就農者支援が充実! 和歌山県農業の特徴と、地域活性化をめざす取り組み事例
和歌山県は農業が盛んな県であり、農家を支援する県独自の施策も充実しています。そこで今回は、和歌山県の農業の特色を紹介するとともに、和歌山県が行っている施策の内容、また地域活性化をめざす取り組み事例について紹介します。
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和歌山県は農業の中でも特に果樹栽培が盛んであり、新規就農者に対する施策も豊富です。データから和歌山県の農業をひもとき、特徴ある施策を紹介していきます。
どんな特徴がある? データで見る和歌山県の農業
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まず、和歌山県の農業の特徴について、耕地面積や農業産出額などのデータを参照しながら見ていきましょう。また和歌山県は農業が盛んな一方で課題も抱えているため、そちらも合わせて紹介します。
和歌山県の耕地面積と、土地の特徴
和歌山県の総面積は4,726㎢(47万2,600ha)であり、耕地面積は令和2年のデータで3万1,800haとなっています。日本全体の耕地面積は、同じく令和2年のデータで437万2,000haとなっており、日本の耕地面積の0.7%程を占めています。
気候は温暖で日照時間は2,089時間と長く、海岸部には無霜地帯があることが特徴です。また雨量も比較的少なく、北部の年間雨量は1,200~1,600mm程度、南部は2,500mm程度となっています。
耕地は河川流域に散在しており、中山間部が多いことから農業をはじめ漁業や林業などの第一次産業が盛んとなっています。特に農業では果樹栽培が有名であり、県内において作付面積の60%を超えるほどです。
みかん&梅の特産地! 果実の農業産出額は全国3位
和歌山県における農業の産出額は令和元年で1,109億円、そのうち740億円が果実部門であり、続いて野菜の144億円、米の76億円と続いていきます。この果実部門全体の農業産出額は、日本全体で上位5位に入りませんが、果樹の種類を限定するとトップランクの果樹が複数あります。
特に柿、みかん、梅のシェアは全国1位であり、柿は21%、みかんは22%、梅は58%です。そのほかにも桃は全国シェア5位、キウイフルーツは全国シェア3位であり、特定の果樹の栽培に強いことが分かります。
農業が盛んな一方、農家数の減少は課題に
全国と和歌山県で区分別の農家の割合を見ると、全国では販売農家が58.8%、自給的農家が41.2%であるのに対し、和歌山県は販売農家が68.3%、自給的農家が31.7%となっています。
販売農家とは耕地面積が広く、農産物を多く販売している農家のことであり、自給的農家は耕地面積が狭く、農産物を全く、もしくはごくわずかしか販売していない農家のことです。このことから、和歌山県は全国と比較しても農家としての生計を立てられていることが多く、県全体で農業が栄えているとわかります。
一方で、和歌山県の農家数は減少傾向にあることが課題です。平成7年のデータでは販売農家数が3万1,700戸、自給的農家数が1万1,300戸であったのに対し、令和2年のデータでは販売農家数が1万7,300戸、自給的農家数が8,000戸にまで減少しています。
農業政策のポイントは“充実した就農者支援
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農家数の減少という課題を解決するため、和歌山県では就農者へ向けた独自の支援制度を充実させています。そこで次に、この支援の主な例を紹介します。
和歌山県独自の補助金制度等を施行
和歌山県が独自に行っている農業施策の1つに、「農林水産就業補助金」という補助金があります。
金額は最大で50万円まで、対象者は和歌山県内で移住を推進している市町村へ移住予定から移住後3年以内までの60歳未満であり、かつ今後10年以上定住する意思がある人です。
就農する場合は、一定の規模を超える耕作を行うこと、または一定規模以上の畜産物を飼養することも条件となります。農業の場合は、露地野菜10a以上、施設野菜5a以上、果樹20a以上です。
※わかやまLIFE(和歌山県 企画部 地域振興局 移住定住推進課)「農林水産業がしたい」のページに要綱が掲載されています。
またこの補助金のほかにも、新規の就農者に対する無利子の融資、活動経費の支援など幅広い施策を行っているため、新しく農業がはじめやすい県であるといえるでしょう。
技術や経営のノウハウが学べる研修も実施
資金的な支援のほかにも、和歌山県は県が主体となっている農業研修が多くあり、技術的なサポートを受けることが可能です。研修を行っているのは和歌山県農林大学校の就農支援センターで、さまざまな種類の研修がラインナップされています。
年2回開催されている基礎から学べる無料の技術修得研修をはじめ、現在会社勤めをしている人向けのウィークエンド農業塾、Uターンなどで就農を希望する人に向けた実践的な技術力が身につけられるコース、離転職者向けの職業訓練などがあり、自身のレベルに合わせた学習が行えます。
実際に会社員をやめてこれらの研修を受けて就農した人も多く、上記の補助金制度などを合わせることで、これまで農業が未経験だった方でも新しく農業を始めやすくなっているのです。
就農に関する情報はポータルサイトで一括提供
和歌山県は、上記で紹介したような研修情報や補助金の制度など、就農を考える際に役立つ情報をまとめたサイト「あぐり わかやま」を、農林水産部経営支援課が運営しています。
「あぐり わかやま」には和歌山県の農業の特徴などはもちろんのこと、就農をする際に気になる情報をまとめた「就農白書」、先輩となる就農者へのインタビュー記事などが掲載されています。
また準備に必要なお金のシミュレーションができるなど、コンテンツが豊富にそろっているため、新規に就農する方の強い味方となってくれるでしょう。
このように和歌山県では、わからないことが多くて不安を感じやすい新規の就農者が、簡単に必要な情報を集められるしくみづくりを積極的に行っており、新規の就農者を増やそうと努力しています。
和歌山農業の活性化をめざす、地域の取り組み事例
最後に、和歌山県の農業を活性化するために、県とは別に地域で行っている取り組みの成功事例について紹介します。農業後継者の事例や販売力を強化した事例などを紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
6次産業化でメディア露出増! 農家の取り組みが地元を盛り上げた事例
藤桃庵の桃のジェラート
出典:ソーシャルワイヤー株式会社(株式会社近鉄百貨店 ニュースリリース 2019年6月3日)
和歌山県紀の川市にある籔本畑下農園の代表である籔本氏は、平成17年に農業後継者として就農し、桃の栽培を開始しました。藪本畑下農園では2007年に無肥料、減農薬での桃栽培を開始しましたが、その影響で傷んで出荷できない桃が増加しました。
この対策として、以前は外部に委託してジェラートをつくっていましたが、委託者の高齢化に伴ってジェラート工房「藤桃庵」を開店したのです。東京を中心として人気ジェラート店を10軒以上回るなど研究を重ね、ホームページやFacebookなどで情報発信を行った結果、桃のジェラートが市内外で好評となりました。
平成27年には株式会社藤桃庵を設立、その後もメディア取材などが増加し、圏外の有名百貨店などから催事における出店要望などが多数寄せられたことから、販売での活躍の場がさらに広がり、地域農業の活性化につながっています。
今後は桃の栽培面積拡大と安定生産、また消費者ニーズに対応した桃ジェラートの新商品を開発するなど、百貨店における催事への出展に積極的に取り組んでいく予定とのことです。
販売力を強化。町ぐるみで地域農業の活性化をめざす事例
96BOX inc. / PIXTA(ピクスタ)
和歌山海草郡内・海南市を管轄とするJAながみねでは、特産品である下津みかんの販売力をさらに強化し、農業者の所得を増加させるための取り組みを実施しました。
マレーシアの首都クアラルンプールでは、地元の量販店2店舗で試食宣伝やパンフレットの配布で下津みかんのPRを行い、来店客から好評を得ました。また下津みかんのPRを目的とした日本農業遺産認定に向け、推進協議会を立ち上げて総会を行うなど動きを加速しています。
さらに就農者や農家への支援として「女性農業塾」の開講や、営農支援システム「農業電子図書館」の導入などを実施し、町ぐるみで地域農業の活性化のための活動を行っています。
JAながみね「担い手育成・就農支援事業【トレーニングファーム・女性農業塾】展開中!」
JAながみね「マレーシアで『しもつみかん』をPR」
和歌山県は農家への支援が厚く活動がしやすい県
takagix/ PIXTA(ピクスタ)
今回は、和歌山県の農業の特色を紹介するとともに、県や地域が主体となっている施策や取り組みについて紹介しました。和歌山県は農業に力を入れており、サポートが充実していることから、新規就農がしやすい県といえるでしょう。
また地域ごとで見ても、それぞれ独自に農業を活性化する活動を熱心に行っているため、農家が非常に活動しやすく、収益のアップなどにも期待できそうです。ぜひ今回の記事を就農や地域を活性化するための参考にしてください。
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百田胡桃
県立農業高校を卒業し、国立大学農学部で畜産系の学科に進学。研究していた内容は食品加工だが、在学中に農業全般に関する知識を学び、実際に作物を育て収穫した経験もある。その後食品系の会社に就職したが夫の転勤に伴いライターに転身。現在は農業に限らず、幅広いジャンルで執筆活動を行っている。