTA(ピクスタ) ゴン太 / PIXTA(ピクスタ)

山芋は葉の光合成と根による養分・水分の吸収によって生長、芋を形成します。また、茎に実った肉芽は、むかごとして収穫が可能です。

食用の山芋は、ヤマノイモ科ヤマノイモ属ナガイモ種に属し約60品種が栽培されています。芋の形状・特徴によって「ながいも群」「いちょういも群」「つくねいも群」の3つに分けられます。

ながいも群

長芋

和尚 / PIXTA(ピクスタ)

ながいも群は全国で栽培されていますが、青森県・北海道・長野県が主な産地です。円筒状の細長い形状で、粘りが少なくサクサクとした食感を持っています。

いちょういも群

いちょういも

Ystudio / PIXTA(ピクスタ)

いちょういも群は、群馬県・埼玉県・千葉県が主な産地です。イチョウの葉の形に似ていますが、棒状・バチ状のいちょう芋もみられます。粘りが強く、くせのない食味が特徴です。

つくねいも群

つくねいも

プロモリンク / PIXTA(ピクスタ)

つくねいも群は、兵庫県・三重県・愛媛県が主な産地ですが、奈良県でも古くから栽培されています。こぶし状の丸い形で、加熱するとふっくらして濃厚な食味を持つのが特徴です。高級料理の食材や和菓子の原料としても利用されます。

出典:公益財団法人日本特産農産物協会「ヤマイモ類の生態特性と栽培技術等について」

山芋の主な仕向先。農林水産省も力を入れる輸出の可能性

マレーシアのスーパーマーケットで販売されているながいも

haireena / Shutterstock.cpm

山芋は、海外の中国人コミュニティにおいて健康食品として根強い人気があります。

主に青森県・北海道産のながいも群が輸出されており、2019年度では約6,000トンが輸出されました。台湾・アメリカ合衆国が主な仕向地で、輸出額の大半(約1,800万ドル)を占めています。

また、シンガポール・香港・オランダといった、中国人コミュニティが形成されている地域にも輸出されています。国内市場の約2倍の価格で取引されるケースが多いです。

海外で日本食の人気が続く一方で、とろろ料理など日本料理への活用が広がっていないのが現状です。

そのため内閣官房や農林水産省では現地の飲食店などを通じて、ながいもの食感や品質を売り込むなど、周辺国を含めて輸出量の拡大に向けて取り組んでいます。

北海道の生産団体(ホクレン通商)でも、飲食店の海外進出の支援を通じて、山芋にとどまらず他の農産物を含めた形で日本食材の輸出拡大に取り組んでいます。

ハウス栽培もできる山芋の栽培方法

山芋 ほ場

amz camera / PIXTA(ピクスタ)

芋の形状をまっすぐにするため、波板やパイプを用いてながいも・自然薯を栽培する事例が増えています。ハダニ類やアブラムシ類などの被害を避けるために、ハウスでの栽培も可能です。山芋の催芽からほ場の準備・栽培管理、そして収穫までの方法について解説します。

種いもの準備・催芽・消毒

種いもは、1~2年育てたむかご(小いも)、あるいは切り分けたながいも(切りいも)を使います。切りいもを使う場合は、3月上旬~4月上旬に催芽作業が必要です。

切りいもを作る場合は、種いも1個あたり100gを目安にすると高収量を確保できて経済的です。また、自然薯を栽培する場合は種いも1個あたり50~60g程度とします。生長にばらつきが生じないよう、種いもの重量は統一しましょう。

根腐病などの病害を防ぐため、用意した種いもを「ティービック水和剤」の50倍希釈液に2秒間浸漬消毒して、天日干しします。天日干しの後、小いもはそのまま植え付けることが可能です。

切りいもを使う場合は種いもの過乾燥を防ぐため、切り口に消石灰を塗布して5日ほど陰干ししてコルク化させます。

植え付け予定日の2~3週間前を目安に、催芽作業を行います。育苗パッドなど底面に排水用の穴が開いた容器に切りいもを並べ、砂や土をかぶせます。保水性と通気性のあるバーミキュライトやピートモスも利用可能ですが、栄養分のない資材を選ぶようにしましょう。

電熱温床またはビニールハウスで地温25℃を保ち、新芽が小豆大になったら植え付けを行います。1個の種いもに何個も芽が出た場合は、育ちの良い芽を1個だけ残し、残りは掻き取ります。

※農薬を施用する際はラベルの記載内容をよく確認し、使用方法を守って正しく施用してください。

ほ場準備

ながいものほ場準備

どん兵衛 / PIXTA(ピクスタ)

種いもの植え付けは、地温が10℃以上になる4月下旬~5月上旬に行うのが標準的です。水はけがよく、1m以上の土層を持つほ場を選びましょう。自然薯の栽培には軽い土壌が、ながいもの栽培には重い土壌がそれぞれ適しています。

ほ場によっては、農作業機械の圧力などによって土が固まったままの状態になった「耕盤層」が形成されている場合があります。

耕盤層があると土の水はけが悪くなり、ながいもの根腐れを起こす原因になるため、植え付け前に心土破砕が必要です。土壌水分が多い時期に心土破砕を行うと逆効果になる恐れがあるため、収穫後の秋に施工しておくことをおすすめします。

暗渠排水を施工している場合は、排水口の詰まりにより排水効果が損なわれないよう定期的に清掃を行いましょう。

植え付けの10~15日前に、土壌pHが6.5程度になるようBMようりん・苦土石灰・基肥の3分の1をほ場全体に散布して耕うんします。

さらに、畝の中央部分に対して深さが100cmとなるようにトレンチャー耕を行います。植え付け直前にトレンチャー耕を行うと、つるの切断や奇形いも発生の原因になるので注意してください。

植え付け・栽培管理

土の深さ6~7cm部分の底を平らにした上で、芽が上を向くように斜めにして植え付けます。

露地栽培が一般的ですが、害虫予防を考えてハウスで栽培することも可能です。また、まっすぐな自然薯・ながいもを求める消費者ニーズがあることから、10~15度の角度で設置したクレバーパイプや白波板に種いもをのせてから土をかぶせる方法をとる農家も少なくありません。

敷きわらとネットが施されたながいものほ場

kikisorasido / PIXTA(ピクスタ)

植え付け後、基肥の残り3分の2を植溝から25~30cmほど離れた場所に施します。植溝に近すぎると肥料焼けを起こす恐れがあるので注意が必要です。

萌芽する前に、発生する雑草の種類に応じて土壌処理剤を施用し除草します。

5月下旬頃になったら高温による生理障害を防ぐため、ほ場全面に敷きわらを行います。温度上昇を抑制する効果のある白マルチを使用してもよいでしょう。

小いもを植え付けた場合は、乾燥を防ぐために根が張るまでは適時の灌水が必須です。

萌芽が確認できたら畝の中央に高さ2m程度の支柱を立て、つるを絡ませるためのネットを張ります。

養分不足にならないよう、6月中旬~8月中旬にかけて追肥を行います。8月中旬~下旬にかけて生育不足の場合は茎葉を確保するために、液肥を施します。

収穫

紅葉後枯れ始めたながいものほ場

taka / PIXTA(ピクスタ)

ながいもの収穫作業は、10月下旬から11月下旬にかけて行います。収穫が早すぎると「アク」が多く発生し食味にも影響するため、葉が紅葉して枯れ始める頃を収穫の目安にするとよいでしょう。濃厚な食味と強い粘りを引き出すため、越冬後の春に収穫する場合もあります。

貯蔵中の腐敗を防ぐため、雨の日の収穫は避けて晴天が続いて土壌が乾燥している日に行うようにします。ながいもに傷がつかないよう、慎重な作業が必要です。収穫後は直射日光や風の当たらない場所に運び、乾燥させます。

トレンチャーによるながいもの収穫作業

kikisorasido / PIXTA(ピクスタ)

なお、むかごの収穫時期は9月下旬~11月初旬頃で山芋の収穫前です。指で触って簡単に落ちる程度が、完熟の目安といわれています。

むかご

photokuma / PIXTA(ピクスタ)

この記事では種いもの準備からほ場管理・収穫まで、山芋の栽培方法について解説しました。

山芋はながいも・自然薯などヤマノイモ科の芋の総称ですが、収穫時期は10月下旬~11月下旬、その前には畑の珍味といわれるむかごも収穫可能です。

近年では、クレバーパイプや白波板を活用して山芋の形を整えながら栽培する事例も増えています。土壌の30~60cm部分に耕盤層が形成されている場合は、ほ場の水はけに支障をきたし収量にも影響するため、収穫後は必要に応じて心土破砕の実施を検討しましょう。

記事をお気に入り登録する

minorasuをご覧いただきありがとうございます。

簡単なアンケートにご協力ください。(全1問)

あなたの農業に対しての関わり方を教えてください。

※法人農家の従業員は専業/兼業農家の項目をお選びください。

ご回答ありがとうございました。

お客様のご回答をminorasuのサービス向上のためにご利用させていただきます。

舟根大

舟根大

医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。

おすすめ