甘くて大きなイチゴを栽培するために重要な肥料選び! 与え方のポイントも解説
イチゴ栽培において肥料の与え方は非常に重要です。肥培管理によって果実の仕上がりが大きく左右されます。この記事では、肥培管理のポイントと育苗から定植までの施肥量目安を紹介します。併せて、近年主流となっているイチゴの高設栽培の施肥目安とコスト削減方法について解説します。
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イチゴの特性に合った土作りを
office-pao / PIXTA(ピクスタ)
イチゴは、ほかの野菜類と比較して、デリケートな作物です。
温帯から亜寒帯の冷涼な気候を好み、暑さには弱い性質があり、生育適温は18℃~25℃です。乾燥にも弱いため、保水力があり日当たりのよい場所での栽培が条件になります。
土壌pHは5.5~6.5を目安とし、酸性に傾きすぎているといくら肥料を与えても上手く育ちません。
塩類障害にも弱く、残肥や連作によって塩基バランスが不良になっている土壌では生理障害が出やすくなります。
土壌分析を行い、pH調整を行ったあとに良質な堆肥と緩効性肥料を使った土作りをしていきます。イチゴの根は肥料焼けしやすい性質もあるため、基肥は少なめにします。
※この記事では、栃木県のとちおとめ栽培技術の資料、奈良県の高設栽培の資料をもとに施肥量を紹介しています。施肥量は、品種や作型・作期によって異なります。必ず、地域の農業試験場や営農部署に施肥基準を確認してください。
育苗から定植までの施肥量目安
この項では、親株定植から本圃定植までの施肥量目安を紹介します。
親株定植時の施肥量目安
cozy / PIXTA(ピクスタ)
土耕栽培の場合、親株定植時の基肥は、10a当たりの成分量で窒素5kg、リン酸10kg,カリウム8kg程度が目安です。(栃木県「とちおとめ」の場合)
追肥は、葉色やランナーの発生状況を見ながら必要に応じて、1回・10a当たり1kg程度を施用します。(栃木県「とちおとめ」の場合)
空中高設採苗の場合は、高設での肥培管理に準じます。使用する培土や品種によって異なるので、自分の地域の農業試験場などのデータを参考にしてください。
採苗後の育苗培土の施肥量目安
アネモネ / PIXTA(ピクスタ)
採苗後の育苗には、イチゴ専用の培土を用いることが一般的です。
施肥量は、60日程度のポット育苗の場合、窒素成分で1株当たり140~210mg程度、30~40日程度の夜冷短日処理ポット育苗の場合には、窒素成分で70~140mg程度となっています。(栃木県「とちおとめ」の場合)
Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)
定植時の施肥量目安
Nori / PIXTA(ピクスタ)
本圃の基肥は窒素施用量で10a当たり15~20kgが目安ですが、残肥が多い場合や堆肥を多く投入している場合には、土壌診断のあと施用量を判断します。(栃木県「とちおとめ」の場合)
初期の肥効が高いと、葉数が多くなりすぎたり乱形果が発生したりするので、緩効性肥料や有機質肥料を主体に施します。
イチゴ栽培は高設栽培が主流に
Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)
イチゴの栽培は、中腰での収穫や管理作業などによる労働負荷が大きく、省力化・軽作業化や土壌病害回避などの目的から高設栽培の導入が進んでいます。
奈良県では、平成20年度には約80,000平方㎡だった高設栽培の面積が平成26年度には約110,000平方㎡へと増加しています。
静岡県でも高設栽培の導入を産地パワーアップ事業として行った結果、生産規模が増加し販売額が平成27年度の6,800万円から8,800万円へと増加したという報告があります。
肥料の観点からも、イチゴの高設栽培には管理がしやすいというメリットがあります。
施肥システムには、大きく分けて液肥のみを使う方法と基肥として固形肥料を使いその後液肥で追肥する方法の2つがあります。
どの方法を選択する場合も、注射器によって吸引採取した培地内養液と排液の EC のモニタリングを定期的に行い、濃度に急激な変化が無いかどうか確認することが重要です。
専用培地を使用し、管理装置を使って管理するため、施肥量や灌水量・回数についてのデータが数値化されるので、栽培技術のマニュアル化がしやすく、ノウハウを蓄積しやすいのも高設栽培が推奨されるポイントです。
出典:
農林水産省「奈良県 イチゴ栽培の軽作業化技術の推進」
農林水産省「産地パワーアップ事業の取組事例(静岡県)」
奈良県農業技術センター「イチゴ高設栽培(ピートベンチ栽培)の手引き」
田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)
液肥のみの場合の給液管理
開花期までは EC 0.6mS/cm 程度の薄い濃度の養液で管理します。
開花期以降は、冬期に備えて養分を貯蔵する時期なので、生育を促進するために EC 0.9mS/cm 程度に養液の濃度を上げます。
収穫期以降は着果の負担による株の消耗が激しいと花芽の生育に大きな影響を与えるので、培地内養液のECが高くならない限り、養液濃度を下げないようにします。
出典:奈良県農業技術センター「イチゴ高設栽培(ピートベンチ栽培)の手引き」
置き肥+液肥の場合の給液管理
基肥とマルチ前の追肥は置き肥で行い、収穫開始期頃から液肥による追肥を行います。
追肥は希釈倍率 3,000 倍程度の薄い濃度の液肥を毎日灌水の代わりに施用します。固形肥料を使うことで、液肥のみの場合よりもコストが低くすみますが、置き肥が気温などの影響を受けやすく、収穫開始までの樹勢調節がしにくいという欠点もあります。
出典:奈良県農業技術センター「イチゴ高設栽培(ピートベンチ栽培)の手引き」
基肥全量施肥で低コストを実現
コスト削減を重視する場合は、発泡スチロール式栽培槽を使用し、肥効調節型肥料を窒素成分で1株当たり4g施用することで低コストが実現できることも報告されています。
従来の点滴灌水施肥とほぼ同じ収量が得られ、液肥の管理のための制御機器が不要となるため、従来の高設栽培より約80万円の経費削減が可能となります。養液栽培用専用肥料を用いた場合より肥料費も削減できるとのことです。
出典:農研機構「肥効調節型肥料を利用した促成イチゴの低コスト高設栽培」
田舎の写真屋 / PIXTA(ピクスタ)
良質なイチゴの栽培には、肥培管理が重要です。土壌分析を行い、適切な施肥量とタイミングを見極めましょう。
高設栽培の場合も、コストや農業スタイルに合わせた施肥方式を選択し、制御装置まかせにせず、定期的に養液濃度をチェックすることが大切です。
※この記事では、栃木県のとちおとめの栽培技術資料、奈良県の高設栽培の資料を中心に施肥量を紹介しましたが、施肥量は、品種や作型・作期によって異なります。必ず、地域の農業試験場や営農部署に施肥基準を確認してください。
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酒井恭子
テレビ番組制作会社、タウン情報誌出版社での取材・編集・ライティング業務などを経て、2018年からライターとして活動。農業、グルメ、教育、ビジネス、子育て情報など、幅広いジャンルの記事を執筆している。特に、食べることに興味があり、グルメ情報を自身のメディアでも発信中。美味しい料理の素材となる野菜や果物についても関心を持ち、農家とつながる飲食店で取材するなど、日々知識を深めている。「自分の文章で感動を多くの人と共有したい」が信条。