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農業廃棄物の種類と正しい処分方法は?廃棄物をエネルギーに変えるバイオマス利用の可能性も解説
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  • 農業経営

農業廃棄物の種類と正しい処分方法は?廃棄物をエネルギーに変えるバイオマス利用の可能性も解説

農業を行う上で出る廃棄物は、種類ごとに正しく処分する必要があります。廃棄物の種類ごとの処分方法や廃棄物を再利用したエネルギー供給など、廃棄物の処分に関して解説していきます。

農業で発生する廃棄物は産業廃棄物あるいは事業系一般廃棄物として、種類ごとに定められた方法で適切に処分しなければなりません。一方、近年では農業廃棄物から発生するバイオマスからエネルギーを回収する取り組みも注目されています。この記事では、農業廃棄物の種類や正しい管理・排出方法、バイオマス利用の可能性について解説します。

農業廃棄物の種類・排出量

農業用ハウスを形作るさまざまな資材は、後に主に「産業廃棄物」になる

Princess Anmitsu / PIXTA(ピクスタ)

農業廃棄物は、産業廃棄物と事業系一般廃棄物のいずれかに分類されます。農業廃棄物の具体的な種類や、国内における2018年度の農業廃棄物の排出量について解説します。廃プラスチック問題の現状についても確認しておきましょう。

産業廃棄物

産業廃棄物とは事業活動を進める中で発生する廃棄物で、農業の場合は以下のようなものが該当します。コンクリート固形化物などのように産業廃棄物を処分する目的で中間処理を行ったものも、産業廃棄物に含まれます。

農業で発生する「産業廃棄物」の例

また、廃農薬の成分に有機水銀・有機燐やチウラム・シマジン・チオベンカルブなどが含まれている場合は、特別管理産業廃棄物扱いになります。

事業系一般廃棄物

天然繊維の誘引ひもは「事業系一般廃棄物」

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事業系一般廃棄物は産業廃棄物以外のすべての廃棄物で、農業では以下のものが代表例です。新聞・雑誌・段ボールや缶・ペットボトルといった資源物は、リサイクルに出しても差し支えありません。

農業で発生する「事務系一般廃棄物」の例

なお、家庭から出るごみは生活系廃棄物として、事業系一般廃棄物や産業廃棄物とは別に処理します。

農業廃棄物の年間排出量

農業用プラスチックの例 農業用ハウスとトンネル資材

sammy_55 / PIXTA(ピクスタ)

国内における2018年度の産業廃棄物の総排出量は約3億7,883万トンで、前年度と比べると約471万トン減っており、2012年度と並び過去20年間で最も少ない排出量でした。うち、農業・林業での排出量は約8,096万トンで、全排出量の5分の1を占めています。

出典:環境省「産業廃棄物の排出及び処理状況等(平成30年度実績)について」

また、2018年に排出された農業由来の廃プラスチックは約10万7千トンで、国内の総排出量の約1%でした。プラスチックは農業用ハウスや土壌管理に用いるマルチフィルムなど、農業現場のあらゆる場面で活用されています。

環境保護や資源の有効活用といった面からリサイクルが推進されており、2016年時点でのリサイクル率は約7割です。使用後に自然界で分解される生分解性マルチフィルムの活用など、廃プラスチックの排出量を少なくする動きも見られます。

※生分解性マルチフィルムについてはこちらの記事もご覧ください。
「生分解性マルチ」で省力化&コスト削減!廃プラスチック問題にも貢献」

耐久性のある多層構造のポリオレフィン(農PO)フィルムの普及効果もあり、排出量は1993年をピークに年々減少傾向にあります。

出典:農林水産省「プラスチック資源循環(農業生産)」所収の「農業分野から排出されるプラスチックをめぐる情勢(令和3年2月)

農業廃棄物の正しい管理・排出方法

農業用プラスチックの例 マルチフィルム

tenjou / PIXTA(ピクスタ)

農業廃棄物や事業系一般廃棄物は、廃棄物処理法や自治体の条例などによって定められた方法で管理・排出することが事業者に義務づけられています。農業廃棄物の正しい管理・排出方法について解説します。

農業廃棄物の管理方法

農業廃棄物の適切な管理は、環境保全はもちろん生産の効率性向上にとっても重要です。産業廃棄物の保管基準が廃棄物処理法で定められているほか、農業生産工程管理(GAP)にも組み込まれています。発生した廃棄物は分別した上で、他の場所に飛散したり農産物・作業物などが汚染したりしないように排出するまで管理します。

産業廃棄物を保管する場所には囲いを設けて、以下の内容を明記した掲示板の設置が必須です(大きさは縦・横とも60cm以上)。

(1)「産業廃棄物保管場所」という表記
(2)保管する産業廃棄物の種類
(3)保管場所の管理者氏名(法人の場合は名称)と連絡先
(4)容器に入れずに屋外で保管する場合は、最大の積み上げ高さ

産業廃棄物の保管に伴い汚水が発生する恐れがある場合は、地下水や公共の用水路の汚染を防ぐために必要な排水溝を設置します。その上で、保管場所の床面を不浸透性の材料(コンクリートや金属など)で覆います。ねずみなどの動物が棲み着いたり悪臭や害虫が発生したりしないための措置も必須です。

成分に有機水銀・有機燐やチウラム・シマジン・チオベンカルブなどが含まれている廃農薬は、特別管理産業廃棄物扱いですので、保管する際は保管容器に入れて密封するなどほかの物と混合しないようにします。

農業廃棄物の排出方法

農業廃棄物は、産業廃棄物と事業系一般廃棄物に分類した上で排出します。家庭ごみと異なり、ほ場あるいは自宅近くのごみ置き場には出せません。

野外焼却(野焼き)も、農地管理・害虫駆除のために除草した刈草を燃やすなどのやむを得ない場合を除き禁止されています。環境汚染につながる恐れがあるため、敷地内に廃棄物を埋めてもいけません。

産業廃棄物

産業廃棄物を排出する際は、産業廃棄物処理業の許可を受けている業者に処理を委託するか、自分で産業廃棄物処理施設に搬入します。自分で搬入する場合は、あらかじめ処理施設側と産業廃棄物処理委託契約の締結が必要です。

自治体の処理施設に搬入する場合は、産業廃棄物搬入申請書を提出し、許可を得ておくようにします。処分終了後に交付される産業廃棄物管理票(マニフェスト)は、5年間保管が必要です。

事業系一般廃棄物

事業系一般廃棄物を排出する際は、一般廃棄物処理業の許可を受けている業者に処理を委託するか、自分で地域のごみ処理場またはリサイクル施設に持ち込みます。廃棄物の大きさや1回あたりの持ち込み量を制限している施設もあるため、排出前に確認しておきましょう。

農業由来の廃プラスチック

農業由来の廃プラスチックは、回収後リサイクルされるため、泥や作物残渣などの異物を除去しておきます。回収を実施するJAや自治体などの基準に沿って分別・廃棄を実施しましょう。

例えば岩手県雫石町では、以下のように分別方法を定めています。

・農ポリ・マルチなど種類別に分けた上で、端材など同じ素材で包んでまとめる
・肥料袋は種類ごとにまとめてビニールひもなどでまとめる
・農薬空容器は内部を水洗いして、半分に切って回収袋にまとめる(注)
・ブルーシートは、ハトメなどの金属を取り除いて端材などでまとめる
・専用の回収袋に入れてもかまわない

(注)農薬の空容器については、各自治体の基準とあわせ、農薬工業会の「空容器および使用残農薬の処分についてのガイドライン」所収の文書 「使用済み容器中の付着農薬の除去と空容器の処分に関するガイドライン」 に従って、適切に処分してください。

出典:雫石町ホームページ「資源とゴミ」所収の「農業用廃プラスチックの分別のしかた」

農業廃棄物の課題を解決するバイオマスの活用とは?

廃棄物や生物資源を燃やしてエネルギー化するバイオマス発電

阿部モノ / PIXTA(ピクスタ)

農業廃棄物の排出量を減らし、自然環境に関する課題を乗り越えながら持続的な農業(サスティナブル・アグリカルチャー)を推進するために、バイオマスの活用が注目されています。

国際的に見ると、栽培作物や廃棄物を原料にしたバイオ燃料(エタノール・バイオディーゼル)の活用が少しずつ進んでおり、2018年段階では全世界の輸送エネルギーの約3%を供給しているとされています。

廃棄物や生物資源を燃やしてエネルギー化するバイオマス発電への関心も高まっており、中国では2017年から2019年まで3年連続で世界一の発電量です。国内でも、バイオマス発電所を建設する動きが出ています。

国内では、牛のふん尿を発酵させることで生じたバイオガスで発電を行い、酪農施設で活用したり外部に売電したりする取り組み事例がみられます。また、バイオガスの製造過程で発生した副産物の消化液を肥料(液肥)として活用するなど、営農コストの低減にもつながっています。

農業廃棄物のバイオマス活用

農業廃棄物のバイオマス活用
出典:株式会社 PR TIMS(株式会社トーヨー養父バイオエネルギー ニュースリリース 2017年10月26日)

農業では廃プラスチックや廃農薬など、さまざまな廃棄物が発生します。廃棄物処理法や自治体・所属団体が定めるルールに沿って、廃棄物を適正に廃棄することが、ほ場周辺はもとより自然環境を守るためには大切です。

近年では、農業廃棄物をエネルギー化して再利用するバイオマス活用も注目されています。栽培作物や廃棄物を原料としたバイオ燃料が進んでいる他、国内ではバイオガスでの発電で得られた液肥を畑作に用いる事例もみられます。

舟根大

舟根大

医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。

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