日本農業経営学会とはどんな組織? 主な活動内容と、農家が入会するメリット
日本農業経営学会とは、農業経営に関する研究を通じて農業経営の発展への寄与を目的とする歴史ある会です。農業経営に関わる方ならば、その存在を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。この記事では日本農業経営学会の概要や設立の目的などの基本情報から、入会条件や会員になるメリットまでを解説します。
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農業経営の発展を目指す組織「日本農業経営学会」とは?
myo1 / PIXTA(ピクスタ)
日本農業経営学会では年1回の研究大会や機関誌の発行などを通じて、農業経営学による社会貢献に取り組んでいます。ここではその活動内容の詳細を解説しましょう。
組織の概要と、設立の目的
日本農業経営学会は、農業経営に関する理論やその応用について研究し、学術や文化、農業経営の発展に寄与することを目的とした会です。
農業経営の発展方策や農業政策のあり方、農村社会や地域経済の方向性に関する提案を日本農業経営学会の使命と捉え、これらを通じた農業経営学としての社会貢献に取り組んでいます。
1948年、本学会の前身となる「農業経営研究会」が発足し、1964年には機関誌「農業経営研究」を刊行しました。
1978年に名称を「日本農業経営研究会」に改め、1983年には「日本農業経営研究会」から「日本農業経営学会」に移行して現在に至ります。2020年12月1日現在の正会員数は565名であり、正会員以外に学生会員や特別会員、賛助会員などで構成されています。
日本農業経営学会 ホームぺージ
研究大会って何をするの? 日本農業経営学会の主な活動内容
Graphs / PIXTA(ピクスタ)
日本農業経営学会の主な活動内容に「年1回の研究大会の開催」と「機関誌の発行」があります。
営農現場の問題意識を重視した大会テーマ
研究大会ではこれまでに「農業経営学における組織文化と組織戦略の関係性に関する検討」や、「農業経営研究における経営戦略論の再検討 デザイン思考の有用性について」などがテーマとして取り上げられています。
机上の空論ではなく営農現場を知る農業従事者や関係者とともに問題意識を設定する研究スタイルが特徴です。
令和3年度には鹿児島大会が「事業継承手法としてのM&Aの実態と課題」というテーマで開催されるなど、今後の農業における大きなテーマとなる新しい生産方式やビジネスモデルの構築、地方創生、技術の継承などに大きく寄与しているのです。
研究者を育てる「ダブルブラインド」システム
優れた研究結果を日本農業経営学会賞として表彰するなど、研究者の育成にも注力しています。
機関誌には研究者による論文が投稿されますが、その審査過程において「ダブルブラインド」というシステムを取り入れ、研究者の育成を図っています。
投稿者と査読者を伏せたまま、査読者の指摘に対して研究者が真摯に回答することで、研究者は、研究の進め方やアイデアに対する示唆など成長に資するものを得られます。
農家は加入したほうがいい? 入会するための条件と、会員になるメリット
日本農業経営学会への加入を検討する農家の方は、その会員種別や入会条件が気になるところでしょう。
ただし日本農業経営学会で得られるメリットや特典、入退会の方法など入会後の内容についても正確に理解したうえで加入の可否を決めるほうがミスマッチを防げます。日本農業経営学会への「入会」に関する情報を詳しく解説しましょう。
日本農業経営学会の会員種別と、入会の条件
日本農業経営学会の会員種別は以下の6種類です。
● 正会員
● 学生会員
● 期限付き学生会員
● 購読会員
● 特別会員
● 賛助会員
このうち正会員になるには、正会員1名からの紹介が必要になり、理事会の承認によって入会が認められます。ただし知人に正会員がいない場合、紹介者なしとして申し込むと事務局による検討も可能です。
正会員として加入するには、農業経営に関する学識経験を有する者、及び、実務経験者もしくは指導者であり、会の目的に賛同したうえで年会費を納める必要があります。年会費は会員種別によって異なり、正会員で8,000円、学生会員で4,000円が必要です。期限付き学生会員は3年間で10,000円とされています。
社会人の身分を有しながら大学や大学院などに在籍する場合は、学生会員ではなく正会員として扱われる点には注意しましょう。
入会したらどんなメリットがある? 会員の特典とは
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日本農業経営学会に入会すると、会員の特典として機関誌「農業経営研究」が年4回送付されます。別途投稿料を払えば、自身の研究結果を投稿することも可能です。
これまでの機関誌では「農業経営に求められる組織変革」、「都市近郊における耕作放棄の発生に関する考察」、「農業経営組織の変革における組織文化の役割」といったテーマが取り上げられています。経営拡大や農業経営学に興味がある場合は購読してみるとよいでしょう。
「農業経営研究」は、国立研究開発法人科学技術振興機構の「科学技術情報発信・流通総合システム」(J-STAGE)に収録されています。
J-STAGE内「農業経営研究」ページ
また研究大会における研究発表も会員特典の1つで、研究大会の案内など学会関係の諸情報も送付されます。農業経営研究の発展に貢献した会員への表彰制度もあり、学術団体の重要なテーマである人材育成にも力を入れている会なのです。
どこに申し込めばいい? 入会や退会の方法について
日本農業経営学会への入会は、会則や規程を読んだうえで公式サイトの「入会申し込みフォーム」に必要事項を入力し、事務局宛に電子メールを送付します。その際、受付確認メールとして受付を完了した旨が事務局から返信されるため確認しておきましょう。
日本農業経営学会|入会申込フォーム
その後、理事会によって入会の可否が審査され、承認が得られれば事務局から会費納入の郵便振替用紙が送付されます。入会希望年度の年会費を払い込めば会員登録は完了です。
原則として入会年度は申込年月日の会計年度です。会計年度は8月1日から翌年7月末までであるため、年度が切り替わるタイミングでの入会には注意しましょう。
もしも退会を希望する場合には、同じく公式サイトの「退会申し込みフォーム」に必要事項を入力して退会の申請を行ってください。
日本農業経営学会への入会で継続的な学びを得よう
polkadot / PIXTA(ピクスタ)
農業経営を取り巻く市場環境や制度、政策は常に変化しており、それらに適応するためには農業経営に関する継続的な学びが必要です。農業経営の発展を目指す「日本農業経営学会」への入会は、学びを継続する大きなきっかけの1つとなるでしょう。
「年1回の研究大会の開催」や「機関誌の購読」などを通じて学問の水準向上をめざす日本農業経営学会は研究者の育成にも注力しており、学びを得るための環境を備えています。ただし入会には条件があり、誰でもその環境を得られるわけではありません。
正会員になるには「農業経営に関する学識経験を有する者及び実務経験者であること」「学会の正会員1名の紹介が必要」といった前提条件が設けられています。1948年にその前身が発足した歴史ある日本農業経営学会に入会し、経営拡大や農業経営学について深く学んでみてはいかがでしょうか。
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中原尚樹
4年生大学を卒業後、農業関係の団体職員として11年勤務。主に施設栽培を担当し、果菜類や葉菜類、花き類など、農作物全般に携わった経験を持つ。2016年からは実家の不動産経営を引き継ぐ傍ら、webライターとして活動中。実務経験を活かして不動産に関する記事を中心に執筆。また、ファイナンシャルプランナー(AFP)の資格も所持しており、税金やライフスタイルといったジャンルの記事も得意にしている。