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パクチー農家は儲かる?栽培方法や事例から学ぶ収益化のポイント

パクチー農家は儲かる?栽培方法や事例から学ぶ収益化のポイント
出典 : Princess Anmitsu/PIXTA(ピクスタ)

国内でもブームが巻き起こり、注目度が高まっている「パクチー」。新たにパクチー栽培に乗り出し、収益化に成功した農家も出始めています。この記事ではパクチーの主な生産地や栽培方法、販路開拓など収益化を目指すポイントを解説します。

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2016年、株式会社ぐるなび総研がその年の世相を映す「今年の一皿」として「パクチー料理」が選ばれたのを契機にパクチーの需要が増加しました。飲食店や加工品向けの業務用需要だけでなく、家庭料理にもパクチーが取り入れられるようになっています。

パクチーの国内需要拡大の背景

パクチー料理は、株式会社ぐるなび総研「2016年『今年の一皿』」に選ばれた

パクチー料理は、株式会社ぐるなび総研「2016年『今年の一皿』」に選ばれた
出典:PR TIMES(株式会社ぐるなび ニュースリリース 2016年12月5日)

日本で最初のアジア料理ブームが巻き起こった1980年代後半以降、アジア料理ブームが長く続いています。

パクチーは、アジア料理ブームの初期にタイ料理のトッピングとしてあしらわれ注目され始めました。

その後、アジア各国の出身者が現地の料理を提供する飲食店が増え、パクチーがだんだん一般化していきます。パクチー好きの層も広がり、2007年には世界初のパクチー専門店が東京都内に登場しています。

2016年に入り、食品メーカーからパクチーを使った調味料やレトルト食品・スナック菓子が続々と発売されました。料理番組や雑誌でもパクチーを使ったレシピが紹介され、パクチーブームに発展したのです。

生春巻やサラダなどでパクチーを食べる家庭も増え、スーパーでもパクチーが販売されるなど、パクチーの国内需要は拡大傾向にあります。

国内におけるパクチーの生産地と生産量

パクチー(コリアンダー)の花

バッシー / PIXTA(ピクスタ)

国内では1981年から静岡県でパクチー栽培が始まっていました。

国内全体でのパクチーの収穫量は平成28年産(2016年)が364t、平成30年産(201年)は537tと大きく増加しています。

収穫量の1位は福岡県、2位は静岡県、3位は茨城県で、この3県で66%を占めます。

福岡県では露地栽培の農家が多いのに対し、静岡県・茨城県ではほとんどが施設栽培です。

また、出荷量は少数ながらも北海道や神奈川県・鹿児島県など、全国各地でパクチーが栽培されています。

パクチー栽培に適した産地の条件・栽培のポイント

パクチー 栽培

nnudoo/PIXTA(ピクスタ)

パクチーは地中海東部が原産のセリ科の1~2年草で、栽培の難易度は高くないとされています。寒さには比較的強いため、年に2~3回収穫する農家もみられます。

一方、高温に弱くアブラムシ類の被害を受けやすいため、適切な栽培管理や防除が必要です。

パクチーに適した産地・気候・土壌

パクチーは草丈が20~25cmになった時点で収穫するため、栽培する地域の気候条件を考慮した上で露地栽培・施設栽培どちらかを選択します。

生育適温は18~25℃で温暖な気候を好みますが、寒さには強いのが特徴です。霜に当たると株が弱るため、冬に栽培する場合は寒冷紗やビニールのトンネルをかけるとよいでしょう。

一方、パクチーは暑さに弱く、高温の環境だと生育が抑制されます。直射日光の影響で葉焼けを起こす場合もあるため、遮光ネットをかけるなどの暑さ対策を行いましょう。

花が咲くと葉が固くなり商品価値が下がるため、花芽が付いた時点で摘み取るようにします。

パクチーは中性に近い弱酸性の土壌を好みます。土作りの前に土壌の酸性度を測り、播種の2週間前までを目安にpHが5.5~7.0前後になるように調整しましょう。

酸性度が強い場合は1平方m当たり苦土石灰を100~150gを施用します。土壌のpH調整が済んだら、1平方m当たりあたり1kg程度の完熟堆肥と60g程度の有機配合肥料を施用し、十分に耕してから畝立てします。水はけが悪いと根が腐りやすくなるため、必要に応じて高畝に仕立てます。

パクチーの作型・栽培時期

パクチーは暑さに弱く寒さには比較的強いため、栽培できる時期が長いのが特徴です。露地で栽培する場合は以下の作型が目安で、播種から約50~60日、冬季でも約120日で収穫できます。

施設栽培の場合は温度や日照などの適切な栽培管理を実施すれば通年栽培も可能です。

パクチーの根は直根性なので、発芽適温である20~25℃を満たしていれば直播きがおすすめです。

種子は硬い殻に包まれているため、播種前に種子に割れ目を入れるか2分割した上で一晩吸水させると発芽率が高まります。

条間20~30cm、株間10~20cm間隔で播種し、本葉が2~3枚になった時点で株間が10cm程度になるように間引きます。

育苗する場合は本葉が3~5枚になった時点で定植しますが、根を傷つけないように注意が必要です。根付きが良くなるよう、定植後は十分に灌水します。

パクチーはアブラムシ類やヨトウムシ類の被害を受けやすいため、防虫ネットやトンネルを使って害虫の侵入を防ぐようにします。

農薬を使って防除する場合は、アブラムシ類には「アドマイヤーフロアブル」が、ハスモンヨトウには「コテツフロアブル」が「コリアンダー(葉)」での作物適用があります。

ヨトウムシ類にはBT水和剤も効果的です(野菜類での作物適用)。

農薬を使用する場合は、あらかじめラベルの記載内容をよく確認し、使用方法を守って正しく散布してください。

パクチー農家は儲かる?収益化の成功事例

パクチーの人気は根強く、収益性の高い作物だといわれています。

栽培だけでなく、加工品販売などの6次産業化や販路の拡大によって、パクチーの収益化に成功している農家の事例を紹介します。

ブランド化・新商品開発による販路拡大

株式会社アーチファーム 代表取締役 植田輝義さんと岡山でパクチーを栽培する農家仲間「パクチーム」

株式会社アーチファーム 代表取締役 植田輝義さんと岡山でパクチーを栽培する農家仲間「パクチーム」
出典:PR TIMES(岡山県 東京事務所 ニュースリリース 2015年11月10日)

岡山市の「株式会社アーチファーム」ではパクチーの品種改良を重ねて、香りと甘み・柔らかさを兼ね備えた食べやすいパクチーの開発に成功しています。

もとは黄ニラの連作対策として、土作りや販路に共通点があるパクチー栽培でしたが、想定以上の相乗効果があったそうです。

アーチファームで栽培したパクチーを「岡山マイルドパクチー(岡パク)」と銘打って、岡山市内の飲食店や学校給食のメニューを開発するなど、パクチー料理の普及にも力を入れています。

岡山パクチーを使ったスムージーやにぎり寿司など、ユニークなメニューも登場しています。岡山県内の食品メーカーと協働で岡山パクチーしょうゆやパクチーゼリーを開発してオンライン販売に乗り出すなど、販路の拡大にも積極的です。

株式会社アーチファーム ホームぺージ
https://archfarm.jp/

洗練されたブランディングとパクチーペースト販売の6次化で成功

パクチーシスターズのパクチーペーストと生産者の立川あゆみさん

パクチーシスターズのパクチーペーストと生産者の立川あゆみさん
出典:PR TIMES(JR西日本SC開発株式会社 ニュースリリース 2018年4月26日)

千葉県八千代市の農家、立川 あゆみさんは、パクチー栽培を6次産業化につなげています。県内のレストランと共同で商品化したパクチーペーストを「パクチーシスターズ(PAKUCI  SISTERS)」としてブランド化し、その知名度も高まっています。

収穫したパクチーをその日のうちにペースト化、パクチー生産者だからこそ実現できる調味料として好評です。

商品化するためのクラウドファンディングを通じて知名度が高まり、ギフト商品やふるさと納税の返礼品としても採用されています。

生産者自身が広告塔となり、SNSや動画サイトなどを活用した積極的な情報発信を展開、パクチーシスターズのブランディングに力を注いでます。

2021年3月には直売所にパクチーの自動販売機を設置、フレッシュパクチーやパクチーペーストに加え、パクチーを使ったパンやスイーツの販売をスタートしました。知名度があがったもパクチーシスターズで地域への貢献にも取り組み始めています。

パクチーシスターズのホームぺージ

データ管理により生産量と品質の安定化を実現。SNSも積極的に活用

福岡県久留米市の「株式会社香月菜園」では卸売業者を軸にスーパーや飲食店にパクチーを販売、食品メーカーのプライベートブランドにも採用されています。

何度も水害に見舞われたものの、精力的に販路拡大と生産量拡大にまい進し、約2.8ha・76棟のハウスで年間78tのパクチーを生産しています。。自然災害のリスクを軽減するため、栽培拠点の分散にも取り組んでいます。

大規模化に当たって、誰でも同じ判断基準でパクチーを栽培できるよう、栽培データの蓄積と活用にも注力しています。

福岡県産パクチーのブランドを守るため、従業員の育成にも積極的に取り組んでいます。料理研究家にパクチーペーストの生産を委託、SNSなどで食べ方を提案してブランディングにつなげています。

株式会社香月菜園 Facebookページ

食生活の多様化に伴い、業務用・家庭用ともにパクチーの需要は増えており、6次産業化。ブランド化に成功している事例もみられます。新たな作物の導入を考えるとき、パクチーは高収益作物として選択肢の1つになるのではないでしょうか。

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舟根大

舟根大

医療・福祉業界を中心に「人を大切にする人事・労務サポート」を幅広く提供する社会保険労務士。起業・経営・6次産業化をはじめ、執筆分野は多岐にわたる。座右の銘は「道なき道を切り拓く」。

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